やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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誤字脱字報告ありがとうございます。
徐々に感想代えさせていただきます。少々お待ちを。

というわけで、続きを……



(78)温泉旅行②罠に嵌る

今回のオカルトGメンの仕事で2泊3日の短期出張に向かったのだが、現場に行ってみれば、陽乃さんが俺を笑顔で出迎える。この仕事、俺を温泉旅行へと強制的に誘うための罠だったのだ。

オカルトGメンを巻き込み、こんな大それた罠を陽乃さん一人で出来るわけがない。オカルトGメン管理官の美智恵さんの影が脳裏にちらつく。この人が一枚かんでる事は確かだ。

しかしながら仕事自体は正当なもので、その依頼解決へと向かう。

だが、これも陽乃さんの裏技で即効解決することに、そして、余った時間はそのまま、陽乃さんの思惑通り温泉旅行と早変わり。

 

……と、そうなるはずだった。

なぜか依頼完了直後に突発的な雪崩に遭い。車も埋もれ、現場からも押し流されてしまった。スマホの電波も届かず、陽乃さんが予約してる旅館へ徒歩で向かう事になってしまった。

 

災難は一度ならず二度三度と起こるものとは言うが、その間も、猛吹雪や電波障害、2度目の雪崩と災難が続く。自然災害がこう立て続けに起こる物なのか?

いや、このシチュエーションどうも気になる。

途中、不穏な気配も感じた。

……何かがおかしい。

 

2度目の雪崩を何とかやり過ごしたが……やはり、流される。

吹雪は若干緩やかになる。

 

「もう!踏んだり蹴ったりだわ!なんなのこれは!?」

陽乃さんは癇癪気味に、誰となしに訴える。

 

「……雪ノ下さん。何かおかしくないですか?」

 

「比企谷君、さっきもそんなこと言ってたけど……あれ?明かりじゃない?雪崩に押し流されて意外と良い場所に出たとか、……ほら建物らしきものも見えるわ!」

陽乃さんは明かりの方に指さしながら、駆けだす。

 

「ちょ、待ってください。俺の話を……はぁ、聞いちゃいない」

俺はしぶしぶ、陽乃さんの後について行く。

 

 

 

明かりが灯っていた場所まで着くと、立派な旅館風の建物が建っていた。

「………あやしい」

俺の霊感が何となくそう感じる。

 

そして、そのタイミングと同じくして、また吹雪が激しくなる。

 

「そんなところでボッとしないで早く中に入りましょ比企谷君。今日はここで泊まらせてもらって。朝になったら、予約してた旅館に戻ればいいし」

陽乃さんはそういって、ホッとした表情で正面玄関ののれんをくぐる。

 

俺はその旅館をジッとみる。

霊視で確認しても、幻術の類じゃないな建物は本物だよな。

 

俺は陽乃さんの後に続き建物の中に入る。

 

 

中は温かい、玄関は見るからに格式高そうな感じの作りとなっていた。

 

「ようこそ、極楽館へ」

着物を着た女性が二人、俺達に恭しく頭を下げる。

 

「雪崩と吹雪にあって帰れなくなったのよ。一晩泊めてくれません?あと、カード払いはできるかしら?」

陽乃さんは服に積もった雪を払いながら、頭を下げる二人に聞く。

 

「それは災難でしたね。今日はこのような大荒れの吹雪となり、キャンセルが相次いでおり、お部屋は空いております。このような時間まで、さぞお疲れでしょう。直ぐにお部屋をお二つご用意させていただきます」

二人の内、明らかに豪華な着物を来た若い女性が対応する。

雰囲気的にこの旅館の若女将だろうか。

 

「部屋は一つでいいわ」

 

「はい、かしこまりました。お部屋を二つご用意させていただきます」

若女将は陽乃さんが部屋を一つでいいと言ったのだが、強調するかのように二つ用意すると言ったのだ。

 

「あの、聞いてるのあなた?私は一つと言ったのよ」

 

「二つでお願いします」

俺はその話に割って入る。

 

「えーー?お姉さんと一緒に寝ましょうよ」

 

「勘弁してください。今日は何か疲れました。もう深夜2時です。今日は疲れを取るためにも直ぐに寝ましょう」

 

「何?お姉さんと一緒の部屋を良いことに、疲れる事でもしようとでも想像したの?八幡?」

そう言って、俺の頬をつついてくる陽乃さん。

 

「はぁ、もうそういうのはいいんで」

 

