やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
漸く、学校襲撃編も終わりが見えてきました。
「魔獣を操り、非合法な手段で学校の平和を脅かし、あまつさえ俺の妹を人質にとり、生徒の命を奪おうとした所業はもはや悪魔とかわらん。ゴーストスイーパー比企谷八幡がお前を倒す」
俺は通信札越しに稲葉にそう宣言し、札をその場に投げ捨てる。
もう奴とは話す必要もない。
小町は奪還し、ドクターとマリアさんという心強い援軍も来た。
異界の門はドクターが何とかしてくれるだろう。
総武高校敷地全体を覆う強力な結界も、ドクターが何とか出来る事は確実だ。
ドクターがどうやってやったのかわからないが、空にはぽっかりとあの結界に大穴が開けて、堂々と上空から入って来たからな。
後は、オーク共を倒し、稲葉を捕まえるだけだ。
俺は、10m程前でオークやオーク・ジェネラルにけん制攻撃を加えてくれてるマリアさんの下に向かう。
すでに、マリアさんの近未来的(スパロボ)な近代兵器攻撃でオーク共は半数まで数を落としている。
「マリアさん、ありがとうございます。あの稲葉って男の周りとそこの後方に下がってく1体のハイ・オークは元人間なんです」
「了解・しました・攻撃対象から・除外します」
マリアさんは俺の意図を察してくれて、そう言ってくれる。
マリアさんは何だかんだと優しい人だ。アンドロイドで、表情が硬いし、言葉も堅いんだが、俺の周りの方々の中で3本の指に入るいい人だ。
キヌさん、唐巣神父、マリアさんと。
小竜姫様はリアル神様だから除外するとして、この業界の人は殆ど性格に一癖も二癖もあるとんでもない人で構成されているからな。
「助かります」
「マリアが・ここを・引き受けます・ヒッキーさん・先に・あの犯人の所に・行ってください・後で・合流します」
「……わかりました」
俺は一瞬、マリアさん一人にオーク・ジェネラルとオーク共を任せていい物だろうかなどと考えがよぎったが、心配など無用だろう。
こうしてる間にもマリアさんのオーク殲滅は続いている。
オーク共の攻撃なんて、避けもせずに喰らってるけど、ものともしないし、逆にこん棒を振るってくるオークをパンチや蹴りだけで、頭を正確に吹き飛ばしてる。
オーク・ジェネラルのとんでもなく重いだろうこん棒攻撃も難なく素手で受け止めるし……。
俺なんかよりも間違いなく強い。
もう既にマリアさんの前には、オーク・ジェネラルと数体のオークしか立っていない。
俺は稲葉の元へ素早く飛び跳ねるように移動する。
オークジェネラルのうめき声やら叫び声が後ろから聞こえてくる。
稲葉は元GSの先輩だった4体のハイ・オークに囲まれながら、校門の方へ向かっていた。
逃げるつもりか?
いい判断だが、もう遅いんだよ。
俺は、稲葉の退路を阻むように、前に回り込む。
「逃がすわけ無いだろ」
「くそっ!何なんだ何なんだよ!お前もあの女も!ドクター・カオスが居るなんて聞いてない!!」
「痛い目にあう前に降参しろ」
俺は稲葉に低い声で凄む。
「ふん、のこのこ前に出て来て何様のつもり?札や霊具が無い君なんて、脅威にならない。僕はこの場は引くが、リベンジに必ず来る。それとも君にこのハイ・オーク共を他のオーク共と同じように殺して僕を捕まえて見せる?元人間の成れの果てのこいつ等を、君に倒せるかい?僕は君を殺せるけどね。せめて君だけでも殺しておくか、比企谷八幡!」
「………あんたはもう俺の間合いなんだよ」
稲葉やハイ・オーク共は既に俺の霊視空間結界の15m半径内に入っていた。
俺はダーク・アンド・ダーククラウドでハイ・オークに囲まれてる稲葉だけを包み込み、瞬間移動させ、俺の目の前にダーク・アンド・ダーククラウドで包み拘束状態の稲葉を出現させる。
「な、何が起きた!?」
稲葉が驚きの表情を浮かべてる間に、俺はダーク・アンド・ダーククラウドに稲葉の懐をまさぐらせて、封印筒を奪う。
封印筒は6つあった。
4つは空だったが、後2つにもオークか魔獣が入っているのだろう。それこそ稲葉の奥の手だったのかもしれんが………。
