やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。


本当はもう一話作っていたのですが……
温泉旅行の3日目のお話と温泉旅行に関する結末とか、……それを思いっきりカット。
その方がすんなりいきそうだったので。

今回のお話で一応の区切りをつけさせていただきます。

今迄お付き合いしていただきまして有難うございました。



(82)春の足音と乙女達の決意

温泉旅行から帰ってきてからの奉仕部の雰囲気は、前と変わらずバレンタインイベントの前のままの、いままで通りだった。

 

俺は、あの双六での中二病バレと巨乳嗜好バレの件で、冷たい視線で蔑まされるではないかと思っていたのだが、そんな事さえも何もなかったかのようにいつも通り俺と接してくれる二人。

きっと、あの出来事をなかったことにしてくれてるのだろう。俺は心の中で二人に感謝の言葉を述べた。

 

それとだ。結局、陽乃さんと雪ノ下と由比ヶ浜の間で何があったのかは分からずじまいだ。

温泉旅行の3日目の様子を見るに、和解したようだ。

あの時の陽乃さんは外面仮面を脱ぎ去って、二人に接していた。

その方がよっぽど自然で良いと思う。

それにしても元々一体、何が原因で険悪になったのだろうか?

 

それに、バレンタインデーのあの時、雪ノ下は続きで何を言おうとしたのかも、今も分からない。

雪ノ下は、もう少ししたら伝えるとは言っていたが……

きっと緊急性の無いことなのだろう。

 

バレンタインデーイベント以降変わった事と言えば、一色が奉仕部に現れる頻度が増えた事だ。

3年生の卒業式も控えており、何かと生徒会は忙しいはずだなのだが。まあ、本人は息抜きのつもりなのだろう。

しかし、由比ヶ浜にさらりと追い返される事が多い。

今迄の、由比ヶ浜であれば、苦笑しながらも容認していたのだが。

由比ヶ浜の勉強の方は大分進んでいるようだ。それを邪魔されたくないのかもしれないな。

 

温泉旅行と言えば、やはり横島師匠は出張から帰った後に、美神さんにボコボコにされていた。

今回の件、被害が最小限で済んだのは横島師匠が美神さんの悪だくみに気が付いて、美智恵さんにリークしてくれたおかげだ。俺は、横島師匠にこそっとお礼を言ったら、はにかんだ笑顔で「たいした事はしてない。まあ、大事なくてよかったな」と。

やはり、この人は優しい人だ。

 

あれ以来、陽乃さんは直接俺に絡んでくることが無くなったが、メールがちょくちょく来るようになった。内容は他愛のないことだ。まあ、その他愛の無いこととは、一般でいう他愛のない事ではない。GS的な事だ。修行の事とか、訓練の仕方とか、業界の情勢のこととかだ。

 

3月に入り、正式にオカルト事務管理資格制度が運用される事が発表され、第一回試験は6月に開催される事が告知された。

雪ノ下は勿論、やる気十分だ。どうもキヌさんのところに頻繁に会いに行ってるようだ。

まあ、俺に習うよりも、キヌさんに教えてもらった方が良いだろう。教えるのが上手いのはそうだが、今の美神令子除霊事務所の一切の事務はキヌさんが実質見てるようなものだからな。実際に運用してるキヌさんに習った方が実践的だ。

あともう一人、唐巣神父のところでバイトをしてる川崎がこの事で、ちょくちょく俺に相談しに来るようになった。まあ、迷ってる内はやめておいた方が良いとは思うが……この資格さえ取ってしまえば、正式にGSへのバイトを学校や役所に申請を出しやすい。まあ、その辺のアドバイスや相談だな。後は本人次第だ。

 

 

 

そのまま、時が流れ……3年生は卒業し、3学期の終業式を迎える。

明日から春休み。春休みの前半は妙神山に行く予定にしてる。

俺のダーククラウドと霊視空間結界をパワーアップさせるのが目的だ。

発現したての時に比べれば、ちょっとは発動範囲が広くなり半径5メートルまで拡張できたが、それでもまだ実用性に欠ける。

これが10メートル以上に拡張できれば応用範囲もかなり広がるだろう。

 

終業式の長い校長の話を終え、2年時最後のホームルームはあっさり終え、いつものように奉仕部部室へと向かう。

 

