やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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ご無沙汰しております。
何度か書いては消して、書いては消してを続けていたら、いつの間にやらこんなに時が……。

今回は繋ぎ回ですね。



(140)千葉村に行こう②

千葉村で小学生の林間学校、二泊三日のボランティアに参加。

要するに小学生の監視兼世話係だ。

カレーの作り方を教えたり、森林散策やアスレチックの指導や監視をしたり、キャンプファイヤーなどのイベントの補助をしたりと、結構いろいろある。

総武高校からは顧問の平塚先生と奉仕部の雪ノ下、由比ヶ浜と俺、生徒会から会長の一色と書記の藤沢、そんで奉仕部と生徒会兼任の小町が参加。

何故か男は俺だけ……。

しかも、千葉村に来て早々、陽乃さんと折本と川崎に出くわす。

彼女らは小学校関連からのボランティアだ。

陽乃さんは小学校の自治会後援会枠、折本は小学校のOG枠、川崎は下の弟の保護者という名目だ。

陽乃さんは当然、俺と雪ノ下がこのボランティアに参加することを知って来てる。

折本と川崎はもちろん偶然だろう。

 

だが、正直言って小学校関連のボランティアに知り合いが多くて助かる。

初対面の人達だと、お互い遠慮しがちになりやすいからな。

知り合いがいれば、よけいな気を回さなくてすむ。

 

 

小町と荷物を泊り込むロッジに置きに行く。

二晩寝泊まりするロッジは一棟の最大収容が大人5人で、子供で7~8名って感じだ。

総武高校は男の俺と、女子は平塚先生を含め6名だから、自然と振り分けは俺と小町、後は雪ノ下、由比ヶ浜、一色、藤沢と平塚先生となった。

 

この後、ボランティアと小学校の教職員が集まって打ち合わせをしてから、きちんと体育座りをしてる小学児童たちに、一人一人紹介される。

学級崩壊やら、モンスターペアレンツならずモンスターチルドレンなんてものが横行してるとか、嫌なニュースを目にすることが多いが、ここの児童たちは見た感じそんな事はなさそうだ。

まあ、ゾンビの兄ちゃんだとか目だけ銀さんだとか目がペッパーくんだとかと、無邪気に指さされたりするが、それはデフォルト(いつも通り)だから問題ない。

 

 

そんなこんなで、昼食のカレー作りが始まる。

児童たちは6~7人の班に分かれ、役割分担でカレー作りに励む。

それを俺らボランティアと先生達とで一緒にフォローするって感じだ。

料理が得意な雪ノ下や川崎が居るし、一色も料理が結構得意としてる。勿論小町も料理は得意だ。あと生徒会書記の藤沢も料理が好きだとか言っていた。

特に問題無いだろう。由比ヶ浜以外は……。

しかし意外にも、平塚先生がこの場で大活躍だった。

今年から飯盒炊飯で米を炊くことになったからだ。

平塚先生は飯盒炊飯のやり方を児童達に手際よく教えていく。

相当手慣れた感じだ。

その事をなんとなしに聞いてみたんだが……

「はははははっ、手慣れたものだろう。実はな、学生時代から友人連中とキャンプをよくやってたんだが、この頃は人が集まらなくてな、ここ数年はソロキャンプだ!はははははっ……はっはは……」

先生は最初はテンション高く答えてくれたんだが……なんか、最後は目にうっすら涙が溜まってたんだけど。

たぶん、年を追うごとに友人達は結婚していき、キャンプに一緒に行ける人が徐々に減り、遂には平塚先生だけになったのだろう。

まったく笑えない。

誰か早く先生を嫁に貰ってあげてっ!

俺は何故だか両目から水が溢れそうになる。

 

昼食後は、森林公園内での簡単なオリエンテーリングだ。

小学生達は地図を渡され、地図と木々に取り付けられている目印を頼りに、幾つかのチェックポイントを経由して指定されたゴールを目指すという自然散策を兼ねたゲームだ。

俺達は子供達が迷子にならないように、遊歩道やチェックポイントに立って監視したり、誘導する役目だ。

 

そう言えば、留美と最初に会ったのは、去年の千葉村のキャンプだったな。

オリエンテーリング中もクラスの女子にハブられ、ボッチだったか…。

それを見兼ねた葉山が、どうにかしてあげたいと言い出してだ、俺らを巻き込んで、なんだかんだとお節介を焼き一応その場では解決した様に見えた。

だが、根本は解決しなかった。

結局、次に会った留美はボッチのままだった。

留美の場合はちょっと特殊だ。

クラスメイトを悪霊から助ける為とは言え、霊能者の力をまざまざと見せつけてしまい、完全に異物扱いを受けていたのだ。

小学校の先生すらも扱いに困り、見て見ぬふりをしていたようだ。

それは結局小学校を卒業するまで続いた。

 

 