「な、なな!?こ、こんなことが?」
俺は4つの空の封印筒をハイ・オーク共に向け、言霊を紡ぐ。
「戻れ」
すると4体のハイ・オーク共は一気にこの小さな封印筒にそれぞれが吸い込まれていく。
既に封印筒にリンクし登録された魔獣などは、再封印は容易だ。
使役する魔獣を出し入れを容易にしないと、戦闘には役に立たないからな。
難しいのは一番最初だ。
魔獣を捕まえ屈服させ、専用の術式陣か魔法陣で捕らえないといけないからな。
「あんたの負けだ稲葉」
「くそっ!僕を離せ!ぼ、僕をどうする気だ!僕に手出しして見ろ、異常を感知してこの結界が解けるぞ!オーク共が街に繰り出して、街の人間を襲うぞ!」
稲葉はダーク・アンド・ダーククラウドに拘束されたまま、精いっぱいの虚勢を張る。
「あー、それは手遅れかもな。異界の門は消えたぞ。そんで、あそこ見ろよ。オーク共は一匹残らず全滅だ」
俺はグラウンドの方へ指さして、稲葉にも見えるように顔を向けてやる。
異界の門は完全に消えさり、異界の門があった場所の前で。ドクター・カオスがなんか奇声を上げていた。
たぶん「ああ、消えてしまった!せっかくのサンプルが!?手順を間違えてしまったかいのう?まだまだ調べたりんかったのにっ!」こんな感じだろう。
まあ、消えてしまったのだから、良しとしよう。異界の門が大きくなっていたら最悪だったが……。
で、オーク・ジェネラルの方は……マリアさんのロケットアームがオーク・ジェネラルの頭を掴み、しかも高出力の電撃だろうか?それがロケットアームから流れ出しオーク・ジェネラルの頭から体全体へと感電放電させながら、煙を上げていた。
丸焦げとなったオーク・ジェネラルは仰向けに倒れる。
うーん。めちゃくちゃ強い。
ロケットアーム・マリア・コレダーとか中二病的な必殺技の名前がつい脳裏によぎった。
「なっ?ば、ばかな!?」
稲葉は目を丸くし驚く。
「お前はお終いだ。オカルトGメンに連行する」
「く……君は何も分かってない!この欺瞞に満ちた世界を!あいつらは人を騙し、嘘で作り上げたのが今のありようだ!それを正すために僕はこうやって、正義のために戦ってるんだ!!」
「あんたが振りかざす正義がどんな大層なものなのかは知らんが、学校の連中や小町に手を出した段階で、お前は俺の敵だ。ただそれだけだ」
「くっ……くくくくくくっ、比企谷八幡、良く聞け。お前らはこれから地獄を見る。僕らの正義は僕が倒れたとしても、続いて行くさ……僕の目でこの学校の連中とお前の苦しむ様を見れないのが残念だけどね」
「あんた、その年になっても中二病か?ちょっと眠ってもらうぞ」
俺はそう言って、稲葉に直接霊気を送り、気絶させる。
そうすると稲葉が言った通り、学校をすっぽりと囲んでいた六芒星の大結界は解けていく。
「終わったか………」
俺はマリアさんの下に歩き出しながら、総武高校全体を霊視するとともに、グラウンドを見渡す。
もう魔獣などはいないな。
グラウンドは……グラウンドは全体的に穴だらけのめちゃくちゃになってるし、オークの死骸がそこら中に転がってる。
はぁ、流石にこれはグロテスクすぎだろ。これは生徒達に見せられないな。慣れてる俺でもこの光景は流石に引く。
まあ、あの戦闘でこの程度で済んだのは幸いか。
それと体育館は全くの無傷だし、生徒達は全員無事だろう。
「ヒッキーさん・敵の反応なし・脅威は・去りました・その人・マリアが拘束します」
「助かりましたマリアさん……稲葉をですか?」
「ヒッキーさんは・結衣さんの・ところに行って・上げて・ください。きっと・心配してます」
「……わかりました。ありがとうございます」
俺はマリアさんに礼を言いながらダーク・アンド・ダーククラウドで拘束してる意識の無い稲葉を、マリアさんの前に降ろす。
すると、マリアさんは右手を構え、指から捕縛用と思われる電磁ネットが展開され、稲葉を網の目のような電磁結界が覆う。
これ、マジ凄いんだが、呪術的な結界と物理的な拘束構造が組み合わさってる。
科学と魔術の融合って奴じゃないか?