始めはいつも通り、皆各々の席に座り、雪ノ下は本を読み。由比ヶ浜は勉強を、そして俺も本を読んでいた。途中一色の襲来があったが、由比ヶ浜がやんわりと追い返した。

 

そして、2年時最後の部活動が終わりに近づく。

 

雪ノ下と由比ヶ浜は示し合わせたように立ち上がり、視線を交差させる。

 

「比企谷君。ちょっといいかしら」

 

「ん?なんだ?」

 

「ヒッキー、黒板の前に立って」

 

「なにをするんだ?」

 

「写真を撮りましょ。2年時最後の奉仕部の活動の記念として」

 

「俺は別にいい、お前らだけで撮れば?」

 

「ダーメ!奉仕部の記念なんだよ。ヒッキーが居ないとダメじゃん」

そう言って、由比ヶ浜は強引に俺の腕を取り、黒板の前まで引っ張って行く。

 

由比ヶ浜は黒板にはデカデカと奉仕部20××年とチョークで書き、周りを可愛くデコレーションする。

その前で俺と由比ヶ浜、俺と雪ノ下、雪ノ下と由比ヶ浜と2人づつ、デジカメで写真を撮って行く。

そして、カメラをセルフにし、俺を真ん中に右は雪ノ下、左は由比ヶ浜で並んで写真を撮った。

なんかアレだな。気恥しいな。二人とは何時も同じこの教室の空間に居るのだが、写真を一緒に取るとなると、何故か気恥しい気分になる。

それは多分、息遣いが感じられるほど二人との距離が近いからだろう。

そんな二人を間近に見てしまうと気がついてしまう。普段は意識をしていないが、二人とも美少女だと言う事に……誰が見たとしても……

 

ちゃんと考えてみれば当たり前の話だった。

こんな二人と俺は毎日のように部活を行っていたのだ。

俺も十分リア充の仲間に入る資格があるなと、気付かされる。

こんなことが無ければ俺は気が付くことがなかったのだろう。いや、無意識にそう思わないようにしていたのかもしれない。

 

「ヒッキー、もう一枚3人で写真撮ろう」

 

「もういいだろ?」

 

「一枚も二枚も変わらないでしょ?」

 

「わーったよ」

 

「ヒッキーは今度は椅子に座って」

 

「はいよ」

俺は由比ヶ浜に従って、椅子を持ってきて座る。

その右に雪ノ下、左に由比ヶ浜が並ぶ。

 

由比ヶ浜がデジカメのセルフタイマーを押しに行き戻って来る。

 

 

そして……

 

カメラのシャッタ音が部室に響く。

俺は腐ったとか、濁ったとか言われる、この目が大きく見開かれる。

 

頬の両方に柔らかくも温かい感触と息遣い……そして、何よりもその両方の頬に雪ノ下と由比ヶ浜の思いのような物を感じた。

 

一瞬何が起こったのかわからなかった。

 

それが何なのかを理解し慌てて立ち上がろうとすると、2人はそれを阻むかのように俺の正面に立つ。

 

「お、おい!?」

 

そして……

雪ノ下は、椅子に座ったまま混乱し挙動不審になっているだろう俺の前に立ち、中腰になり俺と顔を合わせる。

真正面に向き合った雪ノ下の目に自然と視線が吸い込まれ、俺は全く動けなくなっていた。

「比企谷君……いえ、比企谷八幡君、私は貴方が好きです」

頬をほんのりと赤く染め、そう口ずさむ口の動きと、その視線から、俺は目が離せなかった。

 

耳には雪ノ下のその言葉は入ってきている。だが、その意味が理解できない。

 

次に由比ヶ浜が雪ノ下と入れ替わり、同じく中腰になり俺に顔を合わせ、俺の目をジッと見つめる。

「ヒッキー、ううん。あたしは比企谷八幡君がずっと好きです!」

照れくさそうにしながらも力強くこう言った。

 

由比ヶ浜の言葉も耳に入った。しかし、その言葉の意味が理解ができない。

 

俺はその言葉の意味を理解しようと全力で思考を回す。そして二人に返した言葉は……

「俺?」

こんな情けない言葉だった。

 

 

「そうよ。私は貴方が好きなの」

 

「あたしはね。ヒッキーが好き」

 

 

「……その、だな」

その言葉をようやく理解し、自分の顔が真っ赤になって行くのを感じる。

 

