やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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誤字脱字報告ありがとうございます。

前回の続きです。


㊾ドラゴンへの道、その5

小竜姫様が語ってくれた横島師匠の過去。

内容が内容だけに詳細までは教えてもらえなかったが、それでも今の俺には十分だった。ここに来てからずっともやもやしていたが、心の枷が外れたようなすっきりした気分となる。

横島師匠の過去か……

恋人が居てた事にも驚きだが、その大切な人を3年前の世界同時多発霊災で亡くしていたなどとは、普段の師匠からは想像もつかない。しかもその影響で師匠は、命に係わる霊障か呪縛をうけていたらしい。それを克服するために、ここで修行を……

 

世界同時多発霊災。世間一般では地球の霊的バランスが偶然が重なり、狂いが生じて起こったと言うのが一般的な見解ではあるが、秘密結社による陰謀説や、宇宙人による同時多発テロとか、魔族の侵攻だとか、諸説がある。

小竜姫様の話しぶりから、実際には横島師匠、いや、当時のGSは世界同時多発霊災を起こした『何か』と戦っていたという事だ。

それが何なのかは今の俺には知る由もないが、そのうちにきっと話してくれるだろう。

 

 

修行もついに6日目、残るは後1日を残したところで、修行の総仕上げと言う事で、

午後の修行は、対戦方式らしい。

 

横島師匠には毎日組手をしてもらってるから、小竜姫様が直々にと、期待を膨らましていたのだが、対戦相手は小竜姫様が使役してる魔獣らしい。

 

例によって、修行場の異世界の扉を開くと、そこには大きな石柱が円形に並び囲んでいるだけの、シンプルな対戦場があった。但し、その石柱の外に、人ひとりが乗れるぐらいの石舞台が対面に設置され、何やら術式陣が刻まれていた。

 

「比企谷さん、その石舞台に乗ってください」

 

「対戦場ではなく、ここにですか?」

 

「はい」

 

俺は小竜姫様に促されて、見たことがない術式陣が刻まれた石舞台に乗ると、術式陣が青白く発光し起動する。

 

すると、目の前に巨大な影が表れる。

 

「な…これは?」

俺はその巨大な影を見据えてから、後ろを振り返り、対戦場の外延で控えていた横島師匠と小竜姫様に尋ねる。

 

「シャドウです。あなたの内なる霊気、霊力、霊格、心をその術式で強制的に具現化したものです」

 

「固有の式神みたいなものですか?」

 

「まあ、近いところもあるが、根本は別物だな。もう一人の霊的側面のお前と言ったところか、ニュアンスはGSで言うところのペルソナだな。もっとわかりやすく言えば、漫画のジョジョのスタンドみたいなものだ」

ペルソナか、使い手に会ったことは無いが、式神よりも強力と聞いてる。確か日本には居ないしな。

まあ、俺的にはスタンド使いの方がカッコよくていいけどな。そうかこれで俺も今だけ限定のスタンド使い(仮)か!中二心をくすぐる展開だな!!

 

しかし、俺のスタンド(シャドウ)。人のような形をしてるけど、いまいち形が定まっていないと言うか、真っ黒な霧が人の形をなしてるだけのようなそんな地味な感じの奴だ。そういえばドラクエにこんな敵いたなシャドーだったか、……シャドウがシャドーって、そのまんまだな。しかも全然カッコよくないんだが……

クレ〇ジーダイ〇モンドとか、ス〇ー・プラ〇ナとか、ああいうカッコいいのがよかったんだが!

 

「横島師匠。スタンドじゃない、シャドウってみんなこんな感じなんですか、なんかあまり、パッとしないと言うか、なんていうか、こう……」

 

「いや、美神さんのは、女騎士って感じで、かっこよかったぞ」

……もしや俺だけ?こんな感じなのは。

 

「先ほども申しましたように、シャドウはその人の霊気、霊力、霊格、心を具現化したものです。そのシャドウの姿は、あなたの心やあり様を映したものでしょう」

小竜姫様、それは、俺の心のあり様がこの黒い霧みたいな奴ってことは、地味で暗くて、パッとしなくて、形も不安定なこいつと一緒であふやな奴で、ドラクエのシャドーと一緒でザコキャラってことでしょうか?

