やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

というわけで続き。


㉕シロとタマモといつものように除霊

『キモイって言うな~、1000年前だったらイケメンだったんだよ~』

『デブで何が悪いだに~、太いのは金持ちの象徴だに~』

『ショボイってなんだ~、見た目で判断するな~、それに別にお前らに迷惑かけてないだろ~』

 

キモ・デブ・ショボそうな妖怪3体が次々とカップルに襲いかかり、ネチネチと説教じみた愚痴を言い、詰め寄っていた。フードコートは阿鼻叫喚と化する。

 

……何これ?めちゃくちゃデジャブーなんだが?

 

そして、カップルの男女に一通り愚痴を終わるとキモイ妖怪とデブ妖怪、ショボイ妖怪は粘液を吐きかける。

 

吐きかけられたカップルはそれぞれ、ブサイクになったり、太ったり、ショボくなったりする。

一種の呪いのようだ。

 

『お前らも我らの気持ちを味わうがいいのだ!』

『そうだに。今度は我が身になって、蔑まれつづければいいだに!』

『我々は報われない男達の嫉妬と絶望の代弁者なのだ!』

 

その様子を見ていた他の客も我先に逃げ出し、収拾が付かない状況になっていた。

コイツラの呪い、地味に嫌な攻撃だ。

男女共に、絶対避けたい事態だろう。お互い意識しあってるカップルにとってこれ程嫌な呪いは無いのではなかろうか?

 

 

……はぁ、何これ、このテーマパーク?確か年に1~2回ぐらいこんな妖怪を生産してないか?

半年前も依頼でこれに近い妖怪を美神さんたちと退治しに来たんだが………前は嫉妬女の妖怪だったような……

 

 

「ヒッキー………」

「比企谷くん………」

由比ヶ浜と雪ノ下は不安そうに俺を見上げていた。

 

「大丈夫だ。彼奴等弱そうだし……俺の後ろで離れないようについて来てくれれば大丈夫だ」

 

俺は二人にそういいつつ、スマホで電話をする。

 

先ずは美神令子除霊事務所に電話をする。

「比企谷です。デジャブー・ランドでDランク妖怪3体が出現し、目の前にいます。客にも被害が出てますが、死亡には至っていません。呪いらしきものを振りまいてます。GS協会に緊急除霊許可願いを出してもらっていいですか?」

 

『比企谷くん、今、許可申請を出しました。今日はシロちゃん、タマモちゃんも一緒なのでしょ?比企谷くんはまだダメージが残ってるから、二人に任せてね。それとシロちゃんとタマモちゃんにも特別除霊許可を比企谷くん監督の元で申請だしておきます………直ぐに返答きました。許可おりましたよ比企谷くん。頑張ってくださいね』

電話をとったキヌさんが応答してくれた。

 

もどかしいかも知れないが、除霊前のこの応対はGSにとって重要なことなのだ。

緊急時の除霊について、いくつかルールがある。

先ずは妖怪や霊障被害が起こっている現場に遭遇した場合。即、報告する義務がある。俺の場合は美神令子除霊事務所に所属しているため、事務所からGS協会に連絡してもらう。誰もいなかったら、直接GS協会に連絡することにはなるのだが………

そして、ここはデジャブーランドの敷地内、国の所有地や自治体が管理する公共施設とちがい、いわば他人の敷地だ。かってに除霊行為は通常出来ない。

緊急時の除霊行為は事前準備が出来ない分、危険が伴う事が多い。器物破損や、それこそこの様な人が多い場所では、人を巻き込んでしまうことが大いにある。巻き込んで怪我や死亡させてしまった場合。いくら妖怪や霊障を抑えたとしても、責任問題等に発展しかねないのだ。

そのための許可申請であり、GS免許を取得した除霊者の保護、そして、もし除霊に失敗した場合の次なる手を打つためでもある。

今回直ぐに許可が降りたのは、俺がGSランクがCで、報告した対象妖怪のランクがDの3体……そして、特別協力者であるシロとタマモが存在することも考慮され、即許可がおりたのだ。

特別協力者…妖怪であるシロ、タマモは通常GS免許者の監督の元でしか除霊許可はおりない。今回の監督者は俺ということになる。

まあ、妖怪や幽霊を相手する性質上、これらのルールをすっ飛ばして除霊が必要な場合がどうしても起こるが、そんときは、そんときだ。それが正当な行為であれば後でいいわけのような、報告書をたんまり書く程度のものだ。

