やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうとございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

前回の続きですが……



㉟この人たちのお礼とかお詫びとか何かが間違ってる。

平塚先生に学校から美神令子除霊事務所まで先生のマイカーで送ってもらったのはいいんだが、平塚先生は事務所前で車で出かける横島師匠を見つけ猛スピードで、追いかけて行ってしまった。

まあ、先生の目的は横島師匠だしな。……スピード違反で捕まらなきゃいいが。

 

俺は仕事にかかる前に4Fの事務所に居るだろう美神さんに挨拶に向かうのだが……敷地内にどこかで見たような高級車が止まっていた。どうやら来客のようだ。依頼者なのだろうか?

俺は上に向かうエレベーターに乗りながら、何気なく事務所内の霊気を探る。美神さんにキヌさん、美神さんの母親の美智恵さんも来てるな、なにか込み入った話なのだろうか?

後は、来客は二人か……?……霊能者のようだな、しかし、どこかで感じたことがある霊気だが……

 

俺はエレベーターを降りると、シロとタマモが扉の隙間から事務所の中を覗いていた。

 

「こんなとこで何やってんだ。シロとタマモ」

 

「八幡殿……。骨は拾ってあげるでござる」

「……八幡。小町を悲しませるような事態だけは避けなさいよ」

シロとタマモは俺の声で振り向き、人の顔を見るなり哀れんだ顔をし、不吉な言葉を残しながら自室へ戻っていった。

 

なんなんだ?

まさか、またあの親子、喧嘩してるのか?

美神さんと美智恵さんの喧嘩に巻き込まれるのは勘弁してほしい。

だから、横島師匠は逃げ出して、出て行ったのか?

しかし、来客がいるのに………美神さんに限って、来客が居ようがいまいが関係ないか。

 

はぁ、さっと挨拶して、巻き込まれる前に、すぐに出るか……

俺は事務所の扉前で息を大きく吐いてから、扉をノックして、恐る恐る事務所に入る。

 

「こんにちは」

 

 

美神さんが所長席に座っていたが、明らかに機嫌が悪い。

…返事もない。

 

俺は目線を所長席から反対側の窓際へ移す。

だだっ広い事務所の真ん中より窓際にある応接セットに美智恵さんが座っているのと、観葉植物の影でどういう人物かは見えないが、美智恵さんの対面に客人が座っているシルエットが見える。

キヌさんの姿が見えないが、たぶん奥のキッチンでお茶の用意でもしてるのだろう。

 

「比企谷君ちょうどいいところに来たわね」

美智恵さんが俺を見つけ、手招きをする。

 

俺は美神さんの顔色を伺いつつ、美智恵さんの元へ向かう。

美神さんは俺の視線に気が付いたようだが、フンとばかりに顔を思いっきりそらす。

なんだ?俺なんか失敗したのか?……心当たりがないんだが。どちらにしろ、かなり機嫌が悪いぞ。

 

 

俺は回り込むように、美智恵さんの横まで歩むと……

 

「待ってたよ、比企谷君!」

「久しぶりね比企谷君。といってもまだあの時から一か月位かしら」

美智恵さんの対面で笑顔で手を振る雪ノ下陽乃さんと、西日本唯一のSランクGSで陽乃さんの師匠であり、陰陽師の名門、土御門家現当主の土御門風夏さんも微笑みながら俺に挨拶をしてくれた。

 

「……雪ノ下さんに、土御門さん…………こんにちは、ご無沙汰してます」

どうしてという思いと驚きはあったが挨拶を返す。今は美神令子除霊事務所のお客様なのだから……

何気に、外面仮面無しバージョンの陽乃さんだな。

 

「今は土御門は・る・のよ八幡。さあ、陽乃って呼んで」

なにこのテンション?しかもまた名前呼びかよ。

 

「そういうのはいいんで」

 

「つめたーいぃ。もしかして八幡はツンデレさんかな?」

何言ってんだこの人。こんな陽乃さんの姿を雪ノ下に見せてやりたい。幻滅するぞきっと。自分の尊敬する姉が実はこんな感じだったとか……

 

ところで、なんで西日本重鎮である土御門風夏さんまでここに?

 

 

「比企谷君。とりあえずここに座りなさいな」

美智恵さんは自分の横に座るように俺を促す。

 

「ちっ」

……所長席から、大きな舌打ちが聞こえてくるんだけど………なにこれ?

