やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

タイトルが不穏ですね。
そう、久々のシリアス展開なのです。
今回はその序章みたいな感じです。


(151)狙われた美神令子 その1

 

9月も中頃に差し掛かった放課後。

慌ただしく右往左往する生徒達によって校内は喧騒に包まれる。

 

だが、霊災が起きたとかではない、何か事件とか物騒な事が起きたわけでもない。

 

この時期の総武高校は毎年こうだ。

そう、この時期の恒例と言えば文化祭だ。

総武高校の文化祭は結構な規模で行うため、千葉ではちょっと有名である。

生徒達は文化祭と言う名の青春を味わうために、自らを律し、準備と言う名の強制労働に勤しんでいる。

一般的には準備さえも青春というカテゴリーで収まるらしいが、俺からすれば、それはまさしく僧侶が行う苦行の如くだ。

去年の俺を見てみろ、まさしく準備から文化祭当日に至るまで全てが苦行だった。

 

去年は相模南からの依頼で奉仕部は文化祭実行委員会の補助を行ったのだが、肝心の実行委員長である相模がサボっていたため、実質雪ノ下が取り仕切っていたような物だった。

それで俺はその下請けで、色々とやらされていたわけだ。

まあ、色々あって、文化祭を成功させるために、俺は相模に罵声を浴びせ泣かせてしまう。

そんな感じで俺は学校一の嫌われ者の称号を手に入れたと。

 

だが、今年の奉仕部は文化祭実行委員会や生徒会とは関わる事はない。

何故なら、奉仕部はある重要な役割があるからだ。

『霊災相談窓口』

要するに、2カ月前の大規模霊災を端を発してる生徒達の悩みや心配事を聞いたりする相談室というわけだ。

室長はGS協会から派遣されたゴーストスイーパーの陽乃さんで、その下で働いてるのが奉仕部ってわけだ。

 

相談窓口を開口して1週間で、結構な生徒が押し寄せてきた。

だが、まともな相談はたった4件だけ、その他の連中は陽乃さん目当てや、ゴーストスイーパーについて興味本位で来た連中ばかりだ。

こんな雰囲気ではなかなか本当に相談したい生徒が来る事が出来ないだろう。

少し様子見て、落ち着かなければ、何らかの対策が必要か。

 

そして……

「その目、あんたが3年の比企谷だな、勝負だ!」

 

「……またか」

俺は何故か最近生徒達に勝負を挑まれるのだ。

しかも、主に1年の連中からだ。

ため口かよ。せめて先輩ぐらい付けたらどうだ?

 

最初に声を掛けられた時は何の事かさっぱり分からなかった。

よくよく聞くと、こうだ。

タマモに告白しようとしたら、最低でも八幡より強い男でないと誰とも付き合うつもりはないとそっけなく断られたのだとか……。

それで、何を勘違いしたのか、タマモに告白や友達になろうと声を掛けた男連中は、俺に勝負を挑むようになったのだ。

 

俺はその事をタマモに問い詰めると。

「面倒だからよ」

「面倒ごとを俺に押し付けるなよ」

どうやらタマモは告白してきた連中を適当にあしらうために俺の名前を出したようだ。

 

「確かに面倒だけど、本当の事よ。私は安心を与えてくれる男にしか興味が無いの。最低でも八幡ぐらいの器量は必要ね」

「何それ?俺が判断基準?」

「そうね。横島には劣るけど、八幡は知恵も回るし腕もそこそこ立つ、それに私を不快にさせないわ」

滅多に感情を表に出さないタマモが、そう言って妖艶な笑みを浮かべる。

俺は不意にその笑みに魅入られてしまう。

……玉藻前…傾国の美女とはよく言ったものだ。

そりゃ、時の権力者どころか、誰をも魅了してしまうのだろう。

そんなタマモの魅力に思春期真っ只中の男子連中は、あっさり落ちてしまうのだろうな。こんなわけが分からない暴走をするぐらい。

 

まあ、そんな事があって、俺はこうして今日も勝負を挑まれる。

勝負と言っても、喧嘩とかじゃないぞ。

ここは健全にカードバトルで勝負を行っている。

タマモの奴は、強い男の基準を男子らにはちゃんと言って無いから、俺に都合が良い方法で勝負を行ってる。

カードバトルで、俺が霊能をフルに発揮すれば、負けるわけが無い。

何せ相手の手札が全てわかる。チートもいい所だ。

この1週間で7人ほど、打ち破っている。

 

一応勝負を挑んできた連中には言い訳を言っておいた。

俺んちにホームステイしてるタマモとカードバトルをよく遊んでいたのが影響しているだけだと……。

 

すると、そいつらは皆涙目でこんな事を言ってくる。

「タマモさんと小町ちゃんと同じ屋根の下で生活してるなんて、羨ましすぎる!リア充比企谷八幡に不幸あれ!!」

 

………

……

 

リア充?俺が?

何も知らないのか?俺は校内一の嫌われ者なんだが……

それよりも、今年の一年は大丈夫なのだろうか?

