やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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ご無沙汰しております。
妄想力と気力が足りず、ズルズルと時間だけが経ってしまいました。

しかも千葉村編を今回で終わらせようとしたのですが、ダメでした><




(141)千葉村に行こう③

千葉村のキャンプ場から一色に連れられるがまま夜の山間に入り、どこかへと向かうのだが、森を抜けたところで由比ヶ浜と雪ノ下に会う。

 

どうやら由比ヶ浜と雪ノ下は元々俺を誘い、そのどこかへ一緒に行くつもりだったようだ。

だが、一色に先に越された事に気が付き、こうして先回りして待ち伏せをしていたと。

 

そのどこかというのが、俺はてっきり天体観測スポットだと思っていたが、どうやら違うらしい。

千葉村は千葉ではそこそこ有名な天体観測スポットだ。

空気は澄み切って、夜空を見上げれば、星々の輝きが近くに感じる。

だが、一色や由比ヶ浜と雪ノ下の様子から目的は天体観測ではないようだ。

 

さらに、こんな辺鄙な場所なのにだ。

俺たち以外にも人が続々とこの小高い山を登り歩いている。

 

星空以外にこの小高い山の上に何があるんだ?

 

 

俺は後をついて行きながら何度か聞いたが、由比ヶ浜と雪ノ下は着いてから話すと、一色にも聞くが何故か不満そうに知らないの一点張りだ。

そもそも一色が俺を連れ出しておいて知らないとかおかしいだろ?

 

暫く歩くと、山の頂上だろう付近に明かりが見える。

しかもそこには結構な人だかりが出来ていた。

 

マジでなんだ?

 

ん?これは霊気……神聖な感じだ。

しかも、小竜姫様に近い霊力も感じる。

この地に神が降臨でもしているのか?

……その周りにもかなり強い霊気がいくつも……どういうことだ?

何かの霊的な儀式?いや、祭事か?

 

 

徐々に人だかりに近づくと、明かりの中心には大きなしめ縄が見える。

神道系の結界陣に似ている、やはり何らかの儀式だろう。

それにその周りの強い霊気はこの儀式を執り行う霊能者なのだろうか?

 

「あっ、もう8時だ。ヒッキーとゆきのん、ここで待ってて、あたしが買ってくるから」

由比ヶ浜はそう言って、慌てて人だかりの中に入って行く。

そういえば、一色の奴はいつの間にか居ないし、どこいった?

 

俺と雪ノ下は人だかりから少し離れた岩場に腰を掛ける。

雪ノ下は見るからに疲れ気味だ。

小高い山と言えども40分も歩けば体力の無い雪ノ下じゃ、こうなるか。

無理してでもここに何をしに来たかったんだ?

「雪ノ下、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?ここに何があるんだ?」

 

「そうね。由比ヶ浜さんとあなたとここに来たかった」

 

「それはさっきも聞いた」

 

「なんて言えばいいのかしら、少し前の私ならば、こんな非科学的な事に関心は無かったのだけど……その……」

雪ノ下は何故かほんのり顔を赤らめ言い淀む。

 

「ゆきのん、ごめん。一人一枚で、しかも本人が行かないとダメなんだって……」

そこに由比ヶ浜は申し訳なさそうにそう言いながら戻って来た。

 

「仕方がないわ。私も行かないと」

雪ノ下は重い腰を上げる。

 

「まだふらついてるぞ、俺が代わりに行こうか?」

雪ノ下は体力も無い上に、人が多い所苦手だからな。

 

「大丈夫よ。本人が行かないといけないようだから……」

雪ノ下は神妙な表情をし、人だかりの中に入って行く。

 

「この先に何があるんだ由比ヶ浜?」

俺は戻って来た由比ヶ浜に聞く。

改めて人だかりを見ると全て女性だ。

周囲に男もちらほら見かけるが、この人だかりの中には居ない。

どういうことだ?女性限定の祭事か?

