やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

34 / 187
感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

今回はつなぎ回です。



㉞仕事先の事務所までドライブで

 

 

俺は今、上機嫌な平塚先生のマイカーである高級スポーツカーの助手席に座っている。

奉仕部から、拉致られるがごとく、半ば強制的にこの車に乗せられたのだ。

俺の仕事先である美神令子除霊事務所に送ってくれてるとの事だ。電車で行くよりは楽だし、少し早く着く。

なぜ、先生が俺の仕事先までわざわざ学校から送ってくれるのかって?

それは平塚先生の目的がアメリカから帰ってきた横島師匠に会うためだ。その口実として俺は利用されてるに過ぎない。

直接会いたいと言えばいいのに、この人は………。普段はイケイケのくせに肝心なところでヘタレなようだ。まあ、後がないと思ってるこの人が慎重になるのは仕方がないか………

見た目は美人なのに……性格もそんなに悪くはないし、教師としても俺から見れば、熱心で生徒の事をちゃんと考えてるしな。俺の中でも高評価だ。………いかんせん。男の事になるとこのダメっぷりなのだ。俺の中で残念美人確定だ。

 

助手席に座る俺に上機嫌に世間話を振ってくる平塚先生に相槌を打ちながらどうすべきか考えていた。

多分、事務所にはキヌさんがいるだろう。キヌさんは明らかに横島師匠に好意を寄せてる。しかも、この前の件から、平塚先生は一方的にキヌさんを恋のライバルと認定し、何故か自分の方が勝ってると思っているのだ。……先生…勝ってるところはスタイルぐらいだ。顔は好みによるし、平塚先生のようなシャープな美人が良いという人も言えば、ほんわかな、かわいらしい顔立ちのキヌさんがいいという人もいるだろう。ただ、年齢は10歳差でキヌさんに軍配。性格は完全にキヌさんの方が良いだろう。……それよりも圧倒的な女子力に差がある。というかキヌさんより女子力が高い女性は見たことがない。もはや聖母クラスなのだ。

普通に考えれば平塚先生は勝てる見込みは万に一つもないだろう。

ただ、うちの師匠の横島忠夫はキヌさんの好意に気が付いてるはずなのに、それを気が付いていないふりをしてる。わざとだ。なぜなのかはわからない。

あんな女好きのスケベが服を着て歩いているような男が、自分に明らかに好意を寄せてる女性に手を出さないとは………もしかしたら、年下はダメとか……いや、女子高生にもナンパしてたしな。

まさか、キヌさんとの付き合いが長すぎて恋愛の対象に見えないとか……あり得るな。横島師匠のキヌさんへの対応はどうも、年下の親せきの子や妹みたいな感じで扱ってるからな……それにしたって、キヌさんの好意に何らかのアクションがあってもいいんじゃないか?

キヌさんがかわいそうだ。でも、キヌさんもキヌさんでなぜだか、積極的にアピールしないんだよな。

明らかに横島師匠に惚れてるのに………昔、この二人に俺の知らない何かがあったのだろうか?

 

 

「比企谷、君が奉仕部に残ったということは、雪ノ下と由比ヶ浜と話し合いをしたのだな」

俺がそんなことを考えていたのだが、そんな中、平塚先生は世間話から、この前の俺の奉仕部去就問題についての話題に話を変える。

 

「そうですね。俺の一人よがりだったようです。平塚先生のアドバイスのおかげです」

 

「私は大したことを言っていないよ。そうか………君は凄いな。その年で自分の間違いや勘違いに気が付き、それを認めることができる。やはり、学校の皆より一足先に世間に出ていることが大きいようだな。それとも周りの環境がいいのかな」

そう言う平塚先生は少し微笑んでいるように見える。

周りの環境か……美神令子除霊事務所の環境が世間的には良いとはとても言えないだろう。ただ、俺にとってはいろいろと学べる事が多かった。最初はただ必死だった。そんな俺の事を認めてくれる人がいて、頑張れば頑張る程、俺の糧となる。そんな感じがしたのは確かだ。

 

「先生、一つ聞いていいですか?」

 

「なんだね」

 

「俺を奉仕部に強引に入れたのは、俺に一般的な高校生活を味わわせるため……だけじゃないですよね。……雪ノ下……雪ノ下の事が絡んでいるのじゃないですか?」

 

「……そうだ。雪ノ下は君に何か話したかね」

 

「はい……ちょっと立ち入った話を」

 

「成績優秀、品行方正、教師すら扱いに困るほどだ。……ただ雪ノ下はいつも一人だった。それを見かねて、ついおせっかいをしてしまった。そして気が付いた。雪ノ下自身に心に大きな問題を抱えている事に……。姉の雪ノ下陽乃は私が担任だったためよく知っていた。最初は陽乃と雪ノ下は表面的には対照的という印象を受けたが、実際は違っていたんだ。表面的に見える雪ノ下雪乃は作られたもの……そこには自分が無い様に見えてな……何とかしてあげたかったが、彼女の家庭事情にも関わる問題だ。彼女も特殊な家庭環境であることは分かっていたが、それ以上はな。

