やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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ご無沙汰しております。
漸く書けました。
中々かけなくて、漸く書けました。




(142)千葉村に行こう④

一色の奴、まさか稲田姫の試練に参加するつもりなのか?

 

一色は、平塚先生を筆頭に妙にギラギラと殺気立った女集団の中にいた。

この集団、十中八九稲田姫から恋愛運50倍のご利益を授かるために、試練に挑む人たちだろう。

平塚先生同様、執念のような物を感じる。

因みに稲田姫の試練とは、ここから山中の奥にある御堂まで競走するという物だそうだ。

陽乃さんの話だと、御堂に一番最初にたどり着いた一人が恋愛運50倍のご利益を授かる事が出来るらしい。

見渡す限り、道中には深い森や岩場、激しいアップダウンのある山道等々があり結構険しそうだ。

 

しかも、この試練に挑む集団の半数以上が霊能者だ。

この人たちはある意味家名を背負ってここに来ているのかもしれない。

霊能者の素質は女性の方が高い事は公けでも知られている。

その証拠に日本では霊能者の女性の比率は、Bランクで6割強、Aランクでは7割以上、Sランクに至っては公表されている人は全て女性だ。

優秀な霊能者の男女の比率が女性側に偏っており、優秀な男性霊能者は不足しているのだ。

霊能家は優秀な霊能力者の血筋を残すために、伴侶選びはその家の命運がかかっていると言っても過言ではない。

そんな背景があり、稲田姫の恋愛運のご利益を授かるためにここに来た適齢期の霊能者の女性陣は優秀な伴侶を得るために必死になるのは致し方が無いのかもしれない。

 

まあ、そんな背景など関係なしに、この試練に命を掛ける勢いの人が若干一名。

平塚先生は霊能者じゃないが、迫力だけは、他の女性霊能者にも劣らない、というか勝ってるまである。

 

それにしても陽乃さんだ。

もし、陽乃さんが一番でゴールし稲田姫のご利益とやらを手に入れたのなら、俺はその恋愛運50倍のご利益のために、陽乃さんに心を奪われてしまうのだろうか?

そこには本当に俺の意思という物があるのだろうか?

それが運命だとしても、俺の心情的には遠慮したい。

 

しかしながら、陽乃さんが一番となる可能性は低いだろう。

そう、この試練には日本のゴーストスイーパーのトップランカーが3人も参加するからだ。

1人は式神使いの六道冥子さん。

操る十二神将は美神さんすら恐れる程の超強力な式神なのだ。

六道冥子さん本人はあまりこの試練には乗り気ではなさそうだが、母親の六道会長に言われて、無理矢理参加させられているようだ。

もう1人は小笠原エミさん。

日本屈指の呪いのエキスパート、あの美神さんとやり合えるだけの実力の持ち主だ。

どうやらピートさんを振り向かせたいようだ。

そして、美神さんだ。

言わずとしれた日本最高峰のゴーストスイーパーの一人、女傑美神令子。

ありとあらゆる霊能に精通し、どんな依頼も成し遂げる辣腕ゴーストスイーパーだ。

俺は美神さんがこの場に現れ、恋愛成就の儀式に参加などとは、思いもよらなかった。

恋愛なんて全く興味が無さそうだし、恋よりも金を地で行く人だ。

たぶん、大金がからんだ仕事か何かで来てるのだと思う。

 

まあ、流石の陽乃さんもこの3人にはかなわないだろう。

 

それよりもだ。

この3人が一つの場所に集まっていること自体が危険なのだ。

 

俺は知っている。

この3人が集まると、ろくでもない事しか起きない事を……。

しかもその被害は厄災級のレベルで生じる。

普段は横島師匠が一身に受けるのだが……海外出張で今はこの場に居ない。

 

非常に不味い。

 

 

俺は巻き込まれる前に、雪ノ下達と早々にここから離れて、キャンプ場に戻りたかったのだが、一緒に来たはずの一色が、この稲田姫の試練の参加者の中にいたのだ。

一色の奴は葉山狙いなのだろうが、……こればかりはまずい。

 

一色の奴、このままだと、美神さんのろくでもない事に確実に巻き込まれる!