「面白く無ーい!……まあ、確かにね。今日は疲れたわ。明日の事は明日考えましょ」

陽乃さんはワザとらしく頬を膨らませてそう言ってから、疲れた表情に戻し、苦笑しながら俺の意見に同意してくれた。

 

「…では、ご住所とお名前、サインをお願いいたします」

若女将はにっこりした笑顔をし、陽乃さんにサインを求める。

なぜかその笑顔は笑っていない。冷たい刺すような目をしていた。これ、見たことがある笑顔だ。

 

「比企谷君。比企谷君の分も書いておくね」

 

「お、お連れ様ご本人の署名を頂きたく……」

 

「なによそれ、別に良いじゃない。料金払うのは私なんだから」

陽乃さんは若女将に疑惑の眼差しを向ける。

 

「雪ノ下さん、書きますんで……それとちょっとトイレに行きたいんで先に部屋に案内してもらってください」

俺はここで、あることに気が付く。だから、若女将に助け舟を出した。

 

「まあ、いいわ。わかったわ。一度部屋に案内してもらってから、後で明日の件、ちょっと打ち合わせしましょう」

陽乃さんはサインをしながら、俺にそう言った。

 

「わかりました」

 

陽乃さんはサインが終わると、もう一人の仲居さん風の人に案内をされ、廊下の奥へと向かっていた。

 

陽乃さんが見えなくなったところで、俺は若女将に話しかける。

「……雪ノ下。何やってるんだ?」

 

「……やはり、貴方にはわかるのね」

若女将はそう言って、うなじ辺りを触り、顔の皮を剥ぎ取りだす。

正確には皮じゃない。

 

「ああ、俺の目は特別らしいからな……エクトプラズムスーツか」

エクトプラズムスーツ、霊体物質で包んだスーツ。完全に他人の姿になり切る事が出来るオカルトアイテムだ。

 

若女将は頭全部をマスクのように剥ぎとると、全くの別人の年若い美人顔、いや雪ノ下が顔を見せる。

「正解よ。霊樹の皮でコーティングしたエクトプラズムスーツらしいの、全く凄いわね。オカルト科学というのは」

そう言った雪ノ下は若干疲れ顔だった。

エクトプラズムは霊体物質だ。触れるだけで若干霊気を消耗する。

一般人の雪ノ下だと、このスーツで形態模写をするのは10分程度が限度だろう。

 

「……はぁ、確かに霊樹でコーティングした高級品は、霊気が漏れにくいから、雪ノ下さんでも、さすがに気が付かなかっただろうが………」

いくらすると思ってるんだそのスーツ。一着8千万ぐらいするはずだぞ。

霊樹でコーティングすることで、霊気が漏れないように出来てる。高位の霊能者だと流石に漏れてバレるが、一般人だとまずバレない。

俺の場合、霊視ゴーグルと同等かそれ以上の性能があるこの目のおかげで分かったのだが。

 

「あまり驚かないのね」

 

「いや、驚いたは驚いたが……さっきまでの一連の事で、怪しんでいたからな。……全部美神さんの仕業だな」

 

「そうよ。気づかれないようにと配慮する必要があるから、美神さんは離れた場所にいらっしゃるわ。姉さんというよりも、貴方にわからないようにと言う配慮ね」

やはりか、あの後、陽乃さんとやっぱりなんかあったんだな。

なぜ、よりによって美神さんなんかに相談したのか……。まあ、あの人は一応、他人には外ズラは良くしようとするからな。直ぐバレるけど。

 

「はぁ……よりによって美神さんに頼むとはな。先に言っておけばよかった。俺の配慮不足か」

俺は温泉旅行の件は、美神さんや横島師匠に頼るつもりは毛頭なかった。

美神さんに頼むとこんなことになるからだ。……最悪だ。この後の展開が読めて、結末まで見えるまである。

最初の雪崩から、次々の自然災害は、ここに誘導するための罠だ。

さらに、ここにはとんでもない罠を仕掛けてるはずだ。

美神さんに頼むぐらいなら、悪魔に頼んだ方がまだましなぐらいだ!

