やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

今回は陽乃さんのデート編?
です。


(126)雪ノ下陽乃は次の手を打つ

7月2週目

一学期期末テスト最終日

最後のテストを受け終わった俺は憂鬱だった。

テストの出来が悪かったとかじゃない。

今回はそこそこの手応えは感じてる。

 

本来この後、部活に行く流れなのだが、俺は一度自宅に帰り千葉駅に向かわなければならなかった。

そう、陽乃さんと出かける約束をしていたのだ。

ようするにデートということらしい。

これが俺の憂鬱の原因だった。

 

今回は誰の助けもない。

雪ノ下や由比ヶ浜にもこの事を話したのだが、心配そうに気をつけてとか、惑わされないようにと言う言葉をかけてくれるが、前回のように手助けしてくれる気配はない。

どうやら俺に告白してくれた雪ノ下と由比ヶ浜に陽乃さんは、お互いデートの際には干渉しないようにと不可侵条約のような物を結んていたようなのだ。

 

4月に雪ノ下と近所に出かけた際、陽乃さんが現れて夕飯を一緒にすることになった事に、雪ノ下が強く抗議したのはこの事があっての事らしい。

 

俺は今の陽乃さんを別段嫌ってるわけではない。

以前の外面仮面全開の時は、かなり警戒して、苦手意識を持っていたが…。

いや、今も多少苦手意識は残ってるか、何せ強引に事を運ぶ姿勢はあんまり変わらないからな。

ただ、素の陽乃さんには好感は持てる。

印象は、何を考えてるかわからない怖さを持った同級生の姉から、同じ同業者の同期で、ライバルみたいな関係でもあり、負けず嫌いの強情っぱりで妹が大好きなお姉さんという感じに変わってる。

 

なら何故憂鬱なのか?という事なのだが、俺にも良くわからん。

よくわからないから憂鬱なのかもしれない。

分からない物に対する未知への恐れみたいなものなのだろうか?

 

 

俺がチャリで帰宅すると、家の前に車が止まっていた。

赤のスポーツカーだ。

俺は車に詳しくないが、外車なのだろうか、高級車っぽい感じがする。

そこにはもちろん……

 

「やっほー、八幡」

陽乃さんが窓を開け、明るい笑顔で手を振っていた。

 

「……千葉駅で待ち合わせじゃなかったんですか?」

 

「来ちゃった。どうせドライブだし此処からの方が効率的でしょ?」

学校の校門前ではなかったのはまだましなのだが……。

学校に迎えに来るのだけはやめてくださいとはお願いしていたから、自宅前だったのだろうか?

ポジティブに考えれば、俺の家から出てきて「おかえりなさい」よりはずっと健全だという事にしておこう。

 

「直ぐに着替えるんで、待っててください」

「はーい、待ってるから直ぐお願いね」

陽乃さんは大人しく待っててくれるようだ。

部屋に入れろとか駄々をこねられるかと思ったが意外とあっさりとしたもんだ。

 

俺はチャリを駐車場に入れ、速攻で着替え家を出る。

「早、3分も経ってないわよ」

「着替えるだけなんで、男子だったらこんなもんですよ。たぶん」

それにだ。小町がこの頃、俺の出かけようの服装をコーディネイトして、一式セットして置いてくれているのだ。

 

「じゃあ、行きましょうか」

「……お願いします」

こうして陽乃さんとのデートが始まった。

 

 

しばらくして……

「どこに行くつもりですか?」

俺は不安を隠せない、何故なら車は高速道路へと入って行ったからだ。

 

「いいからいいから、日帰りで帰れる場所だから安心して」

 

「はぁ」

それだったら大丈夫か。

 

「そんじゃ、八幡にしつもーん。4日前の月曜日は何の日だったかな?」

 

「7月7日だから、七夕ですね」

 

「ブッブーーー。世間では正解だけど、お姉さん的には不正解でーす」

七夕じゃない?何かのなぞなぞか?陽乃さん的な事と言う事は……。

 

