やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

148 / 187
感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

夏休みが終わり次章に移ります。
早速どうぞ。


【十五章】二学期編
(148)二学期の始まりは……


夏休みが終わり二学期の始めの登校日。

何時ものように小町と共に学校へチャリで通学。

校門を抜けて、駐輪場にチャリを止める。

小町はクラスメイトを見つけたのだろう、俺に笑顔で「行ってくるであります」と敬礼の真似事をし、足早にクラスメイトの元へ駆けて行く。

学校は大規模霊災が起こった事などまるで嘘の様な日常風景。

だが、昇降口へと向かう途中、遠目で見えるグラウンドに目をやると、真新しい野球のバックネットにサッカーのゴールポストが見え、グラウンドの土も前よりも濃い色をしていた。

あの戦いによって破壊されたグラウンドは修繕され傷跡はもう見えない。

だが、俺の脳裏には、ここでのオーク共との戦いの記憶がくっきりと映っていた。

校舎へと目を向けると、朝の学校の喧騒が広がっている。

何時もと変らない日常風景に俺はホッと安堵の息を吐く。

俺はふと思う、ドクターとマリアさんが来てくれなかったら……、俺が力及ばずに力尽き倒れたとしたら……、つい身震いがする。

ここには俺の大切な物が沢山あり過ぎる。

 

あの時起こった第二次関東同時多発霊災テロと名がつけられた一連のあの事件では、東京で霊災が7か所で起り、千葉と神奈川の2か所で大規模霊災が起きた。

大規模霊災の2か所とは、一つはここ千葉の総武高校、もう一つは神奈川の公立高校だ。

神奈川の公立高校では、犠牲者が生徒及び教職員を含め凡そ300人、全校生徒の半分以上にも上った。

学校施設は半壊し、復旧の目途も経たず、廃校に……

生き残った生徒達の約半数150人が重軽傷又は霊的病症状態に陥り病院へ、未だ退院出来ていない生徒も多い。

さらに難を逃れた生徒達もPTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされている。

 

もし、総武高校でこんな事が……

そんな事を考えるのはやめておこう。

 

小町もオーク共に捕まり怖い目に遭い、あの後しばらくは俺から離れなかったが、今は元気そのものだ。もう大丈夫だと信じたい。

 

「ヒッキー、やっはろー!」

そんな事を考えながら廊下を歩く俺の後ろから、相変わらずの挨拶をし、足早に俺の横に並ぶ由比ヶ浜。

 

「ああ、おはようさん」

俺も何時ものように挨拶を返す。

 

廊下を並んで歩き、教室には先に由比ヶ浜が入り、俺はその後に続く。

由比ヶ浜は笑顔でクラスメイト達と挨拶を交わしつつ席に着き、クラスメイト達は由比ヶ浜の周りに集まって来る。

俺はそんな由比ヶ浜の席を後目に隣の自分の席に座り、机にうつ伏せる。

 

いつも通りだ。

こんな何気ない事で、俺は日常が戻った気がした。

 

 

しかし、由比ヶ浜の元に集まるクラスメイト達が口々に話をしだしたのがだ、ある噂話が耳に入る。

 

「由比ヶ浜さんは知ってる?この学校の生徒の中にプロのゴーストスイーパーがいるんだって」

「そうそう噂になってるし、この前の霊災、ドクター・カオスが来るまで生徒の誰かが守ってくれたんだって」

な、何だその噂?俺の事か?

や、やばい。なんかバレてるっぽい?

ドクター・カオス一行が全て収めた事になってるはずだが……

いや大丈夫か、俺の周りに誰も来てないし、俺だって事はバレてないだろう。

 

「そ、そうなんだ」

由比ヶ浜の返事もちょっと焦ってる感じだ。

 

「なんか、あの時体育館の小窓から外を覗いてた人が居たらしいの、総武高校の制服着た人が化け物と戦ってる所を見たとか」

「そうそう、制服から男子だったみたい」

おい!小窓や窓はカーテンするかマットで塞いでろと先生が指示してただろ!?

まあ、中には興味本位で見ちゃう奴もいるだろうな。

 

「へ~そうなんだ、凄いね。誰なのかな~?」

由比ヶ浜も何とかしらばくれながら、逆にこんな質問をクラスメイトにする。

 

「うーん。それが遠くて顔とか分からなかったんだって、写メ取ろうとしたら、先生に見つかってスマホ没収されたとか」

「もしかしたら葉山君かも!?前のオカルトGメンの職場見学で霊気測定結構凄かったらしいよ!」

「葉山の奴は、体育館に居たぞ。それだったら、ざ、材…便座とかいうオタク野郎の方が霊気測定凄かっただろう?」

「便座くん?違う違う。ざ…座薬くんって名前よ。でも彼はないわ~」

流石に便座って酷いだろ。材木座の「座」しか会ってないぞ。そこの女子も座薬ってなんだよ。尻つながりかよ。そんなに材木座の名前は覚えにくいか?

