やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
ギャグがやりたかったんやーーー
俺が何でゴーストスイーパー美神令子除霊事務所でアルバイトをし、この変態師匠の弟子になったかと言うと………
1年と5ヶ月前の事だ。
総武高校入学式の日、俺は新しい門出に期待をふくらませ、入学式の2時間前に家を出たのだ。
しかし、自転車で通学路を走っていた俺は、車に轢かれそうな犬を見かけ、助けに入ってしまった。
犬は助かったのだが、俺は車に轢かれ入院生活を余儀なくされる。
後でわかった事だが、助けた犬は由比ヶ浜の愛犬サブレ、俺を轢いた車の後部座席に座っていたのは雪ノ下だった。今となってはどうでも良いことなのだが………
そして、俺は入学デビューを見事失敗し、入院生活を送ることになる。
どっちにしても、俺はぼっちにだったろうが………
重要なのはここではない。
俺は交通事故の際、しこたま頭を打ったらしく、事故から2日間目が覚めなかったそうだ。
そして、意識を取り戻したんだが………
そこは病院の個室のベッドの上。
ベッドの裾には泣きじゃくる妹の小町。両親はホッとした表情で……俺を見守っていた。
こんなに俺の事を心配してくれる人間がいる。家族とは良いものだ。
と……ここまでは良い。
しかし、そんな家族3人をよそに、ベットの周りにはなぜか知らない人が沢山いるのだ。
最初は、俺の知らない親戚とか学校関係者とか何かなんだろうと思っていたのだが……
面会時間が終わっても……知らない人が個室の筈の俺の病室をうろついているのだ。
よく見ると………なんか、浮いていたり。下半身が無かったり………頭だけだったりと…………
俺は頭を打っておかしくなったのだろうと思い。そのままシーツを頭に被り眠りについたのだが、翌朝になっても、その風景は変わらない。
流石にこの状況はおかしいと思い。ぼっちの俺だが勇気をだして、知らない人たちに思い切って話しかけたのだが………返事が普通に返ってきたのだ。
ここは病院だ。
いろんな怪我でいろんな状態になっている人がいても、おかしくないだろうと思うことにした。何で俺の個室に居るかは………取り敢えず気にしないことにした。
しかし、看護師さんや担当医、見舞いに来る小町や両親には、その人達はまるで見えていないようなのだ。
よく見ると、その人達はドアなど使わずに壁や天井から自由にすり抜けて、この部屋に出入りしてくるのだ。
…………これ…………ヤバイんじゃ……………
もしかして、霊的なアレ?
いやいやいやいや……霊なんていないんだ。そんなの存在はこの世にない。そう死んだら皆等しく土に帰るのだから………
俺は自分の精神をだましだまし毎日を過ごしたのだが…………
日に日に、俺の個室に集まってくる人数が増え、床だけでなく天井や壁にも張り付いている状態まで………人口密度……いや、霊密度?………霊なんていないから、その人達密度が最早過密状態になってしまった。
そんで、その人達は日に日にエスカレートして、花瓶を割ったり、ベッドをガタガタさせたり、お見舞いの果物を勝手に食べたり…………
………ポルターガイスト現象の様な事をやってくる。
いや、決してポルターガイストなんかじゃない。その人達がガタガタやっているだけなんだからね。
エスカレートしていくその人達のせいで、看護師さん達や病院の関係者が気味悪がって、あまり近づかなくなった。
あれ?病院でもぼっちってどういう事よ?
あの人達もいるからぼっちではないか…………
そんな絶望的な状況で現れたのが、美神さんと絹さんに横島師匠だった。
「このゾンビを倒せばいいのね。簡単な仕事ね!」
病室で1人佇む俺の額に、よくわからない札をいきなり貼ってきた。
「!?おかしいわねこのゾンビ。札が効かないわよ」
「美神さん……この人どう見ても人間ですが…………」
「おい、あんたらいきなり現れて、何をするんだ………」
「ゾンビが人語を話した!?」
「なんだ、さっきからゾンビゾンビと。俺は人間だ」
「だから、美神さん。この人は人間です」
「この目はどう見てもゾンビの目よ。こんな腐った目をした人間は居ないわ!」
「おい!初対面の人間に腐った目なんて言われたくないぞ」
「美神さん……依頼はこの病院の霊障ポルターガイストの解消ですよ。この人は間違いなく人間です」
「……そう言えばそうね。病院中、雑霊がやたらめったら多いわね………?このゾンビに似た子が霊を呼んでいるようね…………横島くん札の用意って……彼奴何処に行った!!」
「人の話を聞けって」
「看護師のお姉~さ~ん!!僕とお茶しませんか~!!」
「彼奴は~!!」
ドコ、ボス、バコ!!