「……雪ノ下さんの誕生日ですか?」

 

「せいかーい。というかお姉さんの誕生日を知らなかったなーー、ガハマちゃんの誕生日にはデートした癖にねーー。お姉さんの誕生日を知らないなんてけしからん」

陽乃さんは冗談交じりで、本気で怒ってるわけではない。

陽乃さんから誕生日なんて聞いた事も無いし。

因みに由比ヶ浜の誕生日である6月18日土曜日は、東京に遊びに行ったのだが……ガハママとマリアさんとドクター・カオス氏が、ひっそりついて来ていた。

まあ、俺の霊視能力で最初からバレバレだったんだがな。

監視付きというよりも、よくわからん由比ヶ浜のフォローをしてる感じの様だった。

ガハママにしれっと避妊具渡されたり、危うくホテル街に誘導されるわ、ドクターのとんでもメカで異空間接続で変な場所に飛ばされるわで、相変わらずドタバタって感じだったな。

 

「誕生日プレゼントは今度会う時までに用意しておきますんで、勘弁してください」

 

「ならばよろしい」

陽乃さんは満足そうにうなずく。

どうやら正解だったようだ。

 

「七夕と同じだから陽乃さんの誕生日は覚えやすいですね」

 

「私は嫌なのよね。織姫と彦星って、恋人同士が一年に一回しか会えないって話じゃない。それって残酷過ぎない?しかも、なんだか今の私達みたいじゃん。私が織姫で彦星が八幡みたいで中々会う機会ないから。本当はもっと会いたいのにな~」

いや、それはちょっと違うんじゃないでしょうか?今の俺と陽乃さんは恋人同士でも何でもないんですが。

 

「雪ノ下さんは織姫でいいかもしれないですが、俺が彦星だったら世の中の人々は幻滅するんじゃないんですかね。目が腐った彦星なんて需要はないですよ」

俺がもし彦星だったら、目が腐ってる事になって、ロマンもへったくれも無いぞ。………まさか、本物の彦星が目が腐ってるってことは無いだろうな?

そういえば、なんか横島師匠が本物の織姫に会った事があるような事を言ってたような。

織姫は何でも超浮気性で、変身能力で男の理想の姿に変身できて男をとっかえひっかえ……。彦星については特に何も言って無かったな。

去年その話を聞いて、真実を聞きたくなかったとあれ程思った事は無い。

 

「そう?私は八幡がいいんだけど」

この人、なにさらっと言っちゃってんだ?

 

そんな他愛の無い話をしつつも、どうやら目的地についたらしい。

山間に囲まれたひらけた場所に、大きな公民館かイベントホールみたいな建物が建っていた。

「着いたわ」

 

「……ここはどこですか?」

 

「九十九里の近くね。一応うちの別荘地の一つなんだけど、本当は昔にリゾート開発に失敗した成れの果てね」

 

「そうなんですか……」

いや、リゾート開発に失敗したと言っても、こんなところを別荘地にしてしまうってどんだけ金持ちなんだよ。

 

「行きましょ」

車を降り陽乃さんについて行く。

その建物に入り、ロビーみたいな場所で、ここのスタッフなのか使用人なのかが、お待ちしておりましたと恭しく頭を下げて来た。

 

「ちょ、雪ノ下さんここで何を?」

 

「いいからいいからついて来て」

そう言う陽乃さんの後をついて行くのだが、一抹の不安を隠せない。

 

だが……

「じゃーーん」

連れてこられた場所は大きな体育館のような施設だった。

 

「ここで何を?」

スポーツでも楽しむつもりかな?

