やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

130 / 187
感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

今回は繋ぎ回って感じです。


(130)異界の門とオーク

グラウンドの端にある野球のバックネットの前に、異界の門が開きオークがその空間の裂け目から次から次へと現れる。

 

最初に現れた5体は倒したものの、今も俺の目の前では異界の門から一体づつオークが現れ続けている。

異界の門からどれだけのオークが現れるのか見当もつかない。オークだけじゃない、他の魔獣も現れるかもしれない。悪魔や最悪、魔族なんてものが現れたのなら絶望的だ。

 

 

その前に、あの異界の門を如何にかしなくては……

 

俺は異界の門と現れた10体のオークを見据え、霊体ボウガンを構える。

 

しかし、根本的な問題がある。

異界の門を止める方法は全くわからない。

以前、某私立大学で異界の門の出来損ないの空間の割れ目には、鏡を使った複雑で高度な術式が直ぐ近くに存在していた。

だが、今目の前にある異界の門を形成するために必要で有るはずの術式は俺の霊視でも感知範囲には見当たらない。

恐らくは、この学校を囲う巨大な六芒星結界と同じく、遠距離から何らかの方法を使ってこの場所に形成してるのだろう。

それに、オークが現れ続ける現状下で悠長に調べる時間など無い。

 

異界の門自体はどうにもならないが、異界の門を囲い込むように結界を張り、オーク共の出現を阻止できないものだろうか。

異界の門は魔界とこっち側の世界をつなぐトンネルのような物だと魔鈴さんは言っていた。そのトンネルの出口である空間の裂け目ギリギリに壁のような分厚い結界を張れば、オークも出ようにも出られないだろう。

オークの出現さえ抑えられれば、とりあえずの脅威は収める事が出来る。

 

それにまだオークは10体程度だ。今だったら一気にオーク共を片付けて、結界を張る事が出来る。

 

一気に行く。

俺は霊体ボウガンを構え、1体に狙いを定め、遠距離から射貫く。

爆破の破魔札を巻いた銀の矢はオークの額に突き刺さり、頭を吹き飛ばす。

 

その様子に気が付いたオーク共は、俺を見つけこっちに向かってくる。

俺は霊体ボウガンに銀の矢を装填し、2体、3体と狙い撃ち、オーク共の頭部を破壊する。

残り7体。

 

俺は既に、オーク共が向かってくる進路上の地面に5枚の札を投げ置いていた。

「結界!」

向かってくるオークが5枚の札の間に踏み入れた瞬間に結界を発動させる。

札による簡易結界、五芒星結界術式によって残りの7体のうち5体のオークを結界に閉じ込める事に成功する。

五芒星結界術式が完成しオークを閉じ込めると同時に、オーク共を閉じ込めた結界に向かって素早く走り込む。

俺は言霊に印を乗せ、五芒星結界術式に攻撃退魔術式を追加させ、閉じ込めたオークに対悪魔、魔獣用の攻撃術を仕掛けた。

5体のオークは結界術式の中で全身から煙を上げ激しく苦しむ。

しばらくすれば事切れるだろう。

残りは2体。

 

俺は直ぐに結界術式から飛びのく。

残りの2体のオークが俺に向かってこん棒を振り下ろしてきたのだ。

オークのこん棒は空を切り、地面を叩く。

俺は着地と同時に2体のオークの後ろに素早く回り込み、地面を蹴って飛び上がる。

右手に持ち替えた神通棍で2体のオーク頭部を続けざまに打ち付け、霊力放電により頭部の内部を破壊する。

これで10体だ。

 

俺はさらに加速して、一気に結界へと迫ろうとするが、既に2体のオークが異界の門から出現していた。

霊力放電をさせた神通棍を奥の1体のオークの頭部に投げつけ、手前のもう1体のオークを左手に展開させた霊波刀で、頭部をすれ違いざまに切り落とす。

 

異界の門に到達し、空間の割れ目からでようとするオークも霊波刀で切り捨てながら、空いた右手で札を5枚を異界の門の周囲に投げおく。

「結界!」

五芒星結界術式を発動させ、異界の門縦3メートル横2.5メートル程の裂け目ギリギリに結界を発現させた。

 

よし、上手くいった。

 

俺はさらに結界を強化させようと、結界周囲の地面に術式陣を書こうと霊灰を取り出そうとしたが、今張ったばかりの五芒星結界術式の結界が突如として崩壊した。

 

なっ!?

なぜ!?

俺は結界廻りを霊視で注視する。

 

そう言う事か!異界の門の周りの空間が歪んでる影響で、札の配置が五芒星の五角形の星の形に維持できずに結界が解けてしまっていた。

そう簡単に上手く行かないってことか……。

 

空間の歪みが邪魔で、異界の門ギリギリに結界を張る事が出来ないぞ。

どうする?

