やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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誤字脱字ありがとうございます。

弟子編のつなぎ回です。




(166)挨拶に行く。弟子編②

「ししょー、ししょーの師匠はどこ?」

留美のこの言葉が今は悩ましい。

 

どこと言われてもな。

さっき留美はモロ目撃していたぞ。

事務所の4階からロープでぐるぐる巻きにされ吊るされていた変態が俺の師匠だし。

今更あの人が師匠ですとは言い難い。

そうだ。あれはGS的な超高度な訓練だという言い訳はどうだろうか?

 

まあ、今誤魔化したとしてもいずれバレるだろうし、正直に話した方がいいのかもしれない。

「横島師匠は……」

 

「おお、この子が八幡の弟子か」

横島師匠の声が後ろから聞こえ、俺達の話題に入って来てくれる。

意外と普通に声を掛けてくれてくれたな。

俺は心の中でホッとしていた。

後を振り向くと少々ニヤケ顔の横島師匠が顔を覗かしているのだが……。

その姿に俺の目は腐る。

 

「………師匠、なんでぐるぐる巻きのまんまなんすか?」

ロープでぐるぐる巻きのまんま床に転がった状態の横島師匠に思わず突っ込む。

なんで、そのまんま出て来るんだ?せめてロープを解いてから出てきてくれ!

 

「は、八幡?ししょーの師匠?」

その光景に驚き、留美は横に座る俺に縋りつく。

当然だ。

この異様な光景はこの事務所では通常かも知れんが、世間一般では異常なのだ。

 

「ふっ、これはおのれの霊気を極限まで高めるための超高度な訓練なのだ」

横島師匠は急に真面目な顔になったと思ったら、こんな言い訳を言い出す。

何処がどう見ても無茶がある言い訳なんだが、何気に俺と同じ事を考えていたんだけど……、俺も相当師匠に毒されているのかもしれない。

そんな横島師匠の言い訳に、雪ノ下は横島師匠に呆れた視線を向け、タマモは我関せずを貫き、流石のシロも苦笑気味だ。

だが、恥ずかし気も無くこんな言い訳を言える横島師匠はある意味大物なのかもしれない。

 

「そ、そうなの?」

留美は横島師匠のその言葉に半信半疑で俺に聞く。

ど、どうする?

ここは横島師匠の言い訳にのった方がいいのか?

 

「そ、そんな事もあることもある」

留美に俺はしどろもどろにこんな中途半端に答えてしまう。

仕方がないだろ?

初弟子の前で俺の師匠は変態ですとは言い難い。

 

「ん?」

俺の答えに疑問顔をする留美。

このまま言い訳を続ければ、何とかなるかもしれない。

 

横島師匠はビヨーンとぐるぐる巻きのまま器用に立ち上がり、観念したかのようにぶっちゃけだした。

「いや~、美神さんのシャワー中に洗面所に忍び込んだんだけど、雪ノ下ちゃんにばったり会ってす巻きにされて、美神さんにグーパン喰らって5階から落とされた。見事なコンビネーションだ。この頃益々雪ノ下ちゃんのロープ捌きが上手くなっちゃってまったく抜けられん。雪ノ下ちゃんもたくましくなったな~~、八幡の弟子ちゃんもこうなったりして~~。はっはっはっはぁ~」

最後は乾いた高笑いをしてから項垂れる。

自ら言っちゃったし……自分はドスケベの変態ですって。

まあ、何れバレる事だし、これで良かったのかもしれない。

 

「横島さんは学習能力がないんですか?もう何度目ですか?いい加減にしないと警察に通報しますよ」

雪ノ下は横島師匠に説教を始める。

確かにたくましくなったな。

一年前は少々精神的にもろい所があったのだが。

まあ、うちの事務所に居るだけで自然と精神力は高まるだろう。

しかし、まだ13歳の留美には早いかもしれない。

やはり、この環境は考え物だ。

 

「あははははっ」

横島師匠は笑って誤魔化す。

 

「八幡の師匠は、スケベで変態?」

留美は横島師匠に若干軽蔑した目を向け、俺の腕を掴んで上目使いで聞いてくる。

 

