やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
久々の更新です。
二学期編はちょっと長いのです。
あれやこれも入れないとと思うと、なかなか進まない。
「ヒッキー、ヒッキーってば」
目の前には心配そうな由比ヶ浜の顔が……って、顔、近!?ちょっと近すぎませんかね。
なんか甘い良い匂いもするし。
この頃、ますます距離感が近い気がするのは気のせいか?
「あ…ああ、なんか用か?由比ヶ浜」
「さっきから呼んでるのに、なんかヒッキー朝から変だよ。授業中もぼーっとしてるし、なんかあった?」
今は3時限目が終わっての休憩時間だ。
由比ヶ浜の言う通り確かに俺は授業中も上の空だった。
「そうか?まあ、ちょっと考え事をな。大したことじゃない」
「だったらいいんだけど……仕事の事?」
由比ヶ浜は俺の耳元で囁くように聞いてくる。
耳がこそばいし、敏感だからやめてね。
「そうだな……」
俺は一昨日の出来事について今も考えを巡らせていた。
仕事の依頼で、美神さんとキヌさんと3人で栃木のリゾート施設建設予定地での霊障解決にのり出したのだ。
だが、そこに現れたのは合成魔獣キメラだった。
しかも人を媒体としたキメラだ。
夏休み直前に起こった関東同時多発テロの一つ神奈川の公立高校で起きた霊災、魔獣に生徒を合成させるという凄惨な事件は記憶に新しい。
だが、今回のキメラは人だけを媒体にし化け物を生成していたのだ。
狂気の沙汰としか思えない。
そして、その合成を行っていたのが、敷島博士に化けていたタコ型の中級魔族プロフェッサー・ヌルだった。
生身の人間を合成して生み出したキメラを軍事利用し、売りさばこうと画策していたのだ。
神奈川の高校を襲って、学生達をキメラに取り込む等と非道な真似をやったのは恐らくこいつか、後に現れるフードの男だろう。
神奈川の高校の事件の目撃証言の中で、犯人は背が高かったとかフードを被っていたとかあったしな。
美神さんとヌルのやり取りから、過去に美神さんとヌルは戦った事があるようだった。
ヌルとキメラが襲いかかってきたが、いつもの戦略的撤退をしつつ奴の研究所と共にキメラを爆破して生き埋めにしてやった。
その後、美神さんはヌルと一対一で戦い勝利し、土角結界によってヌルの捕縛に成功する。
中級魔族を捕縛するなど、流石は世界最高峰のゴーストスイーパーと呼び声高い美神さんだ。
だが、それだけでは済まなかった。
ヌルを圧倒的に凌駕する霊圧を放つフードの男が現れたのだ。
その霊圧は明らかに人間の物じゃない。
口ぶりからヌル同様に一連の霊災愉快犯の中心を担ってる存在の様だ。
その霊圧や攻撃力に圧倒されるが、何とか凌ぎきる。
フードの男は何らかの制約があるのか、こちらをどうこうする意思はなかったようだ。
捕縛したヌルはあっさり奪還されるが、命あっての物種だ。
一体あいつは何だったのだろうか?
上級魔族なのか?それとも魔神なのか?
いくら考えても答えが出ない。
美神さんに聞いても、「あの状況よ!わかるわけないでしょ!」といつも以上に苛立っていた。
美智恵さんに聞いても、「精査する必要があります。ただ、この件は他言無用です。わかりましたね」と念押しされ、答えてもらえない。
単純に考えれば、彼奴について何もわかっていないという事なのだが、二人の様子がどうも引っかかる。
それとヌルは美神さんが時間移動能力者の貴重なサンプルだとか言っていた。
しかも美智恵さんも……美神さんは否定したが。
時間移動能力者なんてものは、過去の文献には存在したような記述があったが、現在正式には確認されていないとされている。
もし存在したとしたら、それこそ歴史改ざんしまくれるし、神の御業そのものだ。
美神さんにもし、時間移動なんて能力があったら、絶対私心の為に使ってるはずだ。
あの美神さんが使わないわけがない。
それこそ今頃は世界征服して世界の王とか……いや、石油王とか不動産王とかの方が合ってるか、そんな感じの世界トップクラスの金持ちになって左うちわで生活しているはずだ。
と、そう思うんだが、完全に否定できない自分がいる。
それは横島師匠の存在だ。
あの文珠という能力、まさに神の御業に近い。
横島師匠自体、武神の直弟子で、そんじょそこらの神や悪魔よりも強いし……。