いろいろな意味で心配になってくる。

こんな連中は一部だけと思いたいが、こんなくだらない日常を過ごせるという事は、平和だからこそなのだろう。

 

それに、この程度ならまだましだろう。

俺の想定ではもっと厄介な事になるのではと、危惧していたのだ。

今年の一月に一時的にとある噂が校内に広がっていた。

『あの学校一の嫌われ者が、美女二人とWデート!?』

この噂の発端は年始に六道冥子さんの式神の捕縛を行う際、陽乃さんとタマモを連れ立っていた俺を学校の誰かに見られたことからだった。

だが、この噂は俺の校内での悪評もあり、直ぐに立ち消えた。

今度は陽乃さんもタマモも目の前にいるのだ。

あの噂が再燃し、騒動に巻き込まれるのではないかと思ったのだ。

しかし、当の陽乃さんとタマモと俺は放課後一緒にいる事が多いのに、噂にはならなかった。

 

何故なのか?

 

よくよく考えればそんなものなのかもしれない。

陽乃さんやタマモの美女二人を目の前で見れば、現実的に俺の様な最低男なんかと付き合うなどあり得ないとでも判断したのだろう。

要するに、今まで雪ノ下や由比ヶ浜と俺との間で噂にならなかったのと同じ事だ。

まあ、元来噂なんてものは、あやふやで信憑性が薄いからこそ、聞いた人間が都合のいいように想像を膨らませ、面白がって広がる。

現実を突きつければ噂なんてものは発生しないものなのだろう。

 

 

 

それはそうと、文化祭実行委員会や生徒会の手伝いはしないが、奉仕部は文化祭の出し物としてGSについての展示を行う事となった。

霊的災害や霊障や霊、妖怪やGSについて正しく知ってもらうための物だ。

陽乃さんが発案し、せっかくプロのGSが身近にいるのだからと学校側は二つ返事でOKを出したとか。

確かに、この展示は教育という観点からも意義がある物だろう。

雪ノ下と由比ヶ浜も特に異論は無いようだ。

 

こうして、霊災相談窓口を行う傍ら、展示物のパネルなどを作成。

どうやら、この事が美智恵さんの耳にも入り、全面的に協力を買って出てくれて、動画やオカG所蔵の展示物なども貸してくれることとなった。

美智恵さんはオカGやGS協会のイメージアップにかなり力を入れているから、今回の文化祭のGS関連の展示もいい機会だとでも思っているのだろう。

 

 

この頃の日常はこんなものだ。

 

まあ、一色が事あるごとに俺を引っ張って生徒会室に連れて行こうとしたり、陽乃さんにデートに誘われて、結局由比ヶ浜と雪ノ下と陽乃さんと4人で出かける事になったりとかいうイベントはあったりとか……。

 

 

 

週末の土曜日。

俺は仕事で栃木に向かう。

メンバーは美神さんとキヌさんと俺の三人だ。

最近はこの組み合わせで仕事に行く事が多い。

横島師匠はシロと共に九州に出張だ。

タマモはこの週末も家で小町と共に過ごしてるはずだ。

俺んちでホームステイをし、総武高校に通う事自体がタマモの仕事らしい。

雪ノ下は午前中で事務所の仕事を上がらせて、この仕事に行く道中、自宅マンションまで送り届けた。

 

今は美神さんが運転する4人乗りのスポーツカーに乗り込んで、高速道路で一路栃木に向かう。

 

道中、キヌさんが今回の依頼内容を再度説明してくれる。

「今回の依頼内容をもう一度確認しますね。大型リゾート施設建設予定の丘陵地の工事現場で、霊障が起きて、森林伐採や土地の整地もままならない状態です。今回の依頼者は町おこしの為に廃業したゴルフ場だった土地とその周囲の山地を誘致した町長さんと建設業者さんですね。霊障が起きたのは2か月前から、重機が動かなくなったり、照明が急に消えたりという事故が続いたようです。それと同時に、獣の様なうめき声が山林から聞こえてきたと、現場作業の大勢の方が聞いたそうです。今の所怪我人などは出て居ませんが、霊の仕業だと皆怯えて仕事にならないそうです。すでに1か月前から建設作業は停止したそうです。また、巡回の警備員さんが廃工場付近で大型の化け物らしき影を見たという目撃情報もあります。町長さんと建設業者の担当者が直接事務所に仕事の依頼に来られた案件です。GS協会に内容申告を行ったところ規定によりB級の難易度設定がされておりますが、不測の事態を鑑みられA級以上のGSが実施するのが妥当と判断が下されております」

結構難易度は高い。

しかも、依頼内容から協会の難易度規定ではB級だが、GS協会は情報不足を補う意味もあり、A級クラスのGSが事に当たるべきと判断したようだ。

 

「嫌な予感がするわ。結構キツイ仕事になりそうね。その分お金はタンマリよ、気合を入れていくわよ」

美神さんはそう言って、アクセルを吹かし、車のスピードを上げる。

美神さん達の足を引っ張らないようにしないとな。

 

