やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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【四章】生徒会クリスマス編
㉚生徒会からの依頼は女難の相?


 

雪ノ下と由比ヶ浜と話し合ったあの日から2週間が経つ。

俺は今日も奉仕部で暇を持て余し本を読んでいる。

俺はとりあえずは退部届を取り下げ保留とした。

 

雪ノ下はあれから、表情が若干だが柔らかくなった気がする。

心の闇をずっと一人で抱え込んでいたのを口に出したことで、少しは気持ちが楽になったのだと思いたい。

 

それと、雪ノ下の方からポツリポツリとだが、俺に話しかけるようになった。

そういえば、今までは雪ノ下から俺に話しかけることは少なかったように思う。

何かトラブルがあった場合や問題があった場合と依頼があった場合など、必要に迫られた時のみだったと……

内容は本人も何を話したらいいのかわからないのか、最初は要領の得ないものであったが……今は日常的なたわいもない話をしてる。

 

雪ノ下の問題は複雑かつ困難だ。雪ノ下の生い立ちや家の問題にかかわるデリケートな部分を多分に含んでいる。一朝一夕で解決できる問題でもない。これからも模索し続けるしかないのだろう。

 

由比ヶ浜といえば、教室でも俺によく話しかけてくるようになり、部室に行く際はピタリと横にくっ付いてくるのだが……うーん。これはこれで困るのだが………こいつ俺の事が好きなのではと勘違いしてしまいそうになるのでやめてほしい……

何の心情の変化なのかわからんが、部室では雪ノ下に勉強を教えてもらうようになった。自分から雪ノ下にお願いしてだ。

まあ、良いことなのだろう。

 

俺のバイト先の美神令子除霊事務所では横島師匠が先週末にフロリダから帰ってきた。

俺への土産は本場洋物のエロ本とエロDVDって……よく税関を通ったな………ありがたく頂戴はしたが……

美神令子除霊事務所は俺がGS免許取得したことで、最大3組で依頼をこなすことができるようになり、今まではあまり受けてこなかった500万前後の小さな仕事も俺用に回してくれるようになった。

大きく変わったのは、雇用形態がバイト扱いから契約社員扱いとなった。どうやら美智恵さんに対しての当てつけらしい。あの人事務所で俺を見かけるたびに、オカGに勧誘するからな……

給料はバイト時代に比べ相当上がった。基本時間給に依頼分の粗利の数パーセントが歩合として入ってくるからだ。このままいけば、もしかすると高校卒業までに借金が返済できるかもしれない。

まあ、辞令を言い渡す美神さんの引きつった顔は何とも言えなかったが……

 

 

 

昨日の夜、俺は久々にタロットカード占いをした。

小町が雑誌でそんな記事を見て、俺はやらされる羽目に。

小町の恋愛運は、今は雌伏の時、気長に待ちましょうと出た。うん上々だ。これは当たってほしい。

そんで俺はというと、女難の相あり、あなたの精神が試される時です。とでた……まあ、前よりましか、女難の相とかしょっちゅうだしな。

そういえば、部室でGS試験前にやった占いは半分あたらなかったな。

西方で死にかけるぐらいつらい目ってのは当たってたが、黒髪ロングの女の子と接近ってのはなかったな。

まあ、俺のタロット占いの才能はそれほど高いわけでもないってことか。

まあ、小町の恋愛運だけは当たってほしいものだ。

 

 

俺は本を読みながらそんな回想をしていると……

 

部室の扉がノックと共に開かれた。

「失礼しまーす。先輩いますか」

 

「あ、いろはちゃん。やっはろー」

「こんにちは、一色さん」

 

「結衣先輩、雪ノ下先輩こんにちはです」

入ってきたのは新生徒会長となった一色いろはだった。

……何か手伝わす気だな…俺を……先週は何故か俺だけ生徒会室のレイアウト変更に駆り出され……生徒会執行部の連中と顔合わせをさせられ、挙句の果てには、過去の書類整理までさせられたのだ。

 

「先輩~。手伝ってくださいよ~。大変なんです~」

 

「一色……俺は生徒会執行部でもましてやお前の雑用係でもないぞ」

 

「えー、先輩は責任取ってくれるって言いました」

 

「限度があるぞ」

 

「ムー」

何かわらしく頬を膨らませてるの?いちいちしぐさが、あざといんだが……

 

 

「まあ、今回は正式に依頼しちゃうんで」

一色はそう言って俺の座る席の前から、雪ノ下と由比ヶ浜の方へ向かった。

 

