やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


ストーリー的にあまり関係ないお話ですが、ここにいれておこうと。


(127)雪ノ下の研修

 

7月2週目の期末テストが終わった翌日の土曜日。

 

「雪乃さん。先日連絡した通り、今晩、実際の除霊に立ち会ってもらうわ。現場の除霊の手続きを見ておいた方が、報告書作成や緊急時のGS協会への連絡の仕方も理解しやすいでしょう」

美神さんは所長席前に立つ雪ノ下にそう指示を出す。

美神さんの横に立つキヌさんは微笑み湛えていた。

 

「わ、わかりました」

雪ノ下は若干緊張気味に返事をする。

 

「まあ、そう緊張しなくていいわ。立ち会ってもらう案件は難易度も低いし、念のために貴方のガードにはタマモとシロがついてくれるわ」

 

「雪乃、安心していいわ」

「雪乃殿、シロに任せるでござる」

雪ノ下の後ろに控えていたタマモとシロが雪ノ下に声を掛ける。

 

「比企谷君、しっかり現場研修してあげなさい。あんたも一人前のBランクのゴーストスイーパーなのよ。いいわね」

 

「了解です」

俺も雪ノ下の後ろから、美神さんに向けて返事をする。

 

 

事務机で雪ノ下と事前打ち合わせを行い、依頼内容を読み上げる。

「今日の依頼はDランクだな。直接依頼分で、美神さんが依頼交渉を行った案件だ。報酬は1180万税別だ。場所はデジャブーランドって、得意先か。6月下旬からオープンしたプールブースの流れるプールで遊戯中に水中で来客の女性の水着が剥ぎ取られる事件が続発。剥ぎ取られた水着は何者かによって、翌日の朝にプールサイドに規則正しく並べられてるのが発見される。しかもすべて白いビキニだそうだ。盗難事件ともしがたいが、徐々に頻度が高まりここ数日は毎日被害が起こっている。防犯カメラ等の検証の結果、人の手によるものでは無いと判断と……」

なにこれ?デジャブーランドってこんなの多くないか?

ほぼ、変質者の類じゃねーか。

まさか、これ横島師匠の仕業じゃないだろうな。

 

「なるほど。この依頼内容をGS協会のガイドラインによる判断基準と照らし合わせ難易度Dランクと言う事なのね。これでGS協会に依頼内容ごとFAXかメールで送信と言うわけね」

雪ノ下がメモを取りながら、確認し頷いていた。

 

俺はそれに補足説明を足す。

「まあ、こちらでランク付けしないでGS協会に依頼内容をそのまま送っても問題ない。向こうで難易度のランク付けしてくれる。そっちの方が楽だ。それに美神令子除霊事務所の場合、全ランクの仕事が出来るため本来の意味はないが、規則は規則だ。緊急案件以外はこうして受けた依頼はGS協会に報告する義務がある。これはGSが自分の実力以上の依頼を受けないようにという目的があり、GSが国に認証された仕事を行っているという証明にもなる。もし何らかの不測の事態に陥っても対処できるようにバックアップするという目的もある」

 

「GS自身の保護と除霊現場周囲の保護、依頼者及び依頼案件の保護という名目ね」

雪ノ下は俺の説明にも頷く。

まあ、この辺の事は雪ノ下の事だから説明しなくても理解してるだろうが、一応形式的にな。

 

「あと、シロとタマモの除霊同行申請書も出しておくと、この二人は特殊な立場だ。協力者という立場なんだ。あまり一般的じゃない。一応曖昧には規約に乗ってるが、今はこの形で通してる」

シロとタマモは召喚獣や使い魔などとは全く違う扱いだ。飽くまでも人間に対しての協力者。人間と同等の立場でなくてはならないからだ。一応美神さんやオカルトGメンの保護下ではあるが……

 

「確かに表現が曖昧だったわ。協力者という項目だったわね」

流石は雪ノ下、そんな所もちゃんとチェック入れていたんだな。

 

俺は今度は美神令子除霊事務所としての内々の説明をする。

「依頼料1180万という事は、使える消耗品類と現地の物損は380万以内に抑えたいところだ。うちの事務所では大まかに依頼料の3分の1に消耗品類と物損を抑える事に暗黙の了解でそうなってる。……アレだ。美神さんの機嫌次第ってのもあるが、これだったら間違いなく美神さんが納得してくれるという割合だからだ。本来もっと使っても儲けは出るけどな……」

後半は小声で雪ノ下に説明した。

 

「……心に留めておくわ」

 

しかし、横島師匠が出張中で良かった。

プール案件とか、絶対暴走するパターンだ。

 

