やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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ついに八幡始動。





⑯ゴーストスイーパー比企谷八幡始動

 

戸部翔の海老名姫菜への告白を阻止すべく俺は動いたが、横島師匠の介入があり、あの場はカオスと化し、収拾がつかなくなった。

しかし、海老名自身の言葉で戸部の告白は当分延期されることになり、元の鞘に戻った。

これで由比ヶ浜も後にひくこともないだろう。

 

 

しかし……横島師匠は何故か俺に爆弾を投下をし、どっかに行ってしまった。

何しでかしてくれてるんですか横島師匠!!

 

「キヌさんとは誰のことかしら?」

「Dカップ美女って誰!?」

その爆弾は見事命中。俺はなぜか雪ノ下と由比ヶ浜に責められている。

しかも、なぜ責められているのかがわからないが、なんか俺が悪いみたいなことになっている。

 

「いや、それは…」

 

「あの原始人以下のナンパをする男の知り合いの、隠事谷くん……さあ、吐きなさい」

「そうだよ!あの変な人とどういう知り合いなの!なんか仲良さそうだったし!」

なんだこのプレッシャーは、なんなんだ?

 

「お、落ち着け……そろそろ戻らないとな。ホテルの夕食に間に合わないだろ?」

 

「今日の夕食は各自自由よ。ホテルには8時までに戻ればいいわ。まだ時間はあるわ。じっくり聞かせて貰いましょうか?」

「そうだ!ヒッキーさっき、あたしを騙して女人禁制だとか言って、1人でどっか行ってたし!」

なんだかわからんが、ピンチだ!

 

「さ、さすがに、寒くないか?ホテルにもど……」

そう、10月末の京都の夜は流石に羽織るものが居る。こんな何にもないところでは風邪をひいてしまうだろう。……いい訳じゃないぞ。

 

「そうね。そこの甘味処で聞きましょうか?」

「うん。そだね。甘い物食べながらね!」

 

「夕飯はどうするんだよ?」

 

「抜きよ!」

「ヒッキーは水で十分!」

なにこの二人、めちゃ息が合ってるんだけど……しかもなんか怖いし……

 

 

俺は竹林近くの甘味処に連れて行かれ、4人座席の片側に座らされ、対面には凍てつく視線を俺に向ける雪ノ下とプンプンしてる由比ヶ浜が座る。俺の席にはコップ一杯の水。雪ノ下は善哉、由比ヶ浜はパフェ風のあんみつ………そして尋問が始まった。

 

「で……あの変人とはどういう知り合いなのかしら?」

「そうだよ!めちゃ仲よさげだったし!」

 

「あれだ。前に言っただろ。バイトしてると。そこの先輩だ」

うん、嘘は言ってない。

 

「普段からボッチだと自慢げに言ってる割に、随分打ち解けているようね」

「そうだ!そうだ!なんか女の人もいそうだし!」

 

「……し、仕事を直接教えてもらってるんだよ」

これも、嘘は言ってない。

 

「それで、キヌさんとは誰かしら?」

「美女に囲まれてるってどういうこと!?」

なんなんだ?確かに俺のバイト先には美少女や美女は沢山いるが……キヌさん以外は見た目だけだ!中身は世紀末覇者伝説並にひどい連中なんだぞ!脳内はみんなヒャッハーしてる連中なんだ!

 

「キヌさんは、あれだ俺の一つ上のアルバイト先の先輩だ」

八幡、嘘つかない。

 

「随分そのキヌさんと仲が良いようね。あなたが女性を下の名前で呼ぶなんて」

「ヒッキーが女の人を名前で呼ぶの小町ちゃん以外で初めて聞いた!」

ぐっ…それは、仕方がなかったんやーーー!!聖母に泣かれたら誰だってそうなる。

 

「……確かに、仕事先で良くしてもらってる。しかし、勘違いするなよ。キヌさんはあの横島さんを好きなんだ」

 

「……あの変人を?」

「あの変態を?」

そうなんだが、確かに変態なんだが!その変態が俺の尊敬する師匠なんだが!!こいつらが言うと異様に腹が立つ。良いところもあるんだぞ!……たぶん

 

「一応、仕事ではいろいろ助けてもらっている人だ。良いところもあるぞ。見た目だけで判断しないほうがいい」

 

「……あなたが他人を褒めるなんて…少し言い過ぎたわ」

「……ヒッキー、よく知らずにごめん」

あれ?意外と素直にひいてくれたぞ。

 

「まあ、普段があれだからな。見たまんまだとその通りだからな」

 

「で……美人、美女を侍らかせたというのは、どう言うことかしら?」

「そうだ!そうだ!Dカップ美女って誰だし!!」

まだ、続くのかよ!

