やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
㊿のあとの51ってないんですね。
だから()になっちゃいました><
ここまで長くなるとは最初は思ってもみなかったので……
いきなり新章ですね。前回で修行編は終わりで、今回から三学期編です。
(51)新年早々
1月2日の夕方。
俺は1週間ぶりに家に帰った。
妙神山の修行を無事終えた俺は、妙神山から横島師匠のアパート直通の転移ゲートを使い、一瞬で東京に帰ってきたのだ。行きの険しい山登りは何だったんだろうか?
先に、美神さん達に年始の挨拶をと事務所に戻ったのだが、美神さんは留守だった。
人工幽霊によると、美智恵さんに無理やり連れていかれたとか、なんでも美神さんの実家で親子4人水入らずで正月を過ごすらしい。そう言えば美神さん、親父さんと折り合いが悪いと聞いていたが、年の離れた20歳年下の妹のひのめちゃんがいるし、美智恵さんは再婚して、今の親父さんは義理の親父さんなのかもしれないな。
キヌさんは東北の実家に帰省、シロも人狼の村に帰省していた。
タマモはやはり俺の実家だった。タマモは親族は居ないといっていた。数千年も生きてる金色白面の九尾の狐っていう伝説級の妖怪だしな。親とか元々いないのかもしれない。しかし、昔の妖怪仲間とかはいないのだろうか?まあ、親父とかあちゃんはタマモが泊りに来て、めちゃ喜んでたらしいがな。
俺が帰ったと同時に、あの親共は旅行に行きやがった。あれだ。土御門さんに貰った土御門家が経営してる温泉旅館のタダ券だ。3泊4日らしい。
小町は受験生なんだぞ。あの親共は!どういう神経してるんだ!
「後は任せた」とか言って、俺に一切の家事を押し付けて出かけやがった。
タマモは普段泊りに来る時は、小町の部屋で一緒に寝泊まりすることが多かったのだが、流石に受験の追い込み時期と言う事で、俺の部屋で寝泊まりしていたようだ。
帰ってきた俺が見たものは、乱雑だった部屋はきれいに片づけられ、ベッドの布団やシーツ、窓のカーテンは女の子らしく白のレース調に新調され、僅か一週間で俺の部屋から八幡要素がほぼ消されていた………因みに、すべて親父の仕業らしい。
あのクソ親父、息子を何だと思ってやがる。
……お子様には言えない秘蔵書の存在はバレてないだろうな。親父の奴、そこまでやるなら、気を利かせて、処分なり、天井裏なりに隠しておいてたりしてくれれば助かるのだが。
タマモの様子を見る限り今のところは大丈夫そうだ。
俺はタマモが泊ってる間、リビングで寝ることにした。
タマモは「一緒の部屋で寝ればいいじゃない」というが、流石にそうはいかないだろう。
見た目は、俺よりも少し年上の金髪美少女だからな、妙に色気もあるし、一緒の部屋で寝るとか俺の方が精神的に持たない。まあ、シロだったら大丈夫な気がする。
幸いリビングには、こたつもテレビもあるし、携帯ゲーム機とラノベがあれば退屈はしない。
食料も今の所、デパートで注文したのであろうお節料理が残ってるし、多量に食料は買い置きしてあったから、夕飯はお節の残りと適当な付け合わせで間に合う。
小町にはお土産で小竜姫様からもらったご利益のあるお守りを渡す。
まあ、勉学とかではないとは思うが、交通事故とかからは守ってくれそうな、神聖な霊気を纏ったお守りだ。
小竜姫様と言えば、今日の修行7日目の朝食の食卓に、いつの間にか、眼鏡をかけ、みすぼらしい服を着たサルが座ってたんだが……実はそのサルが、横島師匠と小竜姫様の師匠だった。
そして、俺はその名を聞いて大いに驚いた。
斉天大聖と名乗ったのだ。
知ってるか?
斉天大聖だぞ!!
ちゃんと西遊記を読んでる奴ならわかるだろうが、あの孫悟空のことだ。
孫悟空ってサルの描写で描かれてたけど、まんまサルだったんだな。
武神斉天大聖老師、孫悟空。武術や数々の仙術を極めた。神界きっての武闘派神様だ。
そりゃ、横島師匠も武神に鍛えて貰ってりゃ、武術も強くなるわけで。
握手してもらったし。「修行にまた来い」って言ってくれたしな。
流石の横島師匠も斉天大聖老師には頭が上がらないようで、「修行をサボってないか、わしが直に見てやる」って言われて、ギャグ飛ばして必死に逃げようとしてたしな。横島師匠が逃げるレベルってどんな修行だよ。
まあ、うちの師匠は嫌なことがあれば些細な事でも普通に逃げるか。
1月3日
早朝から小町とタマモと家をでる。
修行前に、由比ヶ浜とこの日に買い物に行く約束をしていたのだ。
別にデートとかではない。小町もタマモも一緒だしな。
雪ノ下の誕生日プレゼントを買いに行くためにだ。雪ノ下の誕生日は1月3日の今日だ。
はじめは別に一緒に買いに行く必要はないんじゃないかと断ったのだが、「だったら別に一緒に行ってもいいじゃん」と返してきた。由比ヶ浜にしては中々の返しに、思わず納得してしまった。
確かにそうだ。必要性は無いからと言って、一緒に行かない理由にはならないな。まあ、一緒に行く理由にもならないが。
どちらにしろ、この事を小町に知られた時点で、俺の負け決定だった。
俺が一緒に買い物に行かない理由が、小町によってどんどん消されていき、最後には強制的に一緒に行くことになった。
結局、俺は小町と由比ヶ浜と一緒に雪ノ下のプレゼントを買いに行く事になったのだ。
因みにタマモは小町の付き合いということで付いてきてる。
タマモも雪ノ下の事を知らない仲ではないから特に問題ない。
今日のスケジュールはこうだ。
午前中に誕生日プレゼントを買い、その足で雪ノ下の家に突撃し、1月3日誕生日の雪ノ下を祝うサプライズプランらしい。
雪ノ下が実家に帰ってたらどうするんだ?
