やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
前々からアナウンスしていました新たなキャラが漸く登場です。
オカルトGメンの緊急出向依頼で、魔獣や妖獣が現れたという公園施設に、夜通しで痕跡調査を行うが、決定的な何かを発見することはできず、何者かが魔獣か妖獣を故意に公園施設に召喚術か何かで解き放ったという事しかわからなかった。
一応、魔法陣の痕跡らしきものを見つけるが、飽くまでもらしきものだ。
石ころを並べただけのもので、何らかの規則性はありそうだが、これだけでは魔法陣として相当不足な状態で、魔獣の召喚などもちろん出来ようもない。
ましてや、公園に残された魔獣か妖獣と思われる足跡は多数あり、そこそこの数が居た事になる。偶然などで召喚されるレベルの物じゃない、一気に魔獣を召喚するならば、そこそこの規模の術式は必ず必要となるのだ。
だから、この石ころを並べたものだけでは到底魔獣召喚など無理な話だ。
本当に魔獣召喚の為の魔法陣に使われたとすれば、この石ころを並べたものはほんの一部なのかもしれない。
だったら、残りの術式はどこにあるのかと、色々と疑問が残る。
西条さんらは事務所に戻って、これらの解析を行うとの事だ。
とりあえずは、石ころも回収したし、あの公園で魔獣が召喚される事はないと思いたい。
俺は現場から西条さんに美神令子除霊事務所まで、送ってもらった。
流石に夜通し霊視やら霊視空間把握能力を使ったから、霊気も底をつきかけ、体もだるいし、何せ眠い。
美神さんにさっさと報告して、仮眠をとらせてもらおう。
4階の事務所をノックして入る。
「ただいま戻りました」
「比企谷君、おかえりなさい。ご苦労様です」
キヌさんが笑顔で出迎えてくれた。
はぁ、癒される。キヌさんのその笑顔だけで、疲れや気力も回復しそうな勢いです。
その後、キヌさんは事務所内のキッチンの方へと向かった。
多分、俺にお茶を入れてくれるのだろう。
キヌさんいつもありがとうございます。
「そっちは、大変だったようね。こっちは空振りで大損よ」
美神さんも所長席から、不機嫌ながらも労ってくれる。
美神さんの方の依頼は、俺以外のフルメンバーで挑んだのに、空振りだったことは聞いていた。依頼料も前金のみなのだろう。まあ、前金でも結構な大金の様だし大損って事は無いだろうが、美神さんにとったらそうなのだろう。
「まあ、そうですね。詳しく報告します」
俺は美神さんが座る所長席に向かう。
「電話で大体聞いたし、後でいいわ。それよりもあんたに客よ」
美神さんは、ため息顔で応接セットの方を顎で指す。
俺は応接セットの方に振り向く。
「はち……こんにちは」
すると、応接セットのソファーにちょこんと座っていた小柄な女の子が立ち上がり、俺に少々緊張した面持ちで挨拶をする。
どこかの制服、セーラー服を着た子だった。おそらく中学生だろう。
「ん?……お前何でここに?」
俺はこいつに見覚えがあった。
「お前じゃない。留美って名前がある」
女の子は少々眉を顰め、俺に抗議するかのように言ってきた。
「いや、そうじゃなくて、どうしてここに?」
こいつの名前は、鶴見留美だ。会うのは久々だ。半年以上ぶりだな。
ちょっと見ない内に身長も伸びてるし、顔も少々大人びてきていた。
俺がこいつと初めて出会ったのは、去年の夏休み、千葉村で小学生のキャンプの面倒を見るボランティアに参加した時の事だ。
当時小学6年生だった留美は、皆からハブられていた。
同級生達がキャンプを楽しんでいる中、一人孤立していたのだ。
由比ヶ浜や小町、葉山達はそれに気がつき、何とかしてやりたいと、皆と一緒にキャンプ行事に参加しようと留美に声を掛けるが、空振りに終わる。
雪ノ下の意見は皆とは違った。
雪ノ下は昔、留美と同じような境遇に遭ってたらしいが、自分で何とか解決したらしい。
というか、高校になってもボッチのままだったから、結局解決になってないのだろうが……。
このキャンプでの一時的な接触しかない自分たちが、そんな留美に声を掛けたり、他の子に輪の中に入れてあげるように促す行為は、余計に彼女を苦しめることになると反対したのだ。
俺もその意見には大いに賛成だった。
俺達が一時的に仲を取り持ったとしても、日常に戻れば、またハブられるのは目に見えていた。俺達が介入することで、以前よりも立場が悪くなる可能性すらある。
それは俺と雪ノ下の経験からそうだと……。
ならば、最初から仲を取り持とうとしない方がいいだろうと。
ボッチにとって、こう言うイベントはただ、早く終わって欲しい辛いものでしかない。
俺の意見としては、ただ、この瞬間だけでも話し相手になってやれるだけでも、随分と楽になるだろうと。
俺と雪ノ下は、留美に出来るだけ自然体で何気なく話しかけた。
雪ノ下は、一人で居る事が何が悪いのかという意見を留美にぶつける。
留美はそれに大いに頷くが……心の中ではどうだろうか?
