やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

京都修学旅行編がここで終わりです。
今までお付き合い頂きありがとうございました。



㉒ようやく登場!

「………比企谷くん……もしかして……あの事故がきっかけで…」

雪ノ下は恐る恐る俺に聞いてきた。

やはり、バレたか………

まあ、何れは話さないといけないことだしな。

これ以上、嘘に嘘を重ねるわけにも………いい機会だったのかもな。

 

 

「ゆきのん、何のこと?」

 

 

「先に言っておくぞ。雪ノ下や由比ヶ浜が悪いわけじゃないからな………そうだ。あの入学式の事故の後に俺は2日間の昏睡状態で、目が覚めたら霊能力に目覚めてた。浮遊霊が見えていたんだが、最初は何のことかわからず、事故で頭を打って、ただ単に頭がおかしくなったのだと思った。………だがそうじゃなかった。俺から漏れ出す霊気が幽霊を呼び寄せて、怪奇現象のオンパレード。霊能力が暴走し俺自身がいわゆる霊障そのものになっていた。その時に病院の依頼で除霊を行いにきた美神令子除霊事務所の面々に助けてもらって、拾われたってわけだ。あのままだと俺は悪霊や妖怪に喰われるか、取り憑かれるかされてたそうだ」

 

 

「ヒッキー……それって………」

「………そんな状態で」

 

「そんな顔するなよ。事故そのものも別にお前らのせいじゃないだろ。俺の意思で、車道に飛び出し、由比ヶ浜のとこの犬を助けようとして、雪ノ下が乗っていた車に轢かれただけだ。その後、霊能力に目覚めたのは、単なる偶然で、全く関係ない」

 

「でも……」

「…………」

 

「俺はその縁で、美神さんや横島師匠に出会えた。美神令子除霊事務所でアルバイトしながら、霊障の克服のために、霊力コントロールを学んだ。まあ、なんだかんだあって、霊力コントロールもうまく行き、俺自身がGSになれるぐらいの実力がついたってわけだ。今となってはあの事故に感謝してるぐらいだ。美神さんや横島師匠に出会え、GSにまでなれたんだからな。将来を約束されたようなものだ。サラリーマンとかガラじゃない………それと俺のGS能力が少しでも、役に立ったようだしな………」

正直、美神令子除霊事務所のアルバイトはきついが、充実感はある。

もし、何もなく高校の1年半をダラダラ過ごしていたとすると……今の俺は無かった。

 

「ヒッキー………」

「比企谷くん………」

 

「だから、この話はもう無しだ」

 

「でもヒッキー………うんわかった。それでも、ヒッキーにはありがとうだよ」

「比企谷くん……わかったわ。姉さんもこの事を?」

 

「雪ノ下さんは知ってる」

 

「うー、なんか陽乃さんとヒッキーっておそろいみたいでずるい」

「姉さんといつの間にか、そんなに仲良くなったのかしら?」

由比ヶ浜がなんかふくれっ面だし、雪ノ下はなんでそんな冷たい視線で俺を見るんだ?

 

「別に仲良くなんてなってない……その逆だ。GS試験で陽乃さんにボコボコにされたんだぞ」

その後、陽乃さんは婿がどうのこうの言っていたがそれは……きっと冗談だ。

 

「…そ、そうなんだ!」

由比ヶ浜さん。なんでそこで嬉しそうなんですかね。そんなに俺がボコボコなのが嬉しいのかよ。

 

「……姉さんらしいわね。でも、何か引っかかるわ。あの姉さんの言い回し」

雪ノ下は何か思い浮かべているようだ。

 

「ああ、それと、GSの事は学校の連中とかには秘密にしてほしい。学校に通ってる俺は飽く迄も一般の高校生だ。学校にはGSのアルバイトとGS免許のことは申請、許可を得ている。一部の学校の先生は知っているはずだ。多分平塚先生もな……確認とってないが」

平塚先生は学校生活を二の次にしていた俺を、学校につなぎとめるために、……いや、あの人の言い分だと、青春を謳歌させるために、この部に強制的に入れさせたのだろう。

そのおかげで、学校生活も退屈せずに済んではいる。

 

「うん。わかった!あたし達だけの秘密だね!てヘヘへ」

由比ヶ浜はそう言って、また、席を詰めてくる。

 

「そうね。あの時のあなたの話をしても誰も信じられないとは思うけど…………あの時のあなたは………ちょっと……その……かっこ……かったから」

雪ノ下はプイッと視線を外しながら最後はほとんど聞き取れない程の小さな声で何かを言っていた。

 

 

この後、GSについていろいろ聞かれたが……すぐに下校時間になる。

 

俺は途中まで、下校を共にした。

なぜか由比ヶ浜はピタッとくっついてくるが………

 

まあ、こいつらが助かってよかったな……あの時、諦めなくてよかった。

確かに横島師匠の言うとおりだな。由比ヶ浜と雪ノ下がこうやって助かった事自体が俺の勝利か………

 

 

 

ちょうど二人と別れた後、すぐに小町から電話が掛かってきて買い物を言いつかる。

俺はスーパーによって買い物をし、帰宅する。

頼まれた食材を見て………ある予想をしていた。

厚揚げに油揚げ……肉のブロックか……

 

 

俺は家の鍵を開け、玄関を開ける。

「小町帰ったぞ」

 

やはりか………何時もより靴が多い。来客だが………

 

 

