やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

アップしようとしてたら寝落ちしてました><

新章です。





【七章】乙女たちの攻防編
(65)悩める乙女たち


奉仕部の部室では、雪ノ下が窓際の席で猫のブックカバーをした本を綺麗な姿勢で読み、その横で、教科書やら参考書と格闘してる由比ヶ浜、そして、廊下側の席で本を読む俺。

この頃のいつもの風景が、今日も時間と共に流れる。

 

しかし、不意に由比ヶ浜が問題を解く手を止め。

こんなことを疑いの目を向けながら聞いてくる。

「ヒッキー、あたし達に隠してる事ない?」

 

「はぁ?別にないが?」

何言ってんだ?身に覚えがないな。特にお前らが関わるような事で、隠し事とかは無いはずだ。

GS関係とか、横島師匠からもらったエッチ本の隠し場所とかは話せないだろ?……も、もしかして、エッチな本の嗜好が巨乳に偏ってる事がバレたとか!?いや、違うんだ。それはな横島師匠の趣味というかなんて言うか、……はい、頂いたのはそっち系ばかりでした。師匠にどっちがいいと聞かれたので、その大きい方が良いですと答えてしまいました。……いや、バレてないはずだ。ちゃんとクローゼットの奥に札を張って封印したはずだ。霊能が無い人間がそれを見ても、その辺に転がってる石ころみたいに、興味が無いものに映るはず。小町にもバレてないはずだ。俺の自作の札は完璧のハズ!?

 

「本当に?」

ジトっとした目で俺を見てくる。

 

「い、いや、何の事だ?」

その目は、バレてる!?由比ヶ浜のが気になるとかそんなんじゃないんだ!

俺も一応健全な、普通の男子高校生なんだ!それぐらいは許してほしい!

 

「あー、怪しい。目をそらしたし!」

 

「いやな、そのお前のスキンシップが悪いというかだな。そのあれだ」

 

「あたしのスキンシップ?何の事?」

 

「違うのか?」

そうか、巨乳本の事じゃないのか、そうだよな。小町にもまだバレてないからな。じゃなんだ?

 

「………何が違うのかしら?スケベ谷君?」

雪ノ下が由比ヶ浜の向こうから、一瞬自分の胸元を見てから、凍てつくような視線で俺を見据えてくる。どうやら、雪ノ下には俺の意図が伝わってしまったようだ。

墓穴を掘ったとはこの事か……

 

「?…そうじゃなくて、サキサキと何かあったのかな~って、なんかこの頃教室で仲良さげだから」

由比ヶ浜には俺の意図は伝わらなかったようだが、サキサキ…川崎の事か、なんだその事か。

 

「ああ、そう言えばそうか」

こいつらには川崎にGSだって知られた事をまだ、言ってなかったな。近いうちに話そうと思っていたのだが。

 

「そうかって!サキサキと何かあったんだ!」

 

「あったと言えばあったな」

 

「比企谷君……そう、やはりそういう趣味があったのね」

雪ノ下は何故か一人で納得して、俺を睨んでくる。

いや、確かに川崎もその、大きいが、いや、そこじゃないだろ?

 

「う~、ヒッキーの女たらし」

 

「なんでそうなる?いや、確かにお前らに言っとかないといけない事だとは思っていたが、ついな」

 

「あなた、川崎さんと…その、お、お付き合いでもしてるのかしら?」

 

「なんでそうなる?」

 

「違うの?」

 

「はぁ、川崎とは別に付き合ってるわけでも、何でもないが、なんでそんなに気になるんだ?」

 

「部長として、しっかりあなたを管理する責務をおってるのよ。当然交友関係を知っておく必要があるわ」

雪ノ下、そんな責務は無いぞ。お前は俺のかーちゃんか!?

 

「ヒッキーの鈍感!唐変木!」

なぜ俺がディスられるわけ、何これ?

