やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
ガイルパートではなく。GSパートになりまりした。
デジャブーランドでシロとタマモとコンプレックス妖怪3体の除霊を行った翌日の日曜日。
午前中に美神令子除霊事務所を訪れた。一応今週末まで休みをもらっているが、昨日のことが気になったからだ。
因みに、シロとタマモは小町と千葉のショッピングモールに遊びにでかけた。
シロはあまり乗り気ではなかったが小町が無理やり引っ張っていった。
なんでも、シロをコーデするとかなんとか………
「君は真面目ね。そんな事のために、休みなのにわざわざここに来たの?」
美神さんは所長席に座りながら、俺に呆れたような表情を向ける。
「まあ、気になってたんで、どうやってあの3体の妖怪が現れたのかってずっと考えてたんです。
人が直接、あの妖怪を封印したものをあの場に持ってきて解き放つと、事件直後には、何らかの残滓が残るはず 。シロやタマモの嗅覚をごまかせない。
それを回避する手としては、あの場を巡回するお掃除ロボットにあの妖怪を封印した物を取り付け、時限的に解き放てば、人の手が付いた残滓は残りにくい。時間が経てば経つほど形跡は残らないものですから」
「なかなかいいところに目をつけてるわね比企谷くん」
美神美智恵さんが応接セットで紅茶を飲みながら答える。
どうやら、今日はオカルトGメンの方は休みをとって、ここ(娘の職場兼自宅)に遊びに来てるらしい。
3歳になる娘さんのひのめちゃんも連れて来ていて、今はキヌさんが相手をしてる。
美神さんも今日は仕事が無い様で、こんな感じで暇を持て余してるようだ。
まあ、毎日依頼があるわけじゃないしな。
それでも美神令子除霊事務所は、依頼内容は別にしても、週に現場仕事は3~5件位はある。
これは、他の個人事務所に比べかなり多いほうだ。
「ただ、それをやられると犯人の特定はほぼ不可能ね。その方法ならば、一般の客になりすまして出来るわけだし、犯人は用意周到に計画してたようね。ただ、あの妖怪の性質からすると、営業妨害にしかならないけど………本当にそれだけが目的かしら?私の霊視や霊感でも見えなかったということは相手もオカルトのプロよ」
美神さんの霊感でも察知できなかったのか……相手も結構やる奴のようだな。
「……この頃、こういう突発的なテロ行為のような事件が増えてるわね。もう偶然だけでは説明出来ないレベルになってるの。オカGや警察でも問題視しているわ」
結構なレベルでこんな事件が増えてるようだ。オカルトGメン日本・東アジアのトップである美智恵さんが言うからには確定しているのだろう。
「………厄介ですね」
「まあ、今回の件は、君のお陰で解決出来たし、そんでもってあのケチ臭いデジャブーの社長から、定期巡回の契約取れたし、こっちとしてはありがたいんだけどね!」
やっぱりそんな交渉してたんだなこの人………金なんて有り余ってるだろうに。
「令子。また、あなたはそんな事を………」
「いいじゃない。あるところから、貰ったって!うちは民間ですし!」
美神さんは美智恵さんに子どもじみたことを言う。
「はぁ………そうだ。比企谷くん。高校卒業したら、オカGに来ない?大学も行きながらでもいいし」
「ちょっとママ!人のところの従業員に手を出さないでよ!」
「まだ、比企谷くんは正社員じゃないでしょ?だったらいいのではなくて?」
……この人もやっぱ、美神さんの血族だな。親子揃って、子供じみた言い訳だ。
「比企谷くんはうちの事務所に借金があるのよ!」
「ふーん、その借金がなくなれば、いいって事よね。令子」
美智恵さんは余裕の表情だ。
「ぐぬぬっ、私が見つけたのよ!この子は!書類仕事も出来るし!現場もある程度こなせるし!結構優良物件なのよ!」
「そうね。真面目だし、報告書もきちんとしてるし、オカG向きね」
