やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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㉔シロとタマモ

 

「この子は誰?ヒッキー」

「どういう関係かしら?」

 

サイゼに到着し、席に座った瞬間二人は同時に喋る。

 

「ここに来る途中で言っただろ。バイト先の先輩だって」

 

「そうじゃなくて!」

「それは聞いたわ」

 

「八幡殿、このお二方はなぜ怒ってられるのでござるか?」

シロは俺の隣に座りながら、不思議そうに俺に尋ねる。

 

「よくわからんが、お前が原因だって事だけはわかる」

 

「なるほどでござる!!拙者、犬塚シロでござる!美神令子除霊事務所の仕事仲間で、八幡殿の姉弟子でござる!」

シロは二人の顔をまじまじと見て何か納得したような表情で自己紹介を始める。

 

「ご丁寧に、雪ノ下雪乃です。この男とは部活仲間なことはたしか……姉弟子?」

「由比ヶ浜結衣。ヒッキーのクラスメイトで部活も一緒です」

 

「シロは仕事仲間だ。姉弟子ってのは…お前ら横島さん知ってるだろ?こいつが一番弟子で俺が二番弟子なんだよ。……そういう事だ。納得してくれたか?」

 

「でも、迎えに来たとかなんとか……一緒に散歩とか…………」

由比ヶ浜はまだ納得いかないようだが……ったく、なんなんだ?

 

「俺の家に今、泊まってるんだよ。誤解がないように言っとくが、小町も居るし親も家に居るからな」

 

「それにしても随分親しそうね。あなたが女性を下の名前でしかも呼び捨てにするなんて」

 

「………ああ、こう見えてもシロは小町より年下だ」

 

「へ?……だって、ゆきのんより背高いし、その……モデルさんみたいに細いのに、その胸もあるし、年も同じぐらいなのかなって」

由比ヶ浜は不思議そうにシロをまじまじと見る。

あの、その言い回し地雷踏んでないか?…雪ノ下、自分の胸元見てから何故か俺を睨んでくるんだけど。なぜ俺?

 

「年は下でも拙者は八幡殿の姉弟子でござるよ!もっと敬うべきでござる!」

 

「……ひとりで散歩行けたらな」

 

「一人で行けるでござる!誰かと行ったほうが楽しいからでござるよ!」

 

「じゃあ、明日から一人な」

 

「ぐぬぬぬぬっ、そんな殺生な!八幡殿は酷いでござるよ!」

 

「……な、なんかヒッキーに小町ちゃん以外にもうひとり妹がいるみたいなかんじだね」

「そ、そうね」

由比ヶ浜と雪ノ下はさっきまでの攻撃的な態度から、毒気が抜かれた様な感じに軟化していた。

 

「それにしても八幡殿も隅に置けないでござるよ。ボッチだなんだ言ってたのに、こんな美人の恋人が二人もいるなんて!」

 

「おいぃ!変な誤解するなよ!この二人は俺の部活仲間だと言っただろ!」

 

「そんな~、美人で恋人なんて!」

由比ヶ浜さん?何言っちゃってるんだ?

 

「し、心外だわ。ふたり同時に恋人宣言するような男と……このゲス谷くん」

雪ノ下なにうまいこと言ってるんだ?茨木童子の時の事は忘れろよ!

俺のトラウマ呼び起こさないで!

 

……この後は、なぜか和やかな雰囲気になった。

よくわからんが誤解は解けたようだ。まったくなんだったんだ?

 

 

俺らはドリンクバーだけだったんだが、シロの奴はその間ステーキ2枚平らげやがった。

 

 

しばらくして、和やかな雰囲気のまま、帰宅する事になるのだが、シロの奴がまた余計なことを言う。

 

「八幡殿!明日は何処に連れてってくれるでござるか?拙者はデジャブーランドがいいでござるよ!」

 

「ヒッキー?それってまさか……デート?」

「比企谷くん……あなた、小町さんより年下の子と……ロリ谷くん」

おい!またあらぬ疑いを!ロリ谷くんってなんだよ!今までの中で最悪だからなそれ!

そんな理由無いだろ?さっきまでの話はなんだったんだ?振り出しかよ!