……たぶん、これ正式に発表されてないよな。
しかもこんな難しそうなものを、コンパクトな形で実現できるとは、なんだかんだとドクターは天才だ。
頭のねじはダース単位で吹っ飛んでるが……
「ガリレオよ!わしは大結界を張ったあのトラックを調べに行ってくるぞい!何が出るか楽しみじゃのう!わっはっはっはーーーーっ!!」
噂をすればドクターが俺とマリアさんの方へ土煙を上げながら走って来て、それだけを言って、お使い家事ロボに乗って、校門の外へ出て行った。
礼を言う間も無い。
あのバイタリティーはどこから来るのやら。
ドクターの飽くなき探求心が力の源なのかもしれない。
俺はマリアさんに頭を下げてから、体育館準備室の裏口へと向かう。
「もういや!助けてよー」
由比ヶ浜の嘆きの声が聞こえる。
何かあったか?まさか、稲葉以外に敵が?
いや、そんな気配は全くないぞ。
俺はそっと中の様子を伺う様に、体育準備室の裏口を開ける。
すると、そこには……
「こんな格好、恥ずかしいし、外を歩けないよ」
なんか、全身ピンクのライダースーツ姿のような、特撮のピンクレンジャーが居るんだが………。しかし、胸がはちきれんばかりに大きいぞ。
声からすると由比ヶ浜だが……なに?俺が戦ってる間に、避難で暇を持て余してコスプレ大会でもやってたのか?
「何やってんだ?」
俺は扉を全開に開けて呆れ声で尋ねる。
そこにいた皆は、こっちに振り返るが……何故か一瞬固まって。
「キャーーーっ、ひ、比企谷!ちょ……ちょっと」
川崎は顔を真っ赤にして、普段の態度とは似つかわしくない可愛らしい悲鳴をあげていた。
「ヒッキー!?……なんで!?えええ!?」
ピンクレンジャー姿の由比ヶ浜はこんな感じで。
「せせせせ先輩!?……意外と細マッチョ…たくましい……いえ、セクハラですか!!」
一色は一色で顔を少々赤らめて俺に怒鳴って来るし。
「キャッ…ひ……ひ、比企谷君……その、………横島さんにそんな所まで感化されるのはやめて欲しいわ。でも……」
雪ノ下も顔を真っ赤にして、小さく悲鳴を上げて俯き加減でしどろもどろでこんなこと言ってくる。
「お、お兄ちゃん!」
小町が慌てて、皆に立ち塞がるように俺の前に立つ。
んん?……何この反応?
どういうことだ?
俺?俺か?
俺が何かしたのか?
「お兄ちゃん気がついてないの?……裸だよ」
小町が俺の耳元で囁くようにこういった。
…………
………
……
俺は下を向き、自分の姿を確認する。
「………す、すまん!」
パンツ一丁だった!
さ、最悪だ。
俺は慌てて、体育準備室の裏口から出て行き、扉を閉める。
そ、そういえば、小町が人質になった際に、稲葉の奴に霊具や札や服まで脱ぐように言われて……そのままだった!
なんで俺は気が付かなかったんだ?
ドクターもマリアさんも何故教えてくれなかったんだ?
いやドクターはいいとして、マリアさんは何故?
という事はだ。
かっこよく稲葉に口上を垂れたり、決め台詞を吐いた時も、パン一だったという事だよな。
超恥ずかしいんだが!
それに、あいつらになんて言い訳を言えば?
横島師匠なら、光合成中とか、日光浴とか、このパンツは水着だとか言って、ギャグで誤魔化すだろう。
いや、パンツも脱げた生まれたまんまの姿でも、ノーパン健康法だとかのギャグを飛ばしてくるだろうが……俺には無理だ。
小町がパンツ一丁になった経緯を皆に説明してくれることを願うしかない。
と、とりあえずは着替えだ。
脱いだ制服も札や霊具と共に戦いに巻き込まれてダメになってるだろうし……。
はぁ、教室のロッカーに体操着を取りに行くしかないか……、
最後の最後でしまらないな。
次話でこの章が終わりとなります。
第2部も完結です。
暫く間を開けて再開できればと思ってます。