装備の準備にも雪ノ下は立ち合い、その後出発する。

俺一人だったら電車で行くのだろうが、4人居るし、タクシーで行くことにした。

 

デジャブーランドの従業員入口に到着する。

「デジャブーランドは得意先だし、年に何回か除霊を行ってる。こういう場所は霊やら妖怪は集まりやすいのは確かだが、ちょっと多いよな」

 

「確か、タマモさんと初めて会った時もそうだったわね」

去年の11月だったか、シロとタマモと雪ノ下と由比ヶ浜に小町と出かけたっけか。

 

「……先ずは従業員入口で、外来業者受付を済まし、担当者がいる場合は、担当者と打ち合わせだ。その際必ず、GS免許を見せる必要がある」

俺は雪ノ下に説明しながら従業員入口で受付書類を書いて、守衛の人に渡し、担当者の課長さんに取り次いでもらう。

 

担当者と待合室で打ち合わせに入る。

「美神令子除霊事務所の比企谷です。後の3人は同行者です」

俺はGS免許を開示しながら担当課長と挨拶をする。

それに習って、3人とも挨拶する。

 

「比企谷君また悪いね。シロくんとタマモくんも、えーっと君は新人さんかい?また若いね」

毎回この課長さんが担当してくれていた。

 

担当課長さんと改めて依頼内容の確認と被害状況、セキュリティや鍵等の打ち合わせをした後に、現場に向かう。

 

 

 

今は夜の9時だ。

 

俺は閉館し誰も居ない真っ暗なプールサイドに一人で立ち、俺から少し離れた場所で雪ノ下とシロとタマモが待機している。

 

そろそろか………

場の霊圧が少々上がり始める。

すると、どこからか何かを数える男の声がする。

『1枚…2枚…3枚………』

 

ぼうっと男のシルエットがその声の場所から浮き上がる。

まだ存在が弱いが悪霊だ。

 

だが、

『1枚…2枚…3枚……』

『1枚…2枚…3枚…4枚…』

『1枚…2枚…3枚…4枚…5枚……』

プールサイドのあちらこちらから、何かを数える声が聞こえだした。

 

なっ!?

存在は弱いが結構な数の悪霊だ。

なんだ?確かにこのプールに立った時、雑霊が結構集まってるとは感じていたが……悪霊は一体だけのだったはずだ。

 

いや、悪霊が外から次々とここに集まって来ている。

どういうことだ?

何時ものあの感じだと嫉妬悪霊か嫉妬妖怪が水着を盗んで、盗んだ水着をさらしていたと思っていたのだが……。

 

俺はシロとタマモにアイコンタクトを取り、プールサイドから一旦下がり、中の様子を伺う事にする。

シロとタマモが雪ノ下のガードについて来てくれてよかった。

 

 

物陰から悪霊が集まってるプールサイドを俺達は伺う。

どうやら、悪霊はもう来ないようだが、30体位集まってるな。

「比企谷君、どんな感じかしら?私にはよく見えないわ」

隣で同じく様子を伺ってる雪ノ下が俺に訪ねる。

 

「霊視ゴーグルを使ってみて見ろ」

 

「わかったわ……うっ…黒っぽい人影が集まってるわ」

雪ノ下は霊視ゴーグル越しにプールサイドを覗き見る。

ちょっとは怖がってはいるが、前みたいに怯えていないだけ随分とマシになった。

 

「ああ、悪霊には違いないが、存在が随分と弱い。悪霊になったばかりの集団ってところか」

 

「八幡殿、結構な数の悪霊が集まったでござるが大したことないでござる」

「数はいるけど、大したことないから、八幡が全部除霊しちゃったら」

「いや、集まった理由が分からない。何か原因になるものは感知出来なかった。ここで除霊してもまた集まって来る可能性がある。だからちょっと様子見だ」

シロとタマモの言う通り、全く問題ないレベルではあるが、プロとして、後の事も考える必要がある。

 

 

するとプールサイドでは……

『第一回、水着性悪女撲滅の集いのオフ会を始めます』

『パフパフ、ドンドン』

『先ずは、ディスティニーシーランドの霊さんから』

『はい、僕は許せなかった。あんな破廉恥な水着を着てる癖に、お高く留まって、僕を何度も何度もフルなんて!!そう!!僕は性悪女の水着を上半期に23枚剥ぎ取ってやりました!!』