「あは、あはははっ、ちょっとしたジョークっすよ。本気で怒らなくても」
「真面目に仕事しろ!!」
「ちょっ……あんたらいったいなんなんだ。漫才師か何かか?」
俺は霊たち……間違った。この人達のお陰で多少のことでは驚かないが、この人達も負けず劣らず常識はずれな人たちだ。
「失礼ね。私は美神令子。ゴーストスイーパーよ。この病院に集まっている霊を除霊しにきたのよ」
人の事を散々ゾンビ扱いしたこのスーパーモデル顔負けのプロポーションを持つ美女が偉そうに言ってきた。
ん?美神令子……ゴーストスイーパー?聞いたことがある……たしか……
というかやっぱ、この部屋を占拠するこの人達は幽霊か何かだったのか………半分気がついていたのだが……それを認めると俺の精神が持たなかった。
幽霊が見えるなんて。怖いし……あと怖い。
「ごめんなさい。ご迷惑をおかけしまして…………」
巫女服の大人しそうな少女が俺に何度も頭を下げる。この子は常識人ぽいな。
「ゴーストスイーパー横島参上って、なんだ男か………けっ!」
さっきまで看護師さんに無謀なナンパを繰り広げてた男だ。
うん、多分こいつは三下だな。きっと荷物持ちか何かだ。きっと
「……ゴースト・スイーパー………」
「まあ、いいわ。君がどうやらこの雑霊を呼び込んでいるようね」
美神令子と名乗った美人は俺にこんな事を言う。
「え?俺が………」
「君、この頃なにか変わったこと無い?急に霊が見えるようになったりとか」
………めちゃくちゃ心当たりがあるんですけど、なに……急に霊能力に目覚めたの?
「……はい、そのとおりです。……これなんとかなるんですか?」
「なんとかなるわよ。それが私達の仕事なのよ!」
そう言って、この3人は札やら何やらを取り出し、俺の個室や病院中を駆け巡り、何かを準備し、再び俺の前に来る。
美神令子は手に札を持ち、天井に突き出し、何やら呪文らしきものを唱えた後、気合の言葉を紡ぐ。
「この世に残りし霊魂よ。元の場所に帰りなさい!鎮魂!!」
すると彼女の持つ札が輝き、病院全体が光りに包まれる。
その光が収まると、さっきまで、多量に闊歩していた霊がものの見事居なくなっていたのだ。
「いっちょ上がりね。ちょろいちょろい」
そう言って美神令子達はこの部屋を出ていこうとする。
「あのーー。色々言ってしまってすみません。なんか助かりました。これで俺も元の生活に戻れます」
俺はベッドに座りながらお礼を言う。
「え?別に君を助けたわけじゃないし、多分また霊は集まってくるわ」
何言ってるのこいつみたいな顔で美神令子は俺を見据える。
「へ?でも霊を除霊してくれたんじゃ」
「確かに今この病院に集まってきた霊は除霊したわ……でも、君の霊を集める体質は治してないわ」
「ええええ!?」
衝撃の事実だ。どうやら俺は霊を集める体質になってしまっていたようなのだ。
しかも、それが治っていないと………
「だって、私が依頼されたのは病院に集まった霊を除霊すること。別に君を治しに来たわけじゃないわ」
た…確かにそうだが………
「ど……どうしたら」
「………君、お金持ってる?」
「へ?」
「除霊ってお金がかかるのよ。しかも、君みたいな霊障の体質を治すのは時間がかかるし」
「い、幾らするんですか…………」
「5000万」
「へ?」
「まあ、持ってなさそうよね。ご愁傷様~」
そう言って美神令子は病室を去ろうとする。
「ちょっと…え?待って……」
「美神さん……何とかならないですか?なりたくてそんな体質になったわけじゃないのに、可愛そうです」
巫女の子、ナイス……めちゃいい子だ。
「相変わらず守銭奴っすね。たまには人助けぐらいしても、いいんじゃないっすか?」
ありがとう。そこのナンパの人、三下って思ってすまなかった。
「私は一文にもならないことはしないって決めてるの!………何よ二人共…その目は………あーーわかったわよ。そのかわり横島くんが面倒見るのよ!霊障体質は時間がかかるんだから!!」
というわけで……俺は退院後。美神除霊事務所にお世話になることになりました。