いや、空間が歪んでる範囲ごと大きく結界を張ってしまえばいい、多少オークが出てこようが、Cランクのオークが暴れても破れない程の強度の高い結界を張れば問題ない。

 

ただ、今の俺の装備では、広範囲かつ強度がそれなりに高い結界を簡易に張る事は出来ない。

事務所の装備だったら可能だが、俺個人の持ち物では札にしろ、霊具にしろ、安価で効果が低い物しかない。

 

……いや、あれだったら何とかなるかもしれない。

何れにしろ一度、体育館に装備を取りに戻る必要がある。

体育館に戻ったその間にもオークは異界の門から次から次にと現れるだろう。

現れたオークを一体一体倒していくのも手だが、どれぐらいの数が現れるのかも予想がつかない。それこそ100体以上、いや無尽蔵に現れるかもしれない。

何れにしろ、どこかでじり貧になる。

それに、何者かの仕掛けがこの異界の門だけであるという保証はどこにもない。

他の罠や仕掛けがあったとしてもおかしくない。

霊力や体力が残ってる間に、早めに異界の門を何とかする方が良いだろう。

 

俺は体育館へ戻る事に決める。

戻りながら、通信札で川崎に、呪縛ロープと赤いスポーツバックと銀の矢起爆符の破魔札を巻いて用意してくれるように頼む。

体育館の屋上にジャンプし、屋上の非常用ハッチの前に膝を突くと、ちょうど非常用ハッチが開き、川崎が頭を出す。

「何かあったのかい?」

 

「ああ、ちょっとな」

 

「呪縛ロープと赤いスポーツバッグは持ってきたよ。銀の矢は今用意してるからちょっとだけ待って」

「助かる」

川崎は10m巻きの呪縛ロープと赤いスポーツバッグを俺に渡し、ハッチから頭を下げ戻って行った。

 

次に由比ヶ浜が非常用ハッチから頭を出す。

「ヒッキー、大丈夫?飲み物はい」

 

「ありがとな。皆の様子はどうだ?」

 

「うん。みんな落ち着いてるよ」

 

「そうか……」

まだ、大丈夫だな。

オークの叫び声や爆破の音まではまだ体育館の中までは届いてないか。

運動場のバックネット付近と体育館は大分と離れてるからな。

ただ、体育館近くまで迫られるとそうはいかないだろう。

 

俺は赤いスポーツバッグから、札を取り出す。

これは俺が最近自作した札だ。文献を見て見様見真似で作ってみた試作品もいい所の物だが、ちゃんと効果があれば、そこそこ大きさの結界が張れる。

更に、自作の土石結界と風陣結界起動術式が練り込まれた札の束も取り出す。

A4の和紙に術式を施し、札状に織り込んだものだ。24枚で一つの術式となる。

これも試作段階のもので、平面的な術式しか施していないため、こんな数になる。

紙で出来た破魔札などは、特殊な和紙を織り込んで出来ている。

高価な札は、織り込みにより術式が重なり合い、立体的な術式構造をとっていたりするが、今の俺じゃ、そんな高度な事は出来ない。

俺が出来るのは平面で書いた術式を小分けして、関連付けさせ巨大な術式に落とし込むこと程度だ。それもうまく起動できるかはやってみないと分からない。

だが、異界の門を広範囲に囲むように結界を張れるとすれば、今はこの自作の試作品を使うしかない。

 

仮にうまく結界が発動して異界の門を囲ったとしても、耐久性や持続性等の問題もあるかもしれないが、それは後で考えるしかない。

 

由比ヶ浜が下がり、今度は雪ノ下が非常用ハッチから頭を出す。

「破魔札を巻いた銀の矢、18本で全部よ」

 

「助かる」

俺は雪ノ下から、体育シューズを入れるようなポーチを受け取り、そこから破魔札を巻いた銀の矢を取り出し、リュックサックにしまい込む。

 

「何かあったのね」

「ああ、まだ大丈夫だ」

「……無理はしないでと言っても、貴方は………」

「……爆破やうめき声なんてものが聞こえたとしても、何とか生徒達を落ち着かせてくれるように先生に言っておいてくれ」

「………わかったわ。でも………」

雪ノ下は心配そうな顔を俺に向ける。

 

「そんじゃ、行ってくる」

霊具の補充を済ませた俺は、雪ノ下にそう言って、体育館の屋上から運動場へと急ぐ。

俺の霊視や気配察知では、異界の門から現れたオーク共は俺が体育館に装備を整えている間、あまり移動せずに異界の門がある運動場のバックネット付近に留まっているようだ。

 

体育館の屋上の端に立ち、運動場の様子を見渡し目で確認する。

霊視や気配通り、異界の門から、それ程離れていない場所で屯していた。

30体近くはいるな。

ちょっと骨が折れるが何とかなるだろう。

 

それにオーク共は何かに従って動いているようには見えない。

統率が取れていないようだ。

さっきの様子を見るに、目に入った人間の俺を襲ってくるだけの様だった。

そういえば、オークの群れを統率するのはその上位種のハイ・オークだと文献に書いてあったな。30体の群れに対し1体のハイ・オークが統率するともあった。

そのハイ・オークが居ないから、統率が取れないのかもしれないな。

それとだ。ハイ・オークがここに現れないという事は、あの異界の門の大きさでは、Bランク相当のハイ・オークは魔界とやらから通ってこれないという事なのかもしれない。

流石にハイ・オークが多量に現れればやばかったな。

 

ちょっと待てよ。

………あのオーク共、何をやってる?

俺は屯するオーク共を注視する。

 

っ!?

俺はとんでもない光景を目の当たりにする。

……仲間の死骸を食ってやがる!

俺が倒したオークの死骸をだ。

悪食とはよく言ったものだ。

そこにある生命を根こそぎ食ってしまい、襲われた町は死体すら残らないと文献あったが同族の死骸もか……。

 

 

 

そのうちの1体のオークが雄たけびを上げると同時に、体が二回り程大きく変化した。

ハイ・オークに進化したのか!?

 

その体が二回り程大きく変化したオークからは、この前戦った安田の成れの果てと同じ力を感じる。

間違いないハイ・オークだ。

 

くそっ!

現れたオークがハイ・オークに進化するなんてな。

予想外もいい所だ。

早く決着をつけないと、不利になる一方だ。

 

俺は意を決して、体育館からグラウンドへ飛び降り、オーク共に突っ込んでいく。

 





次回から、話が動きます

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。