俺は中学に入ってもそれは変わらないだろうと思っていた。

霊能者の留美には辛い現実が待ってるだろうと……。

だから、霊能者の育成を行っている六道女学院付属中学校の霊能科に入る事を勧めた。

あそこならば、霊能者の卵がわんさかと在籍しているし、普通科の一般生徒からも差別意識どころか、憧れの目で見られる。

親元を離れての寮生活を余儀なくされるが、精神的には随分と楽になるだろう。

 

だが留美は、結局地元の中学校に入学した。

 

確かに、小学校から中学校へと人間環境はがらりと変わる。

小学校までは派手だった奴が、その雰囲気に合わずに目立たなくなったり、逆に小学校までは地味だった奴が、リーダー格になったりという事はよくある事だ。

複数の小学校から子供たちが集まり、個々の小学校独自のローカル文化が融合し、さらに上級生たちが作って来た雰囲気と合わさり、今までの環境とは一味も二味も異なったものになる。

小学校の関係がリセットされる可能性が結構高いのだ。

 

因みに俺は中学で派手なデビューを目指したが、見事に失敗しボッチの道に……、いや、小学生の時のように派手に弄られないだけましだろうか……、時には小学生の言葉のナイフは大人よりも鋭い。

 

俺の事は置いといてだ。

霊能者である留美の場合は余りにも特殊過ぎるため、小学校関係のリセットは困難だと思ったのだが、俺の予想はいい意味で外れ、留美は中学に入り友達も出来たようだ。

 

留美の中学には霊能者に対しても色眼鏡を持っていない子達がそこそこいるようだ。

留美自身は器量も良いし、大人しめではあるが社交性もある。

霊能者であることを除けば、友人関係の構築はスマートに行ける部類の人間だからな。

 

……そういえば、留美を弟子にするってあの美神さんの口約束は有効なのだろうか?

留美のじいさんも、何故か乗り気だったし。

あの美神さんの欲に眩んだ顔は……忘れてると言う事はないだろう。

あの人、金や自分に得になりそうな事は絶対忘れない。

はあ、なんか気が重くなってくるのだが……。

 

 

 

オリエンテーリングを終えた小学生たちは、美術の課題で思い思いの場所で絵を描く。

俺達はその間も子供たちが自然公園内を迷子にならない様に、見張り役に徹した。

その後は夕飯で豚汁を作り、昼に余ったカレーと食べ、夜7時頃に俺達の今日のボランティアはお役御免となった。

 

なんか一色が後で「ボランティアの皆さんで簡単な打ち上げするんで先輩も来てくださいね」って耳打ちしてきた。

俺はなんだかんだと理由をつけて断ろうとしたが、俺の言葉を半分も聞かずに俺の元を離れていく。

流石に女子ばかりの中で男一人は気まずいだろ。

俺の知り合い以外のボランティアの連中も居る中で、男のあんたが何でここに居るのよと、空気読めよな的な目で見られること間違いないだろ。

これが葉山だったら別だろうが…

 

俺はこそっとその場を離れ、一足先にロッジに戻る事にした。

空気を読んで、打ち上げに参加しないを選択したのだ。

だからと言って、ロッジに戻ったところで特にやる事は無い。

……寝る時間には早いし、ちょっと抜けだして山にでも行って、訓練でもするか。

そんな事を思いながら俺と小町が寝泊まりするロッジに戻ると、何故か一色がロッジの前に立っていた。

 

「せーんぱい、なんでロッジに戻ろうとしてるんですか?ちゃんと言いましたよね」

何故か笑顔の一色。

 

「何でいるの?」

先回り?いろはす速くないですかね?こそっと抜け出す前、確かに雪ノ下や由比ヶ浜と話していたよね?

 

「どうせ先輩の事だから、面倒だからって、こっそりロッジに戻るだろうとは思ってました。行きますよ先輩」

俺の行動が読まれてる?……あいつはニュータイプか!?

まあ、大体いつも面倒な事からは逃げてはいるが……。

その面倒ごとを持ってくるのは大概一色だからな。

 

「別に俺は参加しなくてもいいんじゃないか?女子連中だけで盛り上がった方が良いだろ」

「先輩の言い訳は聞く耳持ちません」

「いや俺が行った所でその辺の石ころと変わらん。いや、雰囲気を悪くするまであるから、まだ石ころの方がずっとましだぞ」

「なんですかそれ?ほんと面倒くさいですね先輩は、だったら石ころの様に黙って座っててください。いいから行きますよ」

一色はそう言って俺の腕を強引にとり歩き出すが………

「おい、そっちじゃないぞ一色」

「え~?そうですか?こっちで合ってますよ」

広場やロッジが立ち並ぶ場所から明らかに離れているぞ。

リアルに方向音痴の雪ノ下だったら迷うんだろうが……明らかに違う道だろ?しかも山道に向かってるんですが?