 

「……お前らの事と、平塚先生。由比ヶ浜が言っているDカップ美女とは、多分雪ノ下姉の事だ」

 

「……そこでなぜ姉さんがでるのかしら?」

雪ノ下は不機嫌そうだ。

 

「たまたまバイト中に雪ノ下姉に会ったんだよ」

 

「ヒッキー、バイト先で私達の事を話してるんだ。しかも美少女だって!」

なんだこいつ、さっきまで怒ってた感じなのに、急にもじもじしだしたぞ。

 

「……まあ、あれだ。部活やってる位は話してるからな」

 

「………あなたが真面目にアルバイトをして、職場の人たちとまともにコミュニケーションを取るなんて……想像しにくいわね」

 

「…まあな」

 

「それで、何のアルバイトかしら?」

「そうだよ!前は親の手伝いだって、はぐらかしたし!」

くっ、流石にゴーストスイーパーやってますとは言えん。

なんとか誤魔化さなければ……

 

「あーあれだ…」

 

その時、この甘味処……いや、地面が揺れた。

 

「地震!?ゆきのん!」

「落ち着いて由比ヶ浜さん。大丈夫よ。そんな大した揺れじゃないわ」

 

!!!???

なんだ………この霊圧は!!

とんでもない霊力が漏れてるのを感じる!!!

土御門本家で感じた仄暗い霊気だ!!

何もしていないのにここまでビンビンに伝わってきやがる!!

 

まさか封印が解けたのか!?

 

俺は霊視を最大限に発揮させ、周囲を警戒する。

 

!!!???

あっ、今度は陽の霊力だ!………この霊気霊力は……土御門当主の風夏さんのだ!!

土御門の再封印術式か?

 

いやちがう、これは風夏さんの霊気だけだ!!

何が起こってる!?

 

しかも、あの仄暗い霊気は収まってない!

拮抗してる!!

 

 

!?……仄暗い霊気が少しずつ漏れ出してる。しかもその霊気がここら一体に瘴気を生み出している!

 

「雪ノ下、由比ヶ浜、すぐにホテルに戻るぞ!」

俺は席を立って、語気を強め二人に告げる。

 

「どうしたのヒッキー?」

「まだ、話は終わっていないのだけど」

由比ヶ浜は心配そうに、雪ノ下は訝しげに俺を見る。

 

「ああ!後でなんでも話してやる。だからここを急いで出るぞ」

 

「ヒッキー、なんか変だよ」

「急に…説明してもらえないかしら」

 

店の外で悲鳴が聞こえてくる。

くそ、遅かったか!漏れ出た瘴気から物の怪の類がもう湧いて出やがったか!

 

「いいから、行くぞ」

「ちょ、ヒッキー」

「え?…急に」

俺は二人の手を強引に取り、店の外にでる。

 

………くそ、周囲は雑霊だらけだ。

しかも、物の怪がここにも迫って来てやがる。

 

小さな子ども位の背丈の骨と筋ばかりのやせ細った人型の妖怪が何体かがこちらに向かってゆらゆらと歩いてきた。

 

「………ヒッキー……なんか居る」

「……何、何あれは……………」

 

「餓鬼だ……」

 

くそっ!既に人が遠目で襲われてる。

こいつらを置いて助けに行くわけにもいかん。

 

あのお守りがあれば、こいつらに渡して、助けに行けるのだが。

キヌさんに貰った強力なお守りをホテルに置いていったのは間違いだったか……あれだけの強力なお守りだ。陽乃さんに変に勘ぐられないようにと置いてきたのは失敗だった。

 

 

後ろを振り返ると………異変に気がついた甘味処の観光客や従業員が扉から外の様子を見て、悲鳴を上げだした。

 

くそっ、餓鬼自体は大したことはないが、オレ一人ではこれだけの人数を守ってこの場を脱出するのは困難だ!

