やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
漸く千葉村編終わりです。
俺は六道冥子さんを美神さんと小笠原エミさんが争ってる死地の途中まで送り届け、再び一色を追いかけるが、しばらくして、六道さんを送り届けた方向から強烈な霊圧を感じると共に凄まじい衝撃が襲い掛かって来た。
俺は咄嗟に防御態勢を取ったお陰で、その衝撃には絶えられたが、それを追いかけるように、次々と炎やら電撃、風の刃、岩やら木片やらが次々と飛びかい、周りの木々を焼いたり、吹き飛ばしたり、切ったり割ったりと破壊尽くしていく。
やばい!六道冥子さんの式神暴走だ!?
激震地からは離れてるハズなのにこの威力か、凄まじいなんてものじゃない!!
やばっ、一色の方にも流れ弾が!?
俺は霊視空間結界を発動させ、式神暴走による無差別攻撃を回避しながら、一色の元へ駆ける。
一色が走っていた獣道のような山道が式神暴走による流れ弾で吹き飛び、一色はその衝撃で、空中に大きく投げ出されるのが見える。
まずい!間に合うか?
俺は大木の枝のしなりを利用し大きくジャンプ。
何とか一色を空中でキャッチする。
「一色!大丈夫か!?」
「せ…先輩?」
一色は不思議そうな顔をして、俺を見上げる。
「無事なようだな」
「……は、はい」
一色の状況を霊視で確認したが、大きな怪我とかはなさそうだ。
あれだけ吹き飛ばされて、擦り傷程度で済むとは運が良かったか。
「っと」
大木の頂上付近の枝に一色を抱きかかえたまま着地する。
「せ、先輩…そ……その、ありがとうございます」
「はぁ、お前、わざわざ何でスペシャルコースなんかに参加してるんだ?一般部門のご利益でも十分だろ?何でこんな無茶をしたんだ?」
ちょっとは説教じみた事も言いたくもなる。
こんな死地に放り込まれる身にもなってくれ。
「だって……」
「普段は計算高い癖に、たまにこんな暴走をするよなお前」
葉山への告白の時もそうだった。
無茶だと分かっているハズなのにだ。
「せ、先輩のせいです!」
「はぁ?何で俺のせい?」
「先輩が先輩がっ!!」
一色は目を真っ赤にし涙をぽろぽろと零しながら、俺に抗議する。
……こんな怖い思いをした後だ。致し方が無いだろう。
それに俺がもっと早く一色を止めて置けば一色に怖い思いをさせていなかった。
そう思って一色に謝る。
「怖い思いをさせてすまなかったな」
だが、一色は泣きながら訳が分からない事を俺に言った。
「先輩が…先輩が好きだからっ!!」
「お前、何言ってんだ?」
俺はつい呆れるようにそう返事した。
こんなわけが分からない事態に巻き込まれ一色は相当錯乱してるようだ。
「だから!!先輩が好きなんですっ!!!」
そう叫んだ一色は俺の顔を引き寄せる。
俺は両腕で一色を抱きかかえたままで、抗う事も出来ずに……
一色の顔が近づき唇にキスを……
「おおお、お前、ななななな何を!!!???」
何が起こったかは理解したが、思考が追い付かずに混乱してしまう。
キ、キス?
涙顔の一色の顔が近づいたと思ったら、唇にキス!?
一色が俺に!?しかも俺が好きって!?どういうことだ!?
ちょっとまてっ!?
彼奴が好きなのは葉山だろ!?
何で俺に!?
よく考えろ八幡!!これはどういう事態だ!?
えっと、恐怖で錯乱した一色は、俺と葉山とを勘違いしたって事か?
「私は先輩が好きなんですよ」
一色は涙で濡れる目で、俺を見上げ、しっかりとした口調でこう言った。
「おおおおおおおれれ!?」
ななななななな!?
どど、どういうことだ!?
俺と葉山を勘違いしたわけではなくて……俺に!?
一色が俺の事が好きだって!?
ちょっと待て、何がどうなってっ!?
「先輩!先輩…先輩…先輩……」
俺は混乱の坩堝に陥り思考が停止。
一色は俺の首に手を回し力強く抱き着いてきたが、直ぐに抱き着く力が弱まり、項垂れる。
き、気を失ったのか?
冷静になれ八幡!!
これはどういう事態だ!!
一色の奴が俺を好きだって言ってキスを!?
俺の事が本当に好きだって事か!?
いやいやいや、こいつは葉山の事が好きなんだぞ!
この稲田姫の試練も、そもそも葉山を落とすために参加したはずだ。
冷静に冷静に、落ち着け八幡。
ふぅ、きっと極度の恐怖状態で錯乱し、吊り橋効果的な感じで、葉山の代替えで俺にこんな事をしたに違いない。
そうじゃないと説明がつかない。
そもそも今のこいつの言動が本当なら、葉山と俺を2人同時に好きだという事になる。
いやいやいや、普通に俺にとかあり得ないだろ?