そういえば、雪ノ下も未だに財津君だと思ってるし、仕方が無いのかもしれん。

 

「あははははっ、中二?ないない、校長先生もおじ…ドクター・カオスさんがやっつけてくれたって言ってたし、きっと見間違いだよ」

「そうだよな~。実は俺がそのゴーストスイーパーだ。なんてもしそうだったら誰だって自慢するよな、普通」

「ええ?あんたが?ないない」

「仮にだよ、仮にだ」

由比ヶ浜の奴、便座と座薬で材木座(中二)の事だと理解しちゃってるし。

それよりも、この分だと身バレは大丈夫そうだ。

スマホを没収してくれた先生のお陰だな。

 

 

この後、全校集会で体育館に集まり、また長々と校長の話が始まった。

俺は必殺ぼーっとするの術でこの場を凌ごうとしたのだが……。

「えー、でありますから我校にGS協会からプロのゴーストスイーパーの方がしばらくの間、来てくださいます。くれぐれも粗相のないように、皆にお願いします」

 

ん?何それ?そんな話は聞いてないんですが?

まあ、確かに被害者ゼロと言っても、大規模霊災が起きた現場だ。

既に事態は終息したとはいえ、世間体的に考えてもGSの派遣は妥当だろう。

 

「えー、ゴーストスイーパーの方は本日お越しになるはずでしたが、何やら手違いがありまして、来られなくなりました。えー、お名前だけ先に申し上げときます。Aランクの凄腕のゴーストスイーパーの六道冥子さんです」

………

……

チェンジで!!!!!

 

俺はその名を聞いた瞬間に冷や汗が噴きし、同時に心の中で思いっきり叫んでいた。

無理があるだろ!

六道さんが来るってことはあのとんでもない式神が校内をうろつくって事だろ?どっちが霊災か分かったもんじゃない!!

この学校が霊災テロを起こした連中に狙われる前に、六道冥子さんに滅ぼされるぞ!

人選ミスも甚だしい!

 

や、やばいなんてもんじゃない。どうなってるんだ?

俺はこっそり全校集会を抜け出して、美神さんに連絡する。

美神さんもGS協会の理事だから何か知ってるはずだ。

「み、美神さんどうなってるんですか!総武高校に六道さんが来ることになってるんですが!?」

 

「あー、うっさいわね。わかってるわよ。どういう意図なのか分からないけど六道のおばさまが黙って無理矢理ねじ込もうとしたのよ。ママと理事全員で寸前で止めたわよ!それで、替わりを明日からそっちに送る事になったから安心なさい」

そう言って美神さんは電話を切る。

俺はそれを聞いてホッと息を吐く。

どうやら六道会長の暴走の様だ。

そりゃそうだ。どう考えてもその人選は無茶過ぎるだろ。

もし、六道冥子さんが本当にしばらく総武高校に滞在したとなれば、六道さんの行動をいちいち監視しないといけない事になる。勿論暴走しないようにだ。

GS身バレの可能性も高くなるし、何よりも俺の精神は間違いなく寿命が縮むレベルで削られていくだろう。

 

それよりも、替わりに誰が来るのだろうか?

キヌさんだったらいいな。

キヌさんと俺が会話したとしても、学校の一部の連中は俺とキヌさんが知り合いだと知っているし、問題が無いハズ。

何よりも俺が嬉しい。

もしかすると、キヌさんの総武高校の制服姿を拝めるかもしれない。

 

しかし、キヌさんは平日の日中は大学に通ってるから難しいか……もしかしたら横島師匠?

それはまずい。六道さんと違った意味で不味い。

羊の群れ(女子生徒)の中に狼(変態)を放り込むようなものだ。

いや、ここには平塚先生がいる。流石の横島師匠も振った相手の職場とか気まず過ぎて流石に来ないだろう。

美神さんもそこまで鬼のような事は……するか……仕事とプライベートは別だとか言いそう。

まてよ、前のオカルトGメンの職場見学で、横島師匠は変態の霊に取りつかれた可哀そうな人という設定になっていたし、流石にそんな人をプロのGSとして送り込まないだろう。

 

じゃあ誰が?

