やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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(176)ゴブリンの脅威4 弟子編⑫

 

息を大きく吐き、集中力を高める。

霊視空間把握能力と霊視能力をフルに発動、ゴブリン部隊の動きを把握、確認。

霊力を高め、身体能力強化と霊視空間結界を続けて発動。

「行くか」

 

隣りの留美も集中力を高め霊力が上昇していくのが分かる。

「うん」

 

俺と留美は公民館南側の1Fの周囲から死角となっている窓からスッと飛び出し、一度物陰に隠れ、そして行動に移す。

 

凡そ60体のゴブリンが8分隊を編成し、北側と南側から公民館を包囲するかのように移動している。

ゴブリンは夜目が効くため、暗視ゴーグルなどの装備に頼らずに、暗闇の中を進軍することが可能だ。

ゴブリンの装備なのだが、そもそも、俺が最初に倒した連中は防弾チョッキやヘルメットはおろか、戦闘服も着ていなかった。毛皮か布を腰に巻いたような感じの、いかにもゴブリンといった感じの姿だ。

だが、奴らはそんなナリ(身なり)に反して銃と予備弾倉を持っていた。

その姿に違和感を感じざるを得ない。

そもそも、ゴブリンは小学生低学年ぐらいの身長しかない。

装備した銃器が体格の小さなゴブリンでも比較的扱いやすい携行性に優れた最新型小型銃で賄ったのかもしれないが、人間の戦闘服や防弾チョッキなどの防御装備はそのまま流用は出来ないだろう。

ゴブリン用に作り直す暇がなかったか、今回の襲撃は本当に訓練やデモンストレーション程度だと考えていたのかだ。

 

対する俺も普段の除霊時の装備ではない。

そもそも津留見神社の森の修練所で留美の修練を行う予定だったため、俺自身は手ぶらで持ち運びできる最低限の装備のままここに来てしまっているからだ。

一応、耐霊仕様の服ではあるが、武装は普段から持ち歩いている自前の神通棍と自作の札ぐらいだ。

今、俺が背負っている20ℓ程度の小さなリュックサックには、留美の家から借りて来た霊体ボウガンと呪縛ロープと各種札、留美が使用する予備の霊紙が入ってるが、これでも普段の装備の3分の1もない。

普段であれば、値段が張る各種札や術石などの霊具、対霊対魔用の各種グレネード、C4爆弾、小型衛星無線、携帯食料等など、どんな状況にも対応できる品々をタンマリ担いでいる。

 

この状況で欲しいのは、普段から愛用してるフラッシュグレネードや対妖魔用の煙幕弾だ。

あれが有れば、相手が飛び道具を持っていようが、人数差のある屋外戦闘であろうが、優位な状況に持って行く事が出来るだろうが、そうも言ってられない。

 

 

 

最初のターゲットは、南側の段々畑の農道を通ってこちらに向かって来る8体の分隊。

俺は留美を引き連れ、闇夜に紛れて用具倉庫だろう小屋の裏側に進み迎撃態勢をとる。

いくらゴブリンが夜目が効くからと言って、俺の霊視に比べれば索敵能力は低い。

しかも、俺の霊視空間結界の中では足音や匂いなどもある程度遮断できる。

我ながらとことん斥候や隠密行動に優れた能力だと思う。

まあ、そういう風に能力を伸ばしているのだが。

横島師匠の背中を追いかけようとすればする程、その壁の圧倒的な分厚さに折れそうになる。今のままでは横島師匠が能力全開で戦わなければならない状況では、俺は何もできないところか邪魔にしかならない。

せめて、師匠の邪魔をせずに後ろについていけるだけの力をと、今年の夏の妙神山での修行を探査能力と隠密能力を高める方向性で行った結果だ。

 

ターゲットのゴブリン8体は公民館から200mまで近づき、俺たちからの距離は50mに差し掛かったところ……。

「留美、準備はいいか」

「うん、大丈夫」

 

留美は霊紙を両掌に乗せ、そして、霊気を送る。

留美の長い後ろ髪が霊気の漏れにより、ふわっと浮き上がる。

霊気を送った折り紙程の大きさの霊紙は次々と飛び立ち、ゴブリン共に向かう。

その数約100枚。

俺の霊視で得た情報で、正確にゴブリン共のもとに……

 

「見えた」

留美は霊紙を通し、ゴブリン共を感知したようだ。

 

そして、俺の霊視で見たものは、霊紙が次々とゴブリン共に襲い掛かる様子だ。

強度を高めて刃物のように鋭くした霊紙は中空を縦横無尽に飛び回り、ゴブリン共を切り刻んでいく。

津留見流式紙術式『舞姫』という術式だ。

 

ものの数秒でゴブリン共は血まみれになり、何が起きたかも理解できず、反撃すらできずに、すべて倒れる。

音もせず空中を縦横無尽に飛び回る小さな紙切れに、普通は反応できないだろう。

それも100枚ものカミソリと化した紙に一気に襲われるのだ。

この術式、霊紙100枚を同時に操ると射程はおおよそ100mぐらいまでらしい。

そもそも100枚もの数を同時に操れるのは留美だけだとか。

留美の能力は正直、術性能だけだったら、一流のGSにも引けを取らない。

 

 

 

「留美、次いけるか?」

「大丈夫」

8体のゴブリン共が倒れたことを確認し、次の分隊へと行動に移すが……。

 

夜空に激しい光がはじけ飛び、俺たちはその光に照らされる。

「くっ!」

「あっ!」

 

照明弾か!

