やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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中編の続きです。


(62)日常系幽霊バトル?(後)

『来るー、来ない、来るー、来ない、来るー、来ない………やっぱり、来ないんだ!!うああああああ!!!!』

 

花を毟り取った手を止め、突然叫び出す半透明の白いドレスの女性。

そして、持っていた花を放り投げ、泣き叫ぶその顔が見える!

 

 

「「「平塚先生!?」」」

俺達3人、同時に声を上げる。

そう、この半透明の白いドレスの女性は平塚先生そっくり、いやそのものだった。

 

「ひ、ヒッキー、先生が幽霊って、先生死んじゃったの?」

 

「いえ、先週からこの事件は起きてるわ。それに平塚先生は今日も、職員室に居たわよ」

 

「……生霊だ。俺も初めて体験するが、たぶん生霊だ」

 

「生霊?」

 

「ああ、生きてる間にも強い思念を持ち、何かに執着を持ったり怨念を持つと、霊魂が肉体から離れ勝手に行動する。要するに幽体離脱の夢遊病みたいなものだ。後悔の念が強い死期が近い人間だとかが、なりやすい現象なのだがな。なぜ平塚先生が?」

 

「生きてるんだ先生」

ホッとした表情をする由比ヶ浜。

 

「まあ、そうなんだが、困ったぞ」

厄介だぞこれは、普通に幽霊を除霊するよりずっと厄介だ。

この生霊を払ったりすると、もちろん霊魂だから、平塚先生も死んでしまう。

このまま、ほったらかしにしても、繰り返しこんなことを起こすと、霊魂と肉体が離れ離れになって、ついには戻れなくなり、死んでしまうのだ。

解決するには生霊となった霊魂を穏便に肉体に戻す必要がある。無理に戻したところで、また同じ事が起きる。

穏便に戻すとは、その強い思念や執着や怨念などを晴らしてあげることだ。

 

「そう、幽霊じゃないのね。比企谷君、それで困ったとはどういうことかしら?」

雪ノ下はホッとした表情をし、俺に質問をする。

 

「平塚先生は生きてるが、このまま放っておくと死んでしまう。しかし、通常の除霊方法は使えない。先生は何かに極度な執着や思念を抱いて生霊となった。それを解消させてあげるしかない」

 

「それ、わかっちゃったかも」

由比ヶ浜は苦笑いしていた。

なぜ、そこで苦笑?

 

そこで、白いドレスの女性改め、平塚先生の生霊は俺達の事に気が付き、こちらを振り向く。

「ひ、比企谷君、見つかったわ」

 

「大丈夫だ。何もしないはずだ。生霊状態の平塚先生は俺達の事を忘れているはずだ。執着した何かとそれに携わる何かだけを記憶してるだけになってるはず。一応だが、雪ノ下と由比ヶ浜は下がってろ」

平塚先生の生霊は俺達に近づいてくる。

 

『ダーリン!!やっと来てくれたのね!!嬉しい!!』

ドレス姿の平塚先生の生霊はそう言って、俺にいきなり抱き着いてきたのだ。

 

おお!?ちょっと、やめてくれませんかね!あの生霊なのに、なぜかボリュームのある2つの柔らかい何かが俺に当たってるんですけど!あれ?なにこれ!?あれ?

 

「ヒッキー!何赤くなってるの!ヒッキーのエッチ!!」

「大きい方がいいのね。破廉恥谷君!!」

何二人とも怒ってるんだよ!

これは、致し方が無い事なんだ。生霊の平塚先生を除霊するわけにもいかないしな!

害はないんだ。今は好きにさせておかないと……生霊でも柔らかいなとか思ってないぞ!!

 

「と、とりあえずだな。平塚先生の本体を見つけないと!近くに居るはずだ。探してくれ!」

俺は平塚先生の柔らかい……ゲフンゲフン、生霊に抱き着かれながら、2人に指示を出す。

 

「平塚先生は今日は宿直のハズよ!スケベ谷君!!」

 

「とりあえず、平塚先生の本体の状態を見てきてくれ!」

 

「う~~、ヒッキーのエッチ!平塚先生の幽霊と2人きりで何をするつもりなの!!」

 

「馬鹿だろ!!何もするわけないだろ!!」

幽霊とどうにかしようと思うなんて、うちの師匠ぐらいだ!!

抱きつかれて気持ちいとかは、俺の本心じゃないんだ!!きっとこれも横島師匠の思念が乗り移って……あれ?もしや

 

 

由比ヶ浜と雪ノ下は何故か怒り顔で宿直室にかけて行く。

 

 

『ダーリン!ダーリン!もう離さない!!』

 

「あのー、俺はそのダーリンさんじゃないんですが?」

強く抱きしめるのをやめてくれませんかね。俺も男なんで……って!!

おいーー、俺はあの師匠と同じなのか同じなのか!!

俺という人間は、生霊にアレしてしまうような人間だったのか!!

やめてくれーーーー!!俺のアイデンティティが崩壊寸前に!!

