やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
すみません。間が開いちゃいました。
俺は結局、週明けの午前中は学校を休む羽目になった。
先日、六道家のお見合い騒動で冥子さんの式神十二神将の暴走に巻き込まれ、ズタボロに……。
目を覚ませば、横には美神さんと美智恵さんと六道会長が同じく、ベッドで横になっていた。
そこは六道家が経営する総合病院の病室だった。
この病院には心霊医療科があり、高度な心霊医療が可能な病院で全国からも患者が多く訪れる病院だった。
俺は肋骨と右足の骨折で重傷だったが、横島師匠が文珠で回復してくれて、翌朝の月曜日に退院し、一度家に帰り午後から学校へと向かう。
キヌさんから俺が入院したと聞いたらしく、由比ヶ浜や雪ノ下は病院に駆けつけようとしてくれたらしいが、翌日には退院出来ると、わざわざ来てもらう程の事じゃない事を伝えて貰った。
本来なら1~2週間の入院が必要だったようだが、横島師匠のお陰で翌日には退院だ。
横島師匠の文珠は万能すぎだろ?マジで。
まさしく、ドクターの若返りの霊薬に匹敵する霊宝と言っていい代物だ。
美神さんはそれ程深手を負ってなかったため、キヌさんのヒーリングで回復、美智恵さんと六道会長は外傷がほとんどなく、霊気をほぼ使い切ったためにぶっ倒れたようだ。
なんにしろ、俺も美神さんも美智恵さんや六道会長も霊的構造や霊気の回復のため、仕事はしばらく休まなくてはならない。
冥子さんの式神暴走の被害は、爆心地に居た俺達だけでなく、六道家の霊能者や家人にも被害が出たが、死亡事故までに至らなかったらしい。
あの木造のお屋敷も半分消滅、復旧に時間がかかるとか……。
六道会長は俺達に暴走に巻きこんでしまった事を謝りつつ、ケロっとそんな事を言っていたが、あの規模の暴走事故は六道家では結構普通にある事なのかもしれない。
恐るべし六道家。
冥子さんの式神暴走をまともに喰らって思った事がある。
そりゃ、結婚できないなと……。
あんなのどうすればいいんだ?
美神さんや美智恵さんでさえ、あの有様だぞ?
冥子さんの結婚相手はきっと毎日が命懸けのサバイバルだ。
命がいくつあっても足りない。
もう、普通に考えて横島師匠しか無理だろ?
冥子さんの式神暴走をまともに喰らっても、10分程で復活するし。
だが、それは現実的にはあり得ない。
冥子さん自身が横島師匠を苦手なようだし、横島師匠は色気に惑う事はあるかもしれないが、まだ死別した恋人の事を思ってるからな。
とんでもない目には合ったが、なんにしろ、六道家お見合い騒動から何とか逃れる事が出来た事は確かだ。
ふぅ、なんだろうか?
こんなろくでもない日常に慣れていく自分が怖い……。
昼休み中に学校に到着し、昼食どきの奉仕部の部室に顔を出しに行く。
由比ヶ浜と雪ノ下には一応入院だと伝えていたため、心配をかけてるかもしれないしな。
「ああっ!ヒッキー!怪我は大丈夫だったの!?」
「比企谷君、病院に運ばれたと聞いて……もう具合は良いのかしら?」
何時もの昼めしの席から由比ヶ浜と雪ノ下に少々心配そうに俺は訪ねられる。
「ああ、横島師匠に治療してもらったから、この通りだ」
俺は無事をアピールするために首をすくめて、少々おどけてみせる。
実際、重傷だった。
何か所か骨折していたし。
こいつ等が心配するからこの事は黙っておくのが無難だろう。
陽乃さんが部室の後方に設けられた霊災相談窓口のテーブルから顔を出し、こちらに歩んで来る。
「意外と元気そうでよかったわ。怪我したって聞いて、六道冥子のあの式神暴走に巻き込まれたのかと思ったわよ」
「まあ、そのなんていうか」
俺は適当に誤魔化す。
「でもヒッキー、なんで冥子さんとお見合いで怪我をするの?」
「そうね。あなたが横島さんのように女性に手を出すとは考えにくいわ」
由比ヶ浜は心配そうに、雪ノ下は少々首を傾げながら俺に聞く。
確かにお見合いで怪我とか普通あり得ないよな。
「まあ、なんだ……事故に巻き込まれた感じだ」
流石に冥子さんが泣いて式神暴走したのに巻き込まれたとは言い難い。
「………やっぱり、ろくでもないわね六道冥子」
