やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
二次試験ですね。
午後からの二次試験が始まる。
ルールは実戦形式で受験生同士の一対一での試合だ。
武道場の特殊な結界の中で行われる。直接の物理攻撃が無効になる結界だ。
霊気が通った霊具や霊力でしか相手にダメージが与えられないのだ。
通常の銃弾やミサイルは効果を表さないらしい。まあ、それでも、過度な火力だと結界は破けるらしい。例えば、対戦車ライフルとか……まあ、そんなもの持ってきた時点で銃刀法違反でしょっ引かれるんだがな。
二次試験合格者は84名4ブロックトーナメント制だ。広々とした武道場の4面を使いA~Dブロックそれぞれで試合が行われる。
最大7試合、シードに選ばれれば6試合勝てば優勝だ。
合格ラインはベスト16まで勝ち上がること。最大4試合。シードに選ばれれば3試合勝てば、晴れてGS資格免許がもらえるのだ。
因みに俺はDブロックのシードに選ばれた。なぜシードに選ばれたのかはわからないがラッキーだ。3試合勝てばGS免許取得と面目が立つ。
俺はDブロックの試合場に足を運んでいると不意に後ろから声をかけられる。
「あれ~、比企谷くんじゃん。やっほー」
何処かで聞いた声だが、俺に美神さんや横島師匠の関係者以外GS関係者は知らないはずだ。
ましては同じ受験生などには……
そう思いながら振り返ると、そこには純白の式服(陰陽師が着る服)を着た美女が人懐っこい笑顔をこちらに向けていた。
「………ゆ…雪ノ下さん?」
何時ものおしゃれな服装とは異なり厳かな雰囲気を醸し出していたため、一瞬誰だかわからなかったが、彼女は雪ノ下陽乃。雪ノ下雪乃の姉だ。理系大学の2年で俺が通う総武高校のOBでもある。そして地元に多大な影響力を持つ雪ノ下建設の社長令嬢だ。なんだかんだと、雪ノ下(雪乃)との絡みで、数度会っていた。
美人で人懐っこく、誰にでも好かれ、文武両道、大凡すべての理想を詰め込んだかのような女性だ。
ただ俺はこの人が苦手だ。この人懐っこい笑顔は裏の顔を隠すための外面の仮面だ。腹の中では何を考えているのかさっぱりわからない。笑顔の奥の目には、人を観察し人の思考を読み。まるで人を飲み込むような仄暗い光が射しているように見える。
俺の霊感もこの人に会う度に危険信号を発していた。
しかしなぜここに………いや、その格好でここに居るということは……まさか……
「比企谷くんって霊能者の家系の人だったっけ?あれ?おっかしいな~」
「違いますよ。たまたま、縁があってここに居るだけです。雪ノ下さんこそ何でここに?」
……やはりか、俺の家の事は全部調べ済みってことか……まあ、ヤンデレシスコンのこの人の事だ。雪ノ下(雪乃)の関係している人間は全員調べてるだろう。しかし、よく俺のバイト先がバレなかったな………
「え?わたし?ひ・み・つ!」
陽乃さんは俺の唇に人差し指を当てる仕草をする。
一々あざといんだよ。
『Aグループ二回戦第一試合12番・38番前に』
「あっ、私呼ばれちゃった。また後でね~比企谷くん。このことみっちり聞いちゃうんだから」
陽乃さんはウインクしながら、試合場へ掛けていった。
『Aグループ二回戦第一試合12番、土御門陰陽道所属、土御門陽乃。対、38番、丸中霊能専門学校所属、山田太郎』
会場は土御門の名前が呼ばれざわめく。
な!?土御門陽乃だと……どういう事だ。
それだけでも、俺は驚いたのだが試合内容にさらに驚愕だった。
試合開始からたった4秒だ。4秒で試合が終了した。
会場は驚きやら感嘆の声が上がる。
相手は氷漬けになり、戦闘不能で医療室行きだ。
なんて力だ。しかも容赦がない。
しかし、同じグループで無くてよかったな……あれに勝てる気がしない。
美神さんが要注意と言っていただけはある。
『Dグループ二回戦第二試合245番・336番前に』
336番、俺の番か……今は陽乃さんの事は忘れよう。目の前の試合に集中だ。