 

「……私も……そのちょっとここまで大事になるとは思っていなかったわ」

雪ノ下の疲れた顔が更に影を落とす。

多分この一週間部活休んだのは美神さんにノリノリで手伝わされたんだろうな。

 

「……で、あの仲居さんが由比ヶ浜か。それとタマモもいるな。一瞬だが幻術結界っぽい気配を感じた。しかしこの建物は本物だ。もしかして、この事だけのために建物を買い取ったとか……あの人の事だやりかねない」

 

「そうよ。由比ヶ浜さんが先ほどの仲居さん。由比ヶ浜さんのほうがエクトプラズムスーツの持続時間が少しだけ長いようね。タマモさんと後、シロさんもこっちに来てるわ。建物は……その潰れて放置されていた旅館を買い取って、突貫工事で仕上げたらしいの」

 

「……これはやばいな。美神さんがこんな事に大枚はたいて金をかけるとは……雪ノ下、明日一番に由比ヶ浜と逃げた方がいい。後は俺が何とかする」

この前の11月の件が相当、腹に据えかねてるようだ。

美神さんが金を掛けると言う事は、なりふり構わず、陽乃さんにちょっかいを掛けてると言う事だ。

これは陽乃さんだけじゃないな。あの時の事を考えると、美智恵さんに対しても何らかの意図があるはずだ。

 

「え?でも……」

 

「そういえば、キヌさんは?キヌさんが気が付いたなら、こんなことを黙って見てるはずが無い。諫めるはずだ」

 

「おキヌちゃんは、私の代わりに、明日のGS協会の幹部会議に出て貰らうために東京にいるわ」

雪ノ下の代わりに、いつの間にか俺の背後を取った美神さんが答えた。

 

「美神さん!!何を企んでるんですか!?雪ノ下と由比ヶ浜を巻き込んで!!」

 

「あんたは、ちょっと寝てなさい!あんたが居ると色々とやり難いのよ!」

美神さんは俺の振り返り際に、神通棍を振るってくる。

 

俺はそれをサイキックソーサーで受け流しながらすんでのところでかわす。

「ちょ!待った!」

 

「やるようになったわね。でも、あんたもここに入った段階で、私の手の内なのよ!」

美神さんは指を鳴らすと、俺が避けた場所から、術式が発動する。

そう、美神さんが神通棍を振るったのは、俺をこの術式の上に踏み込ますためだった。

 

「しまっ……」

俺はそこで完全に意識を持ってかれた。

雪ノ下が心配そうに俺に声を掛ける声が耳に残る。

 

 

 

くそ、最悪だ。

まだ、陽乃さんとの温泉旅行の方がマシだったかもな。

美神さんが絡むとろくな事にならない。

しかも、雪ノ下と由比ヶ浜も巻き込んでだ。

横島師匠かキヌさんがここに居てくれればいいんだが…其れも望み薄だ。

俺はそこで、完全に意識が消える。

 

 

 

 

 

 

「起床!!」

 

 

俺はそんな声で目が覚める。

すると、俺はコンクリート造り牢屋風の狭い部屋の簡易ベッドで横たわっていた。

 

しかも、ご丁寧に、両手両足に鉄球がはめられている。

唯の鉄球じゃない。霊力を発揮できないように封印を施された鉄球だ。

霊能力犯罪者に使われるもの。

ご丁寧に、両足に括られてる鉄球には40キロ、両手には20キロと書かれていた。

合計120キロ……霊能力を封印された状態では身動きをするのにも一苦労だ。

 

「なに?これは!?どういうこと?霊能者用の封印手錠?」

隣の部屋から、陽乃さんの声が聞こえてくる。陽乃さんもここで目を覚ましたようだ。

やはりか、陽乃さんも眠らされ捕らわれていたようだな。

 

「雪ノ下さん、聞こえますか?」

 

「比企谷君?ここはどこ?これはどういうこと?なにがどうなって?」

 

「俺達は嵌められたようです。……俺も霊能力を封印されてる状態です」

 

「え?なに、罠にはまった?昨日の旅館がそうなの?」

 

「……いえ、多分初めから」

 

 

そこで、スピーカーから声が聞こえてくる。

「訓練生!そこから出なさい!!」

美神さんの声だ。

 

すると、牢屋風の扉がガチャリという音共に開いた。

 

「比企谷君……」

陽乃さんの不安そうな声が隣の部屋から聞こえる。

 

「ここは素直に従いましょう」

俺は鉄球を引きづって、扉の外に出る。

 

 

すると、ちょっと広い部屋に出る。

そこで、陽乃さんと顔を合わせる。

陽乃さんの顔は曇っていた。どうやら不安を隠せないようだ。

陽乃さんは両手と両足にリストウエイトバンドやアンクルウエイトバンドのような封印錠を服の上から取り付けられていた。俺のように鉄球じゃない。霊能力の封印を施すだけのものだ。

他の事務所の霊能者に鉄球なんてした日には、訴えられかねないからな。……俺はいいのかよという疑問はあるが……俺は一応身内だしな。こんなことでは動じない。まだ、両手と両足を縛られていないだけましだ。

