やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
再会いたします。
久々のシリアス展開?
11月も終わりに近づく。
私立大学の推薦入学試験が次々と始まり、合格通知が既に通達されている大学もある。
総武高校の三学年の生徒にも、既に推薦を決め、進路が決まった生徒が現れだし、そいつらの喜びの声が聞こえて来る。
だが、そんな声を恨めしく思いながらも、国公立大学を目指している俺たちの文理系クラスの生徒は、入試センター試験改め大学入学共通テストに向けて黙々と勉学に励んでいる。
夏休み後、文化祭後と受験生たちは勉強のギアをさらに上げ、クラスの雰囲気も重苦しくなっているのを感じる。
まあ、俺の場合、今更あたふたしても仕方がないと、マイペースに勉強を進めているため、一年前とそれほど勉強量も変わっていない。
相変わらずの仕事との両立だ。
留美を弟子にしたことにより、俺の時間的な余裕は消えるだろうとは思っていた。
確かに、最初の頃は生活ペースは多少乱れはしたが、留美が俺の弟子になって1か月が経ち、慣れてきたのか、今じゃほぼ支障がない。
直接留美に割く時間を一週間のうち水曜日の放課後の3~4時間程度と取り決めたのが良かったのかもしれない。かえって日常生活とGS関連とのメリハリが付いたぐらいだ。
それ以外の土日の日中に、留美が美神令子除霊事務所に来ることがあるが、どちらかと言うとそちらの方が多少面倒ではある。
留美は何故か妙に雪ノ下に対抗意識を持っているのだ。
俺と雪ノ下が話してると、突っかかったり、頬を膨らませたりと……。
この1カ月で留美と過ごして分かった事だが、留美の才能は思った以上に高かった。
俺が教える事を短時間でどんどん吸収していく。
しかも、自らの式紙に応用する順応ぶりだ。
俺が霊能に関して教えられることも直ぐに無くなるだろう。
正直、13歳でこれ程の実力を備えている留美は、あまり言葉として使いたくは無いが、天才であると。
留美の両親が才能ある留美が将来孤立するかもしれないと、危ぶむのもわかる気がする。
このままいけば、将来は俺なんてあっという間に追い越し、美神さん達と肩を並べる程の実力のあるゴーストスイーパーとなるだろう。
後は留美が分別が付く年齢となったときに、俺の師匠としての最後の役目として、綺麗ごとだけではやっていけない現実や、虚実の使い分けなどを教えなくてはならない……。
俺はそんな事を考えながら、津留見神社へとチャリで向かっていた。
津留見神社に到着して、いつも通り練習場に向かう前に、留美の両親に挨拶しようと神社の母屋のチャイムを鳴らそうとしたのだが、母屋からドタバタと慌ただしい雰囲気が伝わって来る。
いつもは落ち着いた雰囲気で、聞こえてくると言えば、源蔵さんの大声ぐらいだったんだが、何かあったか?
チャイムを鳴らすと、慌てて玄関から源蔵さんが出て来る。
「八幡殿、丁度良かったわい。GS協会から緊急案件の連絡が今しがた届いたんじゃが、手を貸してくれんか?もちろん、契約通りの料金はGS協会を通して支払う」
「いいですが、緊急案件ですか?」
「救援要請じゃ、勝浦のGSがへまやりおったようじゃ、今から向かう」
「……わかりました」
救助要請、GSが依頼に失敗した又は手に負えない時の救済処置だ。
GS協会を通してランクの高いGSに引き継いだり、協力者を募り事に当たる等が一般的だ。
しかも緊急と言う事は、かなり切羽詰まってる状況だという事だ。
現在進行形で被害が拡大している、若しくは依頼を行ったGSが窮地に立たされていると言ったところか。
「詳しい状況は道中で話す。俊之!準備はまだか!?」
源蔵さんは、母屋の中に向かって息子の留美パパに、大きな声で叫ぶ。
暫くして、留美パパが運転するワンボックスカーに乗り込み、現場へと急ぐ。
留美パパが運転席、助手席に留美ママ、後部座席に源蔵さんと俺、三列目に留美が乗り込んでいる。
鶴見家総出だ。
源蔵さんが状況を話し始める。
「今から3カ月前の夏休み頃に睦沢町にある川岸の町営キャンプ場で化け物を見かけたという案件じゃった。人的被害はないのじゃが、目撃情報が多数あったのでな、ひょろっとした子供ぐらいの大きさに体の色が深緑色で目は赤かったと、恐らく河童じゃと……、GS協会を通じて勝浦市を拠点としとるCランクGSに調査依頼したのだそうじゃ」
睦沢町か、千葉のほぼど真ん中の山中の小さな町だ。
人口も確か6~7千人程度だったと、中学の頃に習った記憶がある。
鉄道も通っていないし、同じ千葉県だが、行ったこともない。