 

「あー、あのな。川崎に俺がGSって知られたんだよ。だからだ」

 

「ヒッキー、そんだけ?」

そんだけって、結構重要な事だぞ由比ヶ浜。

 

「ああ、美神さん知ってるだろ?美神さんの師匠の唐巣神父の教会で川崎がバイトしてたんだよ。それで俺の事がバレた。致し方がないだろ?唐巣神父とは結構交流があるから」

 

「ええええ!?サキサキがGSの事務所でバイト!?サキサキって実は霊能者!?」

「GS事務所での高校生のアルバイトは制限や規則、手続きが厳しいはずよ。よく申請が通ったわね」

由比ヶ浜は大きく驚きながら、雪ノ下は何かを考え込みながら俺に同時に話かけてきた。

 

「川崎は霊能者じゃない」

俺は自分の席を立ち、2人が座る場所まで歩む。

少々声のボリュームを落とし話を続ける。

あまり大きな声で言えない内容だからな。

 

「大っぴらには言えないが、川崎は唐巣神父の昔のクライアントらしくてな、その縁でアルバイトをしてる。その扱いはGS事務所の方ではなく、神父が経営してる教会のほうのアルバイトとしてだ。ちゃんとした事務所なんてものは無い。実質教会がGSの事務所と兼ねてるから、両方の内部的な手伝いをしてるようなものだ。まあ、グレーと言えばグレーだがな」

ふう、ちゃんと言っておかないと、あらぬ誤解を招きかねないからな。

 

「そう。そんな方法が……」

雪ノ下はその話を聞いて、何かをまた考えこむ。

 

「へー、普通の人でもGSのバイトって出来るんだ。で、クライアントって何?」

まあ、出来ることはできるが、雪ノ下の言う通り、普通は難しいぞ。

それと由比ヶ浜、あまりわかってないだろ?

 

「クライアントは、依頼者だとか患者とか客とかの意味で使う言葉だ。本人には言うなよ。昔唐巣神父にGSで世話になったと言う事だ」

GSに世話になると言う事は、そういう目に遭ったと言う事だ。川崎はあまり気にしてないようだが、世間の目というものが、少なからずある。

 

「あっ…ごめんヒッキー。そうなんだサキサキ」

由比ヶ浜もようやく理解してくれたようだ。

 

「つい、最近の話だ。まあ、同業者仲間ってことになるわけだ。だから川崎も俺みたいなのにも声をかけてくれるのだろう」

あんな特殊なバイトで同年代の同業者仲間なんてものは殆どいないはずだ。

 

「う~、なんかそれだけじゃない気がする」

 

「なんだ由比ヶ浜?まだ疑ってるのか?それ以上もそれ以下もないぞ」

 

 

 

そんな時、部室に扉のノックする音が響く。

「どうぞ」

 

「先輩方、こんにちはです」

来訪者は一色だった。

 

「やっはろー、いろはちゃん」

「こんにちは、一色さん」

「うす」

 

「なんですかなんですか?3人集まって、内緒話ですか?」

一色は俺達が集まってる姿を見てこんなことを言ってくる。

 

「ちょっとな」

確かに内緒話だ。一色には話すことができない内容だ。

 

「あはははっ、いろはちゃんは今日は何の用事?もしかしてヒッキー?」

由比ヶ浜は笑って誤魔化し、一色に尋ねる。

それと、用事とヒッキーは同列ではないぞ、由比ヶ浜。

 

「まあ、いいです。先輩、ちょっといいですか?」

俺は一色に腕を取られ引っ張られ、何時もの俺の席に連れ戻される。

由比ヶ浜、お前が言ってた事は正しかった。一色にとって用事とヒッキーは同列だった。そんで今回は残念ながらヒッキーだ。

 

「先輩、私に隠し事してませんか?」

一色は俺の真正面から、真剣なまなざしで小声でこんなことを聞いてくる。

 

「…お前もか、それでなんなんだ?」

 

「ム~、先輩の癖に生意気です」

頬を膨らます一色。

 

「なんだ?」

意味が分からん。

 

 

また、部室の扉をノックする音がした。

新たな来訪者だ。

 

「ちょっといい…かな」

三浦優美子だ。前とは違い攻撃的な感じはしない。

 

「優美子!さっきぶり!」

 

「うん」

それよりも、なんかしおらしいぞ。

 

三浦は雪ノ下と由比ヶ浜の前に椅子を持って行き座る。

「この前は、その、ごめん雪ノ下さん。助かった」

三浦は気恥しそうにしながらも、不器用な謝り方だったが、雪ノ下にちゃんと伝えた。

 

「こちらも言いすぎたと思うわ三浦さん」

雪ノ下もそれを素直に受け取る。

 

由比ヶ浜はその光景を嬉しそうに見ていた。

 

 

「その、また相談、乗ってくれる?」

 

「そのための奉仕部よ。どうぞ」

 

和やかな雰囲気で話が始まる。

 

三浦の依頼とは、やはり葉山の事だった。

その話が始まると、一色は俺の後ろに隠れるようにして、三人の話に聞き耳を立てていた。

 