千葉駅で由比ヶ浜と合流し、ショッピングモールに向かったのだが、ショッピングモールに入るなり、小町は用事を思い出したとかで、タマモとどこかに行ってしまった。
なんだ?このパターン。前にもあったような。
結局、由比ヶ浜と二人で雪ノ下のプレゼントを買うためにモールの店を回る羽目になる。
「ヒッキー、修行どうだった?」
「ああ、まあまあだな」
由比ヶ浜と雪ノ下には事前にGSの修行に行くことを伝えていた。
元旦の初詣を一緒に行こうと言う話があったが、俺はこれを理由に断ったからだ。
行先は流石に言えないが、こいつらに話したところで問題ないしな。
「うーん。なんかヒッキーたくましくなってるし」
由比ヶ浜は俺の腕を服越しに触って来る。
「暑苦しいからやめてほしいんだが」
由比ヶ浜さん。女子に免疫がない男子の体にべたべた触るもんじゃありません。
「さっき寒いって言ってたじゃん。別にいいじゃん。減るもんじゃないし」
「離してくれませんかね。人の目とか気になるし」
俺がそう言うと、由比ヶ浜は俺の腕を離してくれたのだが……
減るんだよ!主に俺の精神が!
「むー、ヒッキーの意地悪」
頬を膨らませる由比ヶ浜。
由比ヶ浜さん?この頃、さらに距離感が近くなってませんか?勘違いするからそういうのはやめてほしい。
由比ヶ浜は楽しそうに店を回り、俺はそれに引っ張られるようについて行く。
2時間程経ったところで由比ヶ浜はプレゼントを決めたようだ。
猫の手の形状のミトンだな。
いいチョイスだ。雪ノ下は料理もするし、大の猫好きだ。
俺も、その間にめぼしいものに目をつけ、買っておいた。
因みに俺のは、PC用のブルーライトカット眼鏡だ。
雪ノ下は何だかんだとよくノートパソコンを活用してるからな。
プレゼントを買ったときには既に昼時は過ぎていた。
小町にどこかで昼食をしようと連絡したのだが、急な用事で家に帰ったとか……
うちの妹はまじで何しに来たんだ。
付き合わされるタマモには、後で詫びでも言っておこう。
ちょっと高級そうな揚げでも買って帰ってやるか。
由比ヶ浜と昼食をとるためにモール内の喫茶店に入ると、意外な組み合わせの人物がテーブル席に座っていた。
「ゆきのん!…と隼人君だ!やっはろー!」
「うす」
「由比ヶ浜さん!比企谷君も!?」
雪ノ下は何故か驚き、狼狽してるような感じだ。
そんなに驚くことか?