「ママ!!」
褒められて、嬉しいんだけど………俺のことでケンカしないでほしいです。はい。あなた方が本気だしたら洒落にならないです。どうせ巻き添え喰らうのは俺ですし、ここで横島師匠がいれば、確実に横島師匠が巻き添え喰らうのだが………今は居ない。
そういえば、横島師匠は西条さんと海外出張に出かけてる。オカG案件でアメリカのフロリダとか言ってたな。相当やばい案件なんだろうな………
取り敢えず、速く帰ってきて下さい。出来たら俺が職場復帰するまでに……
「美神さんも、美智恵さんも、比企谷くんが困ってますよ」
キヌさんがこちらに来て助けてくれた。
どうやら、ひのめちゃんを寝かせつけたらしい。
「フン」
美神さんは子供ぽく、そっぽを向く。
美智恵さんは澄ました顔で紅茶をすすっている。
助かった……さすがキヌさん。この二人を抑えられるとは…まさに聖母。
「実は、キヌさんにも相談があってここに来たんですよ」
そう、俺がここにわざわざ来た目的は二つあった。もう一つはキヌさんに相談することだ。
「なぁに?私に相談って比企谷くん」
キヌさんは応接椅子に俺に座るように促し、紅茶も入れてくれた。
そして、美智恵さんの隣に座る。
「いや、実は学校でこんな事があって」
俺は一昨日奉仕部で受けた一色いろはの生徒会候補問題の依頼について話す。(参照㉓話)
キヌさんは名門女子校に通う3年生だ。一色が受けた女子生徒間のいじめに近い所業への対処の仕方を知っているかも知れないからだ。
「うーん。私だったら素直に出来ませんってお断りして、推薦状を取り下げて貰うかな」
「問題の一色が体裁が悪いとかなんとかで、それはしたくないと言ってるんで……確かに一色はクラスの女子からは嫌われてるようですから………」
まあ、キヌさんだったらそうするよな。女子だろうが男子だろうが、キヌさんに害する人間なんてこの世に存在しないだろうし。もし、居たら俺が生き地獄を与えてやるがな!
「はあ、面倒ね。そんな奴らは片っ端から二度と逆らえないように弱みを握って脅せばいいのよ!そうじゃなきゃ力でねじ伏せて、どっちが上なのかはっきりさせることね」
美神さんがこの話に入ってくる。……あの、何処の世紀末覇者伝説なんすか?それ?まじ怖いこの人!よく俺、今日までこの人の下で働いてこれたわ!
「その子、男子受けをするために女子に嫌われるような行動をとっていたのでしょう?ならそれをやめれば解決ではなくて」
美智恵さんも意見を言ってくれる。
そうだよな。まじそれだよな。根本を直さなければ何も解決しないよな。
問題は男にちやほやされる一色に対しての単なる女の嫉妬なんだが………
「ママ、それじゃダメよ!そういう輩は、隙を見せるとつけあがるだけよ!ねじ伏せ屈服させないと!もう二度と逆らえないように!!」
美神さんは力強く言う。
確かにそれはあるかも知れない。女子ってホント怖いよな。そう考えると雪ノ下はああツンケンしているが、考え方自体は実にシンプルだ。全然マシな気がしてきたぞ。……どちらかと言うと雪ノ下は、美神さんの考え方に共感しそうだな。
「令子、それでは余計な反感を招くだけよ」
………なんか、また二人がヒートアップしてきたぞ。これヤバイんじゃないか?
「あの……そもそも、解決の仕方は、如何に、一色の風聞や体裁を落とさない様に、生徒会候補から脱落するかなんで…………」
「それじゃ、解決したことにならないわ」
「それはだめよ。それでは根本の解決にならないわ」
二人は同時に俺に強く言ってきた。
やはり親子だ。根本的な考え方は一緒のようだ。
ん?まてよ……何も生徒会候補から脱落させることだけが解決方法じゃない。ということか?
となると………選択肢は増える。
美神さんと美智恵さんが言うことは二人共いちいちもっともだ。
両方の意見を取り入れると………どうなる?
見えた!
