やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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ではアナウンスどおり弟子編を


(165)遂にこの日が来たか。弟子編①

俺は今、東京のGS協会本部5階に来ていた。

本部5階はGS協会所属の民間GS事務所やGSが各種手続きや相談を行うための窓口となっている。

GS事務所設立の手続きや、GSの事務所の退所手続きや移籍手続き、GSの事務所斡旋なども行っている。

要するに、GS版の労働局や職安の役目も果たしているお役所窓口だな。

 

何で俺がそんな所に居るかって?

別に美神令子除霊事務所をやめさせられたとか、オカGに移籍させられるとかじゃない。

 

 

俺はそこの応接室に通され、堅めのソファーに座らされる。

俺の横には美神さんとキヌさんが、斜め横にはオカルトGメン東アジア統括管理官の美神美智恵さんとGS協会の総務課長さんが座っている。

そして、俺のテーブルを挟んで対面には鶴見源蔵氏と鶴見留美がちょこんと座っている。

 

そう、留美が俺の弟子になるための手続きを行っているのだ。

 

小竜姫様は俺が弟子をとる事は賛成だと言って下さったが、俺自身にまだ自信がない。

弟子を取るという事は、人を育てるという事だ。

そもそも元ボッチで、GSとしても経験も薄く、力も半端者の俺の様な若造が人を育てるとか、おかしいだろ?

俺は弟子の件を断ろうと、何とか留美や源蔵さんを説得しようと試みたが全く話を聞いてくれない。

勿論美神さんにも説得を行ったが、全く取り合わないどころか、所長命令だと睨まれる始末。

……まあ、こうなるだろうとは思っていたが、遂にこの日が来てしまった。

 

GSの弟子関連の手続きは、通常書類審査で通る事が殆んどらしいが、他の事務所同士で師弟関係を結ぶ場合など特殊な場合は、法律で整備されていない部分も多いらしく、こうしてGS協会で立会人を設けて、契約手続きを行うのだそうだ。

美智恵さんが何故ここにいるかというと、どこかで俺と留美の師弟契約を知ったらしく、立会人をかって出たのだとか。

たぶん美神さんの監視のためなのだろうな、美神さんは鶴見家へ理不尽な要求をしないでもないからな、まあ、横にキヌさんもついて来てくれてるから、そんな事にはならないだろうが。

 

今回の弟子制度の手続きで面倒なところは、留美が津留見神社鶴見源蔵氏の弟子から、美神令子除霊事務所の俺比企谷八幡の弟子に移籍するという事になるからだ。

このような例はあまりないようで、近い例として、師匠が死亡または再起不能、若しくはGS免許はく奪された場合に移籍を行ったのだとか。

今回の場合、師匠である鶴見源蔵氏は健在である。

しかも、留美の祖父で血縁者であり、未成年の保護監督者でもある。

そこで美智恵さんやGS協会の提案で、六道女学院や都立大除霊科やGS専門学校などが扱ってる制度を適応した方が良いとの事だった。

GS専門学校等の場合、実習演習等の教育を円滑に行うために、校長や担任教諭が師匠となり、授業毎には担当講師に一時的に師匠の権限を受け渡すという制度だ。

要するに俺と留美の場合、立場的には鶴見源蔵氏が主師匠で、俺が副師匠と言う事になる。

まあ、簡単に言うと留美は家では源蔵氏が師匠で、俺の所に来た時は俺が師匠となる。

もっと簡単に言うと、留美の師匠は源蔵氏と俺の二人という事になる。

俺はこの制度を聞いた時には幾分か肩の荷が下りる気がした。

源蔵氏もどこかホッとした表情をし「いい塩梅じゃな」と頷いていた。

 