 

 

 

……何故か明日、由比ヶ浜と雪ノ下が付いてくる事になった。

由比ヶ浜は、明日暇だからシロに一緒について行っていいか聞き、あっさりOKをだす。

雪ノ下は、部員から犯罪者を出すわけには行かないという理由で強引について来る気だ。

 

 

 

なんか面倒なことになったんだが。

 

 

翌日、千葉駅集合。

「雪乃さん。結衣さーん。やっはろー!」

「小町ちゃんやっはろー!」

「小町さん、や…おはよう」

 

「結衣殿、雪乃殿はおはようでござる!」

「シロちゃんもやっはろー!」

「シロさん、おはよう」

 

タマモは俺の袖を引っ張り、耳元に手をやり内緒話をする。

「ねー八幡。あの人達、わたし達と一緒でいいの?」

「シロが良いって言ってたし良いんじゃないか?」

「……私達が妖怪だって知らないんでしょ?」

「すまないな。窮屈な思いをさせる。まあ、悪い奴らではないから」

「そう、八幡と小町が良いって言うなら……私は構わないわ」

タマモはちょっと社交性にかけるところがある。小町や俺は気が許せる人間ではあるが、由比ヶ浜と雪ノ下は今日始めて会う人間だ。不安に思っても仕方がないだろう。

 

「ほえー、凄い美人……外人さん?」

「比企谷くん……こちらの方は」

俺の横に居る二人はタマモを見て目を丸くする。

まあな、タマモは美少女だ。雪ノ下も美少女ではあるが、タマモの顔立ちはどちらかと言うとヨーロッパ系の顔をしている。しかも何もしていないのに妙に色気があるのだ。

1年半前はこんなんじゃなかったんだが………

 

「ああ、職場の同僚のタマモだ」

「タマモよ。私のことは気にしないでいいわ」

俺はタマモを二人に紹介するが……タマモも一応自己紹介をするがツンとした雰囲気をだし、とても社交的とは言えない。

 

「あははっ、あたしは由比ヶ浜結衣、結衣って呼んでください」

「雪ノ下雪乃です。突然押しかけるような真似をしてすみません」

 

「別にいいわ」

そう言って、タマモは小町の方へ歩いていく。

 

「……ヒッキー、あたしなんか怒らせるようなことしたかな?」

「いや、あれが通常だ。別に怒ってもいない。タマモは何時もあんな感じなんだ。気を悪くしないでくれ」

由比ヶ浜は苦笑しながら俺に聞いてきたが、タマモはあれが通常だ。あまり他人に興味が無いと言ったほうが良い。

 

「……同僚がもうひとり居ると聞いてはいたけど、彼女は年上よね?ヨーロッパの人かしら?」

雪ノ下の質問は答えづらいな。彼女は数千年以上生きている。正確には紀元前に遡るらしいが……800年程前に封印され、近年に転生し復活した。転生の際、記憶を失い、子供に戻ったらしいのだ。

しかし…過去の記憶は徐々に戻りつつあるらしい。ただその記憶は記録という形らしく、自分が体験したというよりも、第三者目線から見る記録映画を見ている気分だと言っていた。

タマモと一年半前は出会った時にはシロとそう変わらない、ちょっと年下の女の子な感じだったんだが、今は見ためは俺と同世代位なのだが明らかに年上の雰囲気を醸しだしていた。

記憶が戻りつつあるのが影響してるらしい。

 

彼女の本当の姿は大妖怪白面金毛の九尾の妖狐、玉藻前なのだ。

……当時の人間からは妖怪だからと言うだけで封印されたようだが、特に悪さをしたようなことはない。幅広い知識と霊力を持つ大人しい妖怪だ。

その美貌を活かし、時の権力者の伴侶となり、庇護され外敵から身を守っていたに過ぎないからだ。

俺の予想だが……現世で庇護を乞う対象となってる人物は、多分横島師匠だ。

 

俺はそんなタマモが大妖怪玉藻前に戻りつつあることを感じ……敬意を払った接し方の方が良いのではと思い。

半年前、

「すまなかった。タマモさんって呼んだ方がいいよな。実際俺よりも人生経験長いし」

と言ってみたのだが………

「バカ……今まで通りでいいわよ八幡」

と頭を軽く小突かれた。

それが今日まで至っているのだが……果たして現在の彼女は精神年齢はどの様になっているのかはわからない。

タマモが良いと言うならば俺は、このままの関係でいようと思う。

タマモもそれを望んでいるからだ。

 

 

 

「雰囲気はああで、取っつき難いところはあるが、俺らとそう変わらないから、普通に接してやってくれ」

俺は小町と話すタマモに目をやりながら、雪ノ下と由比ヶ浜にそう言った。

 

 

そして、関東でニ番めに規模が大きいテーマパークデジャブーランドに到着した。

もちろん一番は東京ディスティニーランドだ。

このデジャブーランドは埼玉と千葉の県境の山手にある。

 

「八幡殿!八幡殿!!あれに乗りたいでござる!!」

「わかったから、引っ張るな」

「八幡殿!八幡殿!!あれに入りたいでござる!!

