やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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(178)ゴブリン共の脅威6 弟子編⑭

ゴブリン共の包囲網を突破して、美神さんが助けに来てくれた。

しかも、銃器だけで一人で100体程度いたゴブリン共を駆逐してしまったのだ。

霊能なんてまったく関係なしにめちゃくちゃ強い。

銃器を持ったゴブリンを100体、正規軍の中隊規模を真正面でやりあって一人でなんなく撃破できるということだ。

どこかの特撮バッタ仮面ヒーローや戦隊ヒーローよりも強いんじゃ?

 

しかし、助けに来てくれたのはありがたいのだが、一つ疑問がある。

あの金に究極がめつい美神さんが、お金にあまりなりそうにないこんな緊急要請に、超特急で来たのだ。

美知恵さん率いるオカGや自衛隊が出動してる状況で、美神さんが急ぐ理由はあまりない。

なのに、なぜか先行して一人で……。

ゴブリン共を速攻で有無も言わさずにド派手に殲滅したりとか、ノリノリなのはいつもの事ではあるが……なんかおかしい。

 

しかも、美神さんはオカGか自衛隊の救援のヘリの音が聞こえてくると、さっさとその場を去ってしまった。

なんか、焦っていたようにも見えた。

 

………あやしい。

 

なんかある。

オカGの美知恵さんや自衛隊に知られたくない何かが……ここにある。

超特急で来てゴブリン共を容赦なく速攻での殲滅。

もしかして……証拠隠滅?

武装したゴブリン共に関係している?

……さすがに美神さんでも霊災愉快犯と同じようにゴブリン共を召喚したとかはないだろう。

ということは、武器か。

ゴブリン共が持っていたサブマシンガン、うちの事務所にもあるしな。

美神さんが横流しした武器が、回りまわってゴブリン共に流れたとか?

そんで、証拠隠滅のためにゴブリン共を滅したと。

 

あり得る。

留美に式紙で美神さんにもゴブリン共がサブマシンガンを装備していることを伝えてるから……それを知った美神さんはもしかしたら自分が横流しした武器が使われてるかもと、慌てて来たということなのだろうか?

本当だったら、さすがにしゃれにならない。

銃刀法違反どころじゃない。

下手すると豚箱入りだろう。まあ、大金積んで事なきを得るだろうけど。

美知恵さんあたりにこってり絞られた方がいいだろう。

 

いや、留美がゴブリン共が武装していると知らせの式紙を送ってから30分も経たないで美神さんはここに到着している。

式紙が美神さんの事務所にまで届くのに30分はかかると源蔵さんも言っていた。

それにだ、事務所からここまでどう車を飛ばしても30分弱で来れるはずがない。

ということは、ゴブリンが武装していることを知る前どころか、最初から武装満載に搭載してるランドクルーザーに乗って一人でここに来ようとしていたということだ。

……これは、どういうことだ?

 

まあ、どうせろくでもない理由なのだろうが、いつもの事だ。

理由はどうあれ、美神さんのおかげで助かった。

俺は改めて霊視と霊視空間把握能力で周囲を確認する。

源蔵さんたちや公民館の避難者も皆無事だ。

ほっと一息つく。

 

「留美、もういいぞ」

「終わったの?」

穴の中に隠れていた留美に声を掛けると、ひょっこりと顔を出し、俺に聞く。

 

「ああ、よく頑張ったな」

「子供扱いしないで!」

俺はつい留美の頭をなでてしまい、留美は頬を膨らませる。

 

「美神さんが助けに来てくれたの?……う、家も畑もなくなってる……ひどい。おじいちゃんたちは?」

留美は穴から出て、周囲を見渡しあたり一面が破壊しくされている惨状に、顔をしかめながら俺に尋ねる。

まあ、美神さんが悪ノリすると大概こうなる。

 

「源蔵さん達は無事だ。公民館に避難してきた人たちもな」

「よかった」

留美は俺の腕をつかみながら、上目使いでホッとした笑顔を見せる。

 

ふう、その留美の笑顔で俺もなんだか癒される思いがする。

 

だが、留美はこの戦いの最中で一度も弱音を吐かず、気後れすらしていなかった。

同じ歳の俺だったら、動けないどころか、おしっこちびっていたかもしれない。

霊能家で生まれ厳しく育ってきた留美は、普通に育ってきた一般人の俺たちとは、初めから戦いや妖怪妖魔に対する覚悟が違うのかもしれない。

 

それに、あの式紙による術儀も正確無比だった。

改めて、留美は天才だと……。

 

留美と共に公民館へと戻る。

 

 

 

