やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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(174)ゴブリンの脅威2 弟子編⑩

睦沢町のとある小さな集落の公民館はゴブリンの集団に取り囲まれる。

周囲500m範囲には121体のゴブリンが闇夜に紛れ、こちらの様子を伺いながら潜む。

ゴブリンはDランク妖怪に相当する。

しかも、121体の内6体は上位種だ。恐らくCランク相当はあるだろう。

一方、公民館には避難してきた住民約200人が立てこもっている。

普通に考えれば、絶望的な状況だ。

いとも簡単にゴブリンの集団に襲われ蹂躙しつくされるだろう。

 

だが、公民館を住人以外にGS5人とGSの弟子1人が守っている。

勝浦のベテランCランクGSとBランクGSの鶴見源蔵さん、DランクGSの留美パパと留美ママ、それにBランクの俺と才能の塊の弟子である留美だ。

この戦力なら何とかなる。

 

だが、ゴブリン共に俺の霊視範囲外に121体以外の後詰が存在した場合、流石に厳しくなる。

しかし、こちらもオカルトGメンや自衛隊の特殊部隊、美神さん達が救援に来てくれる。

守りに専念すれば問題無く解決するだろう。

 

俺はさっきまでそう思っていた。

 

7体のゴブリン共が先行して、闇夜に身を潜めながらこちらに向かってきたところ、俺は裏をかいて急襲し、反撃させる間も与えずに倒したのだが……

倒した死骸を確認すると、ゴブリン共が持っていた武器に驚愕する。

 

銃だ。

しかも、P90(プロジェクトナインティー)、その独特なフォルムで直ぐにわかった。

ベルギー製の最新式のサブマシンガンだ。

高性能と小回りの利く躯体に世界各国の軍や警察組織に採用されている。

何故、そんな事を知っているかって?

俺は銃マニアでも何でもないが、うちの事務所の弾薬庫に同じものがあるからだ。

何で、そんなものが事務所にあるかって?

特殊霊装装備として登録してるからだ。

銀の弾丸や岩塩弾、呪詛弾などを発射する霊装装備としてだ。

最新式の対物ライフル、狙撃銃、重マシンガン、アサルトライフルからピストル、さらには

スティンガーミサイルや01式対戦車ミサイルまで何でもござれだ。

………何故か普通の実弾もあるが、その程度の事で気にしてはいけない。

因みにそれらの兵器の整備係は俺だし……。

仕事に荷物持ちとして初参加する前に、札の扱いや術式を教えてくれるものとばかり思っていたが、何故かグレネードの投擲やC4や地雷の設置を覚えさせられたんだぞ。

しかも、美神さんは雪ノ下に自衛用にP90を持たそうと!

確かに、P90はPDW(個人防衛火器)というカテゴリーの兵器で、アサルトライフル並みの威力とサブマシンガン並みの重量と携行性を実現した銃だが、一般の女子高生に持たせるか!?

俺はまだ早いとか何とか言って、美神さんを説得して思いとどまって貰ったが、訓練だけはさせるとか言ってたし!

美神さんが言わんとしてる事もわからない事もない。

確かに、霊能がない雪ノ下に自衛手段は限られているが、よりによって最新型の銃って、美神さんは日本の銃刀法とか知らないんじゃないか?

銃以外に自衛のための札とか精霊石とかオカルトアイテムがあるだろ!?

結局、お守りに横島師匠の文珠を入れて貰って、それを俺から雪ノ下に肌身離さず持つ様にと渡して、今の所納得してもらったが……。

 

そんな事は今はどうでもいい。

 

ゴブリン共が何で、最新型の銃を持っているかだ!

ゴブリン共は中世では弓矢や投擲機などの武器を扱えていたという記述がある。

ならば、現代の武器である銃器を扱えても何もおかしくない。

だが、どうやって銃を手に入れたかだ?

ゴブリン共が自分達で調達したとは考えられない。

そもそもP90は日本の自衛隊や警察の装備には無い。

何処からか盗んできたとは考えにくい。

誰かが非合法に銃を仕入れ、わざわざ意図的にゴブリン共に渡し、しかも訓練まで施した奴が居るという事だ。

恐らく、霊災愉快犯の仲間だろうが。

ゴブリン共を操り、現代兵器を持たせた妖魔の軍団を作り、日本に侵攻しようとでもいうのか?