俺はホッと安堵の息を吐く。

 

「私と八幡だったらこれじゃない?」

陽乃さんはそう言って、俺にいきなり破魔札を投げつけて来る。

俺は咄嗟に破魔札を右手の人差し指と中指で挟んで受け止める。

 

「……まさか」

俺は嫌な予感しかしない。

 

「そうよ。普通にデートとか面白くないじゃない。そんなのは雪乃ちゃんやガハマちゃんにやらせればいいわ。私と八幡がこうして二人っきりでやる事なんて決まってると思わない?そんじゃ、勝負しましょうか」

そう言い終わった陽乃さんはどこかギラついた眼をしていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

「ん?ここは訓練許可は正式にとってる場所よ。許可を取らなくても個人所有の場所で、私的に勝負するんだから別に許可はいらないのだけど」

 

「いや、そう言うんじゃなくて、なんで雪ノ下さんと勝負しなくちゃならないんですか?」

陽乃さんが本気出せば、こっちも手加減なんて出来ないし、下手をしなくても大けがに繋がる。去年のGS資格免許試験決勝戦がいい例だ。

 

「そうね、言い方がまずかったかな。模擬戦をやりましょってこと、もっと簡単な言い方をすると一緒に訓練して汗を流しましょうってことよ」

 

「……まあ、危なくない訓練とかだったらいいですが」

この辺で妥協しないと、本気で勝負とか無理やりやらされそうだしな。

 

「私も着替えて来るから、八幡の分も用意してるわ。そこの更衣室を使って、それともお姉さんと一緒がいいかしら?」

陽乃さんのいつもの悪戯っぽい笑顔で微笑んで来る。

 

「はぁ……更衣室借ります」

俺はため息交じりに陽乃さんが指し示した方に向かうと、男子更衣室があった。

 

更衣室内は結構広い。

元々レジャー施設用に建てられたとか言ってたしな。

 

そんで、ベンチの上にジャージとトレーニングウェアとシューズまで置いてあった。

これに着替えろって事だろうな。

 

ふぅ、ほんとあの人勝負とか好きだよな。

まあ、真剣勝負とかはお断りだが、訓練とかだったら、普通にデートするよりもこっちの方が気が楽だ。それに土御門家の訓練方法や修行方法なんてものも聞けるかもしれないし、ちょっとは術を見せてくれるかもしれない。

そう考えると、まんざら悪くないなと思い始める。

 

しかし、ジャージもトレーニングウェアもシューズのサイズも、何でこんなにぴったりなんだ?

札とか各種霊能アイテムが収納できる術者用のインナーとかも用意してくれてるし。

何故か下着まで置いてあるし……。

深く考えるのはやめておくか。

 

俺はトレーニングウェアの上にジャージを羽織る。

夏だし、暑いからトレーニングウェアだけでもいい様に思うが、室内は冷暖房完備だし、一応な。

私服に忍ばせてある神通棍だけは持って行くか、札とかは消耗品だし、わざわざ訓練に使う必要も無いだろう。

 

俺は体育館に戻り、軽くストレッチを行う。

陽乃さんはまだ来てない。

そう言えば、陽乃さんは本格的に修行しだしたのっていつなのだろうか?

高校は総武高校に通ってるとは聞いているが……。

 

俺はここの体育館を見渡すと、よく見ると、床には術式が張り巡らされていた。

結界術だな……。

GS資格免許試験に張られていたものとよく似てる。

攻撃術などが結界の外に漏れないための物だ。

この術式だったら物理攻撃は無効にはならないかもしれない。

 

暫くして、陽乃さんが現れる。

「式服じゃないんですね」

 

「そりゃそうよ。訓練ですもの」

陽乃さんは、上は半袖と下は膝までのトレーニングウェアを着ていた。

まあ、なんていうかこの人は何を着ても似合うというか、やっぱり美人だなと……。

 

「雪ノ下さん一つ聞いていいですか?雪ノ下さんが本格的な修行を始めたのっていつですか?」

俺は先ほどの疑問を陽乃さんに質問をする。

 

「うーん、正式には高校卒業からかな?それまでは10歳ぐらいからここや雪ノ下の家で、土御門家から派遣された先生に訓練をつけて貰っていたわ」

成る程、それで合点がいった。という事は基礎は小さい頃から行っていたという事か。

 