「おい、ちょっと休憩させろよ」

デジャブーランドに到着した途端これだ。

俺はシロに振り回される。

シロはずっと子供のようにはしゃぎっぱなしだ。

まあ、実際年齢は子供だけどな………

 

最初は同じ様にはしゃいでいた小町もこのパワーにずっとついていけないようだ。

 

今は、残りの4人で休憩しながら女子トークに花を咲かせている。

こんな中で、コミュ障二人(タマモ・雪ノ下)いるから、由比ヶ浜も大変そうだがなんとかやってるようだ。まあ、小町も居るし大丈夫だろう。

タマモはシロとは違い積極的に人と接しようとはしない。今回のはいい機会になるかもしれないな……

 

しかし、今、雪ノ下と由比ヶ浜にタマモとシロが妖怪だと話したら、二人は受け入れてくれるだろうか?

あの二人はつい最近、妖怪に襲われ、恐ろしい目に遭い死にかけた。

その恐怖は今も脳裏に残っているだろう。

だから俺は、タマモとシロが妖怪であると事前に言わなかった。

妖怪だという事実だけで、タマモとシロを恐怖の目で見、拒絶してしまうかもしれないからだ。

そうでなくとも、一般的な認識では妖怪は悪と見られているのだ。

もうちょっと時間が必要なのかもしれないな。

 

小町は逆に、そんな偏見も持っていなかったため、あっさり受け入れた。

しかも、狐と狼の姿の二人をモフモフだの、癒やされるだの言って、散々抱き倒してたな……

今では、非常に仲がいい。

特にタマモはGSの世界以外の年近い人間との接点は俺の知る限り小町ぐらいだ。

シロは意外と近所に受けがいいし、人懐っこいからな。

 

もしかして、狐と犬じゃなかった、狼の性質なのかもしれないが………

 

 

 

俺は遅い昼食を促す。

「小町、タマモ、シロ、昼飯買ってくるがリクエストは?」

 

「オムライス!お兄ちゃんの愛情がたっぷり入ったやつ!」

「きつねうどんがいいわ」

「ステーキ!!分厚いステーキが良いでござる!!」

 

「まあ、無かったら適当な、その辺で席とってくれ」

 

 

俺は由比ヶ浜と雪ノ下とちょっと離れた屋外フードコートへと昼食を買いに行く。

「ヒッキー、シロちゃんって本当にヒッキーの妹みたいだね」

 

「まあ、そうだな。本人に言うと怒るがな」

まあ、感覚は小学生くらいの小町みたいなもんだ。元気度は400%ぐらいあるが……

 

「タマモさんも、それほど話しにくいことは無かったわ」

 

「まあ、人見知りなだけだ」

雪ノ下さん?それを言う?同じ穴のムジナだぞ。自覚がないのか?

 

「そういえば、さっき聞いたけど!ヒッキーのGSのアルバイト先って女の人ばっかり!!」

「キヌさんって人の事も聞いたわ。とても可愛らしい方のようね。なんでもあなた。キヌさんの言うことは素直に聞くようね」

「そうだし!お嬢様学校の一つ上のお姉さんに、ヒッキーがデレデレだって!!」

雪ノ下は何時もの冷たい視線を俺に向け、由比ヶ浜はぷりぷりしだしたぞ。

 

おい!何その偏った情報?誰が喋った!?しかも誰がデレデレだって!誰が素直に聞くって!………確かに素直には聞いちゃうよな。聖母だし………しかし、デレてないぞ!決してデレてないぞ!そりゃ、話しかけられるだけで嬉しいし……あの笑顔を見るだけで癒やされるが………デレではない!

そう、ある意味信仰に近い!お前らは神様にデレるか?俺は飽く迄も信奉者なのだ。

 

 

「な、何を言っているんだ?そんなわけがあるわけないではないか……」

しどろもどろになるのは許してほしい。

 

 

 

 

!?………霊気?こんなところで?

 

 

 

そして………遠方から悲鳴が上がる。






タマモの設定は改変しております。

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