 

 

そこで由比ヶ浜から連絡が来る。俺はスマホを何とか取り出し耳に当てる。

『ヒッキー!平塚先生、宿直室に居た!』

 

「どんな状況だ!?」

 

『なんか、酒瓶を持って、白目剥いて倒れてる。目の前に、あーーー、この前、没収された恋愛特集の雑誌だ!なんかぐしゃぐしゃに!!』

……相当荒れてたんだな。十代向けの恋愛特集の雑誌の占いかなんか見て、絶望的な結果が出たんだろうたぶん。

 

「他にはないか!?」

 

『ゆきのん、平塚先生何か握りしめてる。これ何んだろう?』

『チーズアンシメサババーガーって書いてるわ。物凄い異様な臭いがするのだけど』

 

「…………とりあえずわかった」

犯人はわかった。あいつだ。あいつが闇市かなんかで平塚先生に売りつけてこんなことに……

それは後だ。とりあえずこの状況を何とかしなければ。

 

 

雪ノ下と由比ヶ浜が息を切らして、戻ってきた。

 

「由比ヶ浜……平塚先生はやっぱり、恋愛事でこんなことに!?」

俺は平塚先生の生霊に今は前から抱き着かれた状態で、由比ヶ浜に問う。

俺のこんな状態に、雪ノ下は凍り付くような視線で、由比ヶ浜はぷりぷりとしていた。

 

「そうだよ!!ヒッキーの鈍感!!唐変木!!」

なんで、いちいちディスられるんだ俺は!

まあ、そうと決まれば!!

 

「どうする気、年増好谷君」

おい雪ノ下、それは平塚先生に対しては絶対に言うなよ。

 

「元凶に解決してもらう。こうするんだ」

俺はスマホを取り出し、とあるところに電話をする。

 

「もしもし、俺です。今学校なんですが、女子更衣室に幽霊が立てこもって困ってるんです。助けてくれませんか?」

 

『うわーーーはっはーーーー!!でかした八幡!今行く!俺が行くまでじっとしてろよ!!今行くーーー下着姿の女子高生!!しり、ちち、ふとももーーーー!!』

電話の向こうでは、相手の男はとんでもなくテンションの高い声でこんな下品な事を叫んでいた。

 

「ヒッキーは、あんなにならないでね」

「……それには激しく同意するわ」

何故か今迄怒っていた二人は、哀愁の目で俺を見つめていた。

 

 

5分後

 

 

「下着姿のおねーーーちゃん達!!横島が来ましたよーーーー!!………八幡、俺帰るわ。仕事忘れてた」

窓から、飛び入って来る横島師匠は始めこそテンションが滅茶苦茶高かったが、平塚先生の生霊に抱きしめられる俺の姿を見て……一気に青ざめ、帰ろうとする。

 

「逃がさん!」

俺は対師匠用の罠を張っていたのだ。

そして、ターゲットは既に俺の罠の中に、呪縛ロープに足を取られ、対横島専用結界陣が発動する。暴れ出す師匠を俺のダーク・アンド・ダーククラウドで絡めとり大人しくさせた。

 

「平塚先生、これが本物のダーリンさんですよ!」

 

『ダーリンが二人?いや、あの獣のような動きと、顔面にスケベが滲みだしてる顔!!本物のダーリン!!』

 

俺は解放されたのと同時に、素早く結界を解き、横島師匠を平塚先生の生霊に差し出した。

 

「ははははちまーーーん!何をする!!」

平塚先生の生霊に抱き着かれる横島師匠。

 

「さあ、吐け!あんた、平塚先生のデートすっぽかしただろう?約束の時間は19時じゃないか?」

 

「なななぜそれを!!」

 

「あんたがすっぽかしたせいで、平塚先生がこんなことに、責任を取れ!!」

 

「八幡?なんか怒ってないか?」

 

「ああ、俺は危うく、あんたと同じ道に、外道に成り果てそうになったんでな!自分に対しての怒りだ!」

 

「し、仕方なかったんや!!デートの日、何故か美神さんにバレて!す巻きに!!」

 

「言い訳はいい、責任を取れ!生霊となった平塚先生を一晩中慰めてやれ!!」

 

「八幡、いつになく真剣に……冗談だよな!?」

 

「………それでだ。元に戻った後、平塚先生をあと腐れなく振る。いいですね師匠。平塚先生は遊びじゃすまないんです。ちゃんと振るんですよ!」

俺は真剣な顔をし、横島師匠に話す。横島師匠は絶対平塚先生とはゴールしないだろう。このスケベな行動は多分、恋人を無念にも無くしたことの反動なのだろう。しかし、それは平塚先生にはあまりにも酷だ。平塚先生をあと腐れなく振って上げて、新たな恋に生きてほしい。

 

「わかった八幡。……ん、おっぱいが!ああ!やっぱりいいないいな!暖かいな、柔らかいな!!」

 

