やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

では、昨日の続きです。



(70)一色いろは事件に巻き込まれる(後)

現場検証を簡単に終わらせた後。

俺は奉仕部の部室に戻る。

 

「随分遅いお戻りで」

「遅ーい!ヒッキー何してたの!?」

案の定だな。雪ノ下も由比ヶ浜もちょっとご立腹であった。仕方がない。大分時間を食ったからな。先にメールしておけばよかったか。

 

「すまん。ちょっとトラブってな。GS関連のアレだ。あんま大っぴらに言えないが、一色が狙われた」

 

「え?いろはちゃんが?大丈夫だったの?」

「という事は学校でかしら?」

 

「ああ、内容は詳しくは話せないが、大したことはなかったし、解決もした。一色も無事だ。念のために一色をこの後、家にまで送り届けるつもりだ」

 

「よかった。無事なんだ」

「そう言う理由なら仕方が無いわ。でも連絡位できるのではないかしら?」

由比ヶ浜はホッとした表情をし、雪ノ下はそう言いつつも俺に紅茶を入れてくれた。

 

「ああ、それは俺の落ち度だな。悪かった。だが、一色にGSだとバレたのが痛い。あいつはこれにかこつけて、無理難題持ってこないとも限らない」

 

「あはははっ、いろはちゃんだったらあるかも」

「……一色さんにも知られたのね」

 

「はぁ、一応しゃべるなとは釘を刺しておいたが……」

あいつがどれだけ真剣に考えてくれてるかだがな。

 

「そうね。ここに来た時にでも、私からも重々話しておくわ」

 

「お手柔らかにな」

俺が言うよりも、雪ノ下が言った方が説得力がありそうだしな。しかも雪ノ下はGSの事務関連や法律関連の勉強もしてるから、その辺も詳しくなっているだろう。

 

 

「でも今回のイベント、みんな喜んでたね。優美子も隼人くんにチョコ食べて貰って嬉しそうだったし、サキサキもケーちゃんも楽しそうだった!」

 

「そうね。今回のイベントの企画運営はしっかりしたものよ。一色さんはよくやってるわ」

雪ノ下は珍しく一色を褒めていた。

 

「そうだな。一色は、こういうのが得意なのかもしれないな」

 

「あなたに先見の明があったと言う事かしら?」

 

「……偶然だ。まさか生徒会選挙の時は、ここまでちゃんと運営できるものとは思ってもみなかった」

俺は一色がここまでやるとは当時は思いもしなかった。

周りの生真面目な生徒会役員が中心に無難な運営をするものだと。

あいつは積極的にいろんなことに関わり、手を出してる。6、7割は自分の欲求のようだがな。

そう言えば、サッカー部のマネージャーの方はちゃんと顔を出してるのだろうか?

 

「意外な拾い物かもしれないわね。彼女」

 

「そうかもな」

 

 

 

 

「ヒッキー……あ、明日って空いてたりする?」

その余韻に浸ったように沈黙が訪れた後、由比ヶ浜が言い難そうに俺に切り出した。

 

「………」

由比ヶ浜の言動で、何故か雪ノ下が不安そうな顔をし、何か言いたげにしていたのだが、口をつぐむ。

 

「明日か。仕事は夕方からだったんだが、この一色の件を事務所に報告をしないといけないからな。下手をすると、一色を送った後、その足で東京の事務所に行って、そのまま泊りという事もあるかもしれないな」

 

「そ、そなんだ」

 

「まあ、朝には一度家に戻る予定にはしてるが、何かあるのか?」

 

「その、大したことないというか、大したことでもあるというか……」

由比ヶ浜は先ほど同様、言い難そうにしていた。

なんなんだ?その言い回しは、結局は重要っていう事だろ?

 

「まあ、昼にちょっとくらいは時間は作れると思うが」

 

「ほんと!?」

由比ヶ浜の表情は明るくなる。

 

「確証はないが、なるべく空ける」

 

「うん!明日朝に電話するね……ね、ゆきのんも……」

 

「!……私は………その……」

由比ヶ浜に話を振られた雪ノ下はかなり動揺しているように見える。

 

「なんだ?雪ノ下も何かあるのか?」

 

「そうだよ。ヒッキー。ゆきのんも。行こうゆきのん。じゃないと……」

なんだ?よくわからないが……この二人の間の微妙な空気感は?