陽乃さんは何故かジャージ姿に。寝ている内に雪ノ下か由比ヶ浜に着替えさせられたのだろう。

俺は昨日の服のままだ……流石にジャンバーは脱がされていたが。

 

「比企谷君……これは」

 

「すんません……多分、俺の身内の仕業です」

 

 

すると部屋の壁に掛かってる大型ディスプレイにとある人物が上から目線で、捕えた子羊を見るような目で俺達を見据えているのが映し出された。

「あんた達訓練生は今日と明日、美神令子直々に霊能特別特訓を行う。光栄に思いなさい」

 

「美神令子さん?……どういうことですか?説明してもらえませんか?」

 

「ここでは教官よ!!ここは美神令子除霊事務所の訓練施設、そして訓練生のあんた達が今受けようとしてるのは短期集中コースよ。安心しなさい。この一帯の土地は、GS協会に正式に霊能訓練の許可を取ってるわ。思う存分に訓練に集中できるわよ」

 

「ではなくて!なぜこんなことになってるのか、聞いてるんです!」

珍しく声を荒げる陽乃さん。

 

「あら、あなた。自分でこの霊能特別訓練所に来て、参加しますってサインしたじゃない」

そう言って、美神さんはサインした書類を画面に映し出す。

……あれだ。昨晩に若女将に扮した雪ノ下に書かされたサインだ。あのサインした紙の下にその訓練参加の書類を挟んでおいて、写したんだ。

 

「いつの間に!そんな記憶はないわ!」

 

「おほほほほほっ、よく見なさい。まぎれもなくあなたの字よ。自分でサインをしたのよ。今更無効も何も無いわ。ここにサインしたからには、訓練が終了するまでは、訓練所となってる土地から出られないように結界を張ってあるわ。土御門陽乃さん。あんたは訓練を終了するまで出られないの。おほほほほほっ!」

 

「なぜ、そんなことを!……いつかの仕返しですか?それとも比企谷君を土御門に取り込もうとしたから?」

 

「おほほほほっ、何の事かしら?おほほほほっ、ここでたまたま事務所を挙げて訓練していたのよ。それもGS協会員であれば誰でも自由参加型のね。昨日あんた達がたまたま、その訓練所に現れて、参加しますって、サインしただけの話じゃない。私は別にどっちでもよかったのよ。でもサインしちゃったしね。私が先輩として最後まできっちり面倒見てあげるわ。新人のあなた達をね。おほほほほほっ!」

美神さんはしたり顔で高笑いを上げる。

 

……なにそれ、事務所所属の俺すら知らない事実なんですけど。……間違いなく嘘だな。陽乃さんを狙ったものだ。建前だけでも、そう言う事にしておかないと後でややこしい事になるからな。

しかも、理不尽な屁理屈でこの人にかなう人はほとんどいない。悪魔や妖怪すらも騙しきる人なんですよ。

陽乃さん。こうなってからではあきらめるしかないんです。

あの、美神さんのあの満足そうな顔は何だ。やってやった感満載なんだけど。

俺は、盛大にため息を吐く。

 

「ぐっ、やられたわ。比企谷君はこの事を知ってたの?」

陽乃さんは忌々しそうに、ディスプレイに映る美神さんを睨んでから、俺にそのまま聞いてくる。

 

「……知ってたら俺はこんなところで、一緒にこんな目に合ってませんよ」

知ってたら、キヌさんや横島師匠に美神さんの暴走を止めてもらうようにお願いしてましたよ。

 

「まあ、私も鬼じゃないわ。3つの試練を終わらせたら、直ぐに帰してあげるわ」

……美神さん。鬼に恐れられてる人が何を言ってるんですか?あなたより、鬼の方がよっぽどましなんですが。

 

「雪ノ下さん……なんか、すみませんね。うちの所長が。ああなったら、梃子でも動かないんで、ここは大人しく従った方が良いですよ」

 

「ふん、上等じゃない。どんな訓練か知らないけど、あまり私をなめてもらっては困るわ」

何故か陽乃さんは闘志を燃やしだしていた。

この人も結局、勝負の世界の人なんだよな。

 

 

……普通の訓練じゃないと思いますよ。

はぁ……しかも、思いっきり俺も巻き込まれてるし、もう、どうにでもしてください。

 




遂に罠にはまった。陽乃さん
美神令子の訓練という名の制裁が始まるのであった。

っていう感じ。
しかも八幡まで巻き込まれてるし……
普通の訓練じゃない事は間違いないですよね。
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