いや、……プロフェッサー・ヌルは人を媒体としたキメラを兵器として、世界に売りさばこうとしていた。

それと同じ意図を感じる。

ゴブリン共に現代兵器を仕込み、妖魔の傭兵団として世界に売りさばこうとしているのではないか?

今回の襲撃はそのテストケースか?

もしそうなれば、世界の軍事バランスが大きく変わり、新たな戦争の火種になりかねない。

いや、奴らはそれを望んでいるのだろう。

奴らは自らの手を下さず、社会に混乱を巻き起こす様なやり口だ。

平和を弄ぶかのように……。

 

俺は次々にゴブリン共の死骸を確認しながら思考をまわしていたが……。

「!?」

公民館の方で爆発音が鳴り響く。

まずい!!

 

俺は霊視で公民館を確認し、周囲を警戒しながら、公民館に戻り急ぐが、ゴブリン共はいない。

避難した住人も留美たちも無事のようだ。

 

公民館に戻ると、源蔵さんが入口付近で周囲を警戒していた。

「源蔵さん。今の爆発音は?」

「わからん、入口の防犯シャッターが壊されただけじゃ、建物強化結界が功を奏して大した被害になっておらん。

それよりも今の爆発、建物周囲に張った障壁結界の中じゃ。奴らどうやった?霊的反応は無かったはずじゃ」

 

俺は入口の崩れかかっている防犯シャッターを見ると

「これは……プラスチック爆弾による破壊の跡……奴ら!」

俺達が来る前にC4をセットしていたという事か。

認識が甘かった。

奴らが現代兵器を装備しているとは思っても居なかった。

奴ら、俺達が来る前にこの公民館に迫っておいてあっさり退避したのは、厳重に立てこもってるのを見て、入口に時限式のプラスチック爆弾をセットして、次の手を打つために引いたのか。

そして、爆弾が爆発する頃を見測り、俺が今倒した奴らの先攻部隊か偵察部隊が動いたという事か。

 

かなりヤバい!!

 

「源蔵さん!これはプラスチック爆弾です!しかも俺が倒した奴ら銃を持ってました!しかも最新型の物を!」

「なぬ!?銃じゃと?」

「しかも、このやり口、現代の軍隊の動きです!」

小隊編成や分隊編成に、奴らの行軍の仕方、まさに現代の軍体制だ。

 

「お爺ちゃん、ししょー、大丈夫?」

留美が入口から、様子を見に俺たちの方へ歩いてくるが……。

 

「くっ!!」

俺は咄嗟に隣の源蔵さんを掴んで建物の中へ放り投げ、留美に飛びついて抱き寄せる。

「なんじゃ!?」

「八幡!?」

 

それと同時に、銃声がほぼ同時に3発鳴り響く。

狙撃だ!!

2発は回避。

留美を狙った弾は、サイキックソーサーを展開し受け止める事ができた。

間に合ったか。

この障壁結界は妖怪妖魔や霊的存在等の侵入を阻害することが出来るが物理攻撃である銃弾を防ぐことは出来ない。

霊視と霊視空間把握能力がなかったら、全く反応できなかっただろう。

 

俺は留美を抱き寄せたまま建物内部へ飛び込むと、俺達がさっきまで居た場所に赤外線レーザーが乱立し、銃声が続きざま数十発連発で鳴り響く。

 

「留美!大丈夫か!?」

「うん……」

俺は直ぐに立ち上がり、留美の体を抱き起しながら、霊視で周囲を伺う。

東距離450m木の上から狙撃か!?そこに3体。

いや、南東350mの民家の屋根の上にも5体。

アサルトライフルによる単発狙撃からのセミオート射撃か!?

くそっ!訓練された特殊部隊かよ!!