 

俺は舌打ちをした張本人である美神さんの顔色をもう一度伺うのだが、俺の視線に気が付くと、さっきと一緒でフンと顔を思いっきりそらすんだけど………どうしろというんだ?

 

まあ、怒声が来ないってことは、座っても良いってことだよな。

 

俺は美智恵さんに従いお辞儀をしながら横のソファーに座る。

 

 

「比企谷君にこの前の事で改めてお詫びとお礼をしたくて、あなたを訪ねてここに来たのよ。あの時は本当にありがとうございました」

風夏さんはそう言って、頭を下げる。

 

「前も言ってもらったんで、もういいですよ。それに俺は、自分のためにやったんで、別にお詫びとかお礼とか……」

そういえば、そんなことを言ってたな。

京都の酒吞童子復活未遂事件の時の事だ。

お詫びとは、風夏さんの次男数馬が俺たちを殺そうと狙ってきた件だ。あれは半鬼化の影響と、その後は茨木童子に意識を完全に乗っ取られてたからな……あそこに数馬の意識があったかは疑問だ。

お礼とは、一つは茨木童子を足止めした件だろう。俺は雪ノ下と由比ヶ浜を助けるために彼奴と対峙しただけで、足止めしたなんて意識は全くない。足止めどころか、彼奴から雪ノ下と由比ヶ浜を引き離して、逃げようとしたくらいだ。

後は、雪ノ下を助けた事だろう。これは主に陽乃さんのお礼ということなのだろうが。

 

「……比企谷君、日本人として慎みは大事よ。どこかの誰かにも見習ってほしいくらいよ。でも、あなたはあれだけの事をやったのよ。しかもあの土御門家当主直々にこうして来てるのだから、逆に失礼にあたるわ。素直に受けるべきよ」

美智恵さんはそう言って、美神さんをちらりと見る。……明らかに美神さんへの嫌味だ。まあ、美神さん慎みとか遠慮とか、そういうのに無縁な人だしな。

……あの、ますます美神さんの機嫌が悪くなるからこれ以上はやめていただけませんかね。

 

「いや、前も言いましたが、結局すべて解決したのは横島師匠ですし」

 

「横島君にもお礼をしたわ。だからね。受け取ってほしいのよ」

横島師匠もこういう時は素直に受け取れと言ってたな。そういうものなのか?

 

「おキヌちゃんもそうだけど、令子の元でよくまあ、こうも……反面教師かしら?……それでも、無欲すぎるのはどうかと思うわよ比企谷君………とは言うものの、オカルトGメンとしてはうってつけの人材なのよね」

美智恵さん!もうそれ以上美神さんを挑発するのはやめてくれないっすか!?自分の娘さんが鬼の形相でこっちを睨んでますよ!

 

「比企谷君、雪乃ちゃんを助けたのは間違いなく君よ。何度お礼言ってもたりないぐらい。だからせめて形あるものでけじめをつけさせて」

陽乃さんは真剣な面持ちに戻し俺にそう言った。

 

「……わかりました」

まあ、あまりにも断るのも悪いしな。美神さんはなぜだか機嫌が悪いが、美智恵さんもそう言ってる事だし。あの時に横島師匠の前で受け取ると言っちゃったしな。

 

「よかったわ。比企谷君ってそういうのを嫌がるって聞いてたから……だから美智恵ちゃんに相談したの」

風夏さんはホッとした表情をしていた。

どうやら、俺に随分と気を使ってもらっていたようだ。

こういうのは素直に受け取れと横島師匠が言ってたのは正解だな。

渋ってしまうと逆に迷惑をかけてしまうようだ。

 

それにしても、美智恵さんをちゃん付けとは流石土御門当主ってところか……まあ、美智恵さんは風格はあるがこう見えても40歳そこそこ、風夏さんは確か60歳前後だから、一世代以上違うんだよな。あの美智恵さんから見ても風夏さんは大先輩にあたる。

 

「ちっ!」

あの…なぜまた舌打ちを?何を怒ってるんすか美神さん?訳が分からない。

 

「……令子の事は気にしなくていいわ」

美智恵さんがそう言ってくれるんだけど……気にするなってのは無理なんですが。しかもなんか呪い殺すような勢いでこっちを睨んでますよ。

 

「それでね比企谷君。美智恵ちゃんに相談したら、比企谷君が借金背負ってるって聞いて、しかも、雪ノ下家が関わってる事故がきっかけで霊障を起こして……だから、その借金をと……」

 