俺も、この年頃では強がって見ても、やはり誰かと一緒に居たいと心の中では思っていた。
俺はそもそも、何故留美が孤立してるのか、疑問を持つ。
正直言って、クラスの中では一番の美少女と言っていいだろう。
背も高いし、話してみても、それほど擦れた感じはしない。
クラスの人気者になってもおかしくない感じだ。
先に言っておくぞ。俺はロリコンじゃないぞ。世間一般的な目で見てという事だ。
誰に言い訳してるのかよくわからんが……。
雪ノ下の場合、言動はかなり擦れてるし、美少女で勉強や芸術から何もかもトップで、しかも実家は超金持ちときた。傍から見ればまじ完璧超人だよな。
同性からみると、かなり鼻持ちならない感じに見えた可能性が高い。
実際、かなり浮いた存在だったようだ。
しかし、こいつと話した感じではそこまで酷くはない。
なのになぜだと……
だが、俺はある事に気がついていた。
留美は異様に霊気が高かったのだ。
今思えば、当時からGSになれるレベルを軽く超えていた。
「……なあ、霊能を隠しきれなかったのか?」
俺は当時の留美にこう切り出した。
「!?……どうして、それを……」
「ほれ」
俺は霊気を開放して見せる。
「え?……あなたは何者なの?」
俺の霊気を感じ、驚く留美。
「俺は比企谷八幡って名前だ。一応ゴーストスイーパーの弟子だ」
「そうなんだ……八幡。私、悪霊から皆を助けようとしたんだけど……皆、気味悪いって……どうしてなのかな。皆を助けたかっただけなのに」
留美は涙ぐみ、俺に語った。
俺の予想通りだった。霊能力がバレたのが原因で学校でハブられたのだ。
日本人特有なのかもしれないが、異物は好まれない。
ましてや、まだ思考の浅い小学生が、集団生活を強いられる学校生活では特にその傾向が大きい。
異物は悪だと。
皆が見えもしない悪霊だとか幽霊だとか言い出して、しかも得体の知れない霊能者だと名乗ったらそりゃな。
俺の場合、霊能者ってバレなくてもボッチだったけどな。
……まあ、霊能者になる前からボッチだったから、そっちがデフォルトか。
留美の家は代々、悪霊退治を行ってきた神社の家柄なのだそうだ。
留美自身、祖父から毎日、神事を兼ねた霊能修行を受けていたらしい。
両親からも、学校では霊能を使ってはダメだと言い聞かせられていたようだが……。
悪霊と出くわしてしまって、学校の皆を助けるために、色々とやらかしてしまったようだ。
ふう、相当根が深いな。
先生もどうやらほったらかしの様だしな。
霊能に理解がある学校だったり先生がいれば、また、違っていたのだろうが、どうやらそうじゃ無い様だ。
俺はあの当時、留美に相談を受け、話した解決提案はこんな感じだった。
①霊能をフルに使って、呪いや言霊で生徒達を脅し、番長になる。
そう、これは美神令子方式だ。
唯我独尊天上天下。とことん生徒達を脅し絶対的地位を築く。
②霊能を使って、癒しの存在になる。
いついかなる時も微笑みを絶やさず、皆の聖母となる。
そうすれば、皆はいつしか、留美を崇めるようになるだろう。
氷室絹方式だ。
③霊能をギャグで使って、皆の笑いをとる。
さすれば、怖がられる事は無いだろう。あいつは霊能者だが、大したことが無いんだと思われる事間違いなし、芸人だと思われるのならば尚よし。
横島忠夫方式。
④強がって、ボッチで何が悪いと言わんばかりに、逆に皆を拒絶する。
最初から友達などいらないと考えれば精神的に多少は楽だろう。
雪ノ下雪乃方式。まあ、比企谷八幡方式ともいう。
⑤学校での友人関係をあきらめ、同じような年齢層の霊能者とのコミュニティに参加する。
俺も詳しくは知らないが、そういう物もきっとあるだろうと。
当時の俺は知らなかったが、GS協会に低年齢層に向けたそう言うコミュニティや相談窓口がある。
⑥留美は小学6年だ。来年には卒業する。
六道女学院の付属中学に入学することを勧めた。