 

 

その時だ。奉仕部の扉が勢いよく一気に開き放たれた。

「せーーんぱい!さあ帰りましょう!!」

元気いっぱいの一色の声が、部室に響く。

 

「い、いろはちゃん!?」

「い、一色さん。ノックを忘れてるわよ」

 

「ふふふっ、雪ノ下先輩に結衣先輩、隠し事はよくないですよ。同じ仲間じゃないですか」

一色はいつものあざとい笑顔ではなく、不敵な笑みを湛えていた。

 

「一色、お前は奉仕部じゃないだろ?しょっちゅう来てはいるが」

 

「先輩はちょっと黙っててくださいね」

……なにこの一色の笑顔、迫力があるんだが。

 

「私だけ仲間外れはズルいですよ」

一色は由比ヶ浜と雪ノ下の方へ歩を進める。

 

「あははははっ、何の事かな?いろはちゃん」

「一色さん、何を言ってるのかしら?」

由比ヶ浜は誤魔化したように愛想笑いをするが、雪ノ下は冷たい眼差しを一色に向けていた。

 

「一色帰るんじゃないのか?」

 

「そうでした。ではでは、雪ノ下先輩、結衣先輩。お先に失礼しますね。先輩にっ!送って貰えるんでっ!」

一色は何故か語尾を強調し、雪ノ下と由比ヶ浜に手を軽く振りながら、足早に俺の方に向かい、無理やり俺の腕を取り、部室を出ようとする。

 

「すまん。先に上がる」

俺は反対側の手で鞄を持ち、一色に引っ張られ部室の扉へと。

 

「ヒッキー、また明日朝に連絡するね」

「その……お疲れ様」

由比ヶ浜はそう言って手を振っていた。

雪ノ下は、先ほどの不安げな顔に戻っていた。

 

「ああ」

 

 

 

 

学校の駐輪所で自転車のカギを外しながら一色に話しかける。

「一色、なんなんださっきのは?」

一色の奴、明らかに由比ヶ浜と雪ノ下に突っかかってたな。なんなんだ?

 

「だって、私だけ仲間外れみたいじゃないですか!」

 

「はぁ、あいつらには黙って貰ってるんだ。学校にも正式に俺がGSだと申請手続きもしてる。教職員も全部じゃないが俺がGSだと知ってるし、学校側からも俺がGSだと言う事は伏せてくれと言われてるんだ。事務所の方針も協会の上の方の方針も同じだ。俺がGSだとは学校の連中に言えないんだよ。そこはお前も気を付けてくれ」

一色にはよくよく言い聞かせないといけないようだな。

 

「む~、雪ノ下先輩と結衣先輩は何時から、先輩がGSだって知ってたんですか?奉仕部に入った時からですか?」

 

「なんだって、そんな事を気にするんだ?お前の依頼を受けるちょっと前だよ」

 

「……京都の修学旅行で2年生が霊災に遭ったってアレですか?」

 

「そうだ」

 

「他の生徒を庇って怪我した人が居たって聞いてましたけど。もしかして先輩の事ですか?」

 

「ああ、そうだ。俺はGSって言っても、ヒヨッコでまだプロに成りたてなんだ。あいつらを助けるだけで精いっぱいだったんだ。俺自身はそれほど強くないんだよ」

 

「……やっぱり、それで雪ノ下先輩と結衣先輩は……眼は別として、普段もそこそこだけど、インドアな雰囲気とのギャップが……やっぱりズルいです」

 

「はぁ、なにブツブツ言ってるんだ?」

人の話を聞いてるのか?こいつは。

 

「何でもないです!」

なんか急に怒り出したぞ。なんなんだ?