 

「八幡殿!!なにごとじゃ!!」

「狙撃です!!」

「なんじゃと!?」

「建物強化結界の耐久力強化と対霊ではなく耐物理障壁結界を!!」

 

「あい、わかった!!」

源蔵さんは俺の言葉に直ぐに頷き、公民館の奥へと小走りに向かう。

クリエイト系の霊能者の留美ママが居てくれて助かった。

建物(対物)強化結界なんてレアな結界を事前準備無しに張れる人はそうそういない。

それに今の俺の持ち札じゃ、銃に耐えうる物理結界を張るのは厳しい。

美神令子除霊事務所じゃ、物理結界だろうが、対物強化結界だろうが、それ専用のバカ高い結界札や術石などの呪術具を全部取り揃えている。

それこそ、戦車の砲撃やミサイルを防ぐような代物まで。

その逆に銃器もたんまりあるし。

実際、仕事で何故か銃撃戦になった事がある。

俺は殆ど何も出来なかったが、美神さんは嬉々としてマシンガンぶっ放してたし、横島師匠も滅茶苦茶手慣れた風に、携行ミサイルランチャーぶっ放してな。

たまたま現場でかち合った小笠原エミさんの事務所のタイガーさんも手慣れてたし。

GSってこれが普通なのかなと思っていた事もあったが……。

昨年プロになって、改めてうちの事務所の異常性が良くわかった。

 

俺には言わないだろうが、美神さんは多弾頭ミサイルとかトマホークとかもどこかに隠し持ってるんじゃないかと、もしかしたら戦闘機や核ミサイルまであるんじゃないかと疑ってる。

 

 

これは、かなりヤバい状況だ。

相手は現代兵器を手に持ち、現代の軍組織運営の元に動くゴブリンの軍隊だ。

普通の妖怪退治とはわけが違う。

普通のGSだと対処しきれないだろう。

 

公民館がコンクリート造だって言うのも助かった。

とりあえず、建物の中に居れば、建物強化結界と物理障壁結界で銃撃から身を守れるだろう。

 

しかし、銃器を持ったゴブリンが残り114体。

銃火器の威力に任せて一点集中攻撃を受ければ結界は持たないかもしれない。

更に、俺の霊視範囲外に予備軍や後詰が存在すれば、確実に火力で押される。

さらに、奴らが対物ライフルや迫撃砲や地対地ミサイルを複数持っていたら、間違いなく今の結界は持たないだろう。

救援が来るまでにもつかどうかわからない。

 

そうかと言って、こちらから攻めるにはリスクが高い。

そもそもの戦力差がある。

現代兵器で武装したゴブリン114体とGS5人に弟子1人だ。

これでも圧倒的不利だろう。

こちらから仕掛けるとしても、住民を守るために留美パパと留美ママ、勝浦のGSには結界の維持に専念してもらわなくてはならない。

実質、攻勢に出られるのは俺と留美と源蔵さんの3人だけとなる。

いや、源蔵さんにも結界の維持と守りについてもらわないと厳しいだろう。

俺と留美、もしくは銃火器相手に交戦経験がある俺だけで攻めなければならない。

 

さらには、飛び道具の差があり過ぎる。

向こうは狙撃用の銃やアサルトライフルにサブマシンガン。

俺は遠距離武装としては札と霊体ボウガンだ。

向こうは狙撃用アサルトライフルで凡そ有効射程が600mぐらい。

アサルトライフルや最新型サブマシンガンP90の有効射程が300m~500m

一方俺の場合、札を投げ、そこから術が発動する有効距離は30~50m。

霊体ボウガンは有効射程40~50m、連装式だと30m。

霊力注入方式だと俺の場合150mまで射程は伸びるが、それが限界だ。

ほぼ火縄銃と同じだ。

兵器の射程という意味では、関ヶ原の合戦と現代戦の4世紀程のギャップがある。

 

かなり絶望的な戦力差だと言っていいだろう。

 

援軍が来るまで大人しく引きこもって結界の維持に専念し、一気に攻めて来ない様に拝んでみるか?

いいや、こちとら伊達に美神令子除霊事務所に3年近く過ごしてきたわけじゃない。

こんなピンチは何度も切り抜けてきた。

総武高校の異界の門と人質、オークの襲来に比べれば、まだましだ。

あの時は1人で全生徒教職員を守らなければならなかったが、今は留美が居るし、鶴見家の人達も居る。

 

考えろ。

 





普通に銃器が揃ってる美神令子除霊事務所。
うーん、下手するとテロリストよりもたちが悪い。
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