今回の弟子の件はこれ以外にも問題がある。

留美が俺の弟子になるという事は、美神令子除霊事務所の仕事に立ち会う事になるからだ。

その逆に、俺が津留見神社の除霊に立ち会うというパターンもあるだろう。

美神令子事務所の仕事に立ち会う際の留美の監督者はもちろん師匠である俺になるが、問題は給与面だ。

ただ単に立ち合いだったら給与などは発生しない。

まだ13歳で俺の弟子とはいえ、除霊準備等の雑用や除霊そのものをやらせてしまった場合は留美にも時給が発生する可能性があるからだ。

その場合、俺から留美に出すのかと思っていたのだが、どうやら事務所の仕事の場合、事務所から出さないといけないらしい。

美神さんは渋い顔をしていたが、どうやら初めから分かっていたようで、仕事の立ち合いに出向いた際のみに時給発生することに渋々了解していた。

ただ、留美の訓練のために事務所の資材を使った場合は俺が事務所に支払う事になる。

これは当然の処置だろう。だが、源蔵氏がその分を後で俺に払ってくれるらしい。

まあなんだかんだと、留美が事務所に出入りすることはタダで良いと。

事務所施設使用料払えと言われなかったのはありがたい。

まあ、俺の弟子って事は美神令子除霊事務所所属の弟子と言う事になるため、必要ないと言えば必要ないのだが……。

それと、俺の場合はアルバイトを兼務していたからそんな事はなかったが、赤の他人を弟子にする場合は、GSの学校と同じく、弟子が師匠筋に礼金を払うのが通常らしい。

いや、俺の場合あの1000万の借金がそれにあたるのかもしれない。

 

逆に俺が津留見神社の除霊に立ち会う場合に、美神さんは口を挟む。

「こいつは私が鍛えたのよ。そんじゃそこらのBランクGSなんて目じゃないわ。それにうちは暇じゃないのよ。出向費はおおまけにまけて相場の3倍は頂くわ。それにそちらに立ち会い人がいない場合、比企谷君と留美ちゃんだけで依頼をこなした場合はうちの事務所が代わりに除霊を行ったのと一緒よね。その場合は依頼料の9割はうちに頂くわ。そちらの弟子を鍛えてあげるんだからそれ位当然よね」

流石は美神さん強欲だ。流石にきびしいんじゃないか?

俺としてはこれで契約が成立しなきゃしないでもいいんだが。

それと、俺の師匠は飽くまでも横島師匠ですよ。

次は小竜姫様です。

確かに美神さんには、実戦さながらに鍛えられましたが、妖怪の囮にされたり、盾にされたりと……。

 

「令子、あなたと言う子は……すみませんね鶴見先生」

立ち合いの美智恵さんはその美神さんの言動に、頭痛がするかのように頭を抑え、源蔵氏に謝る。

 

「いいや、美神令子殿の言い分も当然じゃ。弟子を鍛えてもらうんじゃからな。それにこちらの依頼に八幡殿が来てくれるのはありがたい。但し、ちとこちらも台所事情がきびしくての、八幡殿だけに除霊を行かす事はないじゃろう。どうじゃろか?相場云々にわしは疎くてのう、津留見神社のどんな依頼でもわしらの立ち合いの元で、八幡殿が来られた場合、依頼料は5割を美神殿の事務所へというのはどうじゃ?留美関連の保険を含めた諸経費は当然こちら持ちじゃ、それとは別に依頼料の1割は八幡殿の礼金代わりでかまわんか?」

 

「……いいわ。それで契約決まりね。お互いいい関係になりそうね」

美神さんは少し考えてから、それに笑顔で答える。

どうやら、美神さんの頭の中では十分以上に利益が出ると踏んだのだろう。

そりゃそうか。1000万の依頼料で考えると俺の出向費の3倍よりも、折半の方が儲かるしな。

こんな不利な契約だ。それなら、俺が津留見神社の依頼を手伝う事はほとんどないのだろう。

 

「いや、俺はそこまでしてもらわなくとも」

未熟者な俺が師匠なんておこがましい上に礼金とか、逆に気が引けるし。

 

 

「比企谷君、それは貰っておきなさい。令子は遠慮と言う言葉を覚えなさい……鶴見先生、本当に良いのですか?」

美智恵さんは、美神さんに呆れ顔を向けた後、源蔵氏に尋ねる。

 

「いいじゃないママ、向こうが良いって言ってるんだから」

 

「はっはっはーーーっ、かまわんよ。美神の突撃娘の子にしては金にうるさいようじゃ」

源蔵氏は豪快に笑いだす。

 

「もう、その呼び名はやめてください。私はもう42で2児の母ですよ」

 

「そうじゃった。そうじゃった」

どうやら、源蔵氏と美智恵さんは昔からの顔見知りの様だ。

しかし、美智恵さんって若い頃、突撃娘って呼ばれてたのか……。

今の冷静沈着な美智恵さんからは想像がつかないな。

 

 

GS協会の総務課長さんが契約書類を作成し、GS協会とお互いの事務所と俺の印鑑を押し、契約が締結される。

 

俺は源蔵さんに握手を求められ、それに応じる。

「八幡殿、留美をよろしく頼むぞ」

「未熟者なんで、何か間違ってれば指摘してください」

 

「八幡、よろしくね」

「あ、ああ」

 

「これ留美、比企谷師匠じゃ」

「うん、比企谷ししょー」

 

「いや、普段通りでいいぞ」

「八幡殿、それじゃケジメが付かん」

師匠とか呼ばれるのはなんというか、俺が耐えられないんだが。

 

「じゃあ、八幡ししょー、ししょーよろしくね」

なぜか師匠って言い方が可愛らしくなってる留美。

わざとか?わざとなのか?普段、背伸びして大人っぽく振舞おうとしてる癖にそこだけ何で子供っぽいんだ?