平塚先生や陽乃さんは何とかなるだろうが、一色はトラウマを植え付けられかねない!

 

 

「雪ノ下と由比ヶ浜、先にキャンプ場に戻ってくれ、俺は一色を連れ戻してくる」

俺は雪ノ下と由比ヶ浜にそう言って、一色を連れ戻しに行こうとするが……。

 

「えー!?ヒッキー、あたしも一緒に行くよ」

由比ヶ浜は着いて来ようとする。

 

「……由比ヶ浜さん、行きましょう」

「え?でも、ゆきのん」

「ここは比企谷君に任せた方が良いわ」

雪ノ下は俺に目配せをしてから、由比ヶ浜を説得してくれる。

正直助かる。

雪ノ下は今の状況を凡そ理解しているようだ。

美神令子除霊事務所で伊達に2カ月間アルバイトしていただけの事はある。

美神さんとその周囲の人たちがどんな連中なのかを……

 

「うん、わかった。ヒッキー直ぐに戻って来てね!」

「先に行くわね」

由比ヶ浜は大きく手を振り、雪ノ下は胸元で小さく手を振って、下山を始める。

 

 

さて……、どうしたものか。

一色を連れ戻すだけならば簡単だが、俺の存在を美神さん達にバレない様にしなくてはならない。

美神さんに俺がここに居るとバレると、さらに厄介な事に巻き込まれること間違いない。

 

俺は霊気と気配を抑え、美神さん達から見えない様に人ごみに紛れ、ゆっくりとした足取りで大回りしながら、一色の方へ向かう。

 

しかし、俺は突然肩を叩かれ、声を掛けられる。

振り向くと……

「あらあらあら~?比企谷君?」

和服姿の六道会長が立っていた。

なぜ、GS協会の会長がここに?

 

「こ、こんばんは」

 

「こんばんは、比企谷君はどうしてここに?」

 

「友人に誘われてお参りに来たんですが、逸れてしまって、今探してるんで……」

俺はそう言って、お辞儀をして、この場を去ろうとするが……。

 

「そっちはダメよ~、今から稲田姫様の儀式が始まるから~」

 

「いや、何かの間違いで連れが稲田姫の儀式に参加してる様なので、引き留めに……」

 

「う~ん。令子ちゃんじゃないわよね~、学校のお友達かしら?」

 

「そうなんです。一般人なんで止めに入らせてください」

 

「大丈夫よ~、近頃は一般の人の参加者も多くなってきたから、一般の部のコースとGSランクD相当以下コースの部も付け加えたの~、稲田姫様も了承してくださって、一般の部とDランク以下の部にも恋愛運20倍の付与してくださるわ~、だから比企谷君のお友達も大丈夫よ~」

六道会長はにこやかに俺に説明してくれる。

そりゃそうか、競争といえ、一般人がどうやっても高レベルな霊能者に勝てるわけがないからな。

妥当な線引きだ。

しかも、話しぶりから六道家がこの祭事を主催している様だ。

 

「そうですか」

まあ、これならば一色が美神さん達に巻きこまれることは無いだろう。

 

「比企谷君、せっかくだからこっちで一緒に観戦しましょうよ」

「いや、俺は……」

「え~、おばさんとは嫌?」

「そういうわけでは」

「いいからいいから~」

俺は六道会長に腕を引っ張られ、抗う事も出来ず強引に高い台に設けられたちょっとした観覧席に連れていかれる。

この人も相当曲者だ。何せあの美神美智恵さんの師匠で、しかも曲者ぞろいの霊能者をまとめるGS協会の会長だしな。

 

すると、拡声器で女性のアナウンスが入る。

『皆さん。今から、稲田姫様の試練の儀を始めます』

 

『簡単にルールを説明します。皆さんにお渡しした地図に書かれた場所に御堂があります。そこまで競走です。森や山野を抜け、一番に御堂の前のご神木に触れた方が、稲田姫様のご利益が授かる事が出来ます。コースの山全体には結界が張っております。結界から出てしまうと失格です。霊能者部門とスペシャルコースには霊能使用は構いませんが、殺傷能力の高い霊能は禁止です。また、参加者に大けがや死亡させた場合も失格です。一般部門とDランクGS以下の霊能者部門は別々のコースで同時に実施いたします。フリーのスペシャルコースはその後に実施いたします』