陽乃さんはどうやら俺の答えで、式神暴走に巻き込まれた事に勘づいたようだ。
陽乃さんも稲田姫の時に冥子さんの式神暴走を目の当たりにしてるからな、そりゃそう思って当然だろうな。
「というか、ヒッキーはなんで冥子さんとお見合いとかになったの?」
「由比ヶ浜さんに送られてきたあのお見合い写真の件で、美神さんと横島さんに電話で相談したのだけど、美神さんは怒っていたわ。でも、横島さんはただ巻き込まれたのだろうと、あなたを信じて待ってやってほしいと私には言っていたのだけど、あなたの口からは経緯は聞いておきたいわ」
どうやら、あのお見合い写真とコメントはやはり由比ヶ浜から雪ノ下経由で美神さんだけじゃなく横島師匠にも届いたって事か。
「ああ、先日由比ヶ浜と巻き込まれた六道さんと見合い相手の騒動の件で詳しい状況説明がほしいとかで六道家に行ったんだが、何故だか六道さんとお見合いの予行演習をやらされる羽目になった。まあ、美神さんと美神さんの母親が来てくれて、何とかなったが、その代償が怪我ってところか」
「ふーん。六道家も八幡を狙ってるって事かしら?」
陽乃さんは一瞬目を細める。
「うーん。冥子さん美人だし……ヒッキーはどう思ってるの?」
「どうもこうも無い、六道さんとは美神さんの友達って事で少々知り合いなだけだ。だが、その六道さんの母親がアレだ。婿探しに苦労してる感じで、たまたま俺が巻き込まれたってところだ」
「日本トップの霊能家の六道家でそうなのね。一度没落しかかった姉さんの所の土御門家ならなおさらね」
雪ノ下はそう言って横目で陽乃さんを見やる。
「雪乃ちゃん、そんな言い方しなくてもいいじゃない。雪ノ下もその没落しかかった土御門家の分家よ。そうね、正直言って比企谷君は、霊能家の婿選びの選択肢としてはかなり有望なのよ。この年でBランクGSよ。しかも霊能家の出ではないから跡継ぎ等のしがらみが一切ない。しかも、SランクGS美神令子の事務所所属よ。比企谷君自身の性格や素性を知らなくとも、それだけの情報だけで手を出してもおかしくないのよ。ただ、比企谷君は未成年で学生と言う事で比企谷君の情報は制限されて業界内でも知れ渡ってないから、今はなんともないようだけど、高校卒業したらどうなるやら……。因みに私は八幡自身を愛してるからよろしくね」
陽乃さんは雪ノ下の言葉に少々拗ねて見せてから、俺の取り巻く状況を説明してくれる。
「はぁ?なんですかそれ?俺ってそんな感じなんですか?」
なにそれ怖い。どこの平安貴族か戦国時代の大名だよ。
陽乃さんの最後の言葉は聞かなかった事にしよう……この場で意識するとなんかまずい。
「あなたはもう少し自分の立場を理解した方がいいわ」
雪ノ下は頭痛がするかのような仕草をし、呆れたように俺に言う。
雪ノ下も陽乃さんの最後の告白の様な言葉を最初からなかったかのように無視する。
「でも、ヒッキーはお見合いとか嫌なんだよね」
由比ヶ浜も慣れたのか陽乃さんの告白めいた言葉を当然のようにスルー。
陽乃さんがこの学校に来るようになってから、こんな感じでちょくちょく枕詞のように告白じみた言葉を放ってくるのだ。
最初は雪ノ下と由比ヶ浜はいちいち反発していたが、今じゃこんな感じでスルーだ。
俺もそれに倣っていちいち反応しない様に心がけてはいるが……。
「嫌とかの前に、普通に高校生活を送ってる奴が見合いとか考えるか?想定外も良い所だ」
まじで、見合いとかマンガの世界や時代劇でしか見た事が無い。
「そ、そうだよねー、お見合いとかテレビドラマとかでしか見た事ないし」
由比ヶ浜も俺と同意見の様だ。
「そう、普通はお見合いを考えないのね」
「いいわね。私達の家では普通にお見合いの話はあるわ。私なんて、数馬兄さんとお見合いさせられそうだったのよ。去年の件でそれは無くなったのだけど」
どうやら雪ノ下家ではお見合いの話が普通にあるようだ。
雪ノ下の家は霊能家の分家とはいえ、霊能者の血筋としてはかなり薄まっているため、例外(陽乃さん)を除いて霊能の血の継承のためにと霊能者同士の結婚という概念はほぼ無いだろうに。
と言う事はだ。上流階級というか金持ち間ではお見合いは普通にある話なのだろうか?