なにそれ、一気にテンション下がるんですが……

 

「ち、因みに横島師匠のはどんなでしたか?」

 

「お、俺か?……まっいっか。ほれ」

横島師匠は最初は渋った顔をしてたが、気が抜ける掛け声と共に、シャドウを顕現させた。

流石師匠、術式を介さずにシャドウを出すことが出来るとは……

いやしかし、なんだこりゃ?

 

横島師匠がポワンという音と共に顕現したシャドウは、

80cmくらいの大きさで、二頭身江戸時代の漫談師か道化のような恰好した、いかにも弱そうで役に立ちそうもないシャドウだった。

なにこれ?……横島師匠のだから、とんでもなく強そうなシャドウだと思ったんだが………

 

「だんさん、久しぶりでんがな。ワイの事、もう、忘れてもうたかと!……ん!?こっちのボンは、どなたはん?」

しかし、そのシャドウ、俺のと違って、明確な意思を持ち、しゃべる事が出来るのだ。

なぜかこてこての関西弁をあやつり、いかにも調子の良さそうな奴だ。

 

「はぁ、俺の弟子だ」

呆れ気味に答える師匠。

 

「ぷくくくくっ、だんさんの弟子?その目~、ゾンビの間違いでっしゃろ?まあええか、パッとせえへんけど、挨拶だけはしてやろか」

横島師匠の妙ちくりんなシャドウはそんな事を言いながら、こっちに近づいてくる。

なんで、上から目線なんだこいつ。

 

「儲かりまっか?」

横島師匠のシャドウは、手に持った扇子を自分の頭にポンと当てながら、ニヤケ顔で妙な挨拶をしてくる。

その挨拶は知ってる。近江商人や船場商人の挨拶の仕方だ。知識として知ってるが、普通に挨拶しろよな!

 

「……こんにちは」

 

「けっ、ノリ悪いな。『ぼちぼちでんな』やろそこは!はぁ~これだから東京もんは」

異様にムカつくんだがこいつ。

 

俺のその感情に反応したのか、俺の黒い霧のシャドウが横島師匠のシャドウの頭を鷲掴みにして、

締め付ける。

 

「な、なにするんやーーーー!!」

 

 

横島シャドウが俺のシャドウに頭を絞められて、泣き叫ぶのを余所に、師匠に質問する。

「……横島師匠、これは何の冗談ですか?」

 

「わるかったなーーーー!!これが俺のシャドウなんだよ!!俺ももっと別のがよかったんやーーー、なんで俺だけ大昔のコテコテ漫才師みたいなシャドウなんやーーー!!」

横島師匠も涙をちょちょ切らしながら、頭を左右にブンブン振って、嘆く。

……まあ、わからんでもない。この人、根っからのギャグ体質だしな。いくら強くても、人の根本は変わらないと言う事か。

 

泣き叫ぶ横島シャドウと涙を流し嘆く師匠を余所に小竜姫様に尋ねる。

「シャドウって話すことが出来るんですか?」

 

「ない事も無いのですが……、そのあの様に、本人の意思と無関係に独立して、会話をするシャドウは横島さんのシャドウだけです」

小竜姫様は困ったような表情で答える。

やっぱ特別なのか、というか、あれもギャグ体質がなせるわざなのだろうか?

 

「………小竜姫様、このシャドウを使ってどのような修行をするのですか?」

俺は気を取り直し、肝心な事を小竜姫様に聞いた。

 

「シャドウは比企谷さんの霊的構造がむき出しになったものです。シャドウが強力な相手と戦うことで、比企谷さんの霊的構造を直接鍛えることができるのです」

 

「なるほど、そういう修行なんですね」

俺のむき出しになった霊的構造であるシャドウを鍛えることによって、効率よくパワーアップできると言う事か。

 

「だったのですが、意味がなさそうですね。……比企谷さんは、この6日間でこの修行を行わなくても良いぐらいにパワーアップしてます。あとそのシャドウ、今から戦う者達(魔獣)では手に負えないでしょう」

確かに、俺の霊的ポテンシャルはこの6日で自分で驚くほど伸びたように感じる。

この修行の必要性がなくなったのは、パワーアップしたからという理由じゃなさそうな言い回しだな。

 

「どういうことですか?」

 

「そのエレメント系のシャドウ。直接攻撃がメインの今から戦う子達(魔獣)ではダメージを負わすことができないでしょう。比企谷さんの心の持ちようはなかなか面白いようですね。それと霊的ポテンシャルは美神さんと似てると思っていたのですが。ここでの修行で、大分異なる事がわかりました。それがこのシャドウにも表れてます。それにまだ伸びしろは十分にありますよ。さすが、横島さんが見込んだだけはあると言っていいでしょう」

小竜姫様に褒められて、めちゃ嬉しいぞ。

しかし、俺の心の持ちようが面白いってなんだろうか?