女性のルール説明から想定すると、多分だが一般部門は難易度が低く設定されているはずだ。普通に夜間の山野を走るだけでも結構困難だからな。

それと結界は遭難対策として、結界内の人の動きをある程度把握するためと、万が一結界外にコースアウトしたとしても把握できるようにするためのものだろう。

あまり心配するような事にはならないか。

それに当然、美神さんや小笠原エミさんや六道冥子さん、陽乃さんはスペシャルコースとやらに参加だろうから、スペシャルコースに参加しない限り滅多な事は起きないだろう。

 

『それでは一般部門の方、霊能者部門の方、準備は良いですか?それでは……スタート!』

アナウンスの掛け声により、稲田姫の試練が始まる。

一色の奴はどこだ?

俺は霊視で一色を探す。

高台からコースが見渡せるといっても夜の森と山野だ。

特に照明器具があったり、映像中継されているわけでもない。

目視では誰が何処に居るかなんてものはほぼ分からない。

参加者は懐中電灯などの照明器具を手に持って移動するため、時折光が見える程度だ。

まあ、結界を形成している術者達はある程度把握しているだろうが……。

 

「比企谷君は~、連れ戻しに来た子は恋人なの~?」

不意に、隣の六道会長からこんな事を聞かれる。

 

「違います。学校の後輩です」

 

「そうなの?心配そうにしていたから恋人なのかな~って、思っちゃった」

 

「いえ、そもそも恋人がいる人間がここに参加しないでしょう」

 

「そうよね~……そういえば比企谷君はもうすぐ18歳よね~」

 

「はい、数日後には」

 

「ところで、比企谷君は年上の女性は好きかな~?」

何時もと同じように微笑を浮かべたままだが、六道会長の雰囲気がなんか鋭くなった気がする。

 

「……あの、なんの質問ですか?」

 

「おばさんも最近の若い子の恋バナとか~聞きたいなって、聞いちゃダメ~?」

 

「………俺なんかの話は面白くもなんともないですよ」

 

「いいのよ~、GSって特殊な職業でしょ~、だから若い子の恋愛事情も参考になるの~」

即断りたいんだが、物凄く断りにくい雰囲気だ。

しかも六道会長、にこやかな笑顔なのになんか圧が凄い。

まるで美智恵さんのようだ。

 

「答えられる範囲なら」

 

「ありがとう~。じゃあ~比企谷君は結婚するなら年上は何歳まで大丈夫かな~。29歳まで~?それとも25歳まで~?どっちかな~」

なにこれ?選択肢があるようで無い質問は?

しかも六道会長のにこやかな圧が、答えを急かしてくる。

29歳という事は凡そ平塚先生か……25歳に近いと言えば、美神さんだな。

平塚先生は恋愛さえ絡まらなければ、普通に出来る大人だ。しかも美人でスタイルも抜群。日常生活や性格は男勝りだが、悪い人じゃない。むしろいい人だ。

一方、美神さんも美人でスタイルも抜群だ。しかも仕事が超出来る人だ。ただ……性格が壊滅的だ。中身が悪魔や鬼よりも酷い。確かに人情に厚い一面はあるが恋人や伴侶としては願い下げしたい。

結婚相手を平塚先生か美神さんかと選択を迫られれば、年はひと回り上だが俺は間違いなく平塚先生と答えるだろう。

 

「29歳でも大丈夫です。年はあまり気にしません」

 

「そうなの~、良かった。じゃあ~、結婚するなら式神使う子と神通棍を使う子のどっちがいい~?」

六道会長は何が良かったのやら、さらに質問を受ける。

……何この質問?どういう意図だ?まったくわからん。

式神使うと言えば……陽乃さんか、最初は強引で何を考えているか読めない人で苦手だった。

あの外面仮面や人を弄ぶかのような言動は、ああいう家庭環境で育ってしまったための自己防衛のための物なのだろう。あの人、本音で人と話す事が苦手なだけで、悪気があるわけじゃなかった。

