やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
サブタイトルは
修羅場回?いや……ちょっとした手違いです。
「お待た…あれ?比企谷君にガハマちゃんも?」
げっ、陽乃さん。今会いたくない人物ぶっちぎりでナンバー1なんだが。
このメンバーにこの人って、嫌な予感しかしない。
オシャレな普段着の陽乃さんに俺は会釈するだけに留める。
「ゆきのんのお姉さん、こんにちは」
「こんにちはガハマちゃん、陽乃でいいわ」
「陽乃さんの挨拶回りは明日では?」
「姉さん。夜半に実家に戻ると言ってなかったかしら?」
葉山は呆れ半分のような表情で、雪ノ下は冷たい視線を向けていた。
「京都の用事が早く終わったから、さっき戻ったの。駅から実家に電話したら、雪乃ちゃんがここだっていうから、近いし来ちゃった」
「だったら、私に直接電話をしてくれればいいじゃない」
雪ノ下の口調は厳しい。
「雪乃ちゃんを驚かせようと思って、驚いてくれた?」
陽乃さんはウインクしながらわざとらしい笑顔を雪ノ下に向ける。
これは外面仮面の陽乃さんだな。
「姉さん!そんな事のためにこんなところに、帰って……」
「で、比企谷君とガハマちゃんはどうしてここに居るのかな?もしかして、2人でデート!と言う事は、隼人と雪乃ちゃん、比企谷君とガハマちゃんのカップルでダブルデートか。邪魔しちゃったかな?ごめんね雪乃ちゃん。お姉ちゃんそんな事になってるって知らなかったから」
雪ノ下の話を聞かず、俺と由比ヶ浜に尋ね、さらに葉山と雪ノ下を交互にみてから、陽乃さんはこんなことを言って雪ノ下に手を合わせ謝る。
わざとだな。陽乃さん、雪ノ下の前に置いてる誕生日プレゼントに一瞬視線を合わせたし、すべて察したうえで、雪ノ下にこんなことを言ってる。何がしたいんだかこの人は……まあ、妹を構いたいのはわかるが、逆効果じゃないのか?
それに葉山も気が付いてるな。愛想笑いをしてるが、目は呆れたような感じだ。
「姉さん!!」
雪ノ下は立ち上がり、陽乃さんに怒りをあらわにする。
「で、デート!?その、ち、違います」
由比ヶ浜は顔を赤らめ、もじもじと否定した。
「え?違うの?……てっきりそうだと思っちゃったお姉ちゃん」
この人は、ほんと澄ました顔でよくもしゃあしゃあと………外面じゃなくて、霊能者を名乗って土御門に居る時の顔を出せばまだ、マシじゃないのか?
まあ、あれはあれで、内面をさらけ出しすぎというか欲望に忠実と言うか…姉の威厳とか、大人の美人の余裕とかそんなものぶっとんでるから、ここに居る雪ノ下を含め、卒倒するぐらいびっくりするだろうが……。
いや、それはそれで俺が困る。本心かどうかわからんが、あの件で迫られるのは勘弁してほしい。
「陽乃さん、その位にしては?」
葉山は苦笑しながら陽乃さんを窘める。
「隼人、その位ってなーに?そうだ。私もお昼、まだだから、ご一緒させてもらうね」
陽乃さんは葉山を顔はにこやかだが一瞬冷めた目で一瞥してから、笑顔を振りまきながら、隣の二人席をくっ付け俺の隣に座る。
雪ノ下は憮然と、由比ヶ浜と葉山は苦笑していた。
「比企谷君、ほんと久しぶりね。元気だった?」
陽乃さんはお決まりのスマイルでそういいつつ、俺の頬を突っついて、体を寄せてくる。
あの、いろいろ勘弁してください。冗談や悪戯でやってるのだろうが、俺も一応男なんで……
雪ノ下は氷柱のような視線を俺に浴びせ、由比ヶ浜は戸惑った表情をする。
雪ノ下?なぜ俺?俺は何もしてないぞ。陽乃さんを如何にかしてくれ、自分の姉だろ?