それと、霊的ポテンシャルが美神さんと異なるってのも気になる。

 

「それって……」

 

「とりあえず、石舞台から降りてください」

 

「はい」

俺はシャドウを顕現させる術式が彫り込まれた石舞台から降りると、それに伴い、俺のシャドウもスッと消える。

 

「何してけつかんねん!!」

横島シャドウは俺のシャドウから解放され、俺に文句を言おうと飛んでくるが、小竜姫様に首根っこ捕まえられる。

 

「横島さんシャドウを戻してください」

 

「ううう……なんでや、なんであんなんなんやーーー!」

横島師匠は嘆きながら、シャドウを消す。

いや、横島師匠があれだけ強いんだ。変なシャドウだろうと、とんでもない力を秘めているに違いない。

「因みに、横島師匠、あのシャドウ、何ができるんですか?」

俺は慰める意味も含め、横島師匠に聞く。

 

「ふはははははっ!!八幡ビビるなよ!!派手な応援が出来る!そして、覗きとかお触りだ!!それ以外は全く無い!!ふはははははっ!!」

おいーーー!!何そのシャドウ、全くの役立たずじゃねーか!しかも質が悪い。普段の横島師匠がやってる行動と同じじゃねーーか!!霊気や霊力、霊格と心を具現化したものじゃないのか?心の、しかも邪な部分だけじゃねーか!!霊気とか霊力とか霊格とかどこに行ったんだ!?

涙を洪水のように流しながら高笑いしてるよ、横島師匠。アレに比べれば、きっと俺のシャドウの方がましだな。姿はあんな感じだけど、小竜姫様も褒めてたしな。

横島師匠、よっぽどあの漫才師シャドウが気にくわなかったんだな。

 

ん?……ちょっとまてよ。横島師匠の中に、さっきのシャドウの気配以外に何かあるよな……

 

 

「比企谷さん、対戦場に入ってください。今から召喚する子達(魔獣)と直接戦ってください」

何時までも、涙が止まらない横島師匠を余所に、小竜姫様を俺に対戦場へと促す。

 

「わかりました」

俺は頷き、対戦場へ

 

「この6日間の修行の成果を見せてくださいね。では、召しませ剛練武(ゴーレム)!!」

小竜姫様はニコっとした笑顔でそう言い、背丈は5mはあろうかという一つ目の巨人が現れる。そのからだ鉱石か何かでできてるのだろうか、鈍い光沢を纏っている。

その姿から、防御力が高い魔獣だと想像できる。

 

「では、始め」

 

 

剛練武と呼ばれた魔獣はゆっくりとした動きでこちらに向かって来る。

 

俺は霊力を高め身体能力強化をし、相手の後ろ側に回り込む。

が……かなりのスピードが出て、離れすぎる。

体が以前よりも大分と軽い。

修行の効果か、霊気から練れる霊力の力が以前に比べ、かなり高まっている。身体能力強化もそれに伴いかなりアップしているぞ。

思った以上のスピードに、自分でコントロールがきかない。

 

「くっ」

 

俺は相手の動きが遅いのをいいことに、パワーアップした身体能力強化になれるために、相手間合いの外で動き回る。

 

そろそろいいか。

俺は霊気を放出させ、対戦場に満たす。

横島師匠に修行中封印されていた霊視空間把握能力を発動させ、攻撃準備に入る。

 

これは、……相手の動きが前よりも正確に……

あそこに隙がある。体は防御力が高いが明らかにあの大きな一つ目の防御は薄い。

俺は自然とそんな事が理解できていた。

相手の動きだけでなく、相手の身体能力の把握まで出来るようになったようだ。

 

剛練武は俺の動きに全くついて行けていない。

剛練武の振り向きざまに、俺は奴の顔面に目掛け大きくジャンプし、右手に霊波刀を顕現させ、その大きな一つ目に突き刺す。

剛練武はうめき声と共に、仰向けに地面に倒れた。

 