『おお!!素晴らしい戦果です。次は豊島遊遊市民プールの霊さん!!』

『おう!親子で来てる癖に!人妻の癖にあんな破廉恥な水着を着て、俺を誘惑しやがって!挙句の果てには夫がいるからとか!それじゃそんな水着姿を人前でさらすんじゃねーーーー!!夫の前だけにしろや!!淫乱人妻女の水着を上半期、15枚剥ぎ取ってやったわ!!』

『ディスティニーシーランドの霊さんには及びませんでしたが、こちらも中々、次はこの場を提供してくれましたデジャブーランドの霊さん』

『ふむ。白のビキニ!昔は良かった。透ける素材が多かったのだ!だが今は昔の話!!素材が良くなり、透けるなんて事は無いのだ!!無念!!無念過ぎる!!この腹いせに我は33枚の白のビキニを剥ぎ取ってやったわ!!うわはっはーーー!!』

 

 

 

「比企谷君、悪霊たちは何やら会話をしてる様だけど、私には聞こえないわ。何て言ってるのかしら」

雪ノ下は霊視ゴーグルでその様子を見ながら、純粋に自らの疑問を俺に聞いてきた。

俺は何て応えればいいんだ?このバカげた会話をどう伝えたらいいんだ?

そもそもあいつらは悪霊の癖にオフ会って、しかもあいつらは都内のプールから集まって来たのか?こんなくだらない事で。

 

「……………」

俺は黙って奴らの元に歩いて行く。

 

 

『おおニューフェイス来た!!これはこれはその目、わかりますよ。ゾンビにまでなって無念を晴らそうそしてらっしゃるのですね。感服です。さて貴方はどこのプール、いや、あなたほどの方ならば、ビーチではないですか!!』

『おお、すげー生ゾンビだ。俺初めて見た』

『ゾンビ!ゾンビ!ゾンビ!』

『これでこの会も箔が付く!』

『では、ゾンビさんには存分に語ってもらいましょう!!これは期待が持てますよ!!』

ゾンビか……もうそれも慣れた。いちいち突っ込み気にもならない。

 

「…………悪霊退散」

俺はその悪霊共が集まる空間に10万の札を5枚飛ばし、悪霊退散用の術式結界形成、発動させ、悪霊共を一網打尽にし一気にダメージを与える。

 

『ぞ、ゾンビさん何を!?』

『うわーーっ、スケスケビキニーーー!!』

『ゾンビが裏切った!?』

 

「悪霊吸引」

術式結界でダメージを喰らった悪霊共32体を一気に吸引し、封印を施す。

 

 

そして、雪ノ下達の元に戻る。

「八幡殿、またゾンビに間違われたでござるか」

「八幡、そう言う事も有るわよ」

シロには不憫そうに、タマモには慰められる始末。

 

「どう言ったらいいのかしら。その、あなたも大変ね」

雪ノ下は俺から目をそらし、声を掛ける。

その微妙な言い回しやめてもらえませんか?そっちの方が傷つくんですが。

どうやら雪ノ下は、悪霊共の会話をシロかタマモに聞いていたようだ。

 

「……まあ、そうだな。これで仕事は終了だ」

 

 

雪ノ下はデジャブーランドから出た後、タクシーを待ってる間に質問をしてくる。

「比企谷君。報告書にはどう書いたらいいのかしら?」

 

「……そのまま書いたらいいんじゃないか?」

まあ、アレだ。俺をゾンビやら泥田坊だとかアザゼルとかに間違えて、勝手に消滅されるよりは、ずっとましだ。

あれこそ報告書にどう書いたらいいのかわからない。

一応今まで、GS協会向けには交渉術や言霊除霊術で退散と記載していた。

そうだろ、これしか書きようが無いだろ?

 

こうして雪ノ下の現場での実地研修は終わる。

 

今回の依頼で、雪ノ下が作成した報告書の総論には……

【当初に想定した悪霊の数よりも多数存在。原因は嫉妬による悪霊発生。各地に発生した嫉妬による悪霊が集い集団を形成する。集まった原因は当現場で発生した悪霊が力をつけ、同種の悪霊を呼び寄せたためと推測する。悪霊の数32体。結界術と封印術を使用し悪霊を封印に成功し依頼を完了する。当現場の物損等は皆無】

とあった。

 

流石にゾンビに間違わられたとかは書いてないか、まあ、書く意味がないよな。

今は、いつもより気を使ってくれる雪ノ下の心遣いが、痛い。

 





この章はこれで終わりです。
次章は何時もよりもシリアスです。

127話段階で八幡恋人チキンレースで有利なのは誰?

  • 雪ノ下雪乃
  • 雪ノ下陽乃
  • 由比ヶ浜結衣
  • 川崎沙希
  • 鶴見留美

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