「じゃあ、お姉さんからも質問。八幡は霊能に目覚めて、たった1年半でGS資格試験で私に渡り合える程の実力をつけて合格したけど、どんな修行したのかな?そんな短期間で普通はあり得ないわ」

 

「………前も話したと思いますが、横島師匠に霊気と霊力コントロールや体術等の基礎を教えて貰ってました。その美神さんからは、実践と言うか仕事の荷物持ちとして、そのですね。陽乃さんが温泉訓練の前に経験したでしょ?雪崩とか……。あんな感じで、妖怪の巣に落とされたり、無人島に置いてけぼりにされたり、罠にワザと落とされたり、無数の幽霊の囮や、攻撃の盾にされたりと……まあ、生きてるのが不思議なぐらいです」

基本は横島師匠がみっちりと教えてくれたんだけど、美神さんからは実戦方式というか呈のいい囮というか盾というか、そんな感じでいろんな目にあった。マジで何度死ぬかと思ったか、実際死にかけた事も何回もあったし、そのたびにキヌさんに救われて……。

 

「そ、そう、それは大変だったわね」

陽乃さんも美神さんのやり口を実際経験したのだから、想像に易かっただろう。

 

 

「じゃあ、訓練はじめますか、結界発動してっと」

陽乃さんは言霊と指で印を紡ぎながら、体育館に張り巡らせてある結界術式を発動させる。

体育館の内縁2mに沿うように長方形の結界が形成される。

 

「先ずは何をしようかしら、そう言えば八幡は体術もキレッキレよね。私の術を悉く避けるし、ちょっと組手して見ない?あっ、八幡は霊視禁止ね。それとも霊視でお姉さんのすべてを丸裸にしたい?」

 

「まあ、いいですよ」

 

「ちょっとは恥ずかしがってもいいのに。なんかおもしろくなーい」

俺は意識しないようにしてるんですよ。わざと。

そうしないと、女の人と、しかも陽乃さんとなんて、流石に組手とかできるわけがない。

 

「じゃあ、先ずはゆっくりめから」

俺は小竜姫様や横島師匠との組手を思い出し、構える。

 

「ふーん。じゃあお姉さんから行っちゃおうか」

そう言えば、陽乃さんの体術は殆ど見た事が無いな。

術式を雨霰のように次から次に飛ばしてくるから、体術なんて普段は使わなくていいのだろう。

 

陽乃さんは掌底気味の突きを繰り出してきた。

結構鋭い。

 

俺はそれを手の甲でわざと受けて捌く。

 

陽乃さんは一瞬体勢を崩したかのように見えたが、低い姿勢で足払いを仕掛けてくる。

 

俺はそれを半歩下がり避ける。

ゆっくりめと言ったのに、最初からこれか?

 

陽乃さんは次から次へと攻撃を仕掛けてくるが、俺は防御に徹し、避けるか捌いていく。

というかこれ、古武術だけの動きじゃないぞ。ムエタイ?やたらと足技が飛んでくるんだが?

 

陽乃さんは攻撃を仕掛けると同時に霊気を開放していき、基礎身体能力強化を行う。

 

これからが本番って事か。

俺も基礎身体能力強化を行う。

 

陽乃さんの攻撃の手数はますます増してくる。

去年の冬に妙神山の修行を受ける前だったら、体術だけでも完全に負けてたぞ。

この人、素でどんだけ強いんだよ。

 

10分ぐらいこの攻防が続いたところで、陽乃さんが飛びのく。

 

「………すべて防御されるか避けられるなんて、途中から全力だったのよ。これでも土御門の中じゃ体術で負けた事がないのよ」

 

「いや、防御で手一杯でしたよ」

 