「いや、それは流石に受け取れませんよ。結構な額ですよ」

確か、1000万の借金の内、300万ぐらい返してるから、後700万位あるはずだ。

 

「比企谷君には悪いけど、その話は先に進めさせてもらったわ。令子にも先に話し合って解決済みよ。……相当ごねたけどね。あの子……君が背負った借金は大負けに負けて1000万にしたものだから、他人が払うならば元本の5000万だって言い張ってね。……でも、風夏さんがそれを聞いて、小切手5000万をその場で書いて渡したわ。だから、あの子機嫌が悪いのよ。それと君が払った返済額はそのまま君の手元に戻ってくるわ」

なるほど……美神さんが機嫌が悪い理由はわかった。5000万って啖呵きったのに、あっさり支払われ、自分の思い通りにならないからだな。

流石に……5000万って、俺の方がかなり気が引けるんだけど。

 

「さすがに悪いですよ。土御門さん」

 

「いいのよ。比企谷君。これはほんのお詫び」

軽い感じでそんなことを言う風夏さん

 

「どうせあなたの事だから、5000万だろうが1000万だろうが、直接は受け取らなかったでしょう?だから、令子と直接話し合いをさせてもらったの」

た…確かにそれは受け取らなかったな。まじで……やはり、相当金持ちなんだな。土御門家って……。

 

「これで比企谷君は高校卒業後にオカルトGメンへ何の障害もなく入れるわね」

続けて美智恵さんはこんなことを言って満足そうに頷く。……この人策謀家だからな……なるほど漁夫の利を得るために、風夏さんの相談を快く受けて、こんな形にしたんだろう。

 

ものすごい威圧感のある視線を背中に感じるんだが……

あの、美神さんそれ以上睨むと、美人が台無しですよ。

 

「それと、次はお礼ね」

 

「へ?」

 

「さっきのは飽くまでもお詫びよ。お礼もちゃんとしないとね。これもご両親に先にお渡ししたのだけど、土御門が経営してる全国にある老舗旅館の宿泊と旅行の旅をプレゼントさせていただいたわ」

 

「………」

小躍りしながら、プレゼントを受け取る両親が目に浮かぶんだが……

くそ、もらったなら、直ぐに俺に連絡位しろよな。あの両親共め!

 

「それと、比企谷君本人には……」

 

「まだあるんですか!?」

 

「比企谷君には高校卒業後に都内に新築一戸建ての二人の新居と新婚旅行の世界一周旅行」

 

「……………ちょ、ちょっと待った!何かおかしくないっすか?」

誰と誰の新居と新婚旅行なんだよ!!

 

「何もおかしいことはないわよ八幡。私と八幡の新居と、新婚旅行。もちろん結婚式は土御門本家で盛大に行うわ!」

陽乃さんが当然の如くって感じでこんなことを言ってくるんだが!

 

「おいーーー!!そこがおかしいって言ってるんだ!!」

 

「もう、八幡照れちゃって!」

 

「なんで俺が雪ノ下さんと結婚することになってるんだ!」

 

「あらあら、陽乃?まだ、比企谷君に了承を得てないみたいね」

 

「師匠、さすがに無理ですよ。昨日まで京都に居ましたから。でも安心してくださいね。彼が卒業までに後1年と4か月あるので、必ず八幡を落とします。もう、私無しで生きられないぐらいにして」

陽乃さんのその自信はどこから来るんだ?しかも、なんか最後不穏な言葉が入ってたんだが……

 

「………」

 

「比企谷君。安心しなさい。君の新居は東京よ。今後、君と陽乃さんの家は土御門本筋の分家として新たに東京の拠点となるわ。しかも君は、土御門家に婿になりながらも、オカルトGメンで働くことになる。これは風夏さんにも了解を得ている事なのよ。

大丈夫。西条君も西条家の跡取りとしての責務を果たしながら、オカルトGメンとして働いてるから、器用な君なら全然いけるわ。」

美智恵さん……なに言ってるんすか?人の人生を勝手に決めないでください!

土御門本筋分家を新たに立てて、陽乃さんの婿として土御門に入るって、しかも、オカルトGメンに入るところまで決まってるし!

これって、もしかして、土御門家と美智恵さんが結託してるのでは?