三浦は恥かしそうに何だかんだと言い訳じみた言い方をしていたが、要するに自分の手作りチョコを、バレンタインに葉山に手渡し、食べさせたいらしいのだ。

しかし、肝心の葉山はバレンタインチョコを誰からも受け取らないスタンスをとってるらしい。

昨年もそうだったようだ。葉山ファンは校内だけでとどまらないしな。多量のチョコをもらったところでその処分に困るのだろう。

そこで、三浦からの依頼というのは、手作りチョコの作り方のレクチャーと、葉山にどうやってその手作りチョコを受け取ってもらうかというものだ。

 

チョコの作り方は、雪ノ下が指導すれば出来るだろう。

問題は葉山にどうやって、三浦の手作りチョコを渡し、食べさせるかだ。

葉山はああ見えて、結構頑固者だ。先の進路問題も頑なにしゃべらなかったしな。

 

三浦と由比ヶ浜、雪ノ下は考え込むが答えが出ない。

 

一色も俺の影で難しい顔をして「そうなんだ。葉山先輩は受け取らないんだ。だったら私にもチャンスが」なんてことを小声でブツブツと言っていた。あの、そう言うのは口に出さないでもらえます?それとも俺を物を考えない単なる風よけの壁とかと思ってる?

 

 

そこで、また奉仕部の部室に扉のノックする音が響く。

次なる来訪者は川崎だった。

今日の奉仕部は大盛況だな。

 

「あーその、比企谷も、この部活だったね。ん?先客が結構いるみたいだけど」

川崎は俺を見つけ、話しかけてくる。

 

「ああ、そうだな」

 

「川崎沙希さん。いいわ。丁度煮詰まっていたのだし、先に話を聞きましょうか?」

 

「いいのかい雪ノ下」

川崎は先に依頼に来てる三浦、そして俺の周りでコソコソとしてる一色を見て、そう言った。

 

「うんいいよサキサキ。優美子もいいよね」

 

「あーしは別に……」

 

「どうぞ、川崎さん」

雪ノ下はそう言って三浦の横に椅子を用意する。

三浦は座っていた椅子を、由比ヶ浜の方へずらす。

どうやら、三浦はそのまま同席するようだ。

 

「あの、うちの妹が、バレンタインチョコを作りたがってるんだけど、その、幼稚園児でも簡単に作れるようなものってないかな」

川崎は依頼内容を雪ノ下達に打ち明ける。

確か一番下の妹にケーちゃんっていう幼稚園児がいたな。

 

「サキサキって料理できるじゃん。お弁当も自分で作ってきてるし、なんで?」

「川崎さん。料理は基本は同じよ。レシピさえ有れば、教えることができるのではないかしら?」

由比ヶ浜と雪ノ下は川崎の依頼内容に対し、疑問を質問で返す。

 

「その、私、小さい子供が喜びそうなものって作ったことが無くて」

川崎はいつものツンとした態度はどこに行ったか、自信なさそうに縮こまっていた。

 

「得意料理は何かしら?」

 

「さ、里芋の煮っころがし」

気恥しそうに答える川崎。

 

「「………」」

由比ヶ浜も雪ノ下も微妙な顔をしている。

確かにかなり家庭的な料理が得意なんだな。若い男の胃袋を掴むのはいいが、流石に幼稚園児が喜びそうなものではない。

……それと、一色何メモしてるんだ?また、女子の素行調査か?

 

「ぷくくくくっ、あんたはおばあちゃんか」

三浦は横で笑う。

 

「ああん!?あんたには聞いてないよ!」

川崎はすかさず三浦に凄む。

「あん!?」

三浦もそんな川崎を睨み返していた。

あの、ここは80年代のヤンキーマンガじゃないんで、そういうのやめてくれませんかね。

 

 

しかし、この依頼を一気に解消できる方法があるな。ちょっと面倒な事にはなるが。

 

「ちょっといいか?三浦の依頼と川崎の依頼も、似たようなものだ。同時に解決する方法があるのだが」

俺は悩める女子たち4人に声を掛ける。

 

「ヒキオ、あーしの依頼とこの女の依頼を一緒にするなし!」

ヒキオって誰だよ。三浦もかなり独創的なあだ名をつける奴だな。

 

「ああん!?だったら、あんたの依頼ってなんなのさ!」

三浦がそう言うこと言うから、川崎も。

 