最近はそれが分かって、苦手意識は薄れている。

告白が本気だという事は分かってはいるが、俺はどちらかというと同業者で同じ世代のライバルとか先輩とかそう言う関係に思ってるようだ。

神通棍を使う人と言えば……美神さんしかいないだろう。あれ程に神通棍を操れる人は、母親の美智恵さんぐらいしか知らない。

親子で凄まじい霊能力者だ。

一応俺の霊障から救ってくれた命の恩人で、一応師匠でもある。

正確には霊障から救ってくれたのも俺を霊能者として鍛えてくれたのも横島師匠なんだが、その大元は美神さんであることは確かだ。

確かにいい所もある人だ。一応なんだかんだと雇ってくれてるし救ってくれもした。

だが、性格がアレだ。

捻くれてるを通り越して、捻じ曲がりに曲がって一周してる人だからな。

陽乃さんと美神さんもどちらも美人でスタイルも良くて、性格に難があるが、どちらかを結婚相手として選ばなければならないのなら、間違いなく陽乃さんだろう。

流石に美神さんはキツイ、一生奴隷となる宣言とほぼ同義だ。

悪魔契約よりも酷い事になるに決まってる。

 

「……どちらかといえば、式神使いですかね」

そう、選択の余地が無いのだ。

 

「そうなの~!うふふふふっ、そうなのね~」

なんか怖い。六道会長の笑顔が怖い。

 

この後も俺は六道会長から、なんだかよく分からない結婚ネタの質問を受け続ける。

 

「比企谷君、この後、おばさんが泊ってるホテルにお食事にでもどう~?」

 

「すみません。実はたまたまボランティアで近くに来てまして、ここには自由時間を使ってきているだけで、戻らないといけないんです」

 

「残念~。じゃあ、今度家にいらっしゃい~。前もお誘いしたのに来てくれなかったし、学校が夏休みだから大丈夫よね~比企谷君~」

まただ、この六道会長のにこやかな笑顔の裏に凄まじい圧を感じる。

 

「……ぜ、善処します」

俺はそう答えるのがやっとだった。

 

 

そんな六道会長との何故か冷や汗が出るような会話をやっと終えたところでアナウンスが入る。

『一般部門、霊能者部門は終了いたしました。引き続きスペシャルコース参加者の方準備願います』

六道会長との会話に気を取られている間に、何時の間にか一般部門、霊能者部門の試練は終わっていた。

一般部門はどうなった?一色は?案外平塚先生が一着だったりとか?

俺は霊気を辿り、2人を探す。

ん?どういうことだ。二人共スタート地点に居るぞ?

ゴールからもう戻って来たのか?

それともそもそも参加しなかったとか?

 

 

『では、スペシャルコース参加者の方、準備はいいですか?では……スタート!』

女性のアナウンスの声でスペシャルコースの試練が始まったのだが……。

おい!何やってんだ?あの二人!何でスペシャルコースに参加してるんだ!?

 

「六道会長!」

俺は慌てて六道会長に声を掛ける。

 

「なあに、比企谷君?お義母さんと呼んでもいいのよ~」

お義母さんって?それよりも今は!

 

「俺の後輩と知り合いの二人の一般人が、スペシャルコースに参加してるんですが!止めないと!!」

 

「大丈夫よ~。スペシャルコースは誰でも参加自由なの~、昔はスペシャルコースしかなかったのよ。その時から一般人の方が参加した場合は六道からGSを護衛につけているわ~」

六道会長は何時ものにこやかな笑顔でそう答える。

 

「……いや、昔はそれでよかったかもしれませんが、今回はあの美神さんが参加してるんですよ!!それに小笠原エミさんや娘さんも!!」

 

「あらあらあら。…………比企谷君!急いで女の子の方について行って上げてっ!!女性の方には六道から多数出すわっ!!」

六道会長はようやく事の重大さに気が付いたようだ。いつもの笑顔が消え、余裕がない顔に!

 

「わかりました!」

一色の奴、なんでよりによってスペシャルコースなんかに参加してんだ?

俺は一気に霊気を開放し、霊力による身体能力強化を行いつつ、一色の後を追う。

 




六道会長は、八幡引き込み作戦を……。
さて次回、いろはすはどうなっちゃう?
平塚先生は?
八幡は?
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