 

「まあ、アレだ。最初に言ったが、誰がお前を狙ったなんて事は考えない方が良いぞ」

聡い一色はわかってるはずだ。クラスの誰かが自分を狙ってあんなことをしたと言う事を。

 

「先輩がきっちり解決してくれたんでしょ?もう、忘れちゃいましたし、そんなのに興味ないです」

忘れたって……妙に度胸あるからなこいつは。

 

「あんま波風立てるなよ」

 

「今は、クラスでは普通にしてますよ。まあ、それが逆に気にくわなかったりするんでしょうけど」

なるほどな、そういうのはあるかもしれないな。どっちに転んでも、一色の存在が気にくわないと言うわけか。まあ、一色の普通が、どの程度普通なのかはわからないがな。

 

「で!先輩って!プロのゴーストスイーパーなんですよね。もう一回免許見せてくださいよ!」

 

「あんま大ぴらにするもんじゃないんだけどな。ほら」

 

「…………先輩って、年収いくらですか?」

 

「はぁ、なんでそんな事を聞くんだ?最近までバイト扱いだったからな。今は契約社員扱いで半分歩合制だ。だから決まった年収なんて無いし、どれだけになる物かはまだわからん」

 

「………この免許の上の方に大きく書かれてるCって何ですか?」

 

「GSのランク付けだ。俺の場合Cランクってことだ。ランクによって単独で出来る仕事が決まって来るんだよ。もういいだろ免許」

俺は歩きながらジッとGS免許を見てる一色から、免許を取り上げる。

 

「あっ!……先輩って、甘党ですよね」

一色は免許を名残惜しそうにしながらも、次の質問をして来る。

なにこれ?どういう質問?

 

「人生世知辛いのに、飲み食いぐらい、甘くても良いだろ?」

 

「なんですかそれ。先輩、そういう面倒くさいところありますよね」

 

「ほっとけ」

 

 

そんな会話をしながら、電車を乗り継ぎ、一色の家の前まで送る。

「先輩、今日は助けてくれてありがとうございます」

 

「まあ、たまたま俺があの場に居たからな」

 

「そうですか?あの場に居なくても助けに来てくれたでしょ?先輩は」

 

「買いかぶり過ぎだ」

 

「先輩、また明後日ですね」

一色はそう言って手を振りながら家の玄関に入っていく。

 

「ふう」

とりあえずは一色はこれで大丈夫だろう。

本人はショックは多少あっただろうが、あいつは肝が据わってるからな。どこ吹く風かといった風だ。

それが逆に危なっかしい感じはするがな。

 

それよりもだ。

問題は、一色にあのチョコの呪いを施した子だ。

どうやって、あの呪いを知って、しかもちゃんと発動させたかだ。

西条さんのあの電話口での言い回しだと、他にも同じことがあったようだ。

 

 

 

俺は取り合えず、事務所にその足で行くと、やはり美神さんが待っていた。

しかも、美智恵さんまで来ていた。

 

応接席にすわり、美神さんと美智恵さんに、今日の一色が受けた呪いについて説明する。

それと同時に、呪いのチョコが入っていた箱と呪いを封じた札をそれぞれ二人に渡した。

 

美智恵さんが箱を手にして、箱の中に描かれていた呪詛の術式を見て頷き、話し始める。

「やはり、同じね。……比企谷君。これと全く同じ呪詛術式がつかわれた事件が全国規模で分かってるだけで7件、この一週間で起こってるわ。幸いにも死亡事故にはつながっていないけど、重傷者はでたわ。呪いの失敗によってね」

 

「あんたが言うように、呪い自体は簡易なものよ。問題は素人がどうやってこの呪詛を知り、発動させたかという事」

美神さんが足を組み直し、うんざりした表情で俺が呪いを封印した封印札を霊視ゴーグルで霊視していた。

 

「出所は既に分かってるわ。某サイトでこの呪詛術式と発動の仕方を克明に、しかも動画まで使って掲載してたのよ。すでにそこは抑えたのだけど、犯人にはまた逃げられたわ。ダミーのアドレスを海外サーバーを数個通してね。オカルト犯罪というよりも、サイバーテロ犯罪に近いわね」

美智恵さんは淡々と経過を説明してくれる。

 

「それって……」

 

「そうよ。あの精神暴走事件のやり口と似てるわね。犯人は一緒の可能性が高いわ!こんな陰険な悪戯を、エミじゃないけど、オカルトをなめてるとしか言いようがないわ!腹立たしい!」

美神さんは話しながらも怒りのボルテージが上がってきていた。

やっぱりそうか、俺も何かが引っかかっていた。美智恵さんの話を聞いて、あの精神暴走事件に似てるという印象を受けた。

あの犯人もまだ、捕まっていない…もしかしたら同一犯という事も考えられる。

 