見合いなんてものは昭和初期でほぼ絶滅したと思ってた。
いや……そういえば、巷では出会いサイトとかマッチングアプリとか有るな、あれはアレで形を変えた現代のお見合いなのかもしれない。
「まあ、六道さんは予行演習のつもりで本気じゃなかったようだ。そもそも六道さん自身、俺の事は何とも思ってないだろうしな」
実際、六道さん自身は予行演習のつもりだったろうが、六道会長の思惑はそういう名目で、無理矢理見合いを……っていうか、そんなものすっ飛ばして婿にさせられそうになった。
「そうかな~?なんかLineの冥子さんは……うーん。ヒッキーは知らなくていいや」
「いずれにしろ警戒は必要そうね」
「そうね。今度六道が八幡にちょっかい掛けてきたら、少々痛い目に遭ってもらおうかしら」
由比ヶ浜は何故か少々ふくれっ面で、雪ノ下は呆れたように、陽乃さんは目をギラつかせながら、そう締めくくる。
「………当分は大丈夫だと思うが」
もう六道家と関わるのは勘弁してほしいが、そうもいかないだろう。
六道家は業界の重鎮で、しかもGS協会の会長だし、冥子さん自身は美神さんの友人だし……。
今は考えるのは止そう。
放課後の奉仕部では、今週末に開催される文化祭の準備を進める。
今年の奉仕部は文化祭で展示物を行う事になっている。
GS関連の展示だ。
霊的災害や霊障や霊、妖怪やGSについて正しく知ってもらうためという名目だ。
言い出したのは陽乃さんで、どうやら美智恵さんの入れ知恵があったようだ。
折角プロのGSである陽乃さんやタマモが大規模霊災関連で派遣されてる事だし、奉仕部もその手伝いとして、こうして霊災相談窓口を行ってる関係上、あっさり生徒会やら学校側から許可が下りる。
学校側からは是非との事だった。
社会貢献や社会を学ぶいい機会だとか、これこそ文化祭に相応しいだとか、特に教頭から賛辞を贈られた。
確かに、この展示は教育という観点からも意義がある物だろうが……。
準備と言っても、去年に比べるとやる事は少ない。
GS協会とオカGの全面協力の元、GS協会本部の展示場からの貸し出し物や、普及のための販促物をたんまり、渡されていたからだ。
もちろんこれも美智恵さんの入れ知恵だ。
この事もオカGやGSの普及活動の一環なのだろう。
奉仕部の部室である別棟の教室以外に、部室と同じ階で二つ隣りの角部屋の大会議室を借りている。
部室はパネルなどの展示室を行い。大会議室では体験コーナーだ。
この体験コーナーは主に陽乃さんが担当する。
この前の職場体験と同じように訪れた人に霊力を計測の体験をしてもらうとか……美智恵さん、相変わらずこの辺も抜かりないな。
それとスクリーンを使って映像も放映する。
映像の中身は知らないが、たぶん、これも普及のためにGS協会とオカGが共同作成した映像だろう。
そんなこんで、週末の文化祭当日。
予想外にも奉仕部のGS展示場は大盛況で、かなり忙しい。
真面目な展示で、面白みは無いだろうとは思っていたのだが、怖いもの見たさなのか、それとも、陽乃さんやタマモ、雪ノ下や由比ヶ浜と、美人どころ目当てなのかとも思っていたのだが、意外と興味があって訪れる生徒や一般客が多い。
実際、ここで大規模霊災にあったからな、興味や危機意識を持っていたりと、それぞれ何か感じる物があったのだろう。
普及という意味では成功ではないだろうか。
展示物は、写真付き展示パネルと実際に除霊に使われる術具が多数展示され、さらには霊災がどのように起こるかなど、かなりマニアックな説明パネルなどもある。
これらはほぼ、雪ノ下が担当していた。
由比ヶ浜の担当は、妖怪や幽霊の展示パネルだ。
由比ヶ浜が可愛くデフォルメしたイラストが描かれている。
まあ、幽霊は良いとして、妖怪とか見た目が気持ち悪い奴とかが大半だしな。
本物に近いイラストなどが見たきゃ、GS協会本部の展示場に行けば見れるが、流石に高校の文化祭では憚れる。
因みにゾンビのイラストが俺に似ているのは何故だろうか?
