やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
かなり、あっさりした展開となってます。
なにこれ?
横島師匠と平塚先生がディスティニーランドでデート?
平塚先生のあの恰好、純白のドレスって……そのまま結婚式を挙げて、ゴールインしちゃう勢いだぞ!
しかも、美神さんとキヌさんにバレてるし!
シロとタマモまで引き連れて、超監視されてますよ!!横島師匠!!
なんか美神さんめちゃ怒ってるし……きっと、適当な言い訳を言って仕事をサボってここに来てるんだろう!!だからあんなに!!……いつもだったらストッパーのキヌさんが止めに入るのに、横島師匠が女性とデートとしてるのを目の当たりにして、動揺してオロオロするばかりだし!シロは何が楽しいのかノリノリだし!!タマモも止めに入ってくれよ!!何?どうでもよさげなそのやる気ない態度は!…せめてシロだけでも止めさせるように言って!!
このままだと確実にヤバい!!……
横島師匠の血だけで済めばいいんだが、あの血走った美神さんの目を見て見ろ!もはや周りなんて見えてない!!ああなったら、横島師匠を半殺しにするまで、暴れまくるぞ!!……なまじ横島師匠は逃げるのがうまいから、周りに被害が確実に出る!!下手をすると人死にが!ディスティニーランドが血の海に!!
妖怪や悪霊程度の霊災なんて生易しい物じゃない!!下手をすると魔族並みの厄災を振りまくぞ!!
くそ!!平塚先生が戻ってきて、横島師匠に接触したら!!美神令子という核ミサイルに匹敵する超絶危険物が暴発する!!
どうする八幡!考えるんだ!!
雪ノ下と由比ヶ浜だけだったら何とか逃げおおせることができるが、一色や他の学校の連中までいる!霊能を発揮する事もできん!
…………
こ、これしかないか。
ば、バレたら俺が美神さんに殺されるな……
…………
俺は深呼吸一つして、覚悟を決める。
俺はスマホを取り出し小声でとある人物に連絡する。
「俺です。横島師匠…俺の話を落ち着いて聞いてください。デート……美神さんにバレてます。
直ぐ近くで監視されてます。タマモとシロまで引き連れて……」
横島師匠はその電話で、キョロキョロとあたりを見渡す。ようやく殺気立った美神さんの存在に気が付いたようだ。
『どどどどどど、どうしよう!!八幡!!こ、殺される!!死ぬんはいややーーーー!!』
「落ち着いてください。美神さんの事だから、ディスティニーランド内には罠がわんさか張ってると思います。……横島師匠のすぐ下にマンホールがあるんでそこから脱出してください」
『はちまーーんんん!!心の友よ!!恩に着るぅ!!』
横島師匠は涙をチョチョ切らせながら、そう言って、マンホールを開け急いで離脱。
そう、争いの種がディスティニーランドから居なくなればこの場は解決する。
地下に離脱させれば、美神さんに追い付かれたとしても、横島師匠の血だけで事はすむ。
この世の平和は守られる。
美神さんは横島師匠がその場から消えた事を察知……急いで横島師匠が居た場所に走る。
そして、肩をわななかせていた。
そして、何故か俺の方を向いて……凄まじい殺気を含んだ視線で睨みつけられた。
ば……ばれた!?
一瞬で血の気が引く。
霊能者の勘か、それとも、野生の勘か!?何れにしろ俺は確実に横島師匠とグル(同罪)とみなされた!
(後で覚えてなさいよ。ひ・き・が・や!)
美神さんは口パクでそう言って、首を切る仕草をする。
そして……マンホールへと飛び降りて行った。
お、俺も後で死ぬんだな………
……俺という犠牲で、ディスティニーランドの客は助かる。雪ノ下も由比ヶ浜も一色も他の連中もな……皆は知らない…歴史の裏にはいつも知られざる英雄が居ることを……
「どうしたのヒッキー?顔色悪いよ」
「……この人込みでは仕方がないわ」
由比ヶ浜と雪ノ下の気遣いが今は心にしみる。
「……いや、大丈夫だ。ちょっと外すな」
俺は気を取り直す。
もう一人に電話をしなくてはならない。
こっちの方もフォローしとかないと後で大変な事に……
俺は列から一時的に離れ電話を掛ける。
「もしもし、比企谷です」
『おう、比企谷か!今は忙しい後にしてくれ』
応対する平塚先生の声は非常に明るい。
「いえ、横島師匠のことなんですが、緊急の仕事が入って、近くで妖怪退治に行かないといけない事になって、俺に先生にそう伝えてくれって」
『なにーーーー!!おのれ妖怪め!!私の人生をかけた勝負を邪魔をするとは!!許さん!!私の抹殺のラストブリッドで消滅させてやるーーーー!!』
そこで、通話は切れる。
ふぅ、これで平和が守られた。
俺は遠い目をし、ため息をつく。
「か、帰りたい」
何、この虚無感。
もう、家に帰っていい?