そこで目を付けたのは君だよ。君は一見、どこの学校にもいる。学校の環境に適合しない生徒の一人に見える。接すれば、引っ込み思案のひねくれた小生意気な小僧ととらえてもおかしくない。しかし、言葉の端々に確たる自分を強く持ってると感じたよ。よくよく知れべれば、GSという特殊な環境でも、それに適合していた。私もGSについて調べたよ。かなりの精神力が必要な職業らしいな。GS免許取得したところで、実際に第一線で活躍できるのは一握りだ。精神的にかなりきついと……それでも君は曲がりなりにも学校とGSのアルバイトを両立していた。学校をサボるわけでもなく、学業もそこそこ優秀な成績を残してだ」

一種の賭けだったのだが、雪ノ下に君を会わせたらどうなるかとな……どうやら私の目に狂いはなかった。さらに由比ヶ浜もこの頃しっかりしてきてる。これも君のおかげだな」

 

「……俺は何もしてませんよ」

やっぱりそうだったか……この先生は食えないな。雪ノ下の問題に最初っから気が付いていたんだな。それで俺を入れたのか……それがよかったのかは別だと思う。まだ雪ノ下の問題は何も解決していない。俺は雪ノ下にあんなことを言ってしまったため、もう、後には引けないがな……

 

「そうかね」

平塚先生の横顔は楽し気に微笑んでいた。

やはりこの人、なんだかんだと、結構やりてなんだよな……その笑顔や熱意をそのまま男性に伝えれば、結構コロっと行くと思うんだが……俺だって、今の先生をかっこいい女性だと思うしな……年が近かったら惚れてたかもしれん。

 

 

「で……だ。横島さんは私の事を……どう思ってると思う?弟子の君から見てどうだ?……あの氷室さんと比較してどうだ?」

……さっきまでのあれは何だったんだ?急に自信なさそうにソワソワしだしたぞ?

なんかダメな感じがするんだが、なぜ男の事になるとこうも豹変するんだ?マジで。

 

「はぁ、先生。落ち着いてください。………さっきまでの先生はどこに行ったんですか?俺に話をしてる先生は俺が惚れそうなぐらい、かっこよかったのに、男の事になるとどうしてそんなダメな雰囲気になるんですか?」

 

「ほ……惚れそうって!君、なな何を言ってる!仮にも私は教師だぞ!ほ…ほ、惚れるなんて!……い、いかんぞ、私には横島さんが、い、いるんだ!」

平塚先生は顔を真っ赤にして、めちゃくちゃ慌てだした。いや、取り乱してるなこれ……男に耐性が無さすぎるぞ。

 

「仮にですよ。惚れるとは言ってません。それだけ、さっきの平塚先生はかっこいいと言ってるんですよ。さっきの感じで男の人と話したらいいじゃないですか?大概の男はコロっと行くんじゃないですか?」

 

「そ……そうか?……私でも、男性を落とせると……比企谷から見て、私はかっこいい女性に見えるのか?」

 

「まあ、さっきまではね」

 

「そ、そうか」

なに生徒に言われて顔を赤くしてるんですかね。教師としてはいいんだが、ほんと恋愛に関しては全くダメだなこの人。

まあ、俺も真面な恋愛などしたことがないからわからんが……

 

「男の俺が言うんです。自信を持ってください」

はぁ、横島師匠を落とすのは無理だろうが……次、頑張ってください。きっといい人見つかりますよ。

 

「わ、わかった!私の本当の力を見せよう!男など私の抹殺のラストブリットで一撃だ!わーはっはー!」

 

「………」

やっぱめちゃくちゃダメそうだ。抹殺してどうする。

 

 

 

そうこうしてるうちに、美神令子除霊事務所のビルが見えてくる。

 

事務所の敷地から車が出ようとするのが見えた。

あれは横島師匠だな。もう仕事に出るのか、緊急案件でもあったのか?

 

「くーくっくーーー!見つけたぞ!逃がさん!!」

平塚先生はまるで悪役のようなセリフを吐き捨てる。

どうやら対面から、走り過ぎようとする車を運転してるのが横島師匠だと認識したようだ。

 

急ブレーキを思いっきりかけて、甲高いブレーキ音と共に車を強引にUターンさせる平塚先生。

 

「ちょ!先生!俺は降ろしてください!!」

 

「すまなかった比企谷!!」

平塚先生はUターンした後、いったん車を止める。

 

「まあ、頑張ってください」

俺はそう言って慌てて車を降りる。

 

「行ってくるーーーー!!逃がさんぞ!!はーはっはっはーーー!!」

平塚先生は俺を降ろした後、車を急発進させ、横島師匠の車を追いかけ走り去った。

……普段はいい人なのに……残念過ぎる。

 

平塚先生の車が走り去る後ろ姿を見送った。

……スピード違反とかで捕まんなきゃいいんだが。

 

 

 

俺は気を取り直し、事務所に向かうのだが……敷地内の駐車場にどこかで見たような高級車が止まっていた。

来客かな?依頼者だろうな。その依頼内容の確認のために横島師匠は緊急でどこかに調べに行ったのかな?

 

とりあえずエレベータに乗り、事務所に所長の美神さんに挨拶に向かう。

接客中だろうから、顔を出し一言挨拶する程度でいいか。やる仕事も決まってるしな。今日も学生の精神暴走事件について、キヌさんと打ち合わせと検証だ。由比ヶ浜から、この頃の学生の流行りとかの情報もある程度手に入ったしな。……キヌさんと二人か……その響きだけで何故か背徳感がある。心の中でスキップを踏む俺。

 

 

事務所内の霊気を感じる。美神さん以外にキヌさんと、美智恵さんも来てるみたいだな……

来客は二人……この霊気どこかで感じた事が……





次は……再登場のあの人たち

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。