「あの雪ノ下さん?……、そっちに座ればいいのでは?」
「比企谷君と話すの久々だしね。お姉さんとお話しするのは嫌なのかな?」
俺に体をよせ上目使いをする陽乃さん。そうしつつも、雪ノ下と由比ヶ浜の顔をチラチラと見ていた。
くそ、俺を使って面白がってるなこれ。
「……ちょっとトイレに。葉山。すまんがタラコスパ頼んでおいてくれ」
俺はそう言って強引に席を立ち、店を出て、モールのトイレへと行く。
(なんなんだ。陽乃さんは、雪ノ下を構いに来たのはわかるが、俺をダシに使うのはやめてほしい。まあここで、土御門や、結婚がどうのこうのと出さないだけましか。千葉に居る限りは外面仮面を通そうとするだろう。今は雪ノ下も葉山も由比ヶ浜も居ることだろうしな。葉山の前でそれを言われると俺がGS関係者だとバレるだろうし。その辺は流石に陽乃さんも考慮してくれるだろう。あの場はのらりくらりと無難な対応をし、さっさと飯食ってお別れした方がいいようだな)
俺がモールの男子トイレを出ると……
陽乃さんが大通りの柱の前で立って待っていた。
「八幡遅ーい。折角会いに来たのに。ガハマちゃんとデートなんて浮気だぞ」
ワザとらしい、ふくれっ面の陽乃さん
「……外面仮面はどうしたんですか?雪ノ下さん。それとも土御門さんとお呼びすれば」
俺は皮肉たっぷりに言ってやった。
「陽乃よ。は・る・の!」
「俺は比企谷でお願いします」
「八幡の意地悪ー」
そう言って俺の腕を強引にとり抱き寄せる陽乃さん。
勘弁してください。俺はこう見ても健全な男子高校生なんですよ。
性格はさておき、見た目とスタイルはモデル顔負けなんですから、いろいろと柔らかいものが当たってますよ。その俺もいろいろと緊張したりしちゃうわけで……
「あの、勘弁してください。雪ノ下に会いに来たんじゃないんですか?」
「雪乃ちゃんに会いに来たってのは嘘。実はさっき妹ちゃんに電話して、八幡がここに居るって教えて貰ったの」
おーーい。小町さん?何やっちゃってくれてるんだ?俺と由比ヶ浜を置いてけぼりにしておいて、なんで、この人をここに呼んじゃうかな?わけがわからん。八幡的に超ポイント低いんですけど。
「はぁ、で、俺に何の用事ですか?電話すればいいじゃないですか?」
「事前連絡したら、八幡はツンデレさんだから、何だかんだとお姉さんとのデート断るでしょ?だから、現場に乗り込んで、無理やり連れ出すの」
ツンデレ……って誰がデレた!いや、今の状況では顔に出てそうだな…其れよりもなにそれ?どこの工作員よ。それって誘拐って言うんじゃないでしょうか?
「今日は、由比ヶ浜と小町ともう一人とで、買い物に来てたんですよ。雪ノ下さんもわかってると思いますが、雪ノ下の誕生日プレゼントを買いにですよ」
「やっぱりね。さっき雪乃ちゃん。あのラッピングされた袋と箱、大事そうにしてたものね。それで、比企谷君達は偶然雪乃ちゃんと隼人にここで会ったって感じかな?」
陽乃さんは八幡呼びをやめ、こんなことを言ってきた。
「わかってたんなら、なんであんな事を言ったんですか?」
「面白そうだったから?」
あっけらかんと言う陽乃さん。
この人はこういう人だった。
「はぁ」
俺は盛大にため息を吐く。
「比企谷君はあれかな?女たらしなのかな?こんな魅力的なフィアンセがいるのに、雪乃ちゃんとガハマちゃんをデレデレにさせちゃって」
「はぁ?誰が誰をデレデレにしたんですか?というか、誰がフィアンセですか?」
「……まあ、いいわ。……比企谷君。11月に会ったときと雰囲気が違うわね。……また成長した?」
陽乃さんは真面目な顔になる。
「まあ、誰かさんに盛大に負けて、京都でも全然役立たずだったんでね。それなりに修行しましたよ。ちょっとはあの時よりは強くなったつもりですよ」
「うーん。私もうかうかしてられないわ。それはそうと、今からお姉さんとデートしましょ八幡」
陽乃さんは真面目な表情から、一気に崩し、また八幡呼びを始める。
「なんでそんな話になるんですか?」
「だって、もう八幡暇でしょ?ガハマちゃん達と雪乃ちゃんのプレゼントを買い終わったし、しかも、もうプレゼントは雪乃ちゃんに渡したでしょ?だったら、もう後はお姉さんとデートしか残ってないでしょ?」
なぜそうなる?