 

「これ」

由比ヶ浜はそう言って、手に持っている物を俺に見せる。

 

「絵馬か?」

それは絵馬だった。しかもちょっと変わった形だ。櫛型の絵馬だ。

今買って来たものだろう。

 

「うん。これね、恋愛成就の絵馬なんだ。今SNSで噂になってて、年に一度、日本のどこかで稲田姫っていう神様が現れて、恋愛の運気を上げてくれるんだって。ゆきのんと色々と探して、今年の場所はこの山の頂上だろうって、よかった。本当にあって……」

由比ヶ浜は嬉しそうに櫛の型をした絵馬を手元に掲げる。

 

「……稲田姫だって?」

由比ヶ浜、今、稲田姫って言ったな。

確かに、小竜姫様程じゃないが強めの神聖な霊気を感じる。

きっとこの神聖な霊気の主が稲田姫なのだろう。

文献で読んだ事がある。

正式には櫛名田比売命(クシナダヒメノミコト)という女神だ。

あの武神としても名高い素戔嗚尊(スサノオ)の奥さんである。

確かに、年に一度、日本のどこかに降臨されるとか……。

だが、神が降臨するレベルの祭事が公けになるなんてことは殆ど無いはずだ。

それこそ、神道の上層部や国や宮内庁の上層部、GS協会の理事とか位だろう。

だが、こうやって、絵馬が売られているという事は、稲田姫を信仰する神社関連の信者には知れ渡っているという事なのかもしれない。

いや、由比ヶ浜はSNSで噂になってるとか言っていたな。

この人だかりだ。情報がどこからか漏れて、ネット上で噂になっているという事か。

一色もどうやら、この稲田姫の恋愛成就の話をSNSで知って、いつもの如く俺に付き合わせたという事なのだろう。

 

 

「稲田姫の恋愛成就のお守りを持ってると、好きな人と付き合えるようになるの。それとね。この恋愛成就の絵馬にカップルで名前を書くと、ずっと一緒にいられるとか……本当かどうかわからないけど、本当にそうだったらいいね」

確かに由比ヶ浜が買って来た絵馬には霊的な何かが付与されている。

俺の霊視で確認できた。

だが、由比ヶ浜の言うような強制力に似た強力なものじゃない。

精々、運気が少々上がるレベルだ。

それでも、なかなかレアな代物だ。

普通に神社や寺で買うお守りや絵馬に比べると随分と能力は高いだろう。

 

「それでね。ヒッキーにあたしとゆきのんの絵馬に名前を書いてもらいたいなって、ダメかな?」

由比ヶ浜は気恥しそうな笑顔で俺にそう言う。

……なるほど、そ、そう言う事か。

ぼっちの俺には少々ハードルが高い、ここまで思ってくれてる二人の思いを無下には出来ないか。

 

 

しばらくし、雪ノ下が疲れ果てた顔で戻って来る。

 

「ゆきのんどうだった?」

 

「買えなかったわ。限定300枚らしいから」

雪ノ下は絵馬が買えなかったようだ。

結構なご利益がある代物だ流石に数には限りがあるだろうからな。

 

「ええっ!これ、どうしよう……」

 

「由比ヶ浜さんが買ったのだから由比ヶ浜さんが使うべきよ」

 

「じゃあ、こうしよっ」

由比ヶ浜は絵馬に自分の名前を書き、雪ノ下にも書く様に促す。

 

「え?いいのかしら?」

「うん、ゆきのんと一緒がいい」

「ありがとう、由比ヶ浜さん」

そう言って雪ノ下も絵馬に自分の名前を書き……

 

「ヒッキー…名前書いてもらっていいかな?」

「……比企谷君、お願い…しても良いかしら」

由比ヶ浜は若干顔を赤らめながら笑顔で、雪ノ下は恥ずかしそうに視線を下げながら俺に一枚の絵馬を差し出す。

 

「お、俺か……そうか俺だよな……わかった」

俺は二人のそんな仕草にドキドキしながらも、そう答える。

なにこれ?超恥ずかしいんですが?