「そ、それは、その……隼人にチョコを作って食べさせたい……」

なんだ?乙女モードに突入?俯き加減で顔を赤らめる三浦。

 

「は!くだらないね!」

「くだらない!?どっちが!?」

ちょ、マジでやめてね。ここはスケバン同志がメンチ切り合いするような場所じゃないんで。

 

「まあまあ、優美子もサキサキも!」

この頃、こういう揉め事の仲裁に定評がある由比ヶ浜が2人の間に入る。

 

「それで比企谷君、その方法とは何かしら?」

雪ノ下は、少々あきれ顔で俺に話を進める様にうながす。

 

「要するにだ。三浦は葉山のためにチョコを作りたい。川崎も妹さんにチョコを作らせて上げたい。これは、あれだ。チョコを作る料理教室みたいなものを開けば、一緒にできるだろ?誰でも参加できるそう言うイベントを作って、葉山を誘って、そこで食べさせれば、別に葉山もそれほど拒否反応をしめさないだろう。まあ、バレンタインチョコを渡すという行為ではないが、食べさせる事は出来る」

 

「先輩!!天才ですか!!それ頂きます。企画運営は生徒会で!ではでは先輩方、お先に失礼しまーす」

一色はその話の最中いちいち頷き、話し終わった途端に立ち上がり、一人で納得して出て行った。

 

「……なんか、いろはちゃんがやる気満々だね」

「はぁ、まあ、確かにこれですべて解消できるわね。一色さんに材料費の事なども話しておかないといけないわね」

由比ヶ浜は苦笑し、雪ノ下も呆れた風な口調ではあるが、一色を手伝うつもりでいるようだ。

 

「え?なに、比企谷の話で決定なの?あの子は何?」

「……隼人もこれで食べてくれればいいけど」

依頼者の二人の反応は、川崎がキョトンとした表情をし、三浦は心配そうに、両者は一色が出て行った扉を見据えていた。

 

 

まあ、一色に任せればいいか、生徒会で企画運営すると言ってるんだ。俺も面倒が無くていい。

手伝い位はするが、結局は料理教室の先生は雪ノ下先生になるだろう。一番大変なのは雪ノ下だろうな。

 

しかし、数日後一色が企画を完成させ持ってきたものは、かなり大掛かりなものになっていた。

また、あの冬のクリスマスイベントと同じように、千葉市のコミュニティーセンターで料理教室の部屋を借り、三校共同開催することを決めてきたのだ。

一般のお客様もOKって、まあ、完全予約制みたいだが人数制限だけはちゃんと掛けてくれよ。

しかも、俺達奉仕部の役割もしっかり組み込まれてる。まじ、ちゃっかりしてるな一色の奴。

 

三校ってことは六道女学院も、という事はキヌさんも参加だよなこれ。キヌさんとイベントができるのは嬉しいが……

一般……一般か……う、うちの師匠が来るとか無いよな。

嫌な予感がするな。キヌさんの事だから、横島師匠を連れてきちゃうかもしれない。

俺はいろんな意味で他人のフリをしないとな。

しかし、横島師匠の暴走する可能性は高いぞ。女子高生が多数参加することはほぼ確定だからな。

俺は他人のフリをしないといけないし、平塚先生をけしかけるか……いや、それはそれで、罪悪感が。

それ以外にあの人の暴走を一発で止められる人となると、対抗策として美神さんに頼むしかない。

美神さん、こんなイベントには参加してくれないか。

 

もしだ。もし美神さんが参加してくれたとして、あの人もあの人で、わけがわからない方向で暴走したら、どうするんだ?

となると、それを止めるには美智恵さんに?

……美智恵さんと美神さんがケンカしだしたらどうなるんだ?

キヌさんが居るから大丈夫……いや、念のために、2人の師匠である唐巣神父を誘うか。

いやいや、唐巣神父は人が好過ぎて、2人に振り回されるタイプだ。

ちょっと待てよ。横島師匠が来るんだったら、シロも付いてくるんじゃないのか?

そうなったら、あれ?シロは誰が面倒を?

小町にお願いするしかない。となるとタマモも来ちゃうんじゃ…。

 

……非常に嫌な予感しかしない。

あの人たちが来てしまうと、このバレンタインイベント自体が崩壊する恐れがある。

 

横島師匠には来ないようにしてもらうのが一番だな。

先にキヌさんにお願いしておくか。

 

 




俺ガイルイベント恒例のバレンタイン編突入。

次は久々の除霊事務所イベント

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