「一色さん。依頼は何かしら?」

雪ノ下が一色に声をかける。

 

「実はですね……」

一色は依頼内容を語りだす。

生徒会としての対外的な初仕事らしいのだが……

毎年、千葉市のコミュニティセンターでご近所の老人ホームのお年寄りたちを対象にしたクリスマス会を行うのだが……今回は近隣の他校と合同で行うことになったらしい。これは昨年度の案件だったものをそのまま引き継いだものらしい。

一色はスルーする気満々だったのだが、向こうの高校から打診されて、受けざるを得なくなったそうだ。

さらに他の老人ホームもその噂を聞きつけ、ぜひ参加させてくれということで、規模が大分大きくなったそうだ。2校でも持て余す程に……これ以上の老人ホームの参加は困難だとしたのだが………老人ホーム側が余計な気を回し、知り合いの学校にも協力を要請してしまったのだとか……

近隣の他校、海浜総合高校とはすでに2回ほど生徒会同士で打ち合わせをしたのだが……うまくコミュニケーションが取れないとかなんとか……しかも、明日その老人ホームの知り合いの高校の人が来て合同打ち合わせを行うらしいのだ……それに一緒に参加してほしいとのことだった。一色も生徒会執行部もまだ出来て新しい。内部コミュニケーションもまだうまく取れていない頃だ。こんなカオスな状況下では一色が奉仕部に助けを求めても仕方がないだろう。

 

 

一色の生徒会候補者問題、いや、雪ノ下と由比ヶ浜との話し合い以来、初の依頼とあり、由比ヶ浜はやる気満々だ。

その依頼を受けることにし、明日の3校合同打ち合わせに参加する事になった。

まあ、俺らが出たところでどこまで出来るかはわからないが………

 

 

翌日、奉仕部のメンバーは一色と共に、3校合同打ち合わせを行うコミュニティーセンターへと電車で最寄りの駅まで向かう。

すでに、他の生徒会執行部メンバーは現地入りしてるらしい。

まあ、幸いにも、執行部メンバーとは書類整理などを通じて面識があるため、まだやりやすい。

 

「先輩、ちょっと待ってくださいね」

そういうと一色は俺たちを待たせて、コンビニにで飲み物やらお菓子やらを買ってきた。

 

「こういうのは他のメンバーがやるもんじゃないのか?」

俺は自然に一色からそれらの荷物を受け取る。

 

「私が一番年下ですし、気遣いができるアピールもなりますしね」

一色は一色なりに物を考えて行動してるようだ。俺は少し感心する。

 

「ヒッキー……」

「……」

 

何故か由比ヶ浜と雪ノ下は何故か俺が受け取った荷物をじっと見てる。

 

「なんだ?」

 

「何でもないけど……いろはちゃんと仲がいいんだなと思っただけ」

「そうね」

 

「……」

仲がいい?いいように使われてるの間違いじゃないのか?

 

 

すでに会議室では合同打ち合わせは始まっていたが、総武高校と海浜総合高校の2校だけだ。あとの1校は東京から来るのだそうで、1時間ほど遅れるそうだ。

 

俺と雪ノ下、由比ヶ浜はその合同打ち合わせに参加し、じっと会議内容を聞いていた。

こりゃ、一色が手伝ってくれというのもわかる。海浜総合高校の奴らはわけがわからん。意見を一向にまとめようとする気配がない。あれがいい、これもいい、みんなの意見を取り入れようというだけで、何も決まらないのだ。

 

一度、休憩をとることになり、俺たち奉仕部は廊下で話し合う。

「……状況は悪いわね」

「うん、そだね」

雪ノ下は頭痛がするかのような表情を、由比ヶ浜は疲れたような顔をしていた。

 

「一色さんは頑張ってる方だわ」

「ああ、あいつがなんとかまとめようとすると、海浜の連中がもっと良いものがあるとか言って、邪魔をする。あれじゃ何も決められない」

「どうする。ヒッキー?」

「わからん。まずは相手が何を考えてるかも理解ができん。もうちょっと様子見だな」

「あなたでも……わからないのね」

「そりゃそうだ。相手の連中とは今日会ったばかりだ。まずは情報がほしい」

 

 

「比企谷じゃん!久しぶり!超レアキャラじゃん」

俺たちが打ち合わせをしてる最中に不意に俺に声をかけてきた奴がいた。

 

「折本……か。ああ、久しぶりだな」

 