それ以外にも、何か引っかかる所がある。
GSのランク付け、SランクとAランクの違いだ。
一応Sランクは中級魔族に対抗でき、Aランクは下級魔族に対抗できるとあるが、Aランクの六道冥子さんや小笠原エミさんと美神さんの実力は大きく変わらない様に思う。
状況によったら六道さんの方が圧倒的な火力を出せるし……。
それこそ唐巣神父はSランクでもいいような気がする。
俺が知っている限りでは、美神親子以外のSランクといえば、土御門風夏さんだ。
あの人の結界術は凄まじい。
どうやら、Cランク以上の術者が100人位集まって行うような封印結界術を1人で実施できるようなのだ。
あの、京都の酒吞童子の封印を緊急とはいえほぼ一人でやり遂げたらしいし……。
ある意味、神の御業に近い。
もしかすると、何か切り札になる特殊能力をもった人物がSランクとなっているのかもしれない。
飽くまでも何の根拠もない俺の想像でしかないが……。
キメラを生成する中級魔族プロフェッサー・ヌル。
その中級魔族を凌駕する霊圧を放つ謎のフードの男。
時間移動能力者だと言われ中級魔族に狙われる美神さん。
それにこの一連の同時多発霊災テロ事件……。
今になって何故か総武高校をオークを使って襲った稲葉の妄言のような言葉を思い出す。
『真実は日本全人口の4%の500万人だよ。世界では8%の4億人が死んだのさ』
4年近く前の世界同時多発大規模霊災ではそれ程の被害はないはずだ。
ありえない……しかし、奴はその時に総武高校に通っていた妹が亡くなって、その存在が忘れ去られたとかなんとか必死に訴えていた。
俺は考えれば考える程嫌な方向へと思考がますます向かって行く。
今、考えても仕方がない事のはずだ。
だが……。
横島師匠に相談にのって貰いたいが、まだ例の出張中で連絡が取れないし。
もやもやしたものが一向に晴れない。
「比企谷君……比企谷君、あなた何時にも増して目が濁ってるわよ」
雪ノ下の整った綺麗な顔が俺の顔を心配そうに覗き込んで目の前に……って、近!?
「ああ、すまん」
今は昼休みで、奉仕部の部室で雪ノ下達と昼めしを食べていたのだが、どうやらまた思考の沼にハマっていたようだ。
「ゆきのん、ヒッキー今朝からずっとこんな感じなんだー。仕事でなんかあった?」
「私も詳しい事は知らないのだけど、キヌさんから聞いた話だと先日の依頼はかなり大変な案件だったようね」
雪ノ下にはあのプロフェッサー・ヌルとあのフードの男との戦いについて、オカGから情報制限をかけられたのもあり、詳しい話が出来ない。
というよりも、俺もあの戦いについて説明できる自信がないんだが……。
事務手続き上、魔族との遭遇戦で、結構きつかったということだけは伝えてある。
キヌさんが情報制限のなか、必要事項だけは伝えてくれていた。
「ここはお姉さんの出番ね。八幡、同じGS仲間だし、お姉さんが相談に乗るわよ」
陽乃さんがGS協会から総武高校に派遣されてから、この部室で毎日一緒に昼食をとっている。
まあ、奉仕部は先の総武高校の大規模霊災の相談窓口になってるし、奉仕部の部室は半分陽乃さんの仕事スペースになってるしな。
それとなんだかんだと文句を言いながらも雪ノ下は陽乃さんの分の弁当も作って来ている。
姉妹間の軋轢も随分と薄まっているように思う。
もともと、姉の陽乃さんが妹に本心を全く見せずに冷たい態度で接していたが、実は妹大好きなツンデレだったってだけで、雪ノ下の方も態度はあんなだが内心は陽乃さんを嫌ってるわけではない。むしろ尊敬していたきらいもある。
姉妹そろって愛情表現が苦手なだけなのだろう。
似た者姉妹ってところか。
「他の事務所の姉さんに何故相談しないといけないのかしら?まして、今回はオカルトGメンから情報制限をかけられて口外出来ないわ」
「ふーん。なんかきな臭いわね。うちの師匠も今日こっち(東京)にわざわざ出て来てるし……まあいいわ。八幡、悩んでいても何も始まらないわよ。そういう時は気分転換が必要ね。だから放課後はぱーっとお姉さんとデートをしましょう」
「姉さん!なんでそんな事になるのかしら?」
雪ノ下は目くじらを立てる。
「ダメ!ヒッキーはGSのお仕事の事で悩んでるんだから、お仕事に関係無いあたしがヒッキーと遊びに行きます!」
由比ヶ浜も陽乃さんに迫るが、言ってる事は陽乃さんと一緒だぞ?