予想はしていたが、このまま闇討ちはさせてくれないか。

 

最初の俺の急襲を受けて、対策を準備していたということか、この柔軟な作戦能力、やはりどこかにゴブリンどもを操る指揮官がいるということだ。

 

すると、四方から次々と弾丸が俺たちの方向へ放たれる。

狙撃か!

位置が完全にばれたな。

 

俺は留美を抱きかかえ、サイキックソーサーと回避行動と、建物のなどの障害物を利用して弾丸を避けながら、民家の影に身をひそめる。

 

遠方からの援護射撃、俺たちを攻撃けん制が目的か?

こちらを包囲し迫っていた分隊は、後方に下がらせる気配だ。

立て直しを図るか、次の行動も早い。

後方に下がるきる前に叩かないとまずい。

向こうが直接襲撃を避け、遠距離からの銃撃戦でごり押ししてきたのなら、こちらが圧倒的に不利になる。

 

「留美、このまま次のターゲット、いけるか!?」

「八幡……うん」

 

近くに後退気味の分隊一つあるが、ここからでは留美の式紙は届かない。

強引にでも出るしかないか。

だが奴ら、この場所を吹き飛ばさないところを見ると、携行ミサイルとかの重火力の武装はないのだろう。

今の銃撃だけならしばらくは十分耐えられる。いや、耐えて見せる。

 

「ここから真っすぐに敵の分隊がいる。ここから数十メートル強引に進む。留美は俺の背中に乗って式紙のコントロールだけに集中してくれ。大丈夫だ。留美は守る」

「うん」

俺はリュックサックから霊紙を取り出しつつ、前に装着してから留美を背負う。

 

一呼吸おいて、銃撃が鳴り響くなか、民家の影から開けた畑の真ん中に一気に飛び出す。

 

俺たちに対する銃撃の勢いが増す。

霊視による回避と、サイキックソーサーによる防御、ダーククラウドによる銃弾の遅延に、限定瞬間移動を駆使して、銃撃を避け続ける。

ギリギリだが、これなら何とかなる。

 

留美は俺の言う通りに、相手のターゲットのみに集中し、分隊を式紙術式『舞姫』で次々にゴブリン共を屠る。

 

ターゲットの分隊が壊滅したのを感知し、銃撃を避けるために一度、段々畑の起伏の影に滑り込むように入る。

もう、ひとつ分隊を倒せば、予定の2割の損傷を与えられる。

向こうに戦力的余裕がなければ、撤退してくれるだろう。

きついが、何とかなりそうだ。

 

「留美、大丈夫か?」

「うん、大丈夫、八幡が守ってくれるから」

「もう一息だ」

俺は留美の様子を気にしながら、次のターゲットの動きを霊視で追い続ける。

 

ゴブリン共の立て直しも早い。

北側はもう後退して体制を整えだしている。

だが、南側は川がある分後退に手間取ってる。

南のあの分隊は間に合いそうだ。

 

「行くぞ」

「うん」

俺は留美を再び背負い、銃撃の嵐の中に飛び込み、障害物を利用し銃撃の射線を少しでも減らしながら走る抜ける。

 

そして、南の分隊の射程に届き、留美の式紙術式『舞姫』で難なく屠ることが出来た。

分隊を屠ったのを確認し、俺は銃撃を避けつつ近くの倉庫らしき建物の影に飛び込み、隠れる。

 

「留美、さすがだな、助かった」

「ううん、八幡が守ってくれたから……」

何とかなったか。

留美のおかげだな。

俺一人では厳しかった。

 

だが、この状況で留美のこの集中力。

誰かが守ってくれるといっても、恐怖や焦りで精神が乱れるものだ。

留美の霊気に一切のぶれがない。この年でここまで出来るか?

やはり、俺とは出来が違う。

 

121体中、7体は最初の俺の奇襲で倒し、留美の式紙術式『舞姫』で22体倒した。

合計でいえば、2割3分削ったことになる。

これでゴブリン共が大人しく撤退してくれればいいが……

 

 

だが、公民館の方で今までにない大きな爆発音が聞こえてくる。

「!?」

C4か!?

いや、公民館の周りにはゴブリン共はいない。

迫ってきていた分隊は後退し、体制を立て直している。

 

爆弾じゃない、携行ミサイル!?

奴ら、持っていたのか!!

何故、今になって!!

いや、持っている数が少ないから、切り札として温存していたのか?

いや、そんなことを考えるのは後だ。

携行ミサイルを持っている奴を倒さないとまずい!!

 

 

 

そして、再び大きな爆発音が鳴り響く。

 

「くっ!」

本格的にやばい!

 

 

だが……。

その後、聞きなれた声が遠方から徐々に聞こえてきた。

 

「ふふっふふはははっ!!汚物は消毒よー――!!わーーっはっはー――!!」

 

 

そのとんでもない下品な高笑いに俺は安堵する。

 





あの人登場!!
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