やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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前回の続きです。


(123)弟子誕生?

 

去年の夏に出会ったあの鶴見留美が俺を訪ねて、美神令子除霊事務所に訪れていた。

 

なぜここに?

おれはそんな疑問を持ちながら、応接セットに座る留美の対面に座るのだが……

留美はこんな事を言い出した。

「八幡…私を弟子にして!……ううん。比企谷八幡先生、私を弟子にしてください」

 

「へ?」

俺は思わずそんな声が漏れる。

弟子ってなんだ?

俺は留美が言っている言葉が一瞬理解出来なかった。

俺は横島師匠の弟子でだ……あれ?

その俺の弟子になりたいってこと?

 

「八幡……」

留美は上目遣いで俺の顔を覗き込む。

 

「ちょっと待て、弟子って、俺の弟子になりたいってことか?」

 

「そう。八幡の弟子になりたい」

 

「待て待て待て。おかしいだろ?何で俺なんだ?」

俺は全く予想していなかった事態に焦る。

いやいやいや、普通に無理だろ。

俺だって、ゴーストスイーパーとしてまだまだなんだぞ。

横島師匠や美神さんにもまだまだ教えて貰いたいことがタンマリあるんだぞ。

 

「八幡がいい」

 

「ちょっと待てって!」

しかも俺は、美神さんところに雇われてる身だぞ!勝手にも出来ん。

俺はそう言いつつ美神さんの方を振り向くと……

美神さんはあんたが何とかしなさいと言いたげに、ため息を吐いて手を振るだけ。

美神さんって、この年頃の子供の対処って苦手なんだよな。

自分も子供みたいなくせに。

 

俺は次にキヌさんの方へ助け船を求めるべく顔を向けると……

キヌさんは、微笑みながら口パクで頑張ってと……

いや、頑張ってと言われても、弟子なんて無理ですよ。

 

「八幡、ダメ?」

 

「ダメっておい、俺はまだ、GS免許取って一年も経ってない駆け出しだぞ、他にもっといい人が居るだろ?」

 

「八幡がいい」

 

「ちょっと待てって、そもそも鶴見の家は神社なんだろ?お前、爺さんに手ほどきを受けてたって言ってただろ?俺の弟子になる必要性はまったくないだろ」

俺は後で調べたが、留美の祖父は津留見神社の神主で、Bランクのゴーストスイーパーだった。今は高齢のためほぼ引退しているらしいが、俺は知らなかったが昔は千葉では有名な除霊師だったらしい。

 

「おじいちゃん。もう年だから、いつ死んでもおかしくない」

留美はそんな事を平然と言う。

おい、それちょっとじいさんが可哀そうじゃないか?

じいさんにそれを直接言うなよ。きっと泣いちゃうぞ。

 

「じゃあ、両親はどうなんだ?」

 

「お父さんもお母さんも、Dランクだから、師匠になれない」

確かにGS協会に正式に認められた師弟制度では、師匠はCランク以上のゴーストスイーパーではなくてはならないと決まっている。

それとこういう話はよくある。

後継者問題としてな。

有能な霊能者の子供が必ず有能になるかと言うとそうじゃない。

だから、家系を守るために、有能な霊能者の婿や嫁、養子をとって家系を維持したりする。

まあ、土御門や六道みたいな大きな霊能家は、裾野も広いだろうから、一族から誰かしら有能な人材が出るし、有能な霊能者を生み出すために、代々心血を注ぎこんでいる。

ましてや、留美の所の地方の小規模な霊能家では、家系を守るだけでも大変なようだ。

 

だから、将来有望そうな留美が直系の身内から生まれて、鶴見家は大万歳と言ったところなのだろう。

 

「だからって、俺は無いだろ?俺は神社の家系でもないし、鶴見家の独特の神道系術とかもあるんだろ?」

 

「お爺ちゃんからは、全部習ったから大丈夫」

おい、その年で全部習得したのかよ。

留美の奴、霊気量だけじゃなく、霊力コントロールとかのセンスもあるという事か。

 

「同じ神道系のゴーストスイーパーに弟子入りした方がいいに決まってるぞ。ここのキヌさんも同じ神道系だしどうだ?」

俺はそう言って、俺達の様子を微笑ましそうに見ているキヌさんの名前を出す。

キヌさんは東北の氷室神社の娘だ。神道系というよりも陰陽師系が色濃く残っているらしいが……。それにキヌさんは教え方もうまいし、優しいし、何より聖母だし。

 

「嫌。八幡がいい」

留美は微笑むキヌさんを一瞥してから、俺に力強くそう言った。

キヌさんを嫌って、おい。何贅沢言ってんだ?