 

ゴーストスイーパー横島忠夫の弟子になって2年半、ゴーストスイーパーの免許を取って1年足らずで弟子をとる事になってしまった。

 

 

この後、美神令子除霊事務所に留美を連れ、事務所の面々に所謂弟子のお披露目をすることに、さらにその後には、留美の両親に挨拶をするために津留見神社に行く予定となっている。

源蔵さんとは、GS協会の1階にある喫茶店で少々打ち合わせをした後、東京で用があるとかで別れ、うちの事務所には顔を出さずに用事を済ました後は津留見神社に戻るとの事だった。

 

俺は留美を連れ、徒歩で事務所に向かう。

事務所までは凡そ30分、留美は嬉しそうに俺に何だかんだと話しかける。

……これ、周りから不審者に見えないだろうか?少女をかどわかして連れまわす不審者に。俺と留美じゃどうみても兄妹に見えないだろうな。

俺も車の免許を取った方がいいな、これ。

横島師匠も高卒前に免許取ったって言ってたし。

 

 

今日の午前中は仕事が無いため、事務所にはフルメンバーが揃っていて、留美の顔合わせが出来る手はずだ。

既に美神さんとキヌさん、雪ノ下とは顔を合わせているし、たぶん人工幽霊もな。

後はタマモとシロと……横島師匠か。

よく考えれば、留美をうちの事務所で過ごさせるのは精神衛生上にも教育上にも良くない。

留美はまだ13歳だ。

うちの美神さんや横島師匠の異様な日常を目の当たりにさせるには随分と問題があるだろう。

うちの事務所はR18指定にしても良いぐらいだ。

どうしたものか……。

 

そんなこんなと考えを巡らせながら留美と会話をし、事務所に到着する。

 

「ししょー、あれは何?」

5階建ての事務所を見上げる留美は、とある物体に指さして俺に聞く。

俺はその物体を見て、自分の目が腐っていくのが分かる。

さっそくきたか!美神令子除霊事務所の異常な日常が!

 

 

「あれは……オブジェだ。この事務所のデザインかな?」

俺は苦しい言い訳をする。

 

その物体というか人物はロープでぐるぐる巻きにされ、4階の事務所の窓からミノムシのように吊るされている。

しかも、頭を下に涙をちょちょ切らせながら何やら叫んでいた。

「堪忍やーーー、ちょっとした出来心やったんやーーーー!!」

 

「ししょー、なんか叫んでる」

留美は俺の腕を引っ張り、ミノムシ人間に指さす。

 

「……あれは、変態犯罪者のオブジェだ」

「変態さんなの?」

「……まあ、そうだ」

確かに変態なんだが、俺の師匠なんだ、その人。

普段は良い人なんだぞ。

だけど、変態なんだ!

 

「はちまーーーーーん!!た、助けてくれーーーーー!!」

どうせまた美神さんの下着を盗みに行ったんでしょ?

もしくは覗きか、いずれにしろ自業自得だ。

早速、変態をさらさないでほしい。

 

「ししょーのこと呼んでる」

「気にしなくてもいい」

「そうなんだ」

俺はそんな変態師匠をスルーして、1階事務所建物の入口に留美を連れて入る。

 

人口幽霊との挨拶を済ませ、エレベーターで4階に上がり、事務室に挨拶をしながら入る。

「ただいま戻りました」

「こんにちは」

 

そして、所長席の前まで留美を連れる。

「改めて、美神令子除霊事務所の所長、美神令子よ。比企谷君の師匠でもあるからあなたの大師匠ということになるわ。よろしく」

「私は比企谷君の同僚で所属ゴーストスイーパーの氷室絹です。よろしくね留美ちゃん」

所長席に座る美神さん、その横に立つキヌさんが笑顔で挨拶をする。

 

「津留見神社の鶴見留美です。よろしくお願いします」

留美は少々緊張した面持ちだったがちゃんとした挨拶を返す。

 