 

「ちょ、勝手に決めないでくださいよ!」

 

「そうよ!!ママ!!こいつは、私の事務所で一生働くのよ!!勝手に人ん所の従業員を引き抜かないでよ!!」

 

「………」

あの……美神さん、それもおかしいですよ。「奴隷のように一生コキ使ってやるわ」って言ってる風に聞こえるんですが……

 

「まあまあ、美神さんも美智恵さんも……土御門さんも、比企谷君が困ってるじゃないですか」

キヌさんがキッチンの方から現れて、応接セットのテーブルに紅茶やケーキを出してくれた。

キヌさん!助かります。もう俺じゃあ、この人たちを止めることができません。

 

「比企谷君が土御門の婿になれば、そうなる可能性は高いわ」

キヌさんが入れた紅茶をすすりながら、しれっとそんなことを言う美智恵さん。

 

「ぐぬぬぬぬっ!……!……そう、なら比企谷君はおキヌちゃんと結婚するから!無理ね!」

……何言ってんだこの人は!うれしいけど!めちゃくちゃそうなりたいけど!それは言っちゃダメだろ!美神さんもわかってるはずだ。キヌさんが横島師匠を慕っていることを!

 

「ちょ!美神さん!それは!」

流石の俺もここは反論しないと……

 

「……美神さん?……そういうことは比企谷君が決めることですよ。美智恵さんも、土御門の方々も……」

静かにそう言うキヌさんは笑顔なんだが……なんか怖い。………なんかゴゴゴゴゴって背景に出てるような……

 

「……ご、ごめん」

美神さんが謝った!?しかも結構慌ててるぞ。

 

「そうね。急ぎすぎたみたいね」

美智恵さんも引いた!?

 

流石はキヌさんこの二人を一瞬で引かせた。

ちょっと怖いけど、これはこれで、なんというか……聖母のお怒り、いや神の天罰的な美しさが……俺もなんか叱ってほしい。

 

「ごめんね。比企谷君。勝手に進めちゃって……でも、土御門にあなたが必要なのは本当なの、あなたのような格式や形にこだわらない上に、勇気ある人が……」

この場を風夏さんも引いてくれたようだ。

でもさすがにそれは買いかぶりすぎですよ。

 

「比企谷君。絶対私が落とすんだから」

……本気なのかこの人、まじで俺を落とす気なのか?どうして?……土御門のためか?俺なんて全然大したことないのに……

 

 

キヌさんのおかげでお礼の話は保留となる。

お詫びの借金の肩代わりはかなりありがたい。

お礼の方は……勘弁してほしい。

俺はまだ、横島師匠から学ぶべきことがたくさんある。しかも、ここまで霊能者として育ててくれた恩を返してない。それまではこの事務所を辞めるつもりはない。

 

この後、ちょっとだけ話した後、風夏さんと陽乃さん、そして美智恵さんは帰った。

ふう、一時はどうなるかと思ったが、キヌさんのおかげで助かった。

よく考えれば、SランクGSが3人も集まっていたんだな。そんな人たちがここで暴れたらどうなる?

美神さんVS美智恵さんだったら、いつもの事だし、たいがい美智恵さんの口で収まるんだけどな……

 

 

「塩よ!塩をまきなさい!」

美神さんはそう言いなら、キヌさんから塩を受け取って自ら事務所の窓から外に向かってばら撒く。

 

 

陽乃さん……婿にって本気なのか?

しかし、そこに恋愛感情はあるのだろうか?

俺のGSとしての能力とかが目当てなら即お断りだがな……

 

……しかも、風夏さんだけでなく。美智恵さんまで噛んでるとなると、ちょっとやばいな。

このまま行くと、いつの間にか高校卒業と共に土御門に婿入りなんてこともあるぞ。

 

すでに俺の親は懐柔されてそうだしな。

頼りは、小町だけか……

 

美神さんも完全に否定してくれたが、理由がとんでもない………ブラック企業丸出しなんだが……

これってもしかして、行くも地獄、引くも地獄ってやつじゃないのか?

美神さんと美智恵さんの親子結構似てる。両人とも俺の意思とは関係なく俺の将来の話を進めるんだが……

よくよく考えると俺、詰んだか?

 

キヌさんが居るから、今はなんとかなってるが……あの人たちを抑える事ができるなんて、意外と英傑かもしれない。いや、聖母だな。間違いなく。

 

まあ、いざとなれば、逃げるまでか……三十六計逃げるに如かずって言うしな。

因みに、横島師匠の得意技だ。逃げることに関しては最強だと自負してる。

しかし、俺はあの人たちから逃げ切れるだろうか?

 

 

 

…………そういえば、横島師匠、平塚先生に追い付かれたかな?




土御門子弟の来訪でした。
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