こんなリア充イベントを体験するなんて事は今迄なかったから、こんなグダグダな返事になってしまったのは許して欲しい。

挙動もおかしいだろうなきっと。

 

俺は二人から差し出された櫛形の恋愛成就のその絵馬を受け取る。

裏側には相合傘の様なマークが施され、傘の右には先ほど書いた2人の名前があった。

俺はその二人の名前を見ながら、傘の左側に俺の名前を書き一枚の絵馬を2人に渡すべく差し出す。

 

「ヒッキー、ありがとう」

「………素直に嬉しいわ」

その一枚の絵馬を2人は片手づつ出し、嬉しそうに受け取った。

 

「いや…そのだ。礼を言われる様な事じゃない……」

こ、これがリア充ということなのだろうか?

照れるというか、恥かしいというか、俺の中で何かが爆発しそうだ。

 

 

そんな時、俺達は後ろから声を掛けられる。

「雪乃ちゃんとガハマちゃんもやっぱり来てたのね」

振り向くとそこには陽乃さんが立っていた。

 

「姉さんも絵馬が目当てかしら?でももう遅いわ。絵馬は売り切れよ。それに丁度、比企谷君に私達の絵馬に名前を書いてもらったところよ」

陽乃さんに対し、少々強気な態度の雪ノ下。

 

 

「雪乃ちゃん、それで勝ったつもりかしら?確かに稲田姫の恋愛成就の理が付与されたお守りや絵馬はご利益が高いわ。でも、所詮はちょっと恋愛運が上がる程度の物。まあ、お守りは恋愛運が1.5倍上昇ってとこかしら?絵馬は2倍、その場で意中の男性と一緒に名前を書くとさらに3倍に上がるって言われてるわね。でもその程度。稲田姫の降臨の真の儀式はこれからよ。これから行われる稲田姫の試練を乗り越えた最初の人物一人には一年間恋愛運が50倍に上昇するご利益を頂けるの……この恋愛成就儀式の試練を乗り越えた人物全員が一年以内に100%意中の人物と結婚出来たのよ!……今年は私が頂くわ。私だったら間違いなく一番にたどり着けるもの。八幡、待っててね」

陽乃さんは雪ノ下と由比ヶ浜に不敵な笑みを浮かべ、最後に俺にニコっとした笑顔を向ける。

 

「……姉さん!」

「陽乃さん!」

 

「そ、その……因みに試練って何ですか?」

 

「ここから更に山奥にある御堂までの競走よ。毎年、西宮恵比寿神社で行われている福男を決める境内を競走する儀式と同じ、それの女性専用の恋愛成就版ね」

陽乃さんは俺の質問に答えてくれる。

なるほど、ここの山道を使った競走、クロスカントリーのようなものらしい。

 

「……そ、そうなんですか」

この絵馬やお守りに群がる女性を余所に、妙に気合いの入ったというか殺気立ってる様な集団があると思ったらそう言う事か、いまから稲田姫の恋愛のご利益を巡って、試練の競走に参加する人達だろう。

しかも、この感じ半数以上が霊能者だよな。

それに、どうも知っている人達に似た霊気の気配も感じるが……まさかな。勘違いだろう。

 

それよりも、明らかな知り合いが居るんですが……

 

「はーっはっはーーー!誰にも負けん!!絶対私が頂く!!」

必死な形相で目を血走らせながら叫んでる、残念臭漂う女性がそこに居た。

まあ、平塚先生だ。

もしかして、これが目当てでこのボランティアに参加したんじゃ……。

そんな残念美人の担任教師の姿に、俺は何故だか目に涙が溜まる。

 

「もうそろそろ時間ね。またね八幡。雪乃ちゃんとガハマちゃんも」

そう言い残して、殺気立つ集団に向かう陽乃さん。

 

俺は陽乃さんの後ろ姿を目で追うが……

あれ?何だかよく知っている人に似てる人が居るんですが?

いやいやいや、あの人がこんな所に来るわけない。

 

だが……。

「ああっ令子ちゃん~、令子ちゃんも来てたの~?よかった~令子ちゃんが居てくれて、私一人だと不安で不安で……」

 

「げっ!冥子!?なんであんたがここに?」

 

「お母さまが行きなさいって無理矢理参加させられたの、クスン」

 

この場に相応しくない煌びやかなドレス姿におっとりとした口調の女性が、俺が良く知る人に似ている女性に声を掛ける。

そう、ドレス姿の女性は六道冥子さん。そして、似てる人でも勘違いでもなく、グラサンをかけた美神さん本人だった。

 

……なんで美神さんがここに?