俺は由比ヶ浜と雪ノ下の元へ戻る。
「ヒッキー、本当に大丈夫?」
「あなた、目が何時にも増して濁ってるわよ」
「ああ、も、問題ない」
ただ、俺はこの後、美神さんから、各種攻撃に晒され半死するだけだ。
処刑台に上がる前の、囚人の気分だ。
この場を収めるには、ああするしかなかったとはいえ、俺も慣れてきたもんだ。
俺はしばらく、動く屍と化し……皆の後ろについて行くのがやっとだったのは、仕方がない事だと思う。
「あなた、本当に調子が悪そうね」
「すまん。俺のせいで皆から離れてしまったな」
俺が後方でトロトロしていたがために、俺と雪ノ下は皆と大きく離れてしまう。
そのせいでディスティニーランド定番のファンタジー世界をテーマとした乗り物の順番待ちの列に並んでいる途中で、人数制限の加減で、俺と雪ノ下は皆と完全に分断され、40分ぐらいのタイムラグを生むことになったのだ。
「別にいいわ。由比ヶ浜さんには合流先を連絡しといたわ」
「……クリスマス会の参考の件も任せっきりですまない」
「一色さんと由比ヶ浜さんが何とかしてくれるわ、カメラも由比ヶ浜さんが持っているのだし、それにディスティニーランドを参考にというのは、テーマパークの内容の問題ではないと思うの。この雰囲気とここに来ている人たちが何を楽しんでいるのか、何故楽しいのかを平塚先生は私たちに見せたかったのではないかしら?」
「たしかにな。その線が濃厚か……」
「……他人が何を楽しいと感じてるなんて私にはわからない」
「雪ノ下は難しく考えすぎじゃないか?楽しみ方なんてものは人それぞれだ。雪ノ下は年間パスを持ってるぐらいだから、ディスティニーランドの何かを楽しむために来てたのだろう?」
まあ、雪ノ下の場合は十中八九パンダのパンさん目当てだろうが……
「私がここで楽しみにしてる事。……そうね。難しく考えすぎてたのかもしれないわ」
「因みに俺の場合は楽しんでる小町を見るのが楽しみだ」
楽しみ方なんてものは人それぞれだ。
俺の場合、ディスティニーランド自体に楽しみを求めていない。楽しんでる小町を見るのが楽しみであったりするため、ディスティニーランドに求めることは小町を楽しませることだ。
世の中のリア充のカップル彼氏共もそうだろう。彼女がディスティニーランドで楽しんでもらう事が目的なのだ。その見返りとして、彼氏は彼女との関係を深める機会を得るのだ。
「……あなたはブレないわね。シスコン谷君」
雪ノ下は呆れたように言う。
俺たちの順番が回り、ファンタジー系の乗り物アトラクションの横座り2、3人乗りのカートに2人で乗り込む。
「比企谷君……聞いてもいいかしら?」
雪ノ下はチラリとこちらを一瞥してからすぐに前を向く。
「突然なんだ?……答えられるものだったらな」
「その……卒業後はそのままゴーストスイーパーに?」
雪ノ下は一度口を開くがすぐに閉じ、聞きにくそうにしながら俺にこんなことを聞いてきた。
このタイミングで俺自身の事を聞いてくるとは思いもしなかった。
「……まあ、将来ゴーストスイーパーで生計を立てようとは考えてるが……卒業後は大学にとは考えてるな」
「……そう、……あなたは強いのね。自分の意思とは関係なしに突然人生を変えられたのに……」
雪ノ下がこう言うのもわかる。
確かに俺は突然霊能が発現し、霊能者への道を余儀なくされた。
しかし、それを不運だとは思わなかった。それはなんだかんだと言って、美神さんや横島師匠、キヌさんや事務所のみんなの存在が大きい。俺をまっとうな霊能者へと導いてくれ、今に至っている。
そして俺は師匠のゴーストスイーパー横島忠夫に憧れる。