「…………」

この人本当に生霊でも見境が無い。俺はここまで堕ちてないよな。

 

俺はそんな師匠をほったらかしにし、呆れた顔をした雪ノ下と由比ヶ浜と共にこの場を去る。

倒れてるだろう材木座と一色を介抱した後、2人には、あれは誰かの悪戯だった事を伝える。

その犯人はもう二度とこんなことをしない代わりに、公表しない事を約束させたと嘘をつく。

 

言えないだろ?幽霊の正体が、恋焦がれた、三十路の教師の生霊だったって……

あまりにも平塚先生が不憫だ。

今回の事は俺の身内(横島師匠)と知り合いの不始末らしいからな。

この幽霊騒ぎはこれ以降起きなかった。

 

 

俺は数日後、美神令子除霊事務所とも取引がある。オカルト商品を扱う小売業を営む厄珍堂に行き、主人の厄珍にカマを掛け真相を聞き出す。

この小柄な怪しいおっさんが、平塚先生が握りしめていたチーズアンシメサババーガーをかつて売っていたことを知っていた。

最初は、幽体離脱するぐらいの絶望的な不味さで、そのバーガーを幽体離脱バーガーとして売っていたのだが、人によって効果はランダムな事で、徐々に売れなくなり、在庫ばかりが残ったとか。それで次には、合法ドラッグと同じ扱いで、幽体離脱するぐらい気持ちよくなるバーガーとして、一般消費者向けに販売したのだ。しかし、霊能も何もない一般人が幽体離脱に成功する確率は少なく、平塚先生のように、知らず知らずのうちに生霊化なんていう事故もあり、発売中止に追い込まれていた商品だ。

多量に余った在庫の処分に困り、闇市かなんかに下取りしてもらったのだろう。

そのチーズアンシメサババーガーのキャッチフレーズはこうだ。【恋に破れたあなたも、このバーガー一つで忘れることが出来る魔法のバーガー】

怪しすぎるだろう。

それを偶然手に入れた平塚先生が、横島師匠との恋に敗れたと思い、学校で夜な夜なそのバーガーを……そして、生霊化……

 

まあ、一応注意はしたが、あのおっさんは懲りないだろう。俺も最初の頃、このおっさんにお試し商品だとかで、オカルトアイテムを渡され、ひどい目に遭った口だ。

 

俺はオカルトGメンの西条さんにもその事を報告すると、厄珍堂は3か月の営業停止処分となった。

自業自得だ。

これに懲りて、あくどい商売はやめるこったな。

 

 

 

あれから一週間後、俺は平塚先生に屋上に呼ばれた。

多分、横島師匠にキッパリと振られたのだろう。

俺に声を掛けてきた平塚先生の声は震えていたからな。

 

まあ、殴られる位良いだろう。

泣きたかったら、俺の背中なり、胸ぐらいは貸そう。

 

そう決心して、俺は屋上に上がる。

そして、俯き加減の平塚先生の元に歩み寄る。

 

「比企谷……」

 

「先生」

 

「……どうしよう比企谷?」

 

「どうしましたか平塚先生」

 

「あのな、聞いてくれ比企谷。横島さんに呼ばれて、人気のないビルの屋上に連れてかれたんだ」

平塚先生は顔を赤らめ、もじもじしながら話し出す。

 

「はぁ」

なんか雲行きが怪しいぞ。

 

「それでな、いきなり横島さんに、おしりを触られて、スカートを捲られ、それから胸をもまれたんだ!」

 

「………」

……おいーーーーー!!何やってるんだあの師匠は!!

振るんじゃないのかよ!なぜ痴漢行為を!?

 

「恥かしくて、思わず叫んで逃げてしまったんだが………アレはあの人なりの愛情表現ではないだろうか?」

 

「はぁ?」

何言ってんだこの人も。

 

「行き遅れた私のような女に、あんな野獣のようなスケベな目で見て、触ってきたんだ。私の体に興味深々だと言う事だろ?」

何、恥かしそうに乙女チックにそんな事を言ってるんだ?内容は最低だけどな!

 

「………」

やばい、この人も相当拗らせてるぞ。

 

「比企谷!やってやるぞ!横島さんにどんな性癖があろうと!答えてあげるのが年上としての包容力というものだ!」

おい、生徒になんてことを話すんだこの女教師は。

 

 

 

 

俺はこの後、直ぐに横島師匠に電話をする。

「師匠、平塚先生を振ったんじゃないんですか?」

 

『振ったぞ』

 

「痴漢したの間違いじゃないんですか?」

 

『まあ、そうとも言う。アレをすると100%振られる!!』

 

「………あの、ちゃんと言葉で振って上げて下さい。超勘違いしてますよ平塚先生」

 

『まじで……』

どうやら、横島師匠の100%振られる方法は平塚先生には通じなかった。

っておい、あの人、振られてないところを見たことが無いんだが!

 

 

 




まあ、この落ちがしたくて書いたものでした。

またしても平塚先生ごめんなさい。
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