「うそつき。……八幡、私の動きを目で追ってなかったし、無傷だし」

陽乃さんは珍しく頬を膨らませムッとしていた。

そう、これは妙神山の修行で、光も音もない世界での特訓の成果だ。

確かに反撃は出来た。だが、そうだとしても、陽乃さんの途絶える事のない猛攻の前では反撃の機会は少なかった。

それにこれは本来の陽乃さんのスタイルじゃない。

陽乃さんの本来のGSとしてのスタイルは、氷結を中心とした多彩な攻撃術式による殲滅だ。

先ほどの組手同様に、相手に息をさせる間もなく断続的に多彩な攻撃術式を放つ。

そこに超強力な式神が加わってくる。

それに陽乃さんは土御門だ。

結界術式や防御術式もかなりの物を持ってるはずだ。

 

今回のこれは、俺の体術がどんなものか試す意味もあったのかもしれない。

 

「まあ、色々と修行したんで、体術はそこそこには」

 

「去年のGS資格免許試験の時とは動きが段違い。冬休みと春休みの後に雰囲気が変わった感じがしたわ。妙神山の小竜姫様という神様の元で修行した成果?」

 

「妙神山を知ってるんですか?」

俺は一瞬驚いた。陽乃さんから妙神山と小竜姫様の名前が出て来るとは思わなかったからだ。

 

「やっぱり。…ふぅ、この夏季休暇に私も行くことになったのよ。師匠が取り次いでくれたらしいの。まさか本当の神様に手ほどきを受ける事が出来るなんてね。修行してあっという間に追いついてやるんだから」

陽乃さんは構えを解き、一息ついてから話してくれた。

そりゃそうか、陽乃さんは土御門家当主の土御門風夏さんの直弟子だもんな。土御門家なら、妙神山を知っててもおかしくないか。

 

「確かに、妙神山の修行はすごかったですね」

まあ、それよりも小竜姫様のインパクトと横島師匠と小竜姫様の関係の方がインパクトがデカかったけど。

 

「はぁ、久々に体術だけで疲れちゃったわ。全力よ。まったく」

 

この後、陽乃さんと1時間位、休憩室で座りながら術式の論議を行う。

陽乃さんの体力がある程度回復した後、実際に陽乃さんの遠距攻撃離術式と俺の防御術式で実際の攻防を行ってみたりと、論議を挟んでその逆を行ってみたりと、いつの間にか18時を回っていた。

 

「ふう、今日はこの辺にしましょ、私の方は結構へとへとなのに、八幡はまだ余力があるみたいね」

 

「まあ、体力と霊気保有量だけは高いですから」

 

「でも、有意義だったし、何より楽しかったわ。八幡とこうして、論議したり、組手したりって。土御門では伝統を重んじるから、思い切ったことが出来ないのよね。私も師匠に比べれば術式や結界術はまだまだだけど」

 

「俺も……その楽しかったです。こうやって論議することが滅多にないんで……勉強にもなるし」

自然と楽しかったという言葉が出た。

今迄は格上の人としか組手をしてこなかったし、術は教えてもらうか、見様見真似で会得するか、自分で書物で調べて特訓してきたが、こうして同じぐらいの実力の人と、がっつり論議したり、試したりという事は初めての体験だった。

 

「そう、八幡も楽しんでくれたんだ」

 

「まあ、そうです」

 

「よかった」

そう言った陽乃さんの笑顔に、俺は不覚にも一瞬ドキっとしてしまった。

 

 

シャワーを浴びた後、道中のレストランで食事をし、陽乃さんに自宅まで送って貰う。

「また、誘うわね。体術の組手しましょう。今度は妙神山の修行の後だから、八幡を参ったと先に言わせちゃうんだから」

 

「わかりました」

 

「あら?意外と素直ね」

 

「いえ、こういうのなら俺もまた、やってもいいかなと……」

 

「いい感じね。そんじゃ、またね。あっそうだ。今度からは・る・のって呼んでね」

陽乃さんはそのまま、俺を自宅前に降ろして、車で走り去って行った。

 




陽乃さんはどうやら攻め口を変えて来たようです。
八幡についても随分と分かってきたのかもしれません。

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