やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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(160)やはりトラブルに巻き込まれる2

 

学校の放課後、由比ヶ浜と千葉へ遊びに出かけたのだが、裏路地ですすり泣く六道冥子さんと出くわす。

六道さんに近くの喫茶店で事情を聞くと、強力無比な式神を母親に取り上げられた上で、無理矢理見合いをさせられたのだそうだ。

だが、途中で嫌になり逃げだしてきたのだとか。

そんな六道さんを追いかけて、見合い相手らしきキザったらしいイケメンが現れ、六道さんを無理矢理連れ出そうとする。

歳頃は六道さんよりもちょっと上ぐらいか。

 

六道さんの相当嫌がる姿を見て、つい、見合い相手との間に入ってしまった。

「六道さんは体調が悪いようなので、改めてもらえないっすか?」

 

「なんだ君は、関係ない人間は引っ込んでいてくれないか?」

このイケメンが言う通り家同士の取り決めに、他人の俺が間に入るのは本来お門違いだという事は分かっている。

だが六道さんは今、席に座ったままこのイケメンに嫌悪感を持った視線を向けている由比ヶ浜に涙目で縋りついている。

こんな六道さんの嫌がり様を見るとついな……。

 

「まあ、全く無関係ってわけじゃないんです。六道さんとは知り合いなんで、本人もこの通りですし……」

 

「ふっ、その制服、君は高校生かい?大人の話に子供が出しゃばるもんじゃないぞ」

イケメンが余裕の笑みを浮かべながらそう言ったのと同時に、黒服にサングラスといかにもな感じの4人が店内に入り、イケメンの後ろに控える。

このイケメンのお付きの連中か、霊気レベルからする全員ゴーストスイパーか霊能者だろう。

 

「嫌がる女性を無理矢理連れて行こうとするのが、大人の対応なんですかね?」

俺はイケメンを挑発するかのように言葉を返す。

六道さんがこんなに嫌がってるのに、このイケメンは六道さんの感情等無視して自分勝手に連れて行こうとしている。

この状況を流石に見過ごすわけにはいかないだろ?

横島師匠だったら、イケメンに媚びを売りながらすり寄って、うまい事口車に乗せて、隙を見て一撃入れるか一発ギャグをかました後、高笑いしイケメンをこけおろしながら六道さん連れてトンずらとか、うまいことやるんだろうが……俺にはそんな器用な真似は出来ない。

 

「ぐぬぬ……貴様!」

イケメンは俺のあの程度の挑発に声を荒げる。

こいつ、沸点低すぎないか?

まじで大人の対応が出来ない奴とか?

 

この様子に周囲の喫茶店の客が騒めきだし、店員が駆けつけてくる。

 

「一也様……ここは」

それに気が付いたお付きの黒服の霊能者の1人が直ぐにイケメンに声を掛け。

 

「ちっ、ここでは話づらい……外に出たまえ」

「そうですね」

イケメンの奴、体面だけは気にかける事が出来る様だ。

とりあえず返事はしたが、どうしたものか。

イケメン連中も体面もあるだろうし、街中で無茶はしないだろう。

ここは大人しくついて行って、何とか話し合いでこの場を抑えた方がいいか。

イケメン本人は沸点低そうだが、お付きの連中は場が見えてるだけにまだ冷静そうだし、何とか口八丁で今日の所はお帰り願おう。

それでも沸点低そうなイケメンが暴走して荒事になる可能性もあるが、イケメンの霊気レベルはランクCってところか、これなら何とかなりそうだ。

だがもし、特殊能力持ちや霊気変換率がやたら高くて最大霊力変換値がAレベルだったら面倒な事になる。

何れにしろ、由比ヶ浜はこの喫茶店に残って貰った方が良さそうだ。

 

「由比ヶ浜はここで待ってくれ、俺はちょっと行ってくる。六道さん行きますよ」

 

「ヒッキー、私も行くよ」

由比ヶ浜は俺について行こうとする。

 

「大丈夫だ。直ぐに戻って来るから安心しろ」

 

「でも……」

由比ヶ浜は何故か悲し気な表情をしていた。

なんだ?前にもこんな顔をしていたな……

 

「グスッ、わたしもいかないとダメなの~」

「はぁ、六道さんが行かないとどうするんですか?俺もついてますんで」

六道さんは当事者でしょ、由比ヶ浜が行くって言って、なんであなたは行かないんだ?