陽乃さんが取り仕切ってる霊力を測る体験コーナーは時間を区切って数回にわけ実施される。
あまりにも体験希望者が多いため、午後からは抽選で行う程だった。
霊力を測るなんて事は普通に生活していれば、こんな機会がない限り無いからな。
まあ、バトル漫画とかである戦闘力を図るみたいな感覚なのだろう。
体験した生徒達は霊力の数値で一喜一憂している。
映像の方は……、俺が当日取りやめとした。
陽乃さんが持ち込んだ映像は、陽乃さんの実際の除霊風景だった。
しかも、相手は妖怪だし……。
式服姿の陽乃さんが妖怪をバッタバッタと倒す映像が映るのだが……倫理的にアウトを出したのだ。
そこに映っていたものは、緑や紫の血しぶきや内臓やらが飛び交い、妖怪共の断末魔が響き渡る……。
アウトーーーー!!思いっきりアウトだろ!!
R-18指定も良い所だ!!グロ耐性が無かったら気絶もんだぞ!!スプラッタ過ぎるだろ!!
陽乃さん曰く、「テレビゲームとかで皆やってるんでしょ、こういうの」とか言い訳を言っていたが……。
確かにそんなゲームも多数あるし、好きな奴は好きだが!これはあまりにもリアリティが半端ないだろ?
バイオハザードのゾンビ初登場でビビってた連中だったら、トラウマもんだろ!
やはり、そんな事が日常茶飯事なGSや霊能者は、その辺が麻痺してしまうのだろうか?
とまあ、そんな事もあったが順調に事は進んでいる。
展示場の受付や体験コーナーの休憩中には、由比ヶ浜や雪ノ下、陽乃さんとそれぞれと他の展示や屋台を巡ったり、まあ、そういう気恥しいイベントもあったり、何故か一色に捕まり、生徒会の手伝いをさせられたり、川崎の妹のケーちゃんのお守りをしたりとかもあった。
今は制服姿のタマモと学内を巡っている。
「タマモ、文化祭はどうだ?騒がしいのは苦手だと思っていたが」
俺は、ベンチに座り綿飴を舐めるように食べているタマモに聞く。
タマモも奉仕部の文化祭の展示物の準備を積極的に手伝い、当日は展示場の受付も行っていた。因みに小町は生徒会の仕事の方が忙しく、奉仕部には中々顔が出せていない。
タマモは普段人ごみを避けるし、こう言う場所は苦手だと思っていたが、楽しんでいるように見える。
「お祭りは好きよ」
「まあ、確かに祭りだな」
「祭りの日は皆、争わないでしょ?安心できるわ」
「どういうことだ?」
「こうして若い子が皆、何のしがらみも無く本を自由に読めて勉強もさせてくれて、食べ物にも困らなくて、こうやって騒ぐことが出来るなんて、良い時代よ。私の前世では考えられなかったわ」
タマモは騒がしい校内を見渡しながら綿飴を片手にしみじみとこんな事を言う。
タマモの前世と言う事は、だいたい800年前ぐらいの平安時代だったか。
その頃は一般に学校なんてなかっただろうしな。
学ぶ機会なんてものは貴族や豪族、僧侶ぐらいだったハズ。
勝手な想像だが、庶民は生きる事に精一杯の時代だろう。
「まあ、その……なんだ」
俺は言葉に詰まる。
「封印が解かれて復活した時は、また人間と生活するとは思ってなかったわ。しかも私の正体(妖怪)を知ったうえで接して来る人間がいるなんてね。あんた達相当変わり者よ」
「まあ、あれだ。お互いを知ればなんとやらって奴じゃないか?雪ノ下だって物の怪の類は全くダメだったが、タマモやシロにはそんな素振りも見せないだろ?俺だって横島師匠に出会うまではこうやって話せる相手なんだと知らなかったしな」