「……この後仕事が」
「無いって妹ちゃんが言ってたわよ」
笑顔の陽乃さん。
なにこれ……逃げ道がないんですけど。
そんな時不意に携帯が鳴る。
左腕は陽乃さんに取られたままだ。ちょっと腕を外してほしいと視線を送ったのだが、返ってきた視線は『嫌よ』という意思がありありと伝わってきた。
俺はため息を吐き、仕方なくその状態で電話を取る。
相手は美神さんだ。緊急要件かな?それなら助かる。デートせずに済むからだ。
「明けまして、おめで……」
『比企谷君!今、実家!?』
「出かけてますが、千葉に居ますよ」
『よかった。比企谷君ちょっと個人的に助けてほしい事があるの!そのアンチラとアジラがそっち逃げたのよ、予想進路は東京湾を渡って千葉に!』
「ちょ、待ってください。それって六道冥子さんの十二神将じゃ……」
『そうなの、冥子と六道おば様が、家の実家に遊びに来て、間違って冥子とおば様が日本酒飲んでぶっ倒れちゃって、式神たちも酔っぱらってコントロールが効かなくなって逃げちゃったの!あんなのが暴れたら、とんでもない事になるわ!!事前に7体は確保したのだけど、後の5体は、今、ママが1体、唐巣先生に頼んでもう1体追ってるわ。私も今インダラを追ってるのよ。早いったらありゃしない。タマモも居るんでしょ?二人で何とかしてーーー!!」
何それ、なんでそんな事になってるの?十二神将が暴れるとか……街が壊滅するんじゃ?
美神さん相当焦ってるな、半分泣きが入ってたよな。冥子さんが関わるといっつもこれだ。
「ちょっ……」
『頼んだわよ!!』
そう言って美神さんは通話を切る。
さっきまで緊急要件で陽乃さんのデートを断れるとホッとしてたのだが、流石にこれはやばいな。あの十二神将を相手にしないといけないのか……どっちもどっちか。
「ふふーーん。お困りのようね。はーちまん」
不敵な笑みを俺の腕をとりながら、湛える陽乃さん。どうやら、電話の内容が聞こえていたようだ。
これは除霊とかじゃなくて、多分GS協会に言えない個人的な依頼のハズ。
だってそうだろ。GS協会理事長の娘の式神が暴走して、四方八方に逃げたんだから!
世間に広まったら、間違いなく不祥事として叩かれる。
まあ、六道家からは報酬は出るだろうけど……
被害が出ない内に秘密裏に何とかしろと言う事だろう。きっと。
相手はあの十二神将だぞ!しかも二体。どうやら本能的に十二支の方角に逃げてるようだが……
だから、アンチラとアジラは東京から東、東南方面へ逃げてるのか。
「あのー、その手伝っていただけますか、その協会とか関係なしに個人的になんですが」
1人じゃ流石に厳しい。同じ式神使いである陽乃さんが居れば心強いのだが。
「どうしようかな~~」
「あのー」
「せっかく、今日デートしようと思ったのになーー」
陽乃さんはチラッと俺の方を上目使いで見る。
「その、きっとその埋め合わせはしますんで」
「じゃあ、お姉さんと一泊お泊りデート!」
おいーーー!!それって既成事実を作られるのでは!?俺の貞操の危機なのでは!?
「その流石に未成年ですんで」
「八幡は真面目さんなんだから、じゃあ、お姉さんと温泉旅行の旅!」
おいーーー!!それっていっしょじゃねーーか!!
「さっきと一緒なんですが?…全く無関係ってわけでもないでしょ?千葉にも被害が出るかもしれないし、何とかなりませんか?」
「えーーー、それって、GS協会通してないんでしょ?いくら、逃げた式神の回収といえども、一般市民に脅威となる存在なら、事前公表する決まりよね。それを個人的にって?これってGS協会上層部の癒着とかそんなんじゃないかしら?」
まじで、完全に足元を見られてる。俺も完全にとばっちりなんですが!誰だよ!!六道親子に酒飲ましたのは!!多分、家(事務所)の身内の不始末だよな。くそっ!背に腹は代えられないか。
「もう、それでいいです」
「やたー!」
嬉しそうにする陽乃さん。
いやその、まじで、俺を婿に狙ってる?
修羅場は一応回避できたけど、別の修羅場が><
雪ノ下母は一応次回ちょろっと出ます。