「サイトは既に停止処分にしたわ。でも、バレンタインに託けてこの呪詛術式を広めていたのは間違いない。という事は、このサイトが停止する前に、閲覧し実行に移そうとした人の中には、すでに呪詛術式を組み込んだチョコレートを作成し終わってる人達が居ると言う事よ。そして、この事件が頻発するのは間違いなく明日のバレンタインデー。

このサイトを閲覧したと思われるPCには注意喚起のためのメッセージやメールを送ったり、有名サイトにこのサイトに見覚えがある方は注意をとは乗せたのだけど……どこまで効果があるのか。サイバーオカルト関連の法整備と資格制度は早急に仕上げないといけないわね」

流石の美智恵さんも頭を悩ませてるようだ。そりゃそうだろうな。こんなことが立て続けに起こっているしな。今の所、死亡事件には至ってないのが幸いか。

 

「あのサイト!何が、彼氏の浮気相手を呪えだの、ライバルを呪って蹴落とせなど、憎いあの子や目障りなあの子をギャフンと言わせよ!!陰険なのよ!!絶対犯人は陰険で陰湿でジメジメしてナメクジみたいな奴よ!!呪いを使った奴も使った奴よ!!男を奪いたければ力づくで行けってのよ!!呪いだの何だのって!!ああーーー!!ムカツク!!」

どうやら、そういうキャッチフレーズをサイトにのせ、あの呪詛術式を広めていたようだ。

美神さんは相当イラついてるな。本来なら自分に関係ない事にはサバサバしてるんだけど。よっぽど犯人のやり口が気に入ら無い様だ。

 

「ふーーん。令子も言うようになったわね。男を奪うねー」

ジトっとした目で美智恵さんが美神さんを見据えていた。

 

「な、何よママ!文句でもあるの!?」

 

「いいえ、私は何も」

美智恵さんはすまし顔でそう答える。

ん?どういう事?

 

「とにかく、ムカツクのよ!!この怒りを発散したい時に横島の奴が居ないし!!あーーームカツク!!」

横島師匠。よかったですね。ここに居なくて、居たら理不尽な理由で美神さんに殴られてましたよ。

ん?そう言えば横島師匠はあの後どうなったんだ?

 

「あの、美神さん。その横島師匠はあの後どうしたんですか?」

コミュニティーセンターの敷地内にある公園の木にぐるぐる巻きで吊るしておいたのだが……すっかり忘れてた。すみません師匠。

 

「ふん。小竜姫が妙神山に連れ帰った様よ。置手紙がしてあったわ。面倒を見るなら逃げないように最後までちゃんと見てほしいものだわ」

なるほど、小竜姫様も横島師匠が逃げ出したことを知って、後を追いかけて来たんだな。

 

「令子、小竜姫様に失礼よ」

 

「ふん」

なんだ。美神さんって小竜姫様の事を毛嫌いしてるのか?あんなに優しい女神様を?まさかな。

 

「比企谷君。そう言う事だから、後はオカルトGメンがこの件を引き継ぐわ。GS協会向けとオカG向けに簡易でいいから報告書2部頼むわね。それとオカG向けには君の主観と意見を添えて頂戴」

美智恵さんは美神さんを一瞥し、ため息を吐いてから、俺に顔を向ける。

 

「そう、あんたはお役御免よ。せいせいするわ!予定通り。明日の夕方の除霊依頼は頼んだわよ。私とおキヌちゃんはちょっと用事で出るから。シロとタマモも連れて行っていいわ」

 

「わかりました」

 

報告書は直ぐ出来るし、明日の夕方の除霊もそれほど難易度が高くはない。しかもシロとタマモが一緒ならば、なおさらだ。

今日は帰れるって事か……

とりあえず、明日の午前から昼は空けられるな。

そう言えば、由比ヶ浜と…それと雪ノ下もか、何の用事なのか聞いてなかったな。




まだ、一連の事件は続いているんですねこれが……

それよりも、俺ガイル、アニメの最終回の時系列に近づいてきてますね。
(但し、ここはGSという劇毒物が融合した世界ですが)
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