俺がこういう考えを持ったのは、横島師匠やキヌさんの影響だろう。
この二人は特に妖怪だけじゃなく霊ですら、差別をしない。
まあ、横島師匠の場合は美女だったら、妖怪や霊も神様も悪魔も関係ないんだろうが……。
俺の周りには妖怪や霊でも仲良くできるという考えを持った人たちばかりだったが、プロになってから、GSの中にも妖怪だ霊だというだけで、有無も言わずに除霊するような奴が結構いる事を知った。
今では法整備され、妖怪等にも生活圏の保障が明記され、法で保護されているが、妖怪妖魔を絶対悪とみなしてる妖怪妖魔排斥者は霊能者やGSだけでなく世間のどこにでも居る。
だから、タマモとシロは妖怪だと堂々と名乗り外を歩かせるわけにはいかない。
何れは二人が自分の本来の姿で大手を振って生活が出来る日が来ると信じたい。
それこそ、猫耳アイドルしかり、キツネ耳しっぽ、狼耳しっぽのアイドルが誕生するかもしれない。
タマモなんて見た目は超美人だからな、受け入れてくれる可能性は大きいとは思う。
本人は絶対嫌がるだろうがな。
「そうね。私もよ」
普段からすまし顔を崩す事はほとんどないタマモが、笑顔でそういった。
こうして、高校最後の文化祭が終わりを告げる。
因みにキヌさんがシロを連れて遊びに来てくれたが、横島師匠は例の如く海外出張で日本には居なかった。
その晩、小町とタマモとの夕飯時、テレビニュースでは……。
『某国軍が隣国国境を越境し、国境警備隊を突破し侵攻しておりましたが、街を占拠することなく突如全軍撤退いたしました』
そこって、横島師匠の出張先だよな……たしか大型魔獣退治とか言ってたような。
「お兄ちゃん、ネットニュースとかツイッターとかで見たんだけど、侵攻してきた軍の人がみんなズボンとパンツがズレ落ちたんだって、それで慌てて引き返したって、そんなのありえる?やっぱりフェイクニュースかな?」
夕飯を食べながら一緒にニュースを見ていた小町は俺に質問をする。
「………そう言う事もあるかもな」
俺はその小町の話を聞いて思い当たる。
……これって横島師匠の仕業じゃ?
横島師匠のイケメン専用のインスタント呪術、パンツのゴム紐が切れる呪いと、チャックが閉まらない呪いじゃ?
呪いとか普段使わないくせに、何故かわけがわからない呪術だけ得意なんだよな。
イケメン専用と名をうっていても、西条さんにしか使ってる所を見たことがない。
この前も西条さんとお互いくだらない呪術の応酬を行っていた。
横島師匠はチャックを閉めると必ずアソコを挟む呪術を、西条さんは西条さんで尿漏れを起こしてパンツにシミがつく呪術を横島師匠にかけようとして、お互い呪詛が跳ね返って自分の呪術を喰らってたよな。
本来、横島師匠の嫉妬心を核にした呪術だが、横島師匠の文珠で呪術の応用範囲を拡充させて、侵略軍全体にかけたのかもしれないな。
………しかし、このニュース気になるな。
大型魔獣が暴れている所に、軍の侵攻か……。
横島師匠が派遣されていたからよかったものの。
俺はふと、この前のプロフェッサー・ヌルとの戦いと人を使ったキメラを思い出し、嫌な予感がしてたまらなかった。
最後の方の話を入れようか入れまいか考えていましたが、次のお話に繋がるため、入れさせていただきました。すみません。
次は弟子編です。