やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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お久しぶりです。
まだ、本格的な再開ではありませんが、2章に入る前のお話という事で……
かなり長くなってますが、2話に分けませんでした。



【七章半】閑話
(83)閑話:妙神山再び


俺は高校生活最後の春休みを利用し、妙神山へと再び修行に訪れる。

午前中は、横島師匠と一緒に体力づくりと霊力増加の基礎訓練を行う。

 

小休憩を取って、木製のベンチに座ってタオルで汗を拭う俺に、小竜姫様は心配そうに尋ねられた。

「比企谷さん。どうかされましたか?」

 

「いえ、特に問題ありません」

 

「そうですか、何か悩み事でもあるのではないですか?」

小竜姫様はそう言って俺の横に腰掛ける。

 

「そんな事は無いです…」

自分自身も自覚しているが先に否定の言葉が出てしまった。

 

「午前中の基礎訓練を拝見しておりました。一見訓練に打ち込んでいる様にも見えますが、動きも固く、精彩を欠いておりましたし、どこか心あらずのようです」

俺の方に顔を向け、首を傾げなら小竜姫様は今日の俺の訓練の様子をズバリ言い当てる。

流石は小竜姫様。良く見ていらっしゃる。

そう、俺は今心に大きな問題を抱えている。それを忘れるように訓練に打ち込もうとしたのだが、どうもうまく行かない。

 

「……」

 

「横島さんも心配してました。前回もこれに近い様子でしたが、今日のような感じの比企谷さんは初めてだと……」

やはり、横島師匠にもバレてたか……しかし、この問題は横島師匠に相談するのは色んな意味でも憚れる。

しかし、いずれバレる話だ。

 

「すみません小竜姫様……」

 

「きっと師匠の横島さんにも話をしにくい事なんですね。…私ならどうですか?これでも神の一員なのですから、何か解決の糸口になるかもしれませんよ」

小竜姫様は笑顔でそう言ってくれた。

 

「……そのまだ、横島師匠には話さないで頂けると助かります」

俺は意を決して、小竜姫様に相談することにする。

 

「そうですね。ただ、あまりにも重大なお話なら、話さないわけにはいきませんよ?」

 

「……小竜姫様……人の好意をどう受け止めたらいいのか……その、分からないんです」

この問題は俺の中でいくら考えても答えは出ないし、どう考えていいのかもわからない。答えの糸口すら見当たらない。こんな事は今ままでなかった。

小竜姫様なら……答えてくれるかもしれない。

 

「え?……どういう事ですか?」

 

「その、いままで恋愛感情抜きで、お互い干渉をあまりしない関係というか、気の置けない関係というかそう言う関係の学校の女の子が二人と、ライバルだと思っていた年上の女性が居たんですが」

 

「??」

 

「その、昨日なんですが……3人に…急に好きだと言われました。キスまでされて、本気だと……俺はどう答えていいのかも分からず、何も返事ができなかった。学校の女の子二人は何時も一緒に居たはずなのに、俺はその好意にすら気が付かずにいて……そんなダメな奴なんです。そんな俺の事を本気で好きだと………俺は彼女らにどう答えたらいいのか、そのどうしたらいいのか、さっぱり分からなくて……俺は恋愛なんて本気でしたことが無いんです。でも……」

 

「ええ!?す、好き?れ、恋愛!?3人同時に!?ちょちょ、ちょっと待ってください」

小竜姫様は大きく口を開けたまま、驚いた顔をし、慌てていた。

 

「ど……どうしましょう……私もその……恋愛なんて……」

小竜姫様は立ち上がって、俺から足早に少し離れ、後ろ向きに何やら小声でヒソヒソと独り言を言われていた。

 

「小竜姫様?」

 

「やはり、横島さんの弟子という事なのでしょうか?無意識に多数の女性を引き付けるというか……比企谷さんは横島さんとは表面上はかなり違いますし……どう答えれば?しかし、弟弟子の弟子が困ってる現実を見過ごすわけには行きません。横島さんにも話せないようですし、私を頼ってくれています。私が何とかしなくては……」

俺の声は小竜姫様に届いていないようだ。まだ、何か独り言を言っている。

 

「あの、小竜姫様?」

 

「こほん。お待たせしました」

小竜姫様はこちらに向き直り、咳ばらいをしてから、ゆっくりとした足取りで俺の方へ向かって来られた。

 

「その3人の女性はどういう方なのですか?」

小竜姫様は俺の前で立ち止まり、中腰になり質問をされる。

 