「う…う、ち、違う、違うんやーーーっ、ちょっとした出来心で、本当は八幡の弟子ちゃんを迎えるために背広に着替えようとしたんやけど、シャワーの音がしたから体が勝手に反応して!しかたなかったんやーーー!そんな目で見んといてーーーっ!」

横島師匠は留美の言葉と軽蔑した目で精神的にダメージを受け、涙にくれる。

そう言えば横島師匠って、小さい子とか真面目な子とかにやたら弱かったな。

 

「留美、とんでもなくスケベだが良い人なんだ。指導者としても優秀で霊能者としての能力は俺の知ってる限りでは最強だ」

 

「え?……八幡よりも?本当に?」

 

「ああ、俺を霊能者としてここまで育ててくれたのは横島師匠のお陰だ」

 

「はちまーーーん!ううううっ、お前だけだそう言ってくれるのはーーーーっ!……アレ?おわっ!?」

横島師匠は涙と鼻水を垂らしながらミノムシ状態のまま、俺に縋りついてくるが、俺はスッと避ける。

 

「………本当に?」

 

「まあ、とんでもないスケベだけど小さな子には手を出さないから、安心していい。基本的にこの事務所で横島師匠が手を出すのは美神さんだけで、それも両人公認の遊びみたいなものだ。大人にはいろいろ事情があるんだ」

俺は留美にそう諭す。

実際、横島師匠は中学生以下に興味を示さないし。

キヌさんはもちろんタマモも妹認定で手を出さないし、それどころか心配していた雪ノ下にも全く手を出していない。

まあ、雪ノ下はこの事務所で着替えやシャワーを浴びる事はまずないから、セクハラする機会がないのかもしれないが……。

基本、横島師匠がこの事務所でスケベなセクハラを敢行するのは美神さんだけだ。

横島師匠の中で一応は一線を越えていい対象なのか分別があるようだ。

ただ、無類の巨乳好きだから、バストの大きさでセクハラ対象を選んでいるという線も無きにしも非ず。

 

だが……

「わたし、子供じゃない!」

頬を膨らませて抗議する留美。

「比企谷!!何言ってるか!!遊びなわけないじゃない!!」

何故か所長席から怒声が飛んでくる。

……あそこから聞こえるのかよ。結構離れてるぞ。

まじ地獄耳。

 

「こいつが悪いのよ!毎度毎度!覗きや下着泥をするなと言ってるのに!!このこの、くのこの!!」

「ギャーーーーース!!」

そこから、美神所令子除霊事務所名物、美神さんの横島師匠への折檻タイムが再び始まってしまった。

毎度やってるでしょ、下着とのぞき攻防戦からの折檻タイム、遊びじゃなかったら何なのか説明してほしい。

 

留美はこの光景を見てボソっと一言「バカばっかり……」

否定が全くできない。

 

良くも悪くも今回のお披露目で、事務所の面々がどんな人物なのか大体わかってくれただろう。

今後、留美が事務所の仕事に同行した際に、GSとしての美神さんと横島師匠の姿を見て、日常とのギャップに戸惑うだろうな……。

あの二人は、GSの仕事に対してはほんと真面目に取り組んでるからな。

その辺が本当の意味でプロなのだろう。

 

と、まあ、なんだかんだと俺の弟子のお披露目はなんとかなった。

だが、留美の中で横島師匠はスケベ師匠という愛称で定着しそうだ。

 

 

俺はその後、留美と共に留美の実家である津留見神社に向かう。

勿論、留美の両親に挨拶をするためだ。

それと、源蔵さんに津留見流神道術事や留美自身にどんな修行を今迄つけて来ていたのかを教えてもらうためだ。

一応留美からは聞いていたが、師匠であり当主の源蔵さんからも聞いておいた方がいいだろう。

それを踏まえて、源蔵さんと留美の今後の育成方針について打ち合わせをした方がいい。

 

 

 

留美の実家の津留見神社は俺の家から山間部に向けてチャリで30分走った所と意外と近かった。

そりゃそうか、総武高校と近隣の交流のある小学校に通っていたのだからな。

千葉山間部の手前、小高い山の山裾にある津留見神社は丁度古い住宅地の端にあり、表は住宅地に接し、裏は山裾の森が広がっている。

ぱっと見、敷地はそれ程広くは無いが、趣がある社殿が3つと母屋だろう二階建ての木造の家が見える。

境内は綺麗に整備され、空気も陽の気で満たされ澄み切った感じだ。

小さいながらも荘厳な雰囲気が漂う。

源蔵さん曰く、津留見神社の源流は鹿島神社らしく、この地には700年前位に分社したらしいから、かなり歴史ある神社だ。

裏のこんもりした小山と森自身が神域となっており、奉ってあるそうだ。

 