『Dグループ二回戦第二試合245番金成木GS専門学校所属、酒田金太。対、美神令子除霊事務所所属、比企谷八幡』
会場が陽乃さんの時と同様、ざわめきが起こる。
会場のあちこちから、「美神令子の弟子かよ」「あの冴えない奴が美神令子の弟子?」「さっきの霊力試験ですごかった奴か」などと聞こえてきた。
あれ?もしかして俺って注目されてる?そりゃそうだよな。よく考えなくてもそうだ。普段実感わかないが、日本最高峰のGSのあの美神令子の弟子なんだよな。まったくもって実感わかないが。実際は横島師匠の弟子だし……まじ無様な試合でもしたら美神さんにぶっ殺されるかも………なんか緊張してきたぞ。
『試合開始!』
げっ、考えてる間に始まった。えーっと。ルール的には100万までの札が使えるけど、使ったらバイト代から削られそうだしな。
あんま得意じゃないけど………
俺は腰に吊り下げている神通棍を手にとり霊力を注ぎ込み起動させ、一気に相手に迫る。
相手は慌てふためいて、なんか爆破の破魔札を投げようとしていたが遅い。
俺は相手の後ろに回り込み、構えたまま、神通棍を相手の首筋に突きつける。
「ま、参った」
相手はあっさり降参する。
周りで歓声が上がる。
なにこの手応えのなさ、この前のブサイクD級妖怪より弱いんだけど。
俺は釈然としないまま一礼して、Dブロック試合場を後にする。
眼の前には陽乃さんが立っていた。
「やるじゃん比企谷くん。でも、君があの美神令子の弟子ね。どうやってなったの?お姉さんの情報網ではそんな話はなかったのにな~」
やっぱり調べてやがったか……、しかし何で俺が美神さんとこでバイトしていたことがバレなかったんだ?
「知りませんよ。ところで、雪ノ下さんが土御門ってどういうことですか?」
「え?わたし?そうね。隠すようなことじゃないし。雪ノ下は土御門の関東における遠い分家筋なの。稀に私みたいなのが出るのよね。それで、陰陽師を名乗る時は土御門なのよ。この服ダサイから嫌いなんだけど。土御門の伝統だからってね」
そういう事か……遠い分家筋の雪ノ下家自身陰陽術を脈々と継いでるわけではないと言うことか……分家筋で才能のある人間が現れると本家が育てるわけか。
「雪ノ下は……」
「もちろん。雪乃ちゃんはこの事は知ってるわよ。あの子にとっては嫉妬の対象にしかならないけどね。安心して、雪乃ちゃんは違うわよ。全然才能がないから」
陽乃さんはあっけらかんと言う。
「…………」
「ところで、どうやってその力を得たの?生まれつき?それに美神令子の弟子にどうやってなったの?お姉さん知りたいな~」
「さあ?」
「あ~あ、そんな連れないこと言うんだ。いいんだ。雪乃ちゃんに言いつけてやる。比企谷くんのことだから、雪乃ちゃんにこのこと秘密にしてるんでしょ?」
陽乃さんは外面の笑顔でこんな事を言ってくる。
くそ、この人のペースだなこれは……
「はぁ、わかりましたよ。偶然後天的に霊能力が発現したんですよ。美神さん所にお世話になったのも偶然が重なった結果です。正確には俺は横島忠夫の弟子ですけど」
「ぷっ!横島忠夫?あのセクハラで有名な?確か彼も美神令子の弟子だったわね。力量としてはあまり業界では有名じゃないけど」
笑いながら言われたぞ。やっぱそうなんだ。スケベで有名なんだな横島師匠。弟子として泣けてくる。
しかし、力量で有名じゃないってどういう事だ?横島師匠はかなり強いと思うぞ。
なんだかんだって、オカルトGメンの西条さんや美神美智恵さんからも頼られているようだし。A級ランクの小笠原エミさんだって、仕事手伝わすために、たまに色気使って横島師匠を連れて行くぞ。
『Aグループ三回戦第一試合 12番、45番前へ』
「ああ、もう呼ばれちゃった。比企谷くん、準決勝か決勝で会いましょうね」
陽乃さんは笑顔で手を振って行ってしまった。
『Dグループ三回戦第一試合 336番 442番前に』
今は考えても仕方がない。眼の前の試合に集中だ。
遂に出ちゃいました。はるのん。
色々と謎が多い横島くんですがそのうちにということで………お待ち下さい。