まさか美神さんが恋愛成就を願いにここに?

いやいやいや、あの美神さんだぞ!恋愛すら金に換算しかねない様な人なんだぞ。

何か別の目的が……仕事かもしれない。

 

 

さらに……

「令子に冥子、おたくらもここに?」

 

「エ、エミ!?あんたまで!?」

「エミちゃん~!嬉しいわ~。みんなで頑張りましょ~」

 

「令子?おたく、どういう風の吹き回しでこんな所に?……ああっ、皆まで言わなくていいわ令子、遂に西条さんに振られたってわけ」

 

「いつ私が振られたって!そんなんじゃないわ!」

 

「ふーん?そういうわけ。未練がましいにもほどがあるわ。まだ想ってたってわけ?横……」

 

「年中発情期のあんたと一緒にしないでくれる!!あんたこそどうせピートに振られたんでしょ!!」

 

「はぁ!?おたく喧嘩売ってるの?ピートは私がいっとう好きなわけ!!」

 

「間違ったわ。最初っから相手にされて無かったわね!!」

 

「ぐぬっ!…ふん、令子いい度胸ね。おたくとの勝負の決着ここで付けさせてもらうわ」

「いいわ。引導を渡してあげるわエミ」

 

美神さんと小笠原エミさんが顔を突き合わせて、睨み合う。

まあ、この二人、顔を合わせればだいたいいつもこんな感じだ。

喧嘩をするほど仲がいいって言うが、その通りだと思う。

何だかんだと、一緒に仕事をすることがあるしな。

 

「二人ともケンカ?……グスん、せっかくみんなで一緒なのに……グスん、ケンカはやめて~!」

その二人の様子に、涙ぐむ六道冥子さん

 

「あっ!め、冥子、な、泣かないっ!ケンカじゃないわ」

「そ、そう、ケンカじゃない」

美神さんと小笠原エミさんはケンカ腰の態度をやめ、慌てて六道冥子さんに取り繕う。

 

「本当に?」

 

「そ、そうよ」

「そうそう」

二人は首を上下させ頷く。

六道冥子さんは美神さんと小笠原エミさんのケンカを止める事が出来る数少ない人だ。

そう、六道冥子さんが泣いたりすると、式神が暴走し暴れ出す。

……相当ヤバいな。あの超強力な十二神将が暴走するとか、街一つ吹っ飛ぶんじゃないか?

あの美神さんと小笠原エミさんが、焦るのもわかる。

 

そして、この三人が集まると、大抵ろくでもない事が起こる。

横島師匠が居れば、何故かその厄災に似たろくでもない事象をその身に全て受けてくれるが……。

今は、横島師匠は例の如く海外出張中だ。

や、やばいな……。

 

バレない様に、こっそりここを抜け出して、雪ノ下と由比ヶ浜、一色を連れて下山した方がいいだろう。

 

「ヒッキー、あれ美神さんだよね」

「美神さんね。声を掛けなくてもいいのかしら?」

由比ヶ浜と雪ノ下も美神さんに気が付いたようだ。

あんだけ騒がしくしていれば、気が付くか。

 

「……俺は何も見ていない。そう言う事にしておいた方がいい。雪ノ下、由比ヶ浜、直ぐに戻るぞ、一色はどこに行った?」

 

「……そうね。あなたがそう言うのならば、従うわ」

雪ノ下は伊達にこの2カ月間、うちの事務所でバイトしていたわけじゃない。

美神さんやその周囲の人達がどういう人たちなのかを、何となくでも理解出来ているのだろう。

 

「ヒッキー、いろはちゃん、あそこにいるよ」

そう言って由比ヶ浜が指さした先には……。

 

一色の奴、いつの間にかあんなところに!?まさか稲田姫の試練に参加するつもりじゃないだろうな!?

 




次でかなり短めで千葉村編終わりです。

早く、シリアスパートに戻りたい。
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