津留見神社の鳥居をくぐり、留美は敷地の掃除の際中だろう眼鏡をかけた大人しそうな青袴の男性に声を掛ける。

「お父さん、ただいま」

「おかえり、留美」

留美の父親か、源蔵さんの息子さんにしては大人しそうな人だ。

 

留美の父親は掃除の手を止め、ゆっくり近づく。

「と言う事は、君が……」

「初めまして、比企谷八幡です」

「これはご丁寧に。こちらこそ初めまして、留美の父で鶴見俊之です。母屋の方へどうぞ、比企谷先生」

「……あの、先生はやめて頂けませんか?」

「何をおっしゃいますか、留美の師匠を務めてくださるのだから、君は立派な先生ですよ」

先生って、こっぱずかしい上にそんな立場じゃないんですが?

留美の父、留美パパはそう言って、母屋へ案内してくれる。

 

母屋の引き戸を開き玄関に入ると、広い和式の玄関に入ると巫女服に割烹着姿の女性が駆けつけてくる。

「おかえり留美。いらっしゃい比企谷先生、私は留美の母で鶴見美佳子です。よろしくお願いしますね」

留美は母親似だな、留美が大人になったらこんな感じの美人になるのだろう。

やはりちょっと雪ノ下の母親に似ている。雰囲気は雪ノ下の母親を明るくした感じか。

もしかすると、雪ノ下の母親と留美の母親は血縁だったりしないだろうか?

 

「比企谷八幡です。よろしくお願いします」

 

 

「おう、八幡殿来られたか、上がられよ」

後から神官袴姿の源蔵さんがゆっくりと現れる。

 

 

8畳ほどの和室に通され、大きな座布団の上に座らされる。

隣りには留美。俺の正面に源蔵さん、その横に並んで留美パパと留美ママが座ってる。

「改めまして、比企谷八幡です。まだ霊能者として人としても不肖の身ではありますが、留美さんの師匠を務めさせていただきます」

俺は正座をし、少々緊張しながらこう挨拶をし、正面の三人に頭を下げる。

この挨拶を考えるのに2週間程かかった。

ネット等で調べながら、一番しっくりきそうな文言がこれだった。

 

「うむ。八幡殿、よろしく頼むぞ」

源蔵さんは満足そうに大きく頷く。

 

「改めて鶴見俊之です」

「美佳子です。比企谷先生、留美の事よろしくお願いいたします」

留美パパと留美ママはそう言って俺に頭を下げる。

良い人そうだ。

留美がいじめなどに会っても、擦れずに今迄来れたのは、この両親のお陰なのだろう。

 

「あの、先生はやめてもらえませんか?」

 

「そう言うわけにはいかないよ。これもケジメの一つだよ。それにしても、留美はいい先生を見つけたものだ。若いのに出来てる」

「当然じゃ!わしが見込んだのじゃからな」

留美パパはそう言って留美に尋ねたが、それに源蔵さんが答える。

……源蔵さん、見込んだってあんた、最初薙刀で俺を殺そうとしたでしょ!

 

しばらく打ち合わせを行った後、源蔵さんは町内会の会合に出かけ、留美は母親の手伝いとか、俺は留美パパの案内の元、神社境内を見て回る事になった。

「津留見神社は常陸国(千葉中央:房総半島北部)に根ざして代々除霊を行って来た神社で、江戸時代では大名お抱えの除霊師という立場でもあったんだ」

留美パパは本殿を回りながらそう説明をする。

 

「ここは霊紙を作成する作業部屋で、これも代々津留見神社が担ってきた仕事で、今は奥さんが担当してる。家の奥さんは元々こっちの方の才能が有って、術符等も作ってる。鶴見家の大事な収入源になっているんだ」