「由比ヶ浜さん?」
「ガハマちゃん、どうどうと抜け駆けするつもりかしら?」
由比ヶ浜のその発言に雪ノ下は困惑気味に由比ヶ浜に顔を向け、陽乃さんは由比ヶ浜に鋭い視線を送る。
「たまにはいいじゃん。ゆきのんは週末は毎週ヒッキーと会ってるし!」
「それはそうなのだけど……」
「陽乃さんは放課後はちゃんとここの相談窓口のお仕事やってください!」
「ガハマちゃんに言われなくても、ちゃんとやってるわよ」
「ゆきのんは放課後は文化祭実行委員会との文化祭の出し物の中間会議でしょ、陽乃さんは相談窓口の受付をちゃんとやってください!あたしとヒッキーは今日は部活を休むからね!」
由比ヶ浜は皆に強引にそう言い切って、何故か俺も部活を休む事になって、放課後、由比ヶ浜と遊びに行く事になった。
あれ?俺の意思はどこに?
まあ、確かに今の精神状態だと、学校生活だけじゃなく部活にも支障がでそうだ。
どうやら小町にまで心配かけてるようだしな。
今の奉仕部も文化祭のGS関連の展示でそれなりにやる事はあるが、忙しいわけではないし、俺も息抜きは必要だとは思う。
それに俺は誰かに言われないと息抜きなんてしないだろう。
だから、由比ヶ浜は強引に俺を連れ出そうとしてくれたのだと思う。
放課後、由比ヶ浜と遊びに行くと言ってもまだ何も決めていない。
とりあえず学校から駅まで歩いて行く。
「ヒッキー、何処に遊びに行こうか」
「お前が行きたいところでいいんじゃないか?」
「それじゃダメ!ヒッキーの息抜きなんだから、ヒッキーが行きたいところじゃないと意味ないじゃん。あっ、ゴーストスイーパーとか妖怪退治とかはダメだからね」
「行きたいところか……」
由比ヶ浜は俺に釘を刺す。
確かに、高校に入ってからは休みの日も訓練やGS関連の事を考えてたりすることが殆んどだな。
「ヒッキーが癒される場所ってどこだろ?カラオケとか行きそうにないし……ペットショップとかいい感じ」
「ああ。それと本屋に行きたいな。久しぶりに本屋で直に本を買うのもいい」
「あっ、それいいかも!だったら、千葉駅前のおっきな本屋さん!中にカフェもあるし、同じビルにペットショップもあったよ!ついでにヒッキーに受験の参考書とかも見てもらおうかな!」
中学の時は1人カラオケとかよく行ってたぞ。
それに今だってたまにGS関連の人とか美神さんに貸し切りのカラオケとか連れていかれる事があるぞ。
結局、美神さんはどんちゃん騒ぎがしたいだけなんだけどな。
美神さんはアレで結構寂しがり屋なのかもしれない。
ペットショップはいいな、ペットは確かに癒される。
見ているだけで何故癒されるのか分からないが、マジで癒される。
それとこの頃、本もネットで買う事が多いから、本屋で直に選ぶのも良いな。
受験か、確かに俺達は受験生だ。
仕事もいいが、日常生活もちゃんとしとかないとな。
だが、由比ヶ浜はそれでいいのだろうか?
本屋に遊びに行くとか結構地味だぞ。
「そんなのでいいのか?」
「いいのいいの。あたしはヒッキーと一緒だったら、何処でも楽しいよ」
「そのだな……なんていうか」
制服の夏服姿の由比ヶ浜は明るい笑顔で俺に振り返る。
俺はつい、ボッとその笑顔に見入ってしまっていた。
自分でも顔が少々赤らむのを感じる。
「行こ!久しぶりの二人っきりのデートだし!」
そう言って由比ヶ浜は俺の手を強引に繋ぎ、軽く駅に向かって駆け出す。
あれ?なにこれ?普通にリア充街道まっしぐらなんですが?
電車の扉付近で俺と由比ヶ浜は立ち揺られる。
この時間帯、結構学生が多いな。
なんか周りの視線が痛いんですが……特に男共の。
由比ヶ浜は見ての通り可愛らしい感じの美少女だし、俺みたいな陰キャと二人きりとか、明らかにおかしいもんな。
その由比ヶ浜だが……
「小町ちゃんには部活の事を頼んだから陽乃さんは大丈夫。いろはちゃんは文化祭実行委員会の会議に出るはずだから大丈夫。サキサキは妹ちゃんの送り迎えって言ってたから大丈夫。平塚先生は宿直だって言ってたから大丈夫。マリアにはヒッキーとデートするから夕飯いらないってLINEしたし、ママとおじいちゃんも見て貰ってるから大丈夫。今度は大丈夫」
真剣な眼差しでスマホの画面を見ながら小声でブツブツと何やら言っていた。
千葉駅に到着し早速大型書店へ
ガハマさん。
前回の誕生日にヒッキーとデートしたのに、ガハママとカオスのじいさんに邪魔された経緯があるだけに。
今回は抜かりはないようです。
いや、果たしてそうなのだろうか?
ここはGS世界も混ざってるのだよ!
しかもお相手はあのヒッキーだよ!
ガハマさんは乗り切れるのだろうか?