「何か感想は?比企谷君?」

 

「その、じ、冗談だよな?」

しかしその言葉の意味を理解はしたが、理解をすればするほど、この二人が俺に向かって発した言葉が理解できない。

 

「冗談でこんな事をしないわ。私は本気よ」

 

「そのだ。……いや、俺をか?俺だぞ?俺なんかに……俺のどこが良いんだ?」

……そうだ。俺に対して出していい言葉じゃないはずだ。それはもっと大事な時に取って置くべき言葉だ。

 

「全部よ」

雪ノ下はまだ、俺の目をジッと見つめたままだ。

 

「……ちょっと待て!」

 

「そんな言葉を聞きたいんじゃないわ。嬉しいのか嬉しくないのかよ」

 

「その……嬉しいです。いやでもちょっと待てって!」

 

 

「ヒッキー、あたしには?感想はないの?」

 

「嬉しいくないわけが……その、そのだ……二人共、本当に冗談にしては質が悪いぞ」

 

「だから、さっきから言ってるわ本気よ。貴方は言ってわからないから…その先にキ、キスをしたのよ」

「そうだよ、ヒッキーにあたし達の思いをちゃんと伝えるために」

 

「……いや、何で俺なんだ?もっといい奴いるだろう?おかしいだろ?」

 

「おかしいのは貴方よ。私は貴方以上に素敵な男の子に会ったことが無いわ」

「うん、ヒッキーより優しい男の子に会ったことが無い」

 

「……俺が優しい?どこがだ?」

 

「もう一回キスをしないと分からない見たいね」

「そうだね。ゆきのん」

 

「ちょっと待てって!」

俺は二人に肩を掴まれ、両頬に再び甘い感触、キスを受ける。

 

「これで私たちの本気が分かったかしら?」

「そうだよ。私たちは本気なんだから」

 

「……おお、おい……マジなのか……いや、何時からだ?全くわからなかった」

俺はこんな時でもチープな事を聞いてしまうダメな奴だった。

 

「私は11月頃かしら」

「あたしは6月かな」

 

「……ちょっと待ってくれ、色々と頭が追い付かない」

 

「色々わかる癖に、恋愛は全然ダメなようね比企谷君。その点私達の方が上ね」

何故か勝ち誇ったように、上から目線の雪ノ下。

 

「ヒッキー、結構あたし的にアピールしたのに、全然気が付かないし!鈍感すぎ!」

ちょっとプンプンした感じの由比ヶ浜。

 

「その……いろいろすまなかった」

 

 

「貴方にとっては急なのかもしれないけど、私達にとってはずっと秘めていた思いなの。でも、ようやく言えたわ」

 

「うん。ずーーっと言えなかった事。やっと言えた。ホッとした」

 

「………そのだな」

 

「貴方には答えを直ぐに求めないわ。でも、卒業までにはお願いね」

 

「卒業までって……」

 

「その間、あたし達がヒッキーにアピールしないとは言ってないから、どんどん行くから」

「そうよ。貴方を私に振り向かせて見せるわ」

 

「……ちょ!」

 

「途中まで一緒に帰りましょ、比企谷君。これで貴方も、貴方が嫌いなリア充と言うものになるのよ」

「行こ!ヒッキー!」

 

 

こうして俺は混乱収まらないまま、二人に腕を掴まれ連れられ、奉仕部の部室を後にする。

そして、校門を出てしばらくすると……

 

「ヤッホー!八幡!!どうやら雪乃ちゃんもガハマちゃんも、告白は成功したみたいね」

陽乃さんが目の前に現れた。

 

「じゃあ今度は私ね。八幡」

そう言って、陽乃さんは俺の懐に飛び込み。

唇に柔らかい感触と吐息が触れた。

 

「姉さん!!ルール違反よ!!」

「陽乃さん!!」

 

「だって、恋愛って戦いじゃない?先手必勝よ。ね?八幡?」

 

「……え?ええ?」

 

「姉さん!!」

「ヒッキーの唇!ファーストキスを!!」

雪ノ下と由比ヶ浜は怒りをあらわにしていた。

 

「八幡大好きよ。結婚してね。じゃねーーーー!」

陽乃さんはそう言って投げキスをし、走り去っていた。

まるで嵐のように……

 