「おい」

「ちょっと回り道です。いいじゃないですか、それとも私と一緒に歩くのは嫌ですか?」

一色は上目遣いで首を傾げあざと可愛い表情を俺に向ける。

毎度そのあざと可愛い表情にちょっと可愛いじゃないかと思ってしまう自分が悔しい。

だが、そのあざとい顔を向けられた後は決まって無理難題を押し付けられるのだ。

一色は懐中電灯で前を照らしだし、俺の腕を取って鬱蒼と木々が生い茂った暗がりの山道を進む。

 

……なにこれ?どこに連れていかれるんだ?

これってもしかして、暗闇に紛れて人知れず始末されるパターンですかね。サスペンス劇場とかでよくある感じの奴。

一色を怒らせるような事はしてないよな?思い当たる節は……結構あるな。

いやいやいや、生徒会の手伝いという名目の一色の私用っぽい何かを断っただけだからね。

……まあ、4回連続だけど。

そんなに怒ってらっしゃるのでしょうか?

 

「どこに連れていかれるのでしょうか?一色さん?」

俺は恐る恐る一色に聞く。

 

「何言ってるんですか、先輩その話し方キモイです」

「いや、そうじゃなくてだ。遠回り過ぎないか?というかどこに行くつもりだ?」

「いいからついて来てください」

 

暫く山道を登ると、鬱蒼とした木々のトンネルを抜け、ひらけた場所にでる。

頭上から星空がうっすらと俺達を照らす。

俺は思わず夜空を見上げると、満天の星空が広がっていた。

 

そんな俺に構わず、一色は俺の腕を引っ張り迷わず真っすぐ進む。

 

よくよく周囲を見渡すと、星空の輝きだけでなく、懐中電灯の光があちらこちらに見える。

どうやら、俺たち以外もここに来る人がそこそこ居るようだ。

 

「一色、皆で星を見に行くのか?」

成る程、一色は打ち上げとは言っていたが、皆で星空を見に行く予定だったのか。

最後まで一色の話をちゃんと聞いて無かったからな。

俺はホッと息を吐く。

まあ、流石に手伝いを断っただけで殺されるわけがないか。

 

確かに結構空気は澄み渡って、星々が近くに見える。

そういえば、千葉村はそこそこ有名な天体観測スポットだったな。

今から行く場所は天体観測に良い場所なのだろう。

 

「ちっ……結構人が来てる。先輩、早く行きますよ」

一色は俺の質問をスルーして、足を速める。

 

 

しかし……

「あら一色さん、比企谷君」

「やっはろー、いろはちゃん」

そこには雪ノ下と由比ヶ浜が懐中電灯片手に待ち構えていた。

やはり打ち上げは、天体観測を皆で行うという話だったのか。

 

「せっ、先輩方……なぜここに?」

一色は眼前に雪ノ下達が現れた事に何故か慌てふためいていた。

ん?どういうことだ?

 

「いろはちゃん。抜け駆けはズルいよ」

「やはり、こんな事だとは思っていたわ」

 

「な、何の事ですか?ちょ、ちょっと先輩に星を見に連れて来てもらっただけです」

一色は動揺しているように見える。

何それ?そんな事は聞いてないんだが、打ち上げで星を皆で見に来たんじゃないのか?

 

「どういう事だ?ボランティアの打ち上げじゃないのか?」

 

「比企谷君、ボランティアの打ち上げは明日、今日は22:00まで自由行動よ」

雪ノ下は少々呆れたような表情で、一色を見据えながら俺に応える。

 

「一色……どういうことだ?」

 

「打ち上げに行くなんて一言も言ってませんよ?先輩にちょっと付き合って貰いたい場所があって、怖いじゃないですか。真っ暗な森の中の山道なんて、私、かよわいんで」

一色はあざとい笑顔を俺に向ける。

確かに、一色は行き場所を言ってなかった。

俺が勝手にボランティアの打ち上げだと勘違いしただけだ。

だったら、星を見に行くために俺をボティーガード扱いでってことか?

 

「だったら最初から星を見に行くんだったらそう言えばいいだろ?」

まあ、言われて行くかは別問題だが……

 

「へっ?……そ、そうかな?」

ん?一色のこの反応?

星を見に行くわけでもないのか?

 

「あなた何も知らずに一色さんに付き合ったのかしら?」

「ヒッキーって結構いろはちゃんに甘いよね」

お二人さん?少々とげのある言い方なんですが?

 

「一色、俺をどこに連れて行くつもりだったんだ?」

しかも、さっきから人がこんな山道を登って来ているんだが……

 

「そ…それはですね。なんというか……あははははっ」

一色は笑って誤魔化す。

 

「比企谷君、行きましょうか……」

「本当はヒッキーを誘って、ゆきのんとあたしとヒッキーで行きたかったんだ」

そう言って雪ノ下と由比ヶ浜は俺の手を引き、歩き出す。

 

「ちょっと、先輩方、私が先に先輩を誘ったんですよ!」

一色はそう言って、後ろから俺のTシャツの裾を掴む。

 

「お、おい」

この先に一体何があるんだ?

いったいどこに連れていかれるんだ?

 





次で千葉村は意外とあっさり終わる予定。
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