やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
今回はちょっと短めです。
稲田姫の試練スペシャルコースのスタートがコールされる。
恋愛運50倍上昇のご利益を得るために、女性達の戦いの火ぶたが切られた。
だが、何故かそこに一色が参加していたのだ。
不味い、非常に不味い。
このスペシャルコースには美神さんと小笠原エミさん、それに六道冥子さんまで参加しているのだ。
唯では済まないのは明確だ。
ましてや一般人の一色では命の危険が高すぎる。
俺は一色を助けに行くために、スペシャルコースに踏み入れたのだが……
何故か、突如として爆発音があちらこちらから鳴り響き、地面が轟音と共に大きく崩れ落ちる。
俺は間一髪、上空に大きく飛び避ける事が出来たが、何人かが巻き込まれて、地面に出来た裂け目に落下していく。
一色は大丈夫か?
……霊視で確認するがどうやら巻き込まれていないようだ。
危なかった。
これは何らかのトラップか?
霊的反応は全くなかった。
もし、爆砕札や魔法陣や術式などの霊能や霊具使えば、俺の霊視で優れた目であれば事前察知出来たはずだ。
なんか火薬の匂いがするんだが……。
しかもこの爆発音……たぶん、普通に爆薬だ。
俺の経験上、間違いない。
………………
……………
…………
美神さんか……何やってるんだあの人は!
確かに爆薬を使うなとはルールには無かったがこれはやり過ぎだろ!
濛々と辺り一帯土煙が上がっている最中、聞きなれた怒声が聞こえて来る。
「令子!!!やってくれたわね!!!」
「おほほほほほっ、何の事かしら?」
「こんな事を仕出かすのはおたくしかいないのよ!!!」
「言いがかりは良してくれないかしら?証拠でもある?」
「こんんんの!!クソビッチ!!!そっちがその気なら、やってやろうじゃない!!!」
「誰がクソビッチよ!!ビッチはどっちよ!!年下に色目使って!!」
「残念でした。ピートは年上なわけ。そんな派手な恰好してる癖に男一人落とせない処女ビッチの癖に!!」
「なんんにおおおおお!!!!」
美神さんと小笠原エミさんの罵り合いが始まってしまった。
二人から凄まじい霊力があふれ出し、一帯に2人の霊気が渦巻きぶつかり合い、霊圧の放電現象まで起きる始末。
「令子!今度こそ決着つけてあげるわけっ!!!」
「ふん!!立ち直れないぐらいにぎったんぎったんに返り討ちにしてあげるわ!!エミ!!」
や、やばい。
ここはもう戦場だ!
一刻も早く一色を連れ戻さなけば、間違いなく巻き添えを食らう。
俺は霊視で一色の位置を探りながら、この場を速やかに立ち去る。
一色の奴、意外といいコース取りしてるな。
最短距離をワザと通らずに走ってる。
一応、六道家の霊能者が1人ついてる様だ。
俺は一色の方へ向かうが…森の中で厄災に出会う。
「ぐすん。逸れちゃったわ。令子ちゃ~んどこ行ったの~、エミちゃ~んどこ~」
…………
………
……
ま、不味い。
六道冥子さんだ。
そう、六道冥子さんが自らの式神十二神将、馬の式神インダラに乗って森の中を彷徨っていた。
どうやら迷子らしい。
この人、一見お淑やかそうに見える。
実際お淑やかなお嬢様ではあるが……。
宿している式神がとんでなく強力で恐ろしい、それが十二体も……。
さらにその十二体の式神が一斉に暴走などしようものなら、ここら一体は崩壊し森は草の根一本も何も残らないだろう。
触らぬ神に祟りなしだ。
ここは、スルーする方向で……。
「ぐすん。う…ううう……皆に逸れちゃったし、暗いし、動物の鳴き声がするし、爆発みたいな音もするし……ぐすん……う、ううう」
や、やばい、六道冥子さんの式神暴走のトリガーは泣く事だ。
今にも泣きそうな雰囲気なんだが……、動物や爆発より、貴方の式神の方がよっぽど恐ろしいんですが!