 

 

そこに式服を着た一団が、餓鬼を倒しながら……こちらに向かってきた。

 

「土御門の者です。この松尾山一帯で大規模な霊災が発生しました。ここは我々がくいとめるので、急いでここを出て下山し、桂川を渡ってください」

土御門の霊能者達だ。流石は名門土御門、対応が早い。

今俺達が居る竹林の小道は松尾山のちょうど中腹から下辺りだ。俺が仄暗い霊気を感じているのはちょうど頂上辺りに位置する。

 

この分だと、なんとかなりそうだな。

 

「行くぞ、由比ヶ浜、雪ノ下」

俺は由比ヶ浜と雪ノ下に声をかけ、急ぐように促す。

 

「うん……ゆきのん?」

雪ノ下は呆然としていた。いや、震えていた。何時も毅然としている姿はそこには無かった。

 

「行くぞ」

俺は雪ノ下の手を少々強引に引っぱり歩きだす。

 

「ゆきのん…大丈夫?」

 

「ごめんなさい。少し驚いただけだから」

少しじゃないぞ。……もしかすると過去に妖怪か霊にでも襲われたのかもしれん。その時の恐怖が今も………だが、しばらく歩いて、ようやく立ち直ったようだ。

 

「少し走るぞ」

他の観光客の大半はすでに小走りで先に進んでいたが、俺達は雪ノ下の状態を見ながら歩いていたため、少々遅れていた。

 

しばらくし、観光客の最後尾が見えてきた。もう少しで開けた場所に出る。

「後少しだな……」

「うん。わたし妖怪初めて見た」

「………ごめんなさい。足でまといになって」

由比ヶ浜も雪ノ下もようやくホッとした表情になる。

 

 

しかし、

 

「ふははははははっ、見つけたぞ!小娘!」

 

その声に俺は振り返る。

 

「ん?忌々しいゾンビ男も一緒か、ちょうどいいお前も一緒に始末してやる」

式服姿のその男は俺にも声をかけてきた。

 

「お前みたいな奴は知らんぞ。他を当たってくれ」

俺はそのまま、雪ノ下と由比ヶ浜に前を見て走れと指示して、そのまま走り出そうとする。

 

「貴様も俺をバカにするのか!よく聞けゾンビ男!俺は土御門次期当主の土御門数馬だ!」

そう言って、数馬は指を鳴らすと、俺たち3人の周りに9体の餓鬼が地面から湧き出す。

完全に囲まれた。

 

「ヒッキーーー!」

「…………」

由比ヶ浜は叫びながら俺の袖を引っ張り、雪ノ下は震えながら無言で俺の手を握りしめる。

 

俺は再び、振り返りその男を見る。

「………知らんな。お前みたいなやつ、似ているやつなら知っているが……俺の知り合いにお前みたいなオデコに短小の角オブジェを付けたやつなんぞ居ないはずだが」

………まずいな。あれは角だな。こいつ半分妖魔化いや鬼化してやがる。ランクAに近い霊力をまとってやがる。半鬼化してパワーアップしたか?…しかし、なぜこいつ(土御門当主の次男)がこんな事に………いや、再封印がうまく行っていないのと関係しているのか………

くそ、こんな時に横島師匠は何処に行った!?

 

「くそ、どいつもこいつも俺をバカにしやがって!……まあいい、そこの分家の小娘。貴様をあの陽乃の前で喰らってやるわ。霊力がなくとも我が一族の血がながれているのだろ?その血で俺の糧になれ!そして、あの陽乃の絶望した顔を俺に見させてくれ!ふはっふはひひひ!!」

こいつの狙いは雪ノ下か………しかし、すでに言っていることが妖怪妖魔と一緒だな。半鬼化した影響か………すでに自分が妖魔なのか人間なのか区別が付いていないようだな。人間としての心は権力への執着心と陽乃さんへの嫉妬心のみか……

 

 

「大丈夫だ。だが二人共少し離してくれないか……そこでじっとしておいてくれ。大丈夫だ」

…潮時だな。

俺は不器用な笑顔を二人に見せる。

そう、俺もゴーストスイーパーの端くれだ。

こいつらは俺が守る。

 

「ヒッキー?」

「……比企谷くん?」

 

 

「ふひひひひひっ、貴様は殺してから陽乃の前にその素首を放り投げてくれる!!」

 

 

「ごちゃごちゃうるさいんだよ。あんた。………あんたは既に外道に落ちたんだよ。……ゴーストスイーパー比企谷八幡。除霊に入る」

 




始動というか、前準備になっちゃいました。
次がちゃんと八幡回です。

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