 

高速道路を降り、街を抜け、山間の道をしばらく走ると、ゴルフ場の看板が見えて来る。

道路には立入禁止のバリケードが置かれ、その前にワゴン車一台が止まっており、作業服姿の男性が3人程降りてくる。

美神さんはその3人に除霊依頼でここに来た事を伝えると、バリケードを撤去し、車を通してくれた。

さらにしばらく山間の道を走ると、ゴルフ場の駐車場が見え、重機やらが多数止まっていた。

ゴルフ場の駐車場に車を乗り入れる。

正面に見えるゴルフ場の建物は解体途中で止まっているのがわかる。

 

「着いたわね」

「結構登りましたね」

「ふぅ」

美神さんとキヌさんは車から降り、俺は荷物を降ろす。

 

「敵が何なのかも分からない上に、この広大な敷地よ。かなり面倒ね。あっちから姿を現してくれれば直ぐに済むのだけどね」

「それはそうですが……比企谷くん、霊視で何か見えますか?」

「いえ、近くには雑霊しかいません」

「ふう、そう事が簡単にいくわけは無いわね。長期戦の覚悟をしておきなさい。あの工事事務所のプレハブをベースにしましょう。あそこに結界を張るわ。それから捜索よ」

「了解です」

俺が荷物をプレハブ小屋に運び、美神さんとキヌさんは結界を張る準備を進めていく。

この敷地は結構広いな、元ゴルフ場だし、周囲の山も捜索範囲に入るだろう。

確かに長期戦になりそうだ。それも俺の霊視次第か……。

結構責任重大だぞ。

敵が中々見つからなかったら、美神さんの機嫌もそれに比例して悪くなっていくだろうし。

 

 

プレハブ小屋に結界を張り終えて、装備を整え、いよいよ除霊対象の捜索に向かう。

 

先ずは、解体中のゴルフ場の建物の中を捜索。

「比企谷くん、そっちは何かわかった?」

「特に何も見えません」

美神さんは霊視ゴーグルを使いながら辺りを捜索。

俺は霊視で建物内を調べるが特に何も引っかからない。

悪霊どころか、霊気の残滓すら見えない。

 

「あんたたち、その他に何か気になる事はある?」

「大型の化け物の影を見たという目撃情報もありましたが、足跡も見られませんね」

「……足跡が無いか、目撃されたのが実体の無い大型の獣の幽霊か悪霊の集合体という線もあるわね。おキヌちゃんどう思う?」

「確かに雑霊が多い様に感じますが、実体化するぐらいの思念を感じません」

美神さんも俺もキヌさんも今の所霊的脅威を感じる様な形跡を見つける事が出来ないでいた。

 

「飛翔できる魔物かしら……見たものは影だけという事は、警備員の見間違いという線もあるわね」

「ただ、森の方から聞こえて来たという獣の呻き声については、ほぼ全員の証言が得られてます」

「キヌさん、直接的な目撃や人が襲われたとか言う被害はないんですよね。猪とか熊の鳴き声って線はないですかね?」

「でも、重機が動かなくなったり、電気が通ってるのに照明が急に消えたりとかその手の霊障はあるようですよ」

「ただ単に、設備トラブルって事はないですか?」

「いいえ、担当者から聞いたけど、それは無いそうよ」

現場の検証を行い、意見を出し合う。

俺は霊的なトラブル以外を検証し、その意見を出すが、どうやらその線は薄そうだ。

 

「霊障はあるという前提で進めると……霊気の残滓すらまったく見えないという事は、少なくとも10日以上霊障は起きていないという事ですよね。現場作業は1か月前から休業状態、休業中の人が居ない間は霊障が起きていないという事になりますが」

「比企谷くん、そう言う事よ。……きっと何かあるわ。次よ、次行きましょ」

美神さんは俺の意見を肯定し、次の場所へと移動を開始する。

 

次にゴルフ場の設備棟に向かうが、霊視に何も引っかからない。

ゴルフコースをカートで一周回って見るが、やはり霊視に引っかからない。

 

「……面倒ね。ゴルフ場の設備とは無関係の可能性が高いわね。リゾート施設建設予定地はゴルフ場以外の土地も大きく含んでいたわ。そっちの方が問題かもしれないわね」

「はい、そちらの山際付近には小さな集落が点在してます。聞き取りをしてみませんか?」

「そうね。行ってみましょう」

キヌさんの意見で、大型リゾート施設建設予定地の直ぐ傍にある小さな集落を訪ねる事になったのだが……。

 

人は一人も居なかった。

 





前回のアンケート結果。
【自分の恋人にしたい人は?GS男性編】
一位、横島忠夫
二位、唐巣神父
三位、近畿剛一
四位、ピート

横島くんと唐巣神父は僅差w
やはり主人公、横島くん強し。
唐巣神父は人柄ですよね。
ちょっと離れて、ゲストキャラのハズの近畿剛一君が三位w
ピートは順当かな。
それ以降は似たり寄ったりの得票です。
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