ここで六道さんの式神が暴走すると、一色が巻き添えを食らうこと間違いない。
あの美神さんでさえ六道さんの式神暴走を恐れるぐらいなのだ。
俺も一度、巻き込まれそうになったが、全て横島師匠がその身で受け止めてくれたから助かった。
だが、あの師匠でさえ半死状態にまで……。
俺や普通の霊能者じゃ、病院送り間違いなしだ。
俺は意を決して、六道さんの前に姿を現す。
「六道さん。だ、大丈夫ですか?」
「あっ、比企谷く~ん。よかった。令子ちゃんもエミちゃんも居ないし~、暗いし~、ここが何処かもわからないし~……わたし、わたし、どうしたらいいのか、ぐすん」
涙ぐむ六道さん。
「あの、大丈夫です。美神さん達はあっちに居ましたよ」
俺はそう言って、あの美神さんと小笠原エミさんが争っているだろう戦場の方を指さす。
美神さんには悪い気がしたが、とりあえず六道さんを一色が走ってるだろう場所から離す必要がある。
六道さんを美神さんと小笠原エミさんの戦場へ誘導することで、一色が走るだろうコースからも離れてるし、何より美神さんと小笠原エミさんも六道さんの暴走を恐れているから、あの二人の喧嘩と言う名の戦争も収め、六道さんの暴走をきっと必死に止めてくれるだろう。
そうなれば一石二鳥だ。
「比企谷く~んは令子ちゃん達の所まで一緒について来てくれないの~?」
六道さんは涙目でこんな事を聞いてくる。
……あの死地に向かうのは勘弁してほしい。
「すみません。俺は別で一般の人を誘導しないといけないんで」
「でも~、動物の鳴き声がするし、虫もいっぱいいるし、暗くて怖いし、わたし一人で行くなんてとても無理よ~」
……いや、仮にもこの人もゴーストスイーパーだよな。しかもAランクの。
何その小学生レベルの怖がり方、貴方の式神の方がよっぽど恐ろしいんですが……分かってはいたが厄介過ぎる。
「それに六道会長にも言われ、一般人の方を誘導しないといけないんで、霊能者の方々に、付き添うと、失格になるかもしれませんよ」
「お母さまに?……う、ううう、わたしこんな試練なんて行きたくなかったのに……お母さまが、このままだと行き遅れるって怒るから。……早く結婚しなさいって……う、うううう、無理矢理お見合いさせられても、みんな
そんな事を語りながら、泣きそうになる六道さん。
や、やばい、ここで暴走でもされたのなら、俺は病院送りの上、一色の身も危険だ。
「わ、わかりました。途中まででしたら」
選択肢など無い。俺は妥協せざるを得なかった。
「ありがとう。
……いや、なんだろう。恋愛の意図が無いにしろ女性に好きと言われれば多少は嬉しい気持ちになるものだろうが、何故こんなにも喜べないのだろうか?
俺は式神に乗った六道冥子さんを美神さんと小笠原エミさんが争ってる死地へと途中まで連れて行くことに……。
途中までと言っても道中は厳しかった。
六道冥子さんを泣かせないようにすることがどれだけ大変か。
クモが森の木々から垂れ下がって来れば泣きそうに、カに刺されれば泣きそうに、カエルの鳴き声を聞けば泣きそうに……
俺はそれらを全て排除しながら進むしかなかった。
道中を案内するだけで確実に精神が削れていく。
そして、目標の美神さんと小笠原エミさんの戦場に近づけば、その恐ろしい程の霊圧と余波が襲ってくる。
「令子!この頃乳が垂れて来てるんじゃない!?」
「ふん!!あんたはばあさんみたいに元々垂れさがってたわよね。エミ!!」
「言いがかりも甚だしいわけ!!霊体撃滅波!!!」
「我が美神令子の名において命ずる。破邪招雷陣!!!」
遠くからでも、不毛な罵り合いと高難度霊能攻撃の応酬が聞こえてくる。
何、無駄に凄まじい戦闘は……。
この二人、稲田姫の試練の事を完全に忘れているのだろう。
「令子ちゃんとエミちゃんの声が聞こえるわ~、令子ちゃ~ん、エミちゃ~ん!」
六道さんはその声に満面の笑みで二人の元へ駆け出す。
なんとかなったな。
ふぅ、とっととここを離れて、一色を追わないと。
俺は踵を返し一色を追うのだが、この30秒後悪夢が襲う
そう、厄災が襲ってきたのだ。
式神暴走という。
次回は番外予定です。