もしかしたら、車やバスなどで勝浦や九十九里浜に行くために通った事があるかもしれないが、そんな感じの町だ。
「河童ですか」
河童は悪さをすることがあるが、それ程大きな被害が起きる事は少ない。
里山や山中の洞窟があるような湖や池にひっそり暮らしていたり、結界を張って村を形成しているケースもある。
どちらかというと、人間に対して友好的な連中が多い。
特に島根の河童は、人間社会に溶け込んでる。
島根のカッパのテーマパーク、皆コスプレだと思っているが、アレ全部本物だ。
あれこそ島根限定ではあるが、人間と妖怪がウィンウインの関係を保ってる。
それに、大阪道頓堀川の主、河童の弥太郎は関西ローカルタレントだ。
仕事の依頼で弥太郎を退治することになったのだが、妙に人間臭いというかおっさん臭い奴で、エロ親父方面で横島師匠と滅茶苦茶気があって、意気投合して、何故かそんな事に……、バリバリ関西弁で確かに憎めない奴ではあった。
弥太郎は江戸時代から生きてる大阪最後の河童だとか。
河川汚染に苛立ちが爆発して、何故かストレス発散のために覗きなどの痴漢行為を働いていたようだ。
まあ、道頓堀川を汚す人間側にも責任があるし、退治するのも憚られて……。
何だかんだあって、美神令子プロディース、演出横島忠夫で、河童コスプレタレント国立カッパが誕生する。
川のポイ捨て禁止イメージキャラクターだとか、お天気お兄さんやら、食レポまで……、今じゃ関西では結構有名だそうだ。
もちろん、河童コスプレタレント国立カッパは周りからは人間と思われてる。
人間に擬態させるための人型エクトプラズムスーツで人間にコスプレさせていて、出勤時は人間のコスプレで、テレビに出る時は素の姿と言うわけだ。
ちなみに……出演料の9割は美神令子除霊事務所に振り込まれているらしい。
まあ、あいつ結構金塊とか持ってたし、宗右衛門町の夜の店とかに普通に行ってたし。
金には困って無さそうだった。
それに、高級なエクトプラズムスーツを用意して人間にバレないようにしたり、妖怪特有の霊気を誤魔化す札とかこっちで用意してるし、そのマージンの割合は妥当なのかもしれない。
それは置いといてだ。
河童自体それ程強力な妖怪ではない、通常Dランク妖怪とされている。
CランクGSなら苦も無く対処できるレベルだ。
ただ、河童の中でも稀にちょっと強力な奴や、人をわざわざ襲うような奴もいる。
人間の中でも強い奴や、犯罪者が居るのと同じ理屈ではある。
もしかしたら、今回の救助要請を行った勝浦のGSは、そう言う河童に遭遇したのかもしれない。
「ししょー、河童って頭にお皿が乗ってるあの河童?」
「まあ、そうだな。実際は皿じゃないんだが、あの頭に皿が乗ってる様な姿の河童は有名な島根の河童で、各地の河童は姿が違う。関東の河童はカエルやカメというよりも猿っぽい感じだ」
「そうなんだ」
留美がこういうのも仕方がない。河童のイメージと言えば皿が頭にのったような姿の島根の河童だからな。
一括りに河童と言ってもいろんな形状がある。
半魚人みたいな奴から、ほぼカエルのような奴まで、いろいろだ。
もしかしたら、俺達人間が一括りにしてるだけで、別の種族だったりするのかもしれない。
「勝浦のGSは9月ごろから調査を行ったのじゃが、川岸のキャンプ場周辺での聞き込みで鶏などの家畜が盗まれる被害がこの頃起きていたことが判明したそうじゃ、河童の仕業の可能性が高いと踏んだ勝浦のGSは、山中に複数台カメラを設置して、様子を見る事にしたところ、カメラに河童らしき影が複数映っていたとな……」
「……千葉で河童の群れや村が形成されたことは今迄ありましたか?」
千葉に河童の群れや村があるなんて聞いたことがない。河童自体の目撃情報なんてものは平成以降無かったはずだ。
「僕は聞いたことがないな、父さんは?」
「わしも、長年この地でGSをやっているが、聞いた事も無い」
留美パパと源蔵さんも河童の群れや村が千葉に形成されたことは聞いたことがない様だ。
「最近移動してきたんですかね?」
「それはわからん。ただ、先ほどGS協会へ来た救援要請では、河童共が河川敷の集落の対岸に現れたと、様子がおかしいと、全住民200人を近くの公民館に今避難させてる際中だそうじゃ……」
「……河童が集団で人を襲いますかね?」
「普通に考えればありえんじゃろ。じゃが、勝浦のGSは危険じゃと判断しおった。あ奴も熟練のGSじゃ、何かあると思った方がよいじゃろて……八幡殿が丁度来てくれて助かったしだいじゃ」
留美パパが運転するワゴン車は一路、睦沢町のキャンプ地近隣の公民館へ急ぐ。
シリアス展開の予定です。
停滞している他のお話もちょっと手を出してます。