「中学卒業以来?比企谷も参加って! 比企谷が生徒会なんてうけるー 」

彼女は折本かおり、中学校の時のクラスメイトだ。

海浜総合高校の制服だ。さっきの会議で顔を見かけたが……俺の事を覚えてたか。忘れてほしかったのだけど。

 

「いや生徒会の手伝いだ」

 

「ん?比企谷が女子と話してるの初めて見たー!うけるー」

こいつとは会いたくない度ナンバー1だったんだが……

 

雪ノ下が折本睨んでるし。由比ヶ浜も頬を膨らませてるし。

 

「!?そういえば、比企谷、私に告白してなかったっけ!!速攻で断ったけど!!比企谷と付き合うなんて、ありえないし!!」

こいつ余計な事を……

確かに俺は折本に中学2年の時に告白をした。

こいつは誰にでも気軽に声をかける。ボッチだった俺にさえも。

そんなこいつがいいなと思ってしまった。そして告白してしまった。それがもとで俺はクラスのさらし者に……

 

「そんなこともあったな……」

 

 

「カチーン」

由比ヶ浜から声が漏れる。

雪ノ下の視線がさらに冷え凍てつく。

 

なんかまずいな。

 

「そんじゃ、比企谷またねー!」

そういって折本はこの場を去った。

まったく台風のような奴だ。

 

で……

 

「ヒッキー!!あの人だれ!!すごくムカツク!!」

「比企谷君、あんなのが趣味だったのかしら?」

なんか二人とも怒ってらっしゃるんですが……

 

「いろいろとな……昔の事だ」

 

「今も、未練でも?」

なんか、ちょっと前の雪ノ下に戻ったみたいだ。

 

「あるわけないだろ。あの時の俺は俺であっても、今の俺とは別人だ」

 

「なんか嫌な感じ!」

由比ヶ浜は明らかに折本にいい印象を持たなかったようだ。

 

これはもしかして昨日の占いの女難の相ってやつか?

 

 

 

会議室に戻り、元の席に着くと……

なんかバラの花を散りばめたような一団が会議室に入ってくる。

女子だけの6名程の集団は皆、気品にあふれ、キラキラしていた。空気まできらびやかな気がする。

「遅くなりまして申し訳ございません。六道女学院6名参りました。今日は生徒会長が火急の要件で参加できず、私が代行して参加させていただくことになりました六道女学院高等部3年、元生徒会の役員を拝命しておりました氷室絹と申します」

 

海浜総合高校と総武高校の野郎どもは、その佇まいと気品と笑顔に見とれてしまい。ぼーっと見とれる。

 

ああ!?ああああ!?キヌさん!?

 

「あっ、比企谷君!やっぱり比企谷君。高校名を見てもしかしたらと思ったけど。比企谷君がここにいてくれるのは心強いわ」

俺にキヌさんは気が付いたようで、俺の席の前に駆け寄ってくれた。しかも聖母の満面の笑みでだ!

 

「ええ?キヌさんなんで?」

 

「急に今の生徒会長が家の用事でしばらく学校にもこれなくなって、代役を頼まれたの。今の世代の事も今回の事も急で何もわからないうちに受けてしまったのだけど、比企谷君がいっしょで良かった」

笑顔のキヌさんは俺の両手を下から抄うように取り、喜びを表現する。

 

俺は思わず心が和み、顔がほころぶ、ついニヤついてしまった。

 

はっ!?

 

周りの男子共の視線が非常に痛い。ガンガンにこっちを睨んでくるんだが!

何だ?六道女学院の他のメンバーがハンカチを掴みながら、めちゃくちゃ睨んでくるんだけど!

 

はっ!?

 

一色!顔がめちゃ怖い!怖いぞ!擬態が解けてるぞ!

由比ヶ浜さん!?何を怒ってらっしゃるの!?あと、ズボン引っ張るのやめてくれません?

ゆ、雪ノ下さん、なにその絶対零度の視線は!?俺を視線で射殺す気か!?そんで俺の制服の肘の部分を引っ張るのやめてくれませんかね?

 

 

「またあとでね。比企谷君」

そう言って、六道女学院のメンバーの元に戻るキヌさん。

 

……東京の学校って、六道女学院だったのか。一色の奴そういえば、高校名、俺に言ってなかったよな。まあ、聞かない俺も悪いのだけど……しかもキヌさんが代表代行で参加か!これはうれしい偶然?

だが、視線がめちゃくちゃ痛いんですけど、他校からも身内からも……





GS試験前の占いの長い黒髪の女の子は、雪乃です。
まあ、恋愛というよりも、お互いの距離感が縮まった感じですかね。

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