オカGと自衛隊のヘリが5機ほど、現場周囲を確認するかのように飛び回っていたが、そのうちの1機が荒地となった公民館の周りに着陸する。

俺は着陸したヘリへと近づいていく。

 

「救援は必要なかったのかしらね比企谷君……それにしてもこれは?」

美知恵さんがヘリから下りて来て、俺にかけた第一声がこれだ。

まあ、この惨状を見ればそうなるだろう。

 

「ああ……、美神さんが救援に来てくれまして、その、一人で殲滅しちゃいまして……」

「この惨状はあの子がやったのね……その令子はどこかしら?」

さすが親子、民家や畑を跡形も無く粉砕したのが美神さんだと、俺が何も言わずとも一発で理解してくれた。

 

「さっきまでいたんですが、美神さんはこのあたりのゴブリン共を一掃して、引き上げました」

「……あやしいわね。令子は後で尋問することにして……、比企谷君状況説明をお願い」

俺は美知恵さんにここまでの経緯を説明する。

 

 

「ふう、相変わらず判断がいいわね。比企谷君。令子が来るまでよく持ちこたえました」

「いや、源蔵さんや鶴見夫婦の結界のおかげです」

「鶴見先生も、まだまだ現役のままでいて下さればありがたいわ。令子の事は置いておくとして、比企谷君、ゴブリン共が銃器を所有している事実は詳細な調査が終わるまで口外無用で頼むわね。……とりあえず公民館の避難民の保護が優先ね。……200人の移送と近隣のビジネスホテルへの宿泊手配と……生活環境の整備などは政府がやってくれるでしょう。この惨状の補填、GS保険の除霊時の不可効力又は人的被害の抑制のための物損損害保障が効くように交渉が必要ね。それは令子本人にやらせましょう。鶴見先生とも打ち合わせをして……。ゴブリン共がまだ近隣に潜んでいる可能性もあるわ。山狩りをしなくては……。それにゴブリン共がどうやって武器を手に入れたのか、ゴブリン共を召喚させたか繁殖させた犯人がいるはずよ。捜査網を引いて関門を設けないと……」

美知恵さんは思考を巡らせ、次の行動について口にする。

 

そうこうしているうちに、オカGの西城さんと横島師匠やキヌさん達が車で到着した。

西城さんは到着早速、美知恵さんの指示の元、ゴブリン共の残党捜索などの対処について準備を行う。

 

「八幡、無事か?ってうわ、これって美神さんの仕業だろ。また派手にやったな~、後で美知恵さんに説教食らうだろうな~」

横島師匠はあたり一面の惨状を見ながら半笑いだ。

 

「まあ、なんとか。美神さんは来てくれたんで、それでこの状況ですね」

俺は師匠に返事をし、この惨状は美神さんによるものであると肯定する、

まあ、これ見れば美神さんを知ってる人だったら、美神さんの仕業だと言わなくてもわかるだろうな。

 

シロとタマモも一緒に来ていたが、別の意味で顔をしかめていた。

「火薬の臭いは苦手でござる」

「そうね」

 

俺は横島師匠やキヌさん、シロとタマモに状況をあらかた説明する。

横島師匠は同情するかのような目を俺に向ける。

「オークの次はゴブリンか、はぁ、八幡お前、なんか妖魔に好かれてないか?」

「冗談でもやめてください」

シャレになってないんだけど。

マジでそう思えてくるからやめてほしい。

 

「ところで、美神さんは何処にいっちゃったんですかね」

キヌさんは少々心配顔で俺に尋ねる。

 

「あー、なんか焦って引き上げましたけど、帰るとは言ってなかったですよ」

 

横島師匠はジトっとした目をして……

「あやしい……美神さん何か絶対隠してるだろそれ、おキヌちゃん達を置いて自分だけ先に行くとか。うーん。おキヌちゃん、美神さんってこの辺に別荘とか持ってた?」

 

「えーっと、確か1年半ほど前に、別会社名義でこの近くの土地を買ってましたね。一戸建て住宅の明細書もありました」

キヌさんが思い出したように教えてくれる。

 

「……もしかして、そこでゴブリン共を密かに召喚して訓練させてたとか、いやさすがにそれは無いっすかね、その土地を霊災愉快犯に貸してたとか?」

……さすがにそれは無いと思っていたんだが、土地って、美神さんかなり、このゴブリン共に関わっていた説が濃厚な感じがするだけど。

 

「美神さんでもそこまでは、うーん、せめて武器を霊災愉快犯と知らずに売ってたってことはあるかもしれんが」

俺もその辺ぐらいまでかなと思いますが……。

 