茫然と突っ立てるだけの俺に、雪ノ下はハンカチで俺の口を拭う。

由比ヶ浜は陽乃さんがかけて行った方向に向かって涙目で地団駄踏んでいた。

 

 

俺はしばらく意識朦朧と連れられ、駅前で二人と別れる。

「バイバイ、ヒッキー!メールはちゃんと返信してね」

「比企谷君、仕事のスケジュールが決まったら都度教えてくれるかしら」

 

 

俺はどうやって家に帰ったのか全くわからないが、いつの間にか玄関に突っ立っていて、目の前に小町が居た。

 

「お兄ちゃんどったの?ぼーっとして」

 

「小町……好きって何だろな?」

 

「え?お兄ちゃんの口から好きって?どどどど、どうしたの?」

 

「キスされた」

 

「えーーーーーーーーー!!ちょちょちょちょお兄ちゃん!?ほ、本当に!?」

 

「キスされて、告白された」

 

「えーーーーーーーーーー!!せ、赤飯だよ!!おかあさーーーんは居ないか!!小町が小町が赤飯今から炊くから待っててね!!」

 

「ああ」

 

「って、誰から?」

 

「雪ノ下」

 

「えーーーー!!奥手の雪乃さんが!?絶対結衣さんだと思ったのに!!」

 

「由比ヶ浜とそれと雪ノ下さん」

 

「ちょーーーーーーーーーーーーーーー!!お兄ちゃん!!何それ!!夢でも見た!?」

 

「やっぱ、夢か……うーーん」

 

「おとーーーーーさーーーーーん!!お兄ちゃんが超リア充に昇進したんだけど!!ってお父さんは居ないか!!ちょちょちょちょちょどうしよう!!110番!?119番どっち!?」

 

「110番だな」

 

「110番っと…ちがーーう!!どどどどどうしよう。こんな時に小町が冷静にならないと!!」

 

「夢だな…金槌で殴ってくれ」

 

「おおおお、お兄ちゃん落ち着いて、死んじゃうから、そんなことしたら死んじゃうから!!ふーーはーーーふーーーはーーー落ち着いた。……お兄ちゃん。とりあえず靴脱いで家に上がろう。玄関寒いし、ね?」

 

俺はその日どうやって風呂に入ったのか、どうやって着替えたのか、どうやって自分の部屋に入りベッドに寝たのか、まるで記憶になかった。

 

そんな状態で、翌日妙神山へ再び……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その晩の雪ノ下雪乃は……

「比企谷君の心を捕まえるための計画を立てないと。由比ヶ浜さんと姉さん……この中で多分一番私が不利だと思う。だから」

 

同じく雪ノ下陽乃は……

「八幡人形に今日の八幡キスを返してあげましょうねー!……それでこのまま攻めていくわ!雪乃ちゃんとガハマちゃんと比べ時間的には不利があるわ。あの時の八幡の顔、まんざらでもない見たい。電撃的に誘惑しちゃうんだから」

 

翌日の由比ヶ浜結衣は……

「ヒッキー、あたしの事どう思ってるのかな?好きな気持ちは誰にも負けないけど……陽乃さんには土御門家があって、ゆきのんにはあの怖い美神さんが後ろにいる。……あたしには何もない。どうしよう」

愛犬サブレの散歩をしながらこれからの事を考えていたのだが……そんな時だ。老人が路地で行き倒れてる所に出くわしたのだ。

恰好から見ると、欧米系の白人で身なりはしっかりしている。その服装は、貴族然とした紳士風の洋装だった。

「大丈夫、おじいちゃん。えーっと英語だったらどういうんだっけ?Are you OK?」

 

「マリア~、飯はまだかいのう」

 

「に、日本語だ!おじいちゃん大丈夫?あたしはマリアじゃないよ。結衣って言うの」

 

「マリア~、今何時じゃ?」

 

「今は午後一時だよ」

 

「マリア~、飯はまだかいのう」

 

「だから、おじいちゃん。あたしはマリアじゃなくて由比ヶ浜結衣って名前なの」

 

「マリア~……」

 

「だから、おじいちゃん。あのね。……」

 

 

 

 

 

 

(続く……?)

 

 




ありがとうございました。
というわけでここで一度、終わらせてもらいます。
きりが良いので……

妄想ゲージがチャージできればw


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