陽乃さんか?陽乃さんならあり得るか、総武高校のOGだしな。

これ程適した人材はいないだろう。

ただ、陽乃さんの土御門家は京都を中心に関西圏が活動範囲だ。

それに学生として京都の大学に通ってる。

その辺がネックか。

だが、滞在期間が長くなければ、大丈夫なのかもしれないか。

 

それ以外のGSの人かもしれないし……。

千葉の有力者と言えば留美の祖父さんの鶴見源蔵さんとかも適任かもしれない。

半分引退されているような事を言っていたし、こういう仕事の方が適任だろう。

現役バリバリのGSにはもっと最前線で仕事してもらった方が良いからな。

ただ、俺にとっては面倒ごとが増えそうでお断りしたいところだ。

 

唐巣神父は流石に無いか……忙しい身だし。

タイガーさんは、見た目が怖いから厳しいか。

ドクターはヨーロッパのGSだから厳しい上に、厄介事も一緒に持ってくるから勘弁してほしい。もしそうだとしたらマリアさんだけ来てほしい。

 

そんな事を思いながら、全校集会に戻る。

 

 

 

昼休みには、何時もの様に部室で雪ノ下と由比ヶ浜と三人で昼飯だ。

俺の昼飯は今も雪ノ下が用意してくれる手作り弁当ではあるが、雪ノ下から弁当を受け取るのは未だに気恥ずかしい。

 

雪ノ下は紅茶の用意をし、俺と由比ヶ浜のティーカップに注ぎながら、今日の全校集会での話題について話しだす。

「全校集会の校長先生の話だと、六道冥子さんが滞在されるようね。被害者が出なかったとはいえ、大規模霊災に生徒達が巻き込まれたのだから、生徒や保護者の方々だけでなくマスコミや政治団体からも安全面に付いて疑問視する声が上がってもおかしくは無いわ。体裁を整えるためにもAランクGSを置く事は妥当な処置でしょうね」

 

「そうかもな」

六道さんが妥当かは置いておいて、俺も雪ノ下と同意見だ。

GS協会やオカルトGメンの上層部は、総武高校を襲った稲葉を既に捕縛したため、総武高校で再度霊災が起こる可能性は高くはないと踏んでいる。

その理由は単純である稲葉が個人的な恨みでここをターゲットにして襲ったからだ。

稲葉からは組織だってここを狙ったという印象は全く感じられなかった。

警戒は必要ではあるが、今回のGS派遣は、世間体の為に体裁を整えるためのアピールというのが実質だろう。

 

去年からの一連の霊災テロや霊災事件を起こした霊災愉快犯改め、第一級霊災テロ集団の一人と目される総武高校に大規模霊災を起した稲葉の捕縛には成功したが、悪魔契約により稲葉は精神崩壊を起こし、情報を引き出す事が出来なかったのだ。

そのために、未だに一連の霊災愉快犯の尻尾を捕まえる事が出来ないでいた。

だが、今回の大規模霊災で分かった事も多い。

六芒星大結界や異界の門、人間を使ったキメラ合成など、高度な術式や禁忌魔術を行使していたことからも、かなりオカルトに精通している集団である事、六芒星大結界を用意できる程の強大な資金源がある事、さらに悪魔契約などを行使しようとしたことから、悪魔若しくは魔族が関わっている可能性が高い事だ。

 

 

「そうなんだ。そういえば六道冥子さんって雑誌か何かで見た事がある。ゴーストスイーパー戦う美女特集だったかな?なんか物凄くお嬢様って感じの人だった」

由比ヶ浜が見てる雑誌ってアレだよな、女子高校生向けのファッション誌とか情報誌だよな。内容はさて置き、そんな雑誌にGSの特集が載ってるのか。

その内容がちょっと、いや随分と気になる。

やっぱ、美神さんも載ってるんだろうな。

スタイルは良いし見た目だけは美女だからな、見た目だけは。

小笠原エミさんとか魔鈴さんとかも載ってそうだな。

陽乃さんもニューフェイスとかって感じで載ってるのかもしれない。

しかも、ランキング形式になってたりして。

俺だったら、ランキング1位は圧倒的にキヌさんだ。

巫女服で戦う姿も普段着の姿も制服姿もなんていうか、素晴らしいの一言に尽きる。

……小町にその雑誌を持ってないか、聞いてみよう。

 

 

「比企谷君?……もしかして、GS派遣について知らされて無い…ということは無いわよね」

変な妄想に浸りうわの空だった俺に、雪ノ下は訝し気な顔を向けながら、聞いてきた。

 

「あ、ああ、知らなかった。だから全校集会を抜け出して、ちょっと確認したが……」

 

「ヒッキー、だから途中から居なかったんだ」

 

「貴方が知らないなんて、何かの連絡ミスかしら?」

 