嫌々見合いに行かされたにしろ、途中ですっぽかしたのは六道さんなんだし、そこは相手に非はないハズ、すっぽかした事に対しては大人として詫びを入れないといけないんじゃないでしょうか?

 

「グスん。結衣ちゃんといっしょじゃなきゃ~、嫌ーよ」

六道さんは由比ヶ浜に縋りついたまま、俺に抗議する。

……由比ヶ浜の奴、随分となつかれたんだが……。

何?由比ヶ浜って、霊能者を引き付ける才能でもあるのか?

ドクターもそうだが、とびっきり癖の強い霊能者を……。

はぁ、六道さんはこうなるとテコでも動かないだろう。

 

「ヒッキーいいでしょ、冥子さんもこう言ってるし、女の子の立場からも何か言えるじゃん。あたしもゆきのんや皆みたいにヒッキーの役に立ちたいの……」

由比ヶ浜は懇願するかのように俺にそう言う。

何を言ってるんだ由比ヶ浜は?普段から由比ヶ浜には色々と助けてもらってるぞ。

俺や雪ノ下じゃ、一般の高校生の感性から随分とズレているからな。

その辺の事で色々と助かってるし、ドクターやマリアさんの事でもマジで助かってる。

GS協会やオカルトGメンは由比ヶ浜親子に感謝しなければならないんじゃないか?

あのトンでもトラブルメーカーのドクターを制御出来てるんだぞ!

 

「ふう、わかった。……まきこんだ。由比ヶ浜すまない」

いざとなれば俺が守ればいい。

いや、由比ヶ浜はドクター特性ピンクレンジャーじゃなかった、ピッチピチガハマスーツが作動して問題ないかもしれないが……。

あれって、各種術式だけじゃなくロケットランチャーに耐えられるらしいからな。

それに由比ヶ浜にもしも何かあれば、最悪ドクターやマリアさんが助けにくるだろうし。

いや、その方がまずいか、由比ヶ浜に何か被害がおよびそうになれば、イケメン一行の悲惨な末路が目に見える。

そうならないように、なんとか交渉でこの場を抑えるべきだな。

 

「ヒッキーが悪いわけじゃないよ。あたしがそうしたいだけ」

由比ヶ浜は笑顔に戻る。

 

俺はレジで勘定をすませ、由比ヶ浜は店員さんに騒ぎの件で謝ってくれる。

喫茶店を出る際に、さっと現状況を美神さんにメールで送信しておく。

メールは直ぐに返って来た。

(了解よ。あんた本当にトラブルに巻き込まれる星の下に生まれて来たんじゃない。でも助かったわ)

……その言い方はやめてほしい。まじで。

この頃、まじでそうなんじゃないかと思って来てるんで。

俺はある意味、この美神さんの返信でほっとする。

何かあっても美神さんが何とかしてくれるだろうと……。

 

 

喫茶店の外に出ると、イケメンとその付き人4人が待ち構えていた。

「もういいよ『君たちは帰りたまえ』」

イケメンは俺と由比ヶ浜に向けて言葉を投げかける。

この言葉の強制力、言霊か……。

しかも、こんな街中で人除けの結界を張りやがった。

由比ヶ浜に予め術式耐性の札を持たせて正解だったな。

 

「それが大人のやり方ですか?」

 

「なっ?言霊が効いてないだと、お前何者だ?」

自分で白状しやがったこの残念イケメン。

その程度の言霊は俺には効果は無いぞ。

勿論高レベルの霊能者である六道さんにもな。

だがこいつ、一般人の由比ヶ浜にもかけようとしやがって。

もしかすると、俺の事も霊能者じゃないと思ってたとか?

六道冥子さんの知り合いって名乗った時点で、霊能者だと考えるのが普通だろう?

 

「先に自分から名乗るのが筋じゃないですか?」

 

「霊能者だったか。いけ好かないガキだ。いいだろう良く聞け、霊能者であれば知っているだろう。私の名は松浦(まつら)一也、海聖水軍の松浦家の次期当主だ!私に盾突いた事を後悔するがいい!」

イケメンは饒舌に名乗りを上げ、俺に向かって嫌みったらしい歪んだ笑みを浮かべる。

水軍の松浦か、またとんでもないのが来たな。

水上戦を得意とする北九州の霊能家の大家だ。

そりゃそうか、六道家と見合いするぐらいだもんな、その位の家格が無きゃ成立しないか。

たしか業界誌に、大宰府鎮守を任されたという九州の若手三羽烏とか恥ずかしいネーミングの一人が松浦だったな。ということはこいつがAランクGS?とてもそうは見えないだけど。

こんな奴だったか?コラムの写真では水上の貴公子とか言って、色黒のサーファーの様な奴だったよな、確か名前は松浦達也だったような。

 

「松浦って、水上の貴公子松浦達也じゃないんですか?」

 

「それは弟だ!!私は松浦次期当主の松浦一也だ!!どいつもこいつも彼奴ばかり持ち上げるとは!世も末だな!」

ああ、あれだ。

エリートな家にあるありがちな構図だ。

出来の悪い兄と出来た弟の確執みたいな感じか?