 

 

 

俺は電話の応対をしつつ、コンプレックス妖怪3体を見ながら、由比ヶ浜と雪ノ下を引き連れ、シロとタマモと小町の元へ移動する。

 

小町たちも俺たちに合流するために移動していたため、キヌさんとの電話を切る前に会うことが出来た。

「八幡殿!許可申請は!」

 

「今おりた。二人に任せていいか?」

 

「任せるでござる!」

「いいわ。折角、楽しんでいたのに邪魔してくれたお礼はしないとね」

シロとタマモはそう言い、コンプレックス妖怪共を見据えていた。

 

 

 

「小町、由比ヶ浜、雪ノ下はここで少し待っててくれ……」

 

「うん」

「……」

「お兄ちゃん、シロちゃんとタマモちゃんの足を引っ張らないでね!」

由比ヶ浜と雪ノ下は心配そうに俺を見るが、小町はあっけらかんとこんな事を言ってくる。

 

 

「美神令子除霊事務所所属ゴーストスイーパー、比企谷八幡です。今から除霊行為を行います。落ち着いて直ちにこの場から離れて下さい」

俺はコンプレックス妖怪3体の方へ走りながら、GS免許を掲げ、大声を出す。

この宣言のような行為も重要なことなのだ。こんな状況で落ち着いてられる人などいないし、恐怖で動けなくなる人も多い。体裁上これをやらなければ、いろいろと後で問題になるからだ。

 

その宣言が終わったと同時に、シロとタマモが動き出す。

シロがキモイ妖怪を霊波刀で一閃。

タマモが放つ狐火でデブ妖怪は消し炭に。

 

ショボイ妖怪はそれを見て、女性を人質に取る。

『なんだよ。お前らは!………って、泥田坊の旦那じゃないですか!なんでこんな酷い事をするんですか!』

 

ショボイ妖怪は俺を見て……いや、俺の目を見てそう言ってきたようだ。

 

「………泥田坊って誰だよ。しかも俺はお前みたいな妖怪は知らん!」

 

『ええ?酷いな、もう忘れちゃったんですか?この前、俺の愚痴聞いてくれたじゃないですか?』

 

………泥田坊ってなんなんだよ。妖怪に人望?があるのか?あの茨木童子も一目置いてたようだし……………て、こいつまだ俺を泥田坊と間違ってるのか?似てるのは目だけだよな?姿も似てるのか?

 

そんなやり取りをしている間に、シロが人質を救出し、タマモが狐火でショボイ妖怪を燃やし尽くす。

『え?そんな!泥田坊の旦那!なぜーーーーー…………』

……間違えたまま消滅したんだけど、せめて認識を改めてから逝ってほしかった。

 

 

「なぁ、タマモ……俺って泥田坊って妖怪にそんなに似てるか?」

 

「猫背と、そのやる気が無い目が似てるわ……でも、全身泥が吹き出てるし……それほど似てないわね」

 

「……そ、そうか」

………泥田坊って猫背なのか………やっぱ目も似てるんだ。でも泥が吹き出してるって………あの妖怪なんで間違うんだよ。

 

 

コンクプレックス妖怪3体の呪いで、デブやブサイクやショボくなった人達は、奴らが消滅したことで、呪いが解け元の姿に戻る。

 

 

大きなけが人はいないようだ。

 

 

俺は取り敢えず、小町や由比ヶ浜と雪ノ下が待っているところまで戻る。

「タマモちゃん、シロちゃん!!格好よかったよ!!」

小町は二人を手放しで褒める。

 

「ヒッキー、大丈夫?」

「比企谷くんお疲れ様」

由比ヶ浜と雪ノ下もホッとした表情をしていた。

 

「まあ、相手が弱かったしな。シロとタマモが居るから俺の出番は無しだな」

 

「お兄ちゃんよりも、シロちゃんとタマモちゃんの方が強いしね」

小町は由比ヶ浜と雪ノ下によけいな補足説明をする。

 

「そうなの?ヒッキー」

 