「………」

俺は自分の体を確かめるように、腕や腰のストレッチをする。

自分で言うのもなんだが、修行の成果は確実に出てる。

しかも、自分でも確実な違いが実感できるぐらいに。

 

「いい仕上がりですね。次行きますよ」

「八幡。そんなもんじゃないだろ?次はすべての感覚をフルに使ってみろ」

小竜姫様は満足そうに頷き、横島師匠はアドバイスをくれる。

 

俺は大きく頷いて見せる。

 

「召しませ、蝸刀羅守(カトラス)」

小竜姫様は次の魔獣を呼び出す。

 

すると、四肢や背中など全身が鎌等の刃物で出来た虫のような型の魔獣が現れた。

見てるだけで、こっちが痛くなってくるようなフォルムだ。

 

「では、初め」

 

でかい図体のわりにはかなりスピードだ。

こっちに一気に迫って、腕の鎌を振り下ろし、さらに次々と全身の鎌を使って薙ぎ払ってくる。

俺は霊視空間把握能力をフルに使って、それらの斬撃をすべて避ける。

やはり、ただ単に相手の動きが見えるだけじゃない。相手の霊的構造が透けて見え、霊気や霊力の動きが見える。それによって相手の霊的に強度が高い部分や弱い部分が見えてくる。

単純な弱点が手に取るようにわかる。

 

こいつ、四肢と体の付け根の関節の可動域が狭いな。ならば。

俺は相手が次々と放ってくる斬撃を読み切り、避けながらも四肢のバランスを徐々に狂わしていくように誘導する。

 

踏ん張る鎌足と攻撃鎌足とのバランスが徐々にくるって行き、蝸刀羅守は遂に無理な体勢で腕を振り上げ斬撃のモーションをとった。

 

ここだ!

俺は蝸刀羅守の踏ん張っている一本の鎌足の足元にサイキックソーサーを数発投げ込む。

完全にバランスを崩し横倒れになるのを、もう一本の鎌足で踏ん張ろうとしたところ、霊波刀で薙ぎ払う。

 

蝸刀羅守は完全にバランスを失い。仰向けにひっくり返る。

四肢の鎌足をバタつかせていたが、起き上がれない。

 

やはりな……

こいつの四肢の付け根の可動域ではこうなるとなかなか起き上がれないだろう。

攻撃力は中々のものだったけど、仰向けになったら戻れないって、生物としてどうなんだこの魔獣。

 

「そこまでです」

小竜姫様は試合終了の合図をする。

 

「ふぅ」

今のはさっきよりも、見えたな。

しかし今の試合の最後の方、相手の動きが若干スローモーションのようにも見えたような。

あれは気のせいか……

とりあえず異界修行場での修練の効果がでたってことだろう。

体が軽い。動きも霊視空間把握能力に十分ついていけてる。

霊視空間把握能力の性能も向上してるな。相手の霊的構造までも見えるような感覚だ。

霊波刀もサイキックソーサーも前よりも威力が上がってるのも感じる。

 

俺は対戦場から外に出ようとすると……

 

「すでにこのレベルですか。あの子達では、比企谷さん相手では物足りない感じですね。彼をもうひと伸びさせるには………比企谷さん。私と対戦しませんか?」

小竜姫様に何やら呟きながら、対戦を申し込まれた。

 

「小竜姫様とですか……流石にレベルが違うと言うか」

始めに小竜姫様の解放した霊圧を浴びたが、明らかにあの茨木童子を上回っていた。

修行の成果がでたとしても、流石にあのレベルでは手も足も出ないだろう。

 

「これも修行の一環だと思ってください。私は手加減しますので、比企谷さんは全力で来てくださいね」

 

俺はこの申し出をうけるかを横島師匠に確認するために、アイコンタクトをとると……

 

「八幡、はじめっから全力でな。手加減とか考えてたら一瞬でやられるぞ」

横島師匠は了承と共に、大雑把なアドバイスをくれる。

 

当然そうなるよな。

 

「小竜姫様、よろしくお願いします」

 

「はい、こちらこそ」

 

こうして、小竜姫様との対戦が始まるのだった。

 

 




次回でドラゴンへの道は終了します。

今の所は八幡は全体的にパワーアップした感じです。
今の所は……

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