…………しかし、一色をどう説得させるかがキモだな。
いや、もう答えがでている。美神さんと美智恵さんが答えを出してくれてるようなもんだ。
そう言えばあいつ、サッカー部のマネージャーだったな。不特定多数の男にちやほやされたい一色が、なんで特定の部活に所属するんだ?…………もしや……そういうことなのか?
俺はあれこれと考えをまとめる。
これならば行ける。一色の自尊心や風評被害を受けることなく解決ができる………よし。
俺が考え込んでるうちに、この場は次の話題に、いや、元の話題に戻ってた。
「ところで令子。比企谷くんの事だけど」
「何!ダメったら!ダメよ!」
「GS免許とったわよね。彼」
「それがどうしたのよ!」
「給与形態が変わるわね。正式にGSなんだから……もちろん辞令を出してるはずよね令子」
「ギクッ……ああ、あれね……11月から辞令出すつもりよ」
……この人、美智恵さんが何も言わなかったら、今のままの給与形態でずっと行こうと思ってたな。
「……比企谷くん。こんなブラックな事務所、高校卒業したらやめてうちに来なさい。オカルトGメンは公務員だけど給与体系は標準よりずっと高いし。きっと令子のところよりも高級取りになるわ。週休2日半よ、うちは。ちゃんと代休も有休消化もとれるし、各種福利厚生も充実してるわ。どうかしら?」
美智恵さんは俺に向かって、にこやかに話を振ってきた。というか堂々と引き抜きをかけてきた。
何、この条件、めちゃいいんだけど!しかも安定の国家公務員!!福利厚生も充実!!夢の週休2日半!!有休も消化しても文句言われない職場!!
「ど…どうって」
俺に振られても困るんですが…俺はちらっと美神さんの顔色を伺う。
「比企谷ーーー!!裏切ったらどうなるかわかってるでしょうね!!」
美神さんが鬼の形相で俺を睨んでくる!
「はぃいい!!」
な、なんだこれ!俺はどうすればいいんだ!?完全にとばっちりなんだが!!
「美神さん、そんな言い方したら比企谷くん逃げちゃいますよ。美智恵さんも、比企谷くんはまだ高校2年生なんですから」
紅茶を入れ直しに行ってたキヌさんが戻ってきて、二人をなだめてくれる。
まじ、キヌさん聖母。
俺はキヌさんがいなかったら、この職場から逃げ出したに違いない。
師匠に惚れてなければ、俺を婿にしてほしい!
キヌさんが二人をなだめている間に俺は、いそいそと事務所を後にする。
これ以上二人の喧嘩に巻き込まれるのはたまったもんじゃない。
自宅に帰るとまだ誰も帰ってなかった。
おやじとかーちゃんも今日は会社が休みだ。
俺が朝出かける前はまだ寝てたが、どこか出かけたようだ。
その間、俺は一色いろはの問題解決プランを練り直す。
これで誰も痛みを伴わずに解決ができる。
夕方、小町から電話が掛かってきた。
おやじとかーちゃんと合流して、外で夕飯食ってくるそうだ。おやじが奮発して、高級焼き肉店だと……俺には適当に食っておけと……なにこれ?
くそ、おやじめ!シロとタマモにいい顔しようって魂胆だな!息子にもちょっとはその気心をつかえ!
そんで、みんな焼肉食って帰ってきたのはいいんだが……
シロが……スカートはいてた。今風のおしゃれな服装だ。
俺はシロがスカートはいてる姿は見たことがない。いつも動きやすいジーパンかハーフパンツだ。
めちゃ恥ずかしそうにもじもじと……。
小町プロデュースらしい。本人が自慢してた。
女って怖い。服装一つで変わるもんだ。
シロは見た目は俺と同じぐらいだが、俺は普段小学生程度の扱いをしていた……さすがにこれは……なんか、あれだな……背も高いしスレンダーなモデルのスタイルだし………なんていうか
いかん!俺はロリコンじゃないはずだ!見とれてたなんてないぞ!
しかし、見た目は女子高校生ぐらいだし!しかも、モデル体型だし……しかし実年齢は小町より下だぞ!!しっかりしろ俺!!
……さすがのシロも……今日ばかりは散歩を要求してこなかった。
次回こそガイルパートです。