「まあ、何かのミスはミスの様だ。ここだけの話、六道冥子さん以外のGSが派遣されるようだ。誰なのかは知らないが……」

流石にGS協会の会長が暴走したとは言えるわけが無い。

 

「そう、もしかしたら姉さんが、……有り得るわね。姉さんも高ランクGSでここのOGだから……」

雪ノ下も俺と同じ見解を導き出したようだ。

GS協会やオカルト関係の情勢に詳しくなったものだ。

実の姉が関係者とはいえ、ある程度内情を知らなければ導き出せない類のものだ。

 

「その可能性は十分ある」

 

「ええ?陽乃さんがここに?…うーん。それは困るかも」

「そうね。もしそうだとしたら、対策が必要ね」

由比ヶ浜は顔をしかめ、雪ノ下は何やら考え込む。

 

「まあ、大丈夫じゃないか?」

流石の陽乃さんもここではあの外面仮面を被るだろうから、大きな問題は無いだろう。

例え面倒な事があったとしても、六道冥子さんとでは比べるまでもない。

 

「貴方、何時から姉さんと打ち解けたのかしら?」

「ヒッキー、陽乃さんの誘惑に乗ったらダメだからね」

雪ノ下は目を少々細め俺を見据え、由比ヶ浜は頬を膨らませる。

 

「……いや、そう言う意味じゃなかったんだが」

……確かに陽乃さんが派遣されると、少々困る事態になりそうだ。

 

 

 

 

そして放課後……

 

「せーんぱい♡一緒に帰りましょう」

あざとい後輩が部活終わり間際に現れる。

 

「……いや、俺んちはお前んちとは逆方向なんだが」

 

「駅までですよ駅まで、それとも先輩のお家にお泊りしてもいいですか?」

一色はそう言って俺の右腕を引っ張る。

一色はあの夏休みの告白以降、宣言通りというか、あざと可愛さに磨きがかかり、何かにふれこんな感じで、距離を縮めて来る。

 

「いろはちゃん!ヒッキーが困ってるし」

「一色さん、まだ部活は終わってないわ」

小竜姫様のアドバイスもあり、一色に対して直ぐに返事をしないスタイルを取る事を決めたが、由比ヶ浜と雪ノ下には、申し訳ない気がしてならない。

 

「え~、もう皆さん片付けてるじゃないですか~、困ってませんよねせーんぱい♡」

ただでさえ一色が俺の事が好きだという事実に少々意識してしまううえに、こういうのに慣れていないため、一色の本気とやらは少々洒落にならない。

葉山の奴、よく平然としてられたな。

彼奴、何気に精神力が滅茶苦茶高かったんだな。

 

 

「そ、そう言えば小町はどうした?」

俺はワザとらしく話題を変え、生徒会に参加してるだろう小町について聞く。

 

「小町ちゃんですか?買い物があるとかで先に帰りましたよ」

俺はスマホを確認するとlineにメッセージが入っていた。

『夕飯の買い物があるから先に帰るね。愛の詰まったご飯を作って帰りを待ってます。甲斐甲斐しく家事をこなす小町。小町的にはポイント高~い。んん?アレ?でもなんだか学生結婚した新妻みたいになってる?』

はあ、何を言ってるんだか家の妹様は……

しかし、買い物なら昨日の内に3日分ぐらいの食材は買い溜めしたはずだが。

 

 

この後、結局俺は自転車を押し、徒歩で駅まで向かう事に……。

雪ノ下と由比ヶ浜と一色と共に。

 

 

 

 

 

家に帰るとタマモが来ていた。

成る程、小町が買い物に行く理由がこれで分かった。

タマモから家に来るから、それで追加の食材を買いに買い物に行ったのか、食材といっても厚揚げだろうがな。

シロは来て居ない、タマモ一人だけだった。

タマモはたまにこうして家にフラッと遊びに来る事がある。

家の両親、とりわけ親父は大喜びだがな。

 




さて、誰が総武高校に来るのでしょうか?


下のアンケートですが、皆さん自身の恋人にするなら誰が良いのかと、解釈してください。
言葉足らずで申し訳無いです。

皆さんに質問です。GS側で恋人にするなら誰?女性キャラは編

  • 美神令子
  • 氷室キヌ
  • シロ
  • タマモ
  • 小笠原エミ
  • 六道冥子
  • 小竜姫
  • メドーサ
  • ルシオラ
  • パピリオ
  • ベスパ
  • マリア
  • テレサ
  • 机妖怪愛子
  • 花戸小鳩
  • 魔鈴めぐみ
  • アン・ヘルシング
  • 鈴女
  • 一文字魔理
  • 弓かおり

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。