 

「はぁ、そうなんですか」

 

「ゾンビみたいな目のそういう貴様は誰なんだ!!」

分かってはいたが、このイケメン、相当面倒くさいぞ。

 

「俺は美神令子除霊事務所の比企谷八幡です」

 

「み、美神令子の!?貴様の様な奴が!?うそをつけ!!」

美神さんの名前で、なんか慌ててるんだが。

 

「はぁ、嘘と言われても……GS免許です」

俺はGS免許を見せる。

 

「ほ、本当に美神令子の!!なっ!!!ばかな!!貴様のような奴がBランクGSだとーーーー!!」

なんか俺のGS免許見て、滅茶苦茶うろたえてるんだけど?なにこの反応は?

 

「とりあえずここは一旦引き下がってくれませんかね。六道さんもこんな感じでとても見合いの続きを出来る状態じゃないんで、後日六道家に抗議なりをして頂いた方がいいんじゃないですか?」

俺はここで正論を解く。

 

「そんな事で納得できるか!!Bランクがなんだ、部外者だろ!!」

 

「ほら、六道さんも一応謝った方がいいですよ。お見合いをすっぽかしたのは事実だし」

由比ヶ浜の後ろでこちらの様子を伺っている六道さんに前に出るように促す。

 

「え~、だって~、この人、冥子の事、お見合いの席で言霊で無理矢理従わそうとしたのよ~。冥子の事いやらしい目で見てくるし~、式神達はいないし冥子一人だったから怖くなって逃げたの」

……どういうことだ?

このイケメン、六道さんに言霊を?

六道さんは今は式神は使えないかもしれないけど高レベルなゴーストスイーパーだぞ。

霊気の内包量も霊力も恐ろしく高い。中途半端な言霊なんて効くわけがない。

そういえばさっきも俺達に言霊を使ったか……。

 

「最低……」

由比ヶ浜がぼそっと言い、侮蔑の目でイケメンを見据える。

 

「そ、それは誤解だ。何かの勘違いだ」

イケメンの目が明らかに泳いでるんだけど、マジかこいつ。

見合いの席で言霊使って相手を従わせるって最悪だろ?

 

「え~、だって、最初のお見合いの人が来れないからって、弟の替わりに来たとか言ってたし~、お母さまがお見合いの前に急にGS協会の緊急用事が出来たとか言って居なくなるし~」

何それ、めっちゃ怪しいんだけど。

弟の代理って……しかも冥子さんの式神を封印のタイミングといい、GS協会の緊急の用事で六道会長の不在、冥子さんを言霊で従わせようとか……明らかに怪しい。

 

「それって、相手に断りも入れずに急遽代行って、そもそも見合いが成立しないですよね」

俺はジトっとした目でイケメンを見据える。

由比ヶ浜に至っては更に侮蔑の目を向けていた。

 

「はっはっはーー、な、ななな何を言ってるのかね?六道さんも君たちも」

滅茶苦茶動揺してるんだけどこいつ。

しかも、お付きの連中も若干呆れているようにも見えるぞ。

 

もう一押しってところか。

「なーるほど、流石はイケメンで松浦の次期当主様!優秀な弟さんにその地位を奪われるかもって、六道家の縁談に割って入って無理矢理ご令嬢を自分の物にして、地位を安定させようとしたんすね。よっ、海聖水軍!松浦次期当主!」

俺は褒めたたえるかのように真相直撃させる。

 

「はっはっはーー、まあ、そんな所だ!ん?……んん、し、しまったーー!?ち、違うぞ!」

このタイプは動揺している所を攻めれば、あっさりゲロするとは思っていたが、こうも上手くいくとは……。

とことん残念なイケメンだな。

 

「「…………」」

由比ヶ浜の侮蔑の目と六道さんの軽蔑の目が松浦一也に向かう。

さらにお付きの人も明らかに呆れている。

こんなのに付き従わないといけないとは苦労が絶えないのだろう。

 