あそこに行けば、霊能科もあるし、留美と同じような子もいるだろうから、霊能でハブられる事は無いだろう。
まあ、これが一番良さそうだ。
あそこ、全国から生徒が来るから寮もあるし。
ただ、金銭面に難だな。相当お金がかかるらしい。
だが、小学生の留美に決められるような物じゃない。
こころの奥底では、今まで通り学校の連中と仲良くしたいと思っているだろう。
だから、俺は②を選ばせた。
留美には俺が霊能者だという事を黙ってもらう。
雪ノ下達や、この件でやる気の葉山とそのお仲間達とで、計画を練る。
結局、学生キャンプ恒例の肝試し大会で、俺が何かに感染してゾンビになった役をやって、留美が所属するグループを脅かす。
それを留美が退治するというシナリオだ。
俺の演技で、小学生共は超ビビりまくり、泣く子も出るぐらいだ。
いや……、ノーメイクなんだけど……。
戸塚とか由比ヶ浜や葉山達は絶賛してくれるが、俺の心に小さな傷が一つ生まれる事になる。雪ノ下の奴は口を押えて笑いを堪えていやがったな。
結果的にはその場では、うまく行った。
留美が俺をお祓いして、俺がぶっ倒れ、グループの連中を助ける。
皆は留美にお礼を言っていた。
だが、クリスマスイベントで再会した留美は、まだボッチだった。
俺の予想通りだ。
面と向かって、悪口や明らかな無視などは無くなったが、異物感はそのまま残り、留美と積極的に関わろうとする奴は出なかったようだ。
もともと、コミュニケーションが苦手な留美ならば、致し方が無い。
だが、以前よりはマシだと留美は言っていた。
それだけが救いだな。
何故だか、クリスマスで再会した時には、留美は俺がGS資格免許試験に合格している事を知っていた。
その時にメール交換をし、ちょくちょくメールが来るようになった。
その後は地元の中学に入り、友人も少し出来たようだ。
中学生になれば、精神的にも成長して……いや、中二病的に霊能者とか憧れる奴が出てくるし、小学生の頃のような事は少なくなるだろう。
中学になってからは、メールの頻度がめっきり少なくなった。
友達も出来たし、俺に愚痴を言う必要もなくなったからだろうと思っていたのだが……
俺は留美の対面のソファーに座ると、留美もつられてソファーに座りなおす。
キヌさんが冷たいお茶を俺の目の前にどうぞと置いてくれる。
既に留美の前には、オレンジジュースとチョコ菓子が置かれていた。
そして、中学のセーラー服姿の留美は再び立ち上がり、こんな事を言い出した。
「八幡…私を弟子にして!……ううん。比企谷八幡先生、私を弟子にしてください」
………………
…………
……
へっ?
俺は眠気が一気に冷めた。
俺ガイルファンの皆さんお待たせしました。
満を持して、ルミルミ登場です。
この話は結構前に考えていました。
クリスマスイベント時には、構想はできていたのです。
だから、クリスマスイベントでは出せなかったんです。
何処のタイミングがいいのかと模索しておりまして、ここのタイミングになりました。
もっと、後の方が良いのではと思いつつ、我慢できずにここで出しちゃいました。
八幡にやって欲しい横島ギャグは何?
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のぴょぴょーーん
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蝶のように舞いゴキブリのように逃げる
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仕方がなかったんやーー!
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お着換えを手伝いますね。
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その他