「うーん。私の予想ですと、今回のゴブリン達とは無関係だと思いますよ」

キヌさんは少々考えるしぐさをしてから、こう言った。

キヌさんはいつもの仕事時の巫女さん姿じゃなかった。

白のブラウスにカーディガンにスカート姿、緊急だったのだろう。

私服姿で仕事に赴く姿も素敵だ。

 

「おキヌちゃんがそういうならそうかもしれない。あの人の事だ、どうせろくでもない理由なんだろうけどな」

横島師匠はあきれたように締めくくる。

 

 

ちょうどそこに……

「横島君達、ちょっといいかしら」

美知恵さんが俺たちに声をかける。

 

ゴブリン残党捜索のための相談だった。

ゴブリンは夜目が効き、さらに今回の奴らは銃を持っているため山狩りを行うのは危険だということで、自衛隊とオカGの人員は近隣の道路封鎖を行い、人の行き来を制限するだけでなく、ゴブリン共の動きを監視するようだ。

そうかといって、ゴブリン共の残党や、ゴブリン共を指揮していた何者かに逃げられる可能性があるため、美神令子除霊事務所の面々に夜間捜索を頼んできたのだ。

それは妥当な処置だと思う。

まずは、万能な横島師匠がいること。

次にシロとタマモだ。

狼と狐の妖怪であるあいつ等は獲物を捕らえるハンターでもある。

ゴブリン共よりも夜目が効き、わずかな臭いや霊気の痕跡で獲物を確実に追い詰めることが出来るからだ。

そして、俺だ。

霊視と霊視空間把握能力はこういう捜索にはもってこいの能力だ。

何かと役に立つだろう。

 

だが、美知恵さんは……

「比企谷君はいいわ。ゆっくり休みなさい」

「俺は大丈夫ですよ」

「あなたはさっきまで戦っていたのでしょ?」

「いえ、それほど消耗してませんから、いけますよ」

「そう言ってくれるのはありがたいのだけど、今は無茶をしなくてもいい状況よ。あなたは学校があるのでしょ?鶴見先生たちと引き上げなさい」

「ですが……」

まだ、霊気も十分残ってるし、捜索程度なら別に問題はない。

 

 

「八幡、休んでおけって、後は俺たちにまかせろ」

「比企谷君、一人で気を張る必要はないですよ」

「先輩に任せるでござるよ!」

「小町が心配するから帰りなさい」

横島師匠とキヌさん、シロとタマモまで、俺にそう言って帰ることを促す。

 

「俺も……」

皆が気使ってくれてるのはわかる。

それでも俺はこの事件の行く末を知りたい。

 

そんな俺の思いを美知恵さんは察して、こう言ってくれる。

「比企谷君には今後もこの件でお願いすることがあるわ。でもそれは明日以降よ。今日は帰って休みなさい。なんならGS特例法を適用して明日学校休んでもいいわよ」

 

「それは大丈夫です。わかりました。後はお任せします」

「ほんとうに真面目ね比企谷君は、これ程オカGに適している人はなかなかいないわ。本気で考えてねオカGへの就職。令子の事はなんとでもなるから」

「いや、それは……」

美神さんの事はなんともならないと思いますよ。

 

 

 

俺はこうして、留美と留美パパと留美ママと家路につく。

因みに源蔵さんは現場に残った。

 

留美パパは車を運転しながら助手席に座る俺に話を振る。

「今日は大変だったね。まさかこんな事になるなんて、でも比企谷君はすごいね」

「俺は大したことないですよ。留美が頑張ってくれたんで、それに美神さんが来てくれましたし」

「はははははっ、美神令子さんはすごい人だね。いろんな意味で、君がどんな状況でも動じない理由がわかった気がするよ」

「そうですか」

まあ、美神令子除霊事務所で仕事すれば、嫌でも度胸が付くという物だ。

因みに留美は留美ママと後部座席に座っているが、留美ママに寄りかかって寝ているようだ。

流石に疲れたのだろう。

しかも今は23時を回ってる。

留美は実際よくやってくれた。

留美の術儀がなければ、中遠距離攻撃が無い俺だけでは銃器を持ったゴブリン共の先方を排除することはできなかった。

 

留美パパはそのまま家まで送ってくれ、俺は風呂に入ってからベッドにつく。

布団の中で今日の事件について思い起こす。

……ゴブリンが銃火器で武装化か。

今回も霊災愉快犯が関わってる可能性が高い。

前回のプロフェッサー・ヌルとの闘いで多少は、盛り返したかもしれないとは思っていたんだが、やっぱり後手に回っている感じだ。

奴らの目的はなんなんだ?

オークに人を使ったキメラ、そして今回の近代武装化ゴブリン……。

ただたんに世間を混乱させるためか?

 

こんな答えの出ない自問自答を繰り返しながら、眠りにつく。

 

 





次は美神さん発覚><
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