確かに、横島師匠は普段、どうしようもないダメ人間だが……
ゴーストスイーパーとしての横島忠夫は俺が心に描いたヒーロー像に非常に近い。
強さは言うまでもないが、人に非常に優しいのだ。なぜそれだけ優しいのかはわからない。
たとえ依頼人に嫌われようが、その人が今後の人生を生きていけるような配慮をさりげなくするのだ。
誰に褒められるわけでも、讃えられるわけでもないのにだ。
そんな横島忠夫の背中を追えるこの世界だから俺はやって行こうと思えるんだ。
「たまたま運よくこの道が俺に合ってたということなんだろう」
「そう……やはりあなたは……なんでもないわ」
雪ノ下は俯き何かを言い淀むが、首を横に振る。
「まあ、高校に入る前は専業主夫を目指してたがな」
「その方があなたらしいわね」
雪ノ下は悪戯っぽく微笑む。
「俺もそう思う」
しばらくの沈黙の後、アトラクションが終わりを告げ、カートは出入口に止まる
「私も自分の将来を探さないと………手伝ってね比企谷君」
雪ノ下は俺の方を振り向いて、そう言って、俺の返事を待たずに、先にカートを降りる。
「……ああ」
俺はカートの降り際に曖昧な返事しか返さすことができなかった。
……雪ノ下家の言いなりな自分から脱却をしようとしてるのだ。
雪ノ下の独白から1か月以上たった今も彼女は悩み続けているのだろう。
雪ノ下の問題は根が深い。
俺に何が出来るのだろうか?
いや、話を聞くことぐらいは出来る。答えを出せなくても、考えることは出来る……
この後、由比ヶ浜と無事合流することができたが、凄まじい人込みで合流できたのはナイトパレードが終わった後だった。
ディスティニーランドのファンタジー風な城のバックで花火が打ち上げられる。
「ヒッキー、ゆきのん。また来たいね。今度は3人でゆっくりと」
「まあ、混んでない時期だったらな」
「確かにそうね」
「ヒッキーもゆきのんも雰囲気台無しだ!」
雪ノ下と由比ヶ浜が並び俺はその後ろで花火を見上げる。
そういえば一色と葉山が見当たらない。
三浦と海老名、戸部は俺たちの少し離れた斜め前に居るのだが……
前方に見える人影……一色と葉山だな。
一色の奴、うまい事三浦を撒いて、葉山と二人っきりで花火を見れたようだな。
ん?
なんだ雰囲気が。
まさか!?一色の奴……
葉山から逃げるように俯き加減で人混みの間をこちらに向かって走ってきた。
そして、俺たちに気が付かないのか、素通りして……出入口ゲートに……
「ヒッキー、今のいろはちゃんじゃ?様子が変だった」
由比ヶ浜も気が付いたようだ。
そして、三浦もそれに気が付いた。
何より戸部がその様子に気が付き、一色を追いかけようと動く。
「一色を見てくる……あのバカ」
「ヒッキー!」
「……え?」
俺は2人にそう告げた後、小さく悪態をつきながら一色を追いかける。
一色の奴は葉山に告白したのだろう。
そして振られた。
今の葉山が誰の告白も受けないと知っていただろうに……なぜそんなことを、もっとうまくやれる奴だと思っていたが……
くそ、人込みでうまく進まない……
出入口付近でようやく人混みがなくなり、ゲートを出て行く一色を捕捉する。
!?
何この殺気!?
霊力が増大する!?
しかも地下から!?
不味い!!
俺は地下から急激に増大する霊力を感じ、霊感が危険だと警鐘しまくる。
このままだと一色が危険にさらされる。
「一色!!」
俺は霊気を一気に霊力に変換させ、身体能力を高め加速し、一色を後ろから飛びつくように抱き上げその場をジャンプし離脱する。
「きゃ!」
バズズーーーーーン!!