ここの事務所の説明の為に、先ずは応接席に留美を座らせ、美神さんとキヌさんについて補足説明をする。

「美神さんは知ってるな。怒らせない方がいい人だから、気をつけろよ。それとキヌさんは俺の先輩だ。めちゃくちゃ優しい人だ。俺が居ない時は何かあったら必ずキヌさんに相談だ。

それにキヌさんは神道系のBランクGSだ。俺もキヌさんに相談するし、俺じゃ至らないことがあるかもしれん、その時もキヌさんに相談だ」

 

留美は応接席から所長席周りで仕事をするキヌさんに目を向けてから、ふくれっ面で俺にこんな事を言う。

「……ししょー、ニヤケ顔きもい」

 

「べ、別にニヤケてないぞ」

仕方ないんだ!キヌさんは聖母だからな、誰もがその存在に心が和むから、キヌさんの前では多少顔が緩むのは許してくれ!

 

雪ノ下が俺たちの前にお茶を出しながら、留美に挨拶をする。

「鶴見留美さん、改めてここの事務員の雪ノ下雪乃よ。よろしく」

 

「比企谷八幡師匠の一番弟子の鶴見留美」

留美は俺の片腕を取って、こんな言い方をして雪ノ下に挨拶を返す。

おい、師匠ってちゃんと言えるだろ?あのししょーって言い方はなんだ?

 

「そう、私は比企谷君の同級生で同じ部の部長でもあるわ」

雪ノ下、なに微妙に対抗しようとしてるんだ?

 

「八幡に一杯色々教えてもらえるし、……それに私の方が大きく成長するし」

留美はふくれっ面で、こんな事を言う。

 

「……何処を見て言ってるのかしら?」

雪ノ下は冷たい視線を留美に向ける。

おい、相手は子供だぞ。

留美も雪ノ下の前で胸の話はするなよ。

 

ちょうどそのタイミングで事務所の扉が勢いよく開く。

「おお!八幡殿の弟子でござるか!拙者は犬塚シロでござる!八幡殿の姉弟子でござる!」

シロはこっちに駆け寄って、胸を張って留美に挨拶をする。

 

「鶴見留美です。ししょーの姉弟子?」

 

「ああ、この前も話したが、俺の師匠は美神さんじゃなくて、横島忠夫なんだ。その横島師匠の一番弟子がシロで、俺が二番弟子って事になるから、年は俺より下だが姉弟子になる」

 

「そうでござる!」

シロはふんぞり返って仰々しく相づちを打つ。

 

「ししょー、でも尻尾……人間じゃない?」

 

「ああ、シロは犬じゃなくて、人狼族だ。こう見えて年は留美とあまりかわらないはずだから仲良くやってくれ」

 

「そうなの。よろしく」

 

「はっはっはーーー!何かあったら!このシロに頼るでござる!」

シロ、なに親分ぽい雰囲気だしてるんだ?

まあ、元々狼は群れを成して生きる動物だしな、群れの中の階級付けを行ってるのだろう。

留美を自分より下とみなし保護対象としたのだろうか。

 

続いて、タマモもシロの後に続き事務所に入って来て、留美に挨拶をする。

「八幡に弟子ねー、まあいいわ。タマモよ」

 

「え?外人さん?……鶴見留美です。よろしくお願いします」

留美はタマモの容姿を見てびっくりしながらも、挨拶を返す。

そりゃそうか、色気のある金髪美女だからなタマモは。

 

「ああ、タマモは事務所の先輩だ。先に言っておくが、タマモも妖怪だ。しかもあの大妖怪玉藻前。世間には内緒にな」

タマモは気配や霊気を人間そっくりに変える事が出来るから、霊能者でも妖怪って気づかれない。

留美も気が付いてないようだったが、後で面倒な事になるかもしれないから、大妖怪である事を先に説明をする。

 

「所詮転生体よ。そんな大したものじゃないわ」

 

「……そうなの?」

 

「まあ、転生してからそれ程経ってないらしいから、俺らとそう変わらないらしいし、仲良くやってくれ」

 

「わかった」

とまあ、弟子お披露目はここまでは一応順調か……問題はあの人か。

 

 

「ねえ、ししょー、ししょーの師匠はどこ?」

……これが一番の問題だ。

さっきの変態が俺の師匠だと言わなくてはならないのだが……。

 




うん、美神一党の中に放り込まれる留美はどうなっちゃうのだろうか?
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