……まあ、由比ヶ浜と俺が一緒に居ることに驚いてるのだろうが。
なんか前に、この逆パターンがあったな。あの時は、俺と雪ノ下が由比ヶ浜の誕生日プレゼントを買いに行ったときにだ。偶然由比ヶ浜に遭遇して、こいつ俺達を見て、何故か慌てて逃げてったて事があったな。
「結衣とヒキタニくんも、久しぶり」
葉山はいつものイケメンスマイルで挨拶をする。
「ゆきのんと隼人君の二人が一緒なの珍しいね」
確かに珍しい組み合わせだが、陽乃さんに、葉山の家と雪ノ下の家は親同士の付き合いがあるとは聞いた事がある。その辺の理由で一緒に居るのだろう。
雪ノ下は葉山を嫌ってる節がある。学校では、わざと葉山を敬遠していたような態度をとってたな。
今もそうなのだろう。4人掛けテーブルなのに、わざわざ対角線上に座ってる。
「こ、これは違うの、その」
雪ノ下は珍しく慌てている。
俺を一瞥し何やら言動がしどろもどろに。
「ああ、親と共に年始の挨拶回りをしていてね。ほら、家と雪ノ下家はビジネスパートナーだから、それでさ」
葉山が苦笑しながら、簡潔に答える。
「へー、そうなんだ。と言う事はどういう事?」
「親同士が仕事とプライベートで昔から付き合っていてね。それで家族同士の交流もあるって、雪乃ちゃ……雪ノ下さんとは昔からの知り合いなんだ」
葉山が由比ヶ浜の疑問に答えるが、葉山が雪ノ下の事を下の名前で呼びそうになると、雪ノ下の氷の視線を浴び、苗字で呼びなおす。
「それって、幼馴染ってことじゃん。いいな~」
由比ヶ浜は理解が及んだようだ。
「わ、私は、別にそんなんじゃないわ。姉さんの代わりでここにいるだけだから」
雪ノ下は俯き加減で、チラチラと俺と由比ヶ浜を見ながら答える。
陽乃さんの代わりか、陽乃さんはもしかすると京都で、土御門家一門として挨拶回りをしているのかもしれないな。
俺は、この二人の親はどこに居るのだろうと周りを見回していたのだが、それらしき人物は見当たらない。それを察した葉山はその疑問に答える。
「今は、親達だけで挨拶に行っていてね。それでここで待ってるんだ」
「そうか、それは邪魔したな」
なるほどな。それならば二人の両親に出くわしたら気まずそうだな。
「じゃ、邪魔じゃないわ。私は丁度、時間を持て余していた所よ」
雪ノ下は語気を強くし、早口で言う。
「じゃあ、ゆきのん。隣座って良い?」
由比ヶ浜は雪ノ下の隣、葉山の前に座る。
俺も仕方がなく、葉山の隣、雪ノ下の前に座る。
雪ノ下は何故かホッとしたような表情をする。
「結衣とヒキタニ君はどうしてここに二人で?…聞くのも野暮だったかな?」
葉山は笑顔でそう言いながら、雪ノ下に視線を移していた。
葉山、なにか勘違いしてないか?
「二人で……」
雪ノ下は小さな声で呟き、俺と由比ヶ浜が持ってる買い物袋に視線を移していた。
「ちょっとね。その買い物に付き合ってもらってたの……」
由比ヶ浜は言い難そうにそう言う。
まあ、雪ノ下の誕生日サプライズプレゼントの事は言い難いわな。
ただ、このまま雪ノ下が親と挨拶回りに行くのなら、雪ノ下は実家に帰るだろうから、このプレゼントは今渡した方がいいのでは?
「そ、そう」
雪ノ下は俯き、2人の間に何故か微妙な空気感が流れる。
「ああ、小町とタマモもいたんだが、先に帰ってしまってな」
ん?なんだ。よくわからんが、誕生日プレゼントの事を隠そうとすると余計に面倒な事になりそうだな。
「そうなのね。小町さんとタマモさんも」
雪ノ下はホッとした表情をする。
「結衣はヒキタニ君と仲いいよね。いっしょにいると楽しそうだし」
何時もの感じでそう言った葉山だが、何か違和感を感じる。
「そ、そかな?」
由比ヶ浜は雪ノ下を見ながら遠慮がちな言い方をする。
「まあ、そこそこな」
俺は曖昧な表現で答える。
別に嫌ではない。今更だが、こいつらの前ではあんまり遠慮はいらんし、気が置けない感じはする。
今日みたいな人混みとかは超嫌だがな。
「え?…ヒッキー?」
「……」
「あれだ由比ヶ浜、今渡した方がいいんじゃないか?」
「え?……その、なんだっけ?」
ガハマさん、なんだっけじゃないでしょう?なに呆けてるんだ?雪ノ下の誕生日プレゼントの事だ!
雪ノ下もなんだ?さっきから、ホッとしたり、俯いたりと、浮き沈みが激しいんだが。
「そのだな雪ノ下、今日誕生日だろ?そのプレゼントを選んでだな。その後、お前ん家によろうとしたんだが……どうやら家の用事がありそうだしな、おめでとさん」
俺はそう言って、ラッピングしたプレゼントを雪ノ下に渡す。
雪ノ下は意外そうな顔をした後に、俯き加減になりプレゼントを受け取る。
「あの、その…ありがとう」
「実はそうだったんだ。ゆきのんにサプライズプレゼントしたかったんだけど、ゆきのん、この後も用事ありそうだし……誕生日おめでとう。ゆきのん!」
由比ヶ浜も俺に習い、プレゼントを渡す。
「ありがとう。由比ヶ浜さん」
雪ノ下は今度は由比ヶ浜の顔をしっかりと見据え、笑みを溢し礼を言う。
「どういたしまして!」
「本当に仲いいね。比企谷がこんなことをするなんて、ちょっと意外だったな」
葉山は横に座る俺の方を向き、じっと見据え、顔を近づけ俺にだけ聞こえるぐらいの小声でいう。
その葉山の顔には何時ものスマイルはなかった。
そして、俺の苗字を間違わずに……
なんだ?こいつもわざと俺の苗字を間違えて言ってたのか。
海老名もそうだが、わざと間違う遊びでも流行ってるのか?
「まあな、俺もそう思う」
俺は軽い感じで返事を返す。
そんな時、俺達の後ろから……
「お待た…あれ?比企谷君にガハマちゃんも?」
遂にこのあの人が、奉仕部3人の前に……後葉山君+で