今の今迄、そんな素振りは全く無かったぞ。
俺が口を開けば、何故か告白もしないのに振られていた。
一色にとって俺は利用価値がある都合のいい先輩だったはずだ。
なんなら、犬や小間使いとまで見られていたまである。
俺は大木の上で意識を失った一色を抱きかかえたまま、思考をフル回転させ何とか今の状況を整理しようとしていたが、突如として留まっていた大木が石化しだし、崩れ始めた。
「やばっ!」
俺は再び、霊視空間結界を発動しつつ他の大木へと飛び移るが、その大木も石化しだす。
更に炎も降り注いできた。
これは六道冥子さんの式神十二神将龍の式神アジラの石化能力と火炎放射だ。
まだ、六道さんの式神暴走は止まっていない。
それどころか、この距離まで迫ってきている。
一色の事を考えるのは後だ。
先ずはここを離れなければ。
俺は一色を抱きかかえたまま、木々に次々と飛び移り、炎と石化し崩れ出す木々を避けて進む。
逃げながら、霊視で辺りを見渡す。
式神十二神将が暴れまわり、森や山野は破壊され、辺り一帯が阿鼻叫喚に。
試練どころの騒ぎじゃない。
……制御不能な動く厄災とはよく言ったものだ。
何時もなら横島師匠がその身一身に十二神将の攻撃を受けてくれるため、周囲への被害は極小で済んでいたが、横島師匠が居ないとここまでの惨状に……。
もはや、安全に抜けられる確実な逃げ道なんてものはどこにも無い。
攻撃を避けながら、何とかコースの外の安全な場所へ逃れるしかない。
暫く必死に逃げ惑うと……
同じく逃げ惑っているだろう半分泣きが入ってる薄汚れた陽乃さんが目の前に現れる。
「もう!何なのよ!?」
「雪ノ下さん、大丈夫ですか?」
「比企谷君!?」
俺は一色を抱きかかえながら、全速力で逃げ惑う陽乃さんの横を並走し、声を掛ける。
「まるで大規模霊災よ!!しかもこれは明らかに人災よ人災!!六道の次期当主の噂を耳にしたことがあったけど、ここまで酷いなんて!!制御できない高位式神使いなんて、災害と変らないわよ!!」
陽乃さんは俺に訴えかける。
俺も全く同意見なのだが、ちょっと違う。
六道さんは通常はちゃんと十二体の式神を制御出来てる。
式神宿す事が出来る膨大な霊気と、制御する霊力コントロールは凄まじいものがある。
だが……これは六道さん本人の性格の問題だ。
それだけの能力があれば一般常識的な式神制御をしていれば、暴走なんて事は起きないだろう。
だがあの人、信じられない事に日常生活で常に式神を出しっぱなしだし、式神使いの常識を根底から覆すような事をへっちゃらで行ってる。まあ、それでも制御できる程のあり得ない霊気量と霊力コントロールがあるから良しとしよう。
問題はあの人自身だ。
一般常識を知らなすぎる。
いい所のお嬢さまなのは確かだが箱入り娘もいい所だ。
それもまあ、良しとしよう。
あの性格がやばい。
ゴーストスイーパーなんてとても出来るような性格をしていない。
温厚でマイペースなのは特に問題は無い。
感情レベルが幼稚園児並みなのだ。
喜怒哀楽の怒りの感情はどこかに置いてきたようだが、特に哀楽の感情が凄まじく不安定だ。
虫を見るだけで、血をちょっと見るだけで泣くレベルなのだ。
泣いて感情を爆発させ、式神が暴走と……。
そんな人が、一体でもとんでもない式神を十二体もその身に宿している。
戦術級ミサイルの発射ボタンをサルが握ってるような物なのだ!