先ほどまで一色が駆けていた辺りのマンホールの蓋が勢いよく空高く吹き飛ぶと同時にマンホールから凄まじい霊圧が吹き荒れる。
間一髪だった……凄まじい霊圧だ……だが、妖怪や妖魔の類ではない。
俺の良く知ってる霊気だ。
続いてマンホールから霊力のエネルギー波と共に真っ黒なゴミくずが飛び出し上空に空高く舞い上がる。
そして、巨大な霊圧をまき散らす鬼……いや、美神令子が怒りのオーラを纏いマンホールからゆらりと這い上がってきた。
「手こずらせたわね!!横島ーーーーっ!!」
俺は全身の汗が噴き出し、その様子を息をするのを忘れ見つめる。
いや、正確に言えば、その霊圧と死の恐怖に体が動かなかったのだ。
空高く舞い上がった真っ黒なゴミくずがマンホールの蓋と共に、美神さんの目の前に大きな音をたてて落ちる。
美神さんは落下した真っ黒なゴミくず……いや、横島忠夫だった物を片手でつかみ、引きずって、この場を去って行った。
どうやら俺の存在に気が付いていないようだ。
「……ふぅ、助かった」
俺は美神さんが去った後を眺め、ほっと息を吐く。
何?今迄ずっと、横島師匠を追いかけまわしてたのか?逃げてる横島師匠も師匠だが、追いかける方の美神さんも美神さんだ。その情熱をもっと別の事に活かしてほしい。
「あの…先輩?降ろしてもらえませんか……」
一色が俺の胸元当たりで顔を赤らめ見上げていた。
俺はあまりの恐怖に一色を抱きかかえていた事を忘れていた。
「わりい」
慌てて一色を下す。
「ほんとにもう!セクハラで訴えますよ!どうして私を急に抱き上げたんですか!!」
どうやら、一色はあの状況を見えてなかったようだ。まあ、顔は俺の胸元に向いてたからな……
「……なんか、マンホールがガス漏れで爆発したみたいになったからな、とっさに抱きかかえてしまった。すまん」
俺はそこに転がってるマンホールの蓋を指して説明をする。
流石に、美神さんと横島師匠の事は言えない。
「た、助けてもらってありがとうございます。……で、なんで先輩が私の近くにいたんですか!はっ!もしや、私の事をずっとつけてたんですか?途中から見かけなくなったと思ったら、私をストーカーですか、いくら私服姿の私が可愛いからって犯罪です。ちょっと腕とか、たくましかったけど。まだ無理です。ごめんなさい」
「あのな、何度振られるんだ俺は……お前が急に走り出したから追いかけたんだよ。お前……その葉山に告白してだな、そのなんだ……」
「……心配して追いかけてくれたんですか……先輩………私、振られたんだ」
「お前、今、告白してもダメなのはわかってただろ?なんでしたんだ」
「……ここの雰囲気がいけないんです。その、パレード見て、花火見て盛り上がっちゃったんです」
「お前、もっとクレバーな奴だと思ってたんだがな」
「先輩が悪いんです!周りのみんなを変えて……それで私も変わらなくっちゃって!!」
「はぁ?なんだそりゃ?」
まったく身の覚えがないんだが……周りのみんなを変えるってどういう事?
「グスッ………これは布石になるんです。葉山先輩は振った私に罪悪感持つはずです。これで私の事が気になって仕方がなくなるんです。だから……これからなんです。グスッ」
一色は涙をこらえながら俺に訴える。
精いっぱいの強がりなのは分かっている。
しかし、俺はこんな時どうしたらいいのかがわからない。
「……そうか」
俺は小町にするように一色の頭を一撫でする。
この後、由比ヶ浜と雪ノ下、心配そうな顔をしていた戸部と三浦と合流する。
それで俺が一色を自宅付近まで送る事になった。
まあ、余談だが数日後、俺は美神さんに事務所ビル全部の窓拭きを言いつかった。
勿論、俺が横島師匠を逃がした事のペナルティーだ。
まあ、半殺しにされるよりはましだな。
当日、横島師匠を徹底的に叩きのめすことで溜飲が下がったようだ。
それにしても、美神さんって横島師匠の事になると過激すぎるよな。まあ、どうせ横島師匠が全部悪いんだろうが……しかし、今回の件、横島師匠は何か別の口実や言い訳を言って仕事を休んだのだろうが、たかがデートでそこまで怒るか?いい大人なのに。
平塚先生は一晩中、あの純白のドレスで街を駆け回っていたそうだ。
平塚先生自身、巻き込まれないようにとの配慮だったんだが……流石に罪悪感がぬぐえない。
横島師匠には何かのフォローだけはしてほしい。
慰めの言葉でもかけておくか……
クリスマスイベント、ちょっとずつ原作とは違う感じになってます。
次でこの章は終わりです。
長かった……