母屋に連なる平屋建てでは、霊紙を作成する紙すき器などが置かれ、ちょうど留美ママと留美が霊紙を折りたたむ作業を行っていた。

あれは付与術式の術具だ。と言う事は、成る程、留美ママはクリエイト系の霊能者なのか。

いうならば技術職系の霊能者で、結構貴重な存在だ。

それでもDランクGSということは戦闘もそこそこ出来るって事は、かなり優秀だぞ。

留美もその血を受けついている可能性があるということか。

 

「僕は霊力が大したことないし、そうかといって奥さんのように付与術式が使えるわけでもないから、GSの仕事というよりも津留見神社の切り盛りが主な仕事でね。GSの仕事やGS協会からの仕事も殆ど父さんが担当しているのが現状なんだよ」

留美パパは申し訳なさそうに言う。

 

「除霊等のGS関連の仕事はどのくらいの頻度であるんですか?」

俺は留美パパにこの質問をする。

今後、留美の師匠として同行することがあるだろうから、必要な質問だ。

 

「そうだね。月に1~2回かな。年に20件は無いぐらいかな」

 

「えーっと……」

俺はその留美パパの答えに窮する。

何故なら少なすぎると感じたからだ。津留見神社の年間GSの仕事件数が美神令子除霊事務所の月の件数よりも少ないからだ。

 

「ん?君の所の事務所はどの位なんだい?」

 

「月に20件ぐらいです。多い時は30件超える事も」

大きな仕事は流石に少ないが、小さい仕事だと1人で一日2件~3件こなす事もある。

 

「ええ!?そんなに!?やっぱり売れっ子事務所は違うな~」

留美パパは目茶苦茶驚いていた。

 

留美パパに続けざまに質問を受ける。

「もう一つ聞いていいかい、そのうち妖怪退治や直接除霊案件はどのくらいなんだい?」

 

「はっきり覚えてませんが8~9割程度ですかね」

大規模地鎮などキヌさんの案件や、デジャブーランドとかの定期巡回監視霊障予防等を除くとこれぐらいはあるだろう。

 

「え?えええええ!?それって、ほとんどじゃないか?逆じゃないの?うちの場合は逆だよ、地鎮や霊障予防が殆んどで、妖怪退治なんて、年2~3回あればいい方だよ。ちょっと待って、君、今までどのくらい除霊を行ってきたの?」

 

「……正確には覚えてませんが、プロになってからは80件ぐらいですかね。そのうち完全に1人でってのは30、40件ぐらいだと思います」

まあ、俺が1人行くやつは500万~2000万ぐらいの除霊関連の小さい仕事ばっかりだから、一日に2~3件回る事もある。

 

「君、プロになって1年だよね。高校行きながらでそんなに……父さんが言っていたことは本当なんだ。もしかして、僕よりも除霊件数多いんじゃない?はははははっ、今から近所で僕が行く霊障案件があって、津留見流を見てもらおうと思ったんだけど、無駄だったかな?」

……やはり、うちの事務所って仕事多いんだな。

これではっきりわかった。

うちの事務所が超ブラックだって事が!!

 

「見せてもらうと勉強になります」

俺はこの後、留美パパの霊障案件を見学することになった。

 

その霊障案件は4人家族の一軒家で月に何回か幽霊を見かけるという物だった。

GS協会の案件で言う所のEランクの仕事だ。

 

留美パパは依頼主に状況を熱心に聞き、家の構造を隅々まで調べ、図面に書き落とし、札を張る配置図を作成し、家の柱や壁などに札を張って行く。

どうやら、浮遊霊を寄せ付けないようにする結界ようだ。

しかも、この札の配置は津留見神社独特なのだろうが、たぶん四神結界を独自に改良した物だろう。

これだけしっかりしていれば、そこそこの悪霊もわざわざ敷地に入ってこなくなるだろう。

 

美神令子除霊事務所の場合は、幽霊そのものを如何にかしてしまうが、津留見神社の場合は家そのものを防御し、依頼を達成させたのだ。

これも霊障解決の方法の一つだな。

勉強になる。

まず、うちの事務所は一般家庭の除霊依頼なんて受けないからな。

 

これで依頼料は200万らしいが、依頼者が一般家庭なため補助金が国と県から出るから、実際に依頼者が払うのは60万になる。

 