「それは分かりますが、そんな事を言ってても始まりませんよ。とりあえず逃げないと」
「そうね。後で六道家に厳重に抗議しないと……、それと一色ちゃんを何故抱えてるのかしら八幡は?」
「そ、それは……色々ありまして、この状況を予測したというかなんていうか……」
さ、流石に陽乃さんの前で、一色にキスされたとか言えるはずが無い。
「まあ、いいわ。後でじっくり聞きましょう。それよりも八幡の周りの結界は何かしら、今私もその結界の範囲内に入ってる様だけど、しかも内部の霊気濃度がかなり濃いわ。まるで八幡そのものって感じがするわ」
「年始に一緒に六道さんの式神を捕まえた時に発動したものの、強化版だと思ってもらえれば……」
流石に陽乃さんには分かってしまうか。
俺は今自分の周り半径3メートルに霊視空間結界を張り続けている。
これにより、六道さんの式神の攻撃の情報を正確に把握し、なんとかかわし続けている。
強力な攻撃が来た場合も、俺のシャドウ、ダーククラウドで攻撃を遅延させたりと色々と対処が可能だ。
「ふーん。また、夏休みの終わり頃に一緒に訓練はどう?」
「時間が空いてれば」
「じゃあ、約束ね。ってこんな事を言ってる場合じゃないわね、雷撃が来たわよ!?」
「厄介だ。サンチラの攻撃か」
そんなこんなで、逃げ惑ってる内にゴール付近にたどり着いた頃には、式神の攻撃の嵐も止んでいた。
六道冥子さんの霊気が尽きたのか、美神さん達が説得に成功したのかはさて置き、式神暴走は終息したようだ。
ふう、何とか逃げ切れたようだ。
激震地を避けるように逃げ回っていたからな、激震地の真っただ中にいたのなら、流石に病院送りは免れなかっただろう。
一色も無事だし、陽乃さんとは逸れてしまったが、あの調子だと無事だろう。
俺は安堵の息を吐く。
そして、ゴールで俺が見たものは……
「とったどーーーーーーーーーっ!!!!」
三十路の女教師が拳を振り上げ感極まった感じで雄たけびを上げる姿だった。
どうやら平塚先生が試練一番乗りで稲田姫のご利益50倍恋愛運をゲットしたようだ。
あの人、元々恋愛運が無いから、これで丁度一般の人並みの恋愛運に。
先生のそんな姿を見ていると自然と目から水がほろりと。
不毛な女性達の戦いはこうして終わりを告げる。
俺はそそくさと一色を抱きかかえ、下山へと。
その途中、煤だらけで、頭から煙を上げてる美神さんと小笠原エミさんが、ぐったりした姿で、木に寄りかかっていたのを見かけたが、そっとしておくことにした。
総武高校ボランティアの女子達が泊るロッジへと一色を送り届ける。
「ヒッキー大丈夫?何があったの?ボロボロだよ?それにいろはちゃんも……」
「比企谷君、目が何時もに増して濁ってるわよ」
「ちょっと……色々あってな」
ロッジの前に、由比ヶ浜と雪ノ下が待っていてくれた。
気を失ったままの一色を引き渡してから、ロッジの外で由比ヶ浜と雪ノ下にさっきまでのあらましを凡そ説明する。
案の定式神暴走に巻き込まれた事、一色を助けに入った事、一色が錯乱して俺に告白めいた事を言った事、流石にキスの事は二人には言えないが、多分、恐怖で混乱してのことだろうと。
「ヒッキー、それ本気で言ってるの?でもヒッキーだし」
「貴方はそれでいいわ。後はこちらで何とかするから」
俺の話を聞いた由比ヶ浜も雪ノ下も苦笑気味だった。
翌日のボランティア二日目。
陽乃さんは疲れ果てたのか、いつもの外面仮面が少々崩れかけていた。
平塚先生はテンション上がりっぱなしだ。
何故か雪ノ下と由比ヶ浜がどちらかが常に俺の横にぴったりと。
なんか雪ノ下と由比ヶ浜の様子が少しおかしい、一色を明らかに俺から遠ざけてる節がある。
今の俺にとってはありがたい事だが……。
昨日のあの後、一色と何かあったのか?……まさかキスの事はバレていないだろうな。
その一色はというと、翌日には昨日の事なんて何もなかったかのようにケロッとした様子だった。
俺の考えすぎか?
だが一色は、雪ノ下と由比ヶ浜が俺から少々離れているのを見計らった様に、あざとい笑顔で俺に近づき、すれ違い際に耳元に、
「せーんぱいは、乙女の唇を奪ったんですから、責任とってくださいね」
小声でそう言って、足早に駆けて行く。
「おおおい、一色!?」
どういうことだ!?
昨日は恐怖のあまり吊り橋効果的な事で俺に告白めいた事を言ったんじゃないのか?
しかも唇を奪ったって、キスをしたのはお前の方からだからな!
どういうことだ?
キスしたから、俺に責任取れってことか?
それとも、ちゃんと葉山と付き合えるようにしろという脅しか?
益々わからん。
こうして、千葉村でのボランティア活動は終わりを告げた。
どうやら、いろはす、ガハマさんとゆきのんとのOHANASHIがあった様です。
そこでいろはすは正直に答えたのだと思いますよ。
キスの事も……
次で夏休み編終わりで……
いよいよ二学期編、ちょっと一波乱あった後に、あの事件の続きがまたしても始まる。
八幡恋人チキンレース。現段階で誰が優勢?
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雪ノ下雪乃
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由比ヶ浜結衣
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雪ノ下陽乃
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一色いろは
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川崎沙希
-
折本かおり
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鶴見留美
-
平塚静
-
六道冥子