まあ、キヌさんがOKしてくれるとかは別問題なんだけどな。

 

「そもそも両親とじいさんはこの事で、何て言ってるんだ?」

 

「お父さんとお母さんにはちょっと話した……お爺ちゃんには言って無い」

 

「今日ここに来ることを、両親とじいさんには話してないんだな……」

 

「うん言って無い。でもお父さんとお母さんに八幡のこと話したら、良いって言ってた」

おいーー!なんで見ず知らずのどこの馬の骨とも知れない若造の元に、大事な娘を託そうとしてるんだ?何考えてんだ?こいつの両親は!?

 

「じゃあ、じいさんはどうなんだ?今の師匠なんだろ?」

 

「……おじいちゃんが死んだらどうしたらいい?って聞いたら、万が一自分が死んだらBランク以上の凄腕のゴーストスイーパーだったら考えなくもないって、言ってった」

……留美、自分のじいさんに死んだ後どうするんだって、聞いたのか?

じいさんに同情するしかないな、まじで。

陰で絶対泣いてるだろ。

 

「だったら、俺はまだ駆け出しだから無理だ」

 

「でも、八幡はBランクになった。今月のGS広報新聞に載ってた。だから今日来たの。去年のGS資格試験の時のGS広報新聞にも若手有望株だって書いてあった。だから大丈夫」

なに?留美の奴、そんなものを真面目に読んでるのか?まあ、俺もちゃんと読んでるが、12、3の子供が読むか?普通。

因みにGS広報新聞とは、GS免許取得者に配られる年に数回発行される業界紙だ。

今じゃ、ほとんどメールで送られてくるが……。

 

「いや、だから……」

 

「八幡、なんでダメなの?」

留美は目を潤ませる。

 

どうしたものだ、これ。

急に弟子とか言われてもな。

正直、俺自身まだまだ未熟者だし、俺は弟子なんてとれる立場じゃない。

 

 

「比企谷君。あんたはとことん甘いわね」

そこで、美神さんが呆れながらも、こっちに来てくれる。

 

「美神さん……」

 

「留美ちゃんと言ったかしら。比企谷君はね。うちの事務所の従業員で、しかも私の弟子でもあるのよ。美神令子除霊事務所のメンバーは皆優秀じゃないと務まらない。貴方が比企谷君の弟子に成りたいって言うならば、それなりの実力が無いと無理なわけよ。わかるでしょ?あなたも霊能の家の出なら」

美神さんが助け舟を出してくれる。

おお、これならば円満に断れる。

流石は美神さん屁理屈を言わせたら天下一品だ。

 

「実力をみせればいいの?」

 

「ほう、言うじゃない。そうよ。但し、中途半端はダメよ。この美神令子を認めさせなければね」

流石美神さん。これならばどう転んでも、断る事が出来る。

今回は美神さんのお陰で助かった。

 

「うん。わかった」

 

留美はそう言って、持っていた小さなポシェットから、数十枚の折り紙の束を取り出す。

いや、この折り紙、唯の折り紙じゃない。

 

留美はその折り紙の束を手の平に乗せ、霊気を開放する。

留美の長い後ろ髪が少々ふわっと浮き上がる。霊気が漏れてる証拠だ。

思った通り、結構な霊気量に霊力だ。

留美が何やら言霊を発すると、留美の手が淡く青白く光を纏い、手のひらの上の束だった折り紙が次々と宙へと舞う。

そして、宙を舞った折り紙は折り鶴へと折られて行き、数十枚の折り鶴が事務所内を縦横無尽に飛びまわる。

 

ペーパークラフト使いか!?