なるほど、源蔵さんが依頼料の半額払うと言った意味が分かった。

200万の依頼だったら、Bランクの俺の出向費の3倍よりも、依頼料の半額の方が安く済むものな。

美神さんの感覚だと最低でも1000万以上の仕事を想定しているのだろう。

まあ、Cランク以上の仕事依頼だと最低でも1000万以上はするからな。

 

「どうだったかい?」

「大変勉強になりました」

あの結界はかなり堅牢な感じだ。

札自体は津留見独自の物だが、それ程能力が高いものじゃなかった。

だが、札の配置と札に書かれた術式が効力を高めている。

留美パパはかなり知識を持ったGSだ。

霊能力の弱さを知識でカバーしている感じだ。

 

車で津留見神社に戻る道中、俺は隣で運転する留美パパに質問をする。

「何故、俺を留美さんの師匠になる事を了解したんですか?」

留美の話だと、初めから俺が師匠になる事を了承していたらしいからだ。

なぜ、どこの馬の骨とも知らない小僧に留美を預けようとしたのか、気になっていた。

 

「ああ、その事かい。留美から話があったときはびっくりした。でも、君だろ?留美が小学校でいじめに遭っていたのを救ってくれたのは。情けない話、留美が霊能者だとクラスに知れ渡り、そんな苦境に身を置いているのに、何も出来なかったんだよ。学校にも担任の先生などにも相談はしたのだけど、理解されなくてね。転校も考えていた所を、夏のレクリエーションから帰って来てからの留美に少しずつだが笑顔が戻ってね。君のお陰で、クラスで陰湿ないじめがなくなって……、留美だけでなく僕と奥さんも救われた。そんな君なら留美を預けても大丈夫だと思ったんだ」

 

「いえ、俺はそんな大したことはやってませんよ」

 

「そうかい?それに留美の霊能者としての潜在能力はかなり高い。僕ら夫婦じゃとてもじゃないが扱いきれない、それこそ父さんよりも上だと感じてる。実際、あの年で留美は津留見神社の術式を全て扱える。僕はその半分も使えないのに……。霊能者の世界は力こそが全て……父さんが亡くなった後、霊能者としての秀でている留美を僕らじゃ精神的にも技術的にも支えてあげられない。留美はまた孤立してしまうかもしれない。だから留美と歳が近い君だったらと……勝手な思いでね」

 

「俺はこの通り未熟者ですよ」

 

「夏のレクリエーションの出来事で、留美から君の事を聞いて、少々調べさせてもらったんだ。でも中々情報が集まらなくてね。どう見ても君は一般の家の生まれで、普通の高校生だったからね。ようやく君がGS試験に合格した時に調べが付いたんだ。後天的な霊能者、しかもGS試験で準優勝しちゃうくらいの実力者、それなのに普通に高校に通って生活をしてる。君しかいないとも思ったよ。留美を理解し支える事ができるのは。……それに留美も君を慕ってる様だしね」

俺もあの事故で霊障体質になって、横島師匠に出会わなければ、最悪死んでいたし、師匠が俺を霊能者として育ててくれなかったら、今の生活はなかった。

立場はかなり異なるが、留美の状況も近いものがあったのかもしれない。

俺は留美の霊能を育てる事が出来るのだろうかとばかりを気にしていたが……精神的支えか。

横島師匠とシロの関係がそうだ。シロの心の支えは間違いなく横島師匠だ。

 

「俺も師匠に随分助けて貰いました。……期待に沿えるかは分かりませんが、なんとか務めてみます」

 

「留美の事、よろしくお願いします。比企谷先生」

 

 

 

 

津留見神社に戻ると、留美ママが夕食を用意してくれていたのだが……。

俺と留美は上座に座らされ、何故か宴会が始まってしまった。

しかも、親族やら氏子(神社の後援者)やら人がいっぱい集まった前で、源蔵さんが婿殿とかいうから、ややこしい事に!

 

「ししょー、よろしくね」

「ああ」

俺は横で笑顔の留美を見てふと思う。

俺が師匠として何が出来るか分からない。

横島師匠のようにはいかないだろうが、俺は俺なりに師匠として出来る限りの事を弟子(留美)にしてやろうと。

 




弟子編、次は師弟コンビが始動。

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