「八幡殿!おかえりでござる!」

出迎えの声がかかる。女性の声だが、もちろんこの声は小町じゃない。

時代劇のサムライの様な口調だ。

長い髪をポニーテールで結んでる背が高めの元気いっぱいの少女が、笑顔で顔をだす。

 

「……なんでいるの?」

 

「折角の姉弟子が出迎えたというのに、何でござるかその態度は!そもそも八幡殿は拙者の弟弟子!もっと敬うべきでござるよ!」

年は俺とそれほど変わらない様に見えるこの少女は犬塚シロ。

 

「まあ、すんませんでした姉弟子……というかシロ、オカルトGメンの仕事で沖縄に出張してたんじゃないのか?」

俺はわざとらしくそう言った後。質問をする。

 

「今日帰ってきたんでござるよ!でもって、5日間休みをもらったでござるが、横島先生は何処かに出張だとかで……つまらないし、八幡殿のお家に遊びに来たでござる!」

そう言って、ジーンズのおしりから出ている犬の様なシッポをパタパタを振っていた。

そうこの少女は人間ではない。希少種である人狼族の娘だ。いわば妖怪の一種だが、神の使いであった一族のため、どちらかと言うと人や精霊に近しい存在なのだ。

詳しいことは知らないが、この容姿で、実年齢は小町より低いらしい。

 

「しっぽ……擬態できてないぞ」

 

「良いではござらんか!ここには今八幡殿と小町殿しかいないし!」

面倒だな……こいつの目的は………散歩だ。横島師匠はこいつの散歩に毎度付き合っていたらしいが……俺が弟子になった後、トレーニングの一環だとかで俺はこいつの散歩に毎回つきあわされた。1回の散歩で100km程度毎回走らされるのだ。嫌でも体力がついてくる。

一人で行けばいいのに、誰かと一緒がいいと毎回ダダをこねる。

そのへんが実年齢に即しているようだが………

 

「外では気を付けろよ」

 

 

「お兄ーちゃん。帰ったなら食材速く持ってきて!今小町料理で手が離せないから!」

キッチンの方から、我が妹、小町の声が響く。

 

「わーった」

俺はシロに買い物袋を手渡すと、シロはシッポを振りながらキッチンに持っていってくれた。

 

「ただいま」

靴を脱ぎリビングに入るとやはりもうひとりの少女がソファーに座っていた。

 

「おかえり、八幡……油揚げちゃんと買ってきた?」

この黄金色の髪の少女は俺と同じぐらいの年格好だが美少女というよりは美女と表現したほうがいい。雪ノ下の様にツンとした雰囲気をしているが、何故か妙に色気があるのだ。

 

「ほれ、もう小町に渡ってる」

 

「そう、ならいいのよ」

こいつの名前はタマモ、こう見えても1000年以上生きている別名九尾の狐と呼ばれる大妖怪だ。

霊気の内包量は流石である。

タマモがここにいる理由はシロとほぼ同じだろう。休みの間、俺ん家に泊まる算段だろう。

まあ、親父とかーちゃんは娘が増えたと喜ぶがな………

 

シロとタマモは美神令子除霊事務所の同じ職場仲間だが、彼女らの方が先輩で、シロに限っては横島師匠の一番弟子のため、俺の姉弟子にあたるのだ。

妖怪だが、彼女らは国やGS協会、オカルトGメンに認められた人間の協力者としての立場を得ている。彼女らの後見人は美神さんだがオカルトGメンの観察下でもあるため、オカルトGメンの仕事をよくやらされている。美神さんはなんだかんだと、美智恵さんには頭が上がらない。

まあ、報酬はきっちり貰っているようだが………

 

「タマモちゃんはテーブル片付けて!お兄ちゃんは料理手伝って!シロちゃんは食器出して!」

 

「わかったわ小町」

「はいよ」

「わかったでござる小町殿」

俺と二人は小町に素直に応じる。

何故かこの二人は小町に懐いている。特にタマモは小町を気に入っているようだ。

小町もこの二人には心を許している。

 

しかし、小町は美神さんや横島師匠に対してはどうも心を許していない。

態度を見ればわかる。

もっとも、美神さんや横島師匠は気にしてないが……

 

 

小町お手製の夕食がテーブルに並ぶ。親どもは今日も遅くなるらしい。

社畜はきついな。残業とか………

 

肉野菜炒めに揚げ出し豆腐。わかめの酢の物に味噌汁。

タマモにはそれと別にきつねうどん。

シロには、サイコロステーキを付けている。

二人の大好物だ。

 

「「「「いただきます」」」」

 

賑やかな夕飯だ。

小町は二人に出張先の沖縄のことをいろいろ聞いていた。

二人はお土産を小町と家の家族に用意してくれていたらしい。

 

 

俺は腹八分目にしておかなければならない。

霊気も霊的構造も回復していないが………食事の後、シロは必ず散歩を強請って来る。

今日は自転車で半分の距離で勘弁してもらいたいところだ。

 

 

小町は二人と会話を楽しみ、笑顔だ。

まあ、小町には今回も修学旅行で怪我して遅れて帰ってきたことで、心配かけてしまってた。今日ばかりは二人が来てくれてありがたく思う。

 

 

 

ん?これってはたから見ると、あれ?美少女3人に囲まれて生活している俺に見える?

 

あらぬ誤解を生みそうだな………学校の連中には見せられない風景だ………特にあの二人には………




というわけで、次章となるわけです。

ちょいと休憩してから、再開します。


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