日本では式神使い(式紙使い)の一種だ。

 

それにしても、この数の式紙を同時にコントロールするとは、もうこの時点でDランクGSなんて飛び越えてるぞ。

 

「…………」

チラッと俺は美神さんの顔色を伺ったが無言だった。なんかぷるぷるしてる。

 

「わあ綺麗」

キヌさんはその光景に感嘆の声を上げていた。

 

そして……

「採用決定―――っ!!」

美神さんは破顔して、そんなことを言ちゃう!

 

「はぁ!?何を言って……」

 

「比企谷く~ん!!この子を弟子になさい!!こんな有望な子を他に獲られてたまるもんですか!!」

さっきのは、断る口実だったんじゃないんですか!?

 

「いやいやいや、弟子って、こいつは実家を継がないといけないし、美神さんのメリットなんて……」

そうだ。なまじ俺の弟子に成ったからって、この事務所に入る事はできないんですよ!

 

「あんたの弟子って事は、私の孫弟子って事になるわけよね!神社を継ごうが、師匠の師匠である私の言う事は絶対よ!!こんな棚から牡丹餅を見逃す手はないわ!!」

おいーー!!なにその下心丸出しの採用理由は!!

しかも弟子って俺が面倒見ないといけないんですよ!?

 

「合格?」

留美ははしゃぐ美神さんに聞く。

 

「合格よ!この美神令子が何が何でもこいつの弟子にしてあげるわ!!うはははははっ!!」

 

「やったー。八幡よろしくね」

留美は手放しで喜んでいた。

 

「ちょっと待てーーーっ!いや、俺はまだ……」

 

「何よ。師匠の私の言う事が聞けないの?」

美神さんは俺に凄んで来る。

いや、俺の師匠は飽くまでも横島師匠ですよ。

雇い主は美神さんですが……。

 

 

「あの、皆さんいいですか?」

盛り上がってる?その場にキヌさんが静かに問いかける。

 

「おキヌちゃん!こいつの弟子申請書を書いちゃって!」

美神さんはそんな事をキヌさんに言う。

何を勝手に!俺はまだ認めてないんですが!

 

「いえ、盛り上がってる所で申し訳ないですが、比企谷君はBランクとは言え、1年間の見習い期間中なので、弟子は取れませんよ」

キヌさんは苦笑気味に俺達に伝える。

そうだった。確かにGS関連の法律にそんな項目があった。

 

「ええ?まじで?」

美神さんは寝耳に水って感じに驚いていた。

 

「ダメなの?」

留美は残念そうな顔をする。

 

助かった。

ありがとうございますキヌさん。

 

「……比企谷君、あんたGS免許取ったの何時だっけ?」

 

「去年の10月末ですが」

去年取ったばかりなんですが?

 

「まあいいわ。鶴見留美さん。10月末にもう一度ここに来なさい。そしたら、無理矢理にでもこいつの弟子にしてあげるから」

美神さんは薄ら笑いを浮かべて、留美にこんな事を言ってしまう。

 

「はい、お願いします」

留美はそれに嬉しそうに答えたのだった。

 

「…………」

やばい、やばいぞ。それまでに留美の奴を説得しなければ、マジで弟子入りが確定してしまう。

 

 

俺はこの後、留美を自宅近くまで送る。

自宅まで直接送ってしまうと留美の両親に出くわしてしまう。

それは非常に気まずい。

その間、留美は俺に色々と質問したり、世間話をしたりと……。

 

はぁ、どうしたものか。

俺は一度自宅に帰り、この事を一時でも忘れるように眠る事にした。

 

 

俺はこの時、留美の件で、もう一騒動起こる事を知らなかった。

 





果たして、どうなることやら。

八幡にやって欲しい横島ギャグは何?

  • のぴょぴょーーん
  • 蝶のように舞いゴキブリのように逃げる
  • 仕方がなかったんやーー!
  • お着換えを手伝いますね。
  • その他
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