「まあ、この件は六道さんの母親の六道会長に報告しますんで、それなりの仕置きを覚悟してください」

この一也って人、松浦の実家からも、六道家からもキツイお灸をすえられるだろうな。

もしかすると、次期当主の座もはく奪されるかも……。

確かに霊能は生まれ持った才能などに将来が左右される。

だが、この人もそこそこの才能は有ったはずだ。

霊気量だけで言えばCランククラスはある。

術を磨けばBランクだって行けるはずだ。

こんなくだらない事をする暇があれば、修行に励めばいいものの。

……天才の弟を見て育ってしまって、その差に苦しんだのかもだが、そこで絶望するか、受け入れて成長するかの選択は出来たはずだ。

それに霊能者だけが人生じゃないだろう。イケメンだし、第三の選択もあるだろう。

だが、霊能の大家の息子ってことで、それは許されないことなのだろう。

まあ、俺だったら、第四の選択として受け入れて、弟の脛をかじるっていう選択をするけどな。

 

ふう、なんとか話し合いだけで纏まりそうだ。

 

「くそくそくそっ!!どいつもこいつもバカにしやがってーーー!!こうなったら!!」

なんだ?懐に手を入れて………まさか!?

俺は一瞬嫌な記憶を思い出す。

GS若手能力テスト時の安田とかいう先輩との戦いだ。

激高した奴は、オークを召喚し、指定危険術式の魔装術まで使いだした。

最後には魔装術が制御不能となり魔物に変貌してしまったのだ。

あんな事は二度とごめんだ。

 

「おい!」

俺は咄嗟に身構え、霊視空間結界を発動させるが……

 

だが一也が懐から取り出したものは何の変哲もないスマホだった。

しかも、涙目でなんか方言でどこかに電話しだしたぞ。

「ばーしゃまにいいつけっとね!!……もーしー、ばーしゃま?」

ばーしゃまって、ばーちゃんか?もしかして、ばーちゃんに愚痴を言ってるんじゃないだろうな?

本格的な残念イケメンの上に、残念次期当主だな。

大丈夫か?松浦家。

 

なんか、お付きの人の二人がそんな一也を手慣れた感じで引っ張って車に乗せ、後の二人が俺と由比ヶ浜に深く頭を下げ、お茶代と称して、俺と由比ヶ浜に封筒を渡す。

因みに封筒の中身は1万円が入っていた。

もしかして、この一也ってしょっちゅうこんな感じのトラブルを起こしてるんじゃないのか?

 

 

 

「六道さん、家に電話しても大丈夫じゃないですかね。ちゃんと事情を話せば六道会長もわかってくれると思いますよ。そもそもお見合い相手の方が不正をしていたんですから」

 

「でも~、比企谷く~ん。この頃お母さまは怒ってばっかりだから~」

 

「わかりました。俺が事情を話しますんで……」

 

「比企谷く~ん。だから大好きよ~~」

これ程嬉しくない大好きはない。

六道さんと付き合うという事はこういう事なのだろう。

友人の美神さんの苦労が少しわかった気がした。

 

俺と由比ヶ浜は六道さんと再び喫茶店に入り、しばらくして六道さんのお迎えの高級車が来て、人を巻き込むだけ巻き込んでおいて、満面の笑みで帰っていった。

 

「由比ヶ浜、すまなかったな」

「ううん。ヒッキーはヒッキーらしいなって、ヒッキーの優しい所と男らしい所とか見れたからよかった。やっぱりあたしが好きになった人はかっこいいんだって」

「な!?何言ってんだ!?」

「でも、ヒッキー……あたしに一番優しくしてほしいな……なんてダメ?」

「な……ななな、ちょ」

滅茶苦茶恥ずかしいんですが?

由比ヶ浜をまともに見れないというか、意識してしまう。

やはり由比ヶ浜結衣は可愛いとは思う。

 

 

六道冥子さんの一騒動はこれで終わりだと思っていたのだが……

 

後日、六道さんの自宅に呼ばれる事に。

この前の松浦家との見合いの件で、だとか。

俺、何か不味い事を言ってしまったのだろうか?

 

横島師匠からは「八幡、頑張って生きろよ」と不吉な言葉を頂き、美神さんからは「あんた、覚悟して行きなさいよ。相手のペースに陥ったら終わりよ。まあ、骨位は拾ってあげるわ」と超不吉で不穏な言葉を頂いた。

 

一緒についてきてくれないんでしょうか?

 





次回、八幡、六道家に逝くです。
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