「まあ、そうだな。あの二人の方が上だ。俺は事務所では一番弱いからな」

これは純然たる事実だ。一対一で戦った場合俺はシロに何時も負けてるし、タマモと戦っても多分勝てない。

シロの本気のスピードは凄まじい。霊視空間把握能力で来ることが分かっても対処しきれない。

そして、あの霊波刀だ。物理的なものだけでなく、術式も切れる凄まじい威力のものだ。

タマモは、俺と似たタイプの戦い方をするが、狐火、いわゆる炎を自在に操ることが出来る。

更に、精神感応系の術も凄まじい。幻術や精神攻撃も行ってくる。気がついたら既に勝負が付いていたなんてこともあるだろう。

 

「比企谷くんでも……」

雪ノ下は驚いているような表情をしていた。

 

「八幡殿は最初の頃に比べれば大分強くなっているでござるよ。そこら辺のGSに比べれば強いでござる。拙者もうかうかしてられないでござる」

「八幡はこれから強くなるわ」

 

……なに?嬉しいことを言ってくれる。ステーキと揚げを買って帰るか。

 

 

デジャブーランドの職員やら警備員がようやく駆けつけてきた。

 

「皆は先に帰ってくれ、多分、デジャブーランドは営業休止になるし、俺も現場検証やらが残ってる」

皆にそう伝える。

 

 

「……ヒッキー、あたし待ってるよ」

「………」

二人は俺を不安そうに見る。

 

「時間がかかるかも知れんし、見てても面白いもんじゃないぞ」

 

「雪乃さんに結衣さん、お昼食べてないし、どっかで食べに行きましょうよ!」

そう言って小町が二人を引っ張ってくれる。

 

「え?でも」

由比ヶ浜は俺の方を向き、なにか言いたそうだ。

「……そうね。私達が居たら邪魔になるわ。………そう、これは彼の仕事…だから」

そう言った雪ノ下の表情はくもっていた。

 

「ゆきのん……」

 

「じゃあ、お兄ちゃん。シロちゃん、タマモちゃんまた後でね!」

小町は元気よく手を降って、二人を連れこの場を後にする。

小町助かる。まあ、なんだ。正直あの二人が居るとやりにくいしな。

 

 

案の定、デジャブーランドはこの後営業休止する。

一応呪いにかかった客は、残ってもらっている。

特に影響はなさそうだが……念の為だ。

 

俺はシロとタマモと現場検証を行う。

なぜ、あんな妖怪が一気に3体も現れたのかだ。

 

この後、美神さんとキヌさんも現場に来てくれた。

キヌさんに呪いにかかった客を見て貰う。

 

美神さんはデジャブーランドのお偉いさんと話に………もしかして今回の除霊の金額ふっかけるつもりじゃないだろうか?

一応、緊急時の対応は、GS協会の標準価格に則る感じになるのだが………やりかねない。

 

現場検証は難航した。

手がかりが一切ない。

シロやタマモの嗅覚を以てしても、わからなかった。

いきなりその場に現れたかのような反応だと言う。

 

現場に現れた美神さんにその事を報告すると、

「悪質なイタズラ………いえ、テロね。こんなくだらない事をする理由はわからないけど、シロやタマモが調べて反応が途切れているということは、第三者がこの妖怪を解き放ったということよ。私達(GS)の手口をよく知っている奴の仕業ね。霊気や霊視、匂い等の証拠隠滅が出来るような奴よ。根が深そうだわ………まあ、その分ボッタくれるんだけどね!!定期巡回の契約でも結んでやろうかしら!!」

 

流石は美神さんと思っていたのだが………やっぱり、最後はそっちに走るか……どんだけ金の亡者なんだよこの人………

 

 

 

シロとタマモと家に帰ると、小町がいつもより、豪勢な食事を用意してくれていた。

 

「小町、今日は助かった」

 

「ん?結衣さんと、雪乃さんの事?うーんあの後お兄ちゃんの事いろいろ聞かれた……一度ちゃんと話し合った方がいいんじゃない?」

 

「いや、一応GSの事は話したぞ」

 

「はぁ、わからないかな……そういうんじゃないんだよお兄ちゃん!うーん、どう言ったらいいのかな………ああ、もう!取り敢えず、ちゃんと話す!いい?お兄ちゃん!」

 

「わけがわからん…………まあ、そうだな」

俺は除霊が終わった後、由比ヶ浜と雪ノ下の俺に向ける不安そうな表情を思い出す………

GSなんて半分ヤクザな仕事をやってる奴が、近くにいりゃ、そうなるか……

あの部活、なんだかんだと結構居心地よかったんだが……潮時か………

 

 

 




次回はガイルパートです。

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