「雪ノ下雪乃、同じ部活の部長で同学年です。容姿端麗で文武両道の非の打ちどころがない奴なんですが、ただ、コミュニケーションに難があります。実家と確執があり、自分と実家とのあり様に疑問を持ち、今それに懸命に立ち向かおうとしてる女の子です。由比ヶ浜結衣も同じ部活でクラスも同じ、学校でも人気者で優しい奴です。元々他人に流されやすい奴でしたが、今は確たる自分を持っていて、俺から見ても精神力が強い女の子です。最後の人は俺は完全にマイナスイメージしかもっていなかった人なんですが、土御門陽乃いや雪ノ下陽乃。雪ノ下雪乃の3つ上の姉です。妹同様容姿端麗で頭脳明晰。しかも土御門家の陰陽師でやり手のゴーストスイーパーでもあるんです。何時もは俺の事をいじって楽しんでいたような人なんです」

 

「……比企谷さんはこのお三方の事をどう思ってるのですか?」

 

「いや、それが……その雪ノ下と由比ヶ浜については、近い関係で言うと友人だと勝手に思ってました。しかし雪ノ下からは、俺は嫌われているかもしれないとも思っていました。由比ヶ浜は誰にでも優しいところがあるし、まさかこんな事になるとは思いもしませんでした。それと、雪ノ下の姉の陽乃さんです。俺との接点は少ないハズですが、お互いゴーストスイーパーとしてライバル関係で、口では俺を婿になんて事を言ってましたが、本気じゃないと……さらに俺自身は苦手としていました」

 

「比企谷さんは、同級生のお二人には、恋愛ではないですが、好意的印象をもっていたのですね。年上の女性に対しては、婿にと言われていて、本気じゃないと思っていたのですね。さらに苦手意識まで……師弟揃ってそう言う事ですか……」

 

「あの、小竜姫様?」

 

「いいですか比企谷さん。あなたは自分に対して自信が無さすぎです。あなたはきっと現世では、普通に好意を寄せられる魅力を持ってます。まずは何に対しても真面目で誠実に対応するあなたを誰が嫌いますか?」

 

「あの……俺のこの目、散々な言われ方をしますよ。腐ったとか、濁ったとか、ゾンビとか……」

 

「それは見た目の話です。さらに言いますと、少なくとも真剣な顔になった貴方の目はそのように見えませんよ」

 

「では、どういう?」

 

「彼女らはあなたの内面が好きなのです。彼女らはあなたのどこが好きになったのか言ってませんでしたか?」

 

「……その、同級生の二人には優しさだと……しかし、俺は彼女らに優しい所など見せた事も無いです」

 

「それが、そもそもの問題なのです。あなたの行動はあなたの優しさがそのまま出ているのに、それにあなた本人が全く気が付いていないのです」

 

「はぁ…でも家族からはダメだしを出されるばっかりで」

 

「家族の方はあなたの優しさに甘えているだけです」

 

「……俺に自覚がないと」

 

「そうです。あなたは優しい人です。言葉の端々からもそれを伺う事が出来ますし、何より横島さんがあなたを信頼しております」

 

「………」

 

「まあ、これはいくら他人が言っても理解は中々難しいかもしれません。ただ、同級生の気の置けない関係と思っている彼女らが、あなたの事を優しいと、そう感じているのです。その彼女らの言葉は信用できませんか?」

 

「そう言われると痛いです。しかし、優しさと言われても…俺なんかのどこがいいのか……」

 

「それです。『俺なんか』?その言葉は、あなたの自信の無さの表れです。あまりにもその言葉を発するようでは、全幅の好意を寄せてる彼女らに失礼ですよ」

 

「……その」

 

「これは相当重症ですね」

 

「……すみません」

 

「そうですね。同時に3人というのもかなり、珍しいと思いますし、しかも近しい女性の方々のようですし……うーん。私だけでは……老師様はああ見えて、昔は女性にかなりルーズの方だったらしいですし」

小竜姫様は両手を祈るようなポーズで握りしめながら、考えにふける。

 

「はぁ……」

 

「比企谷さん。あなたの自身に対しての自信の無さはおいおい克服するとして、彼女らに対しては一人一人真剣に考えてあげないといけません。それとも比企谷さんは他に好きな人が居るのですか?」

 

「い、いえ……その、憧れてる人は居るのですが、現実味が無くて……、恋愛と言われると違うような気がします」

そう、俺が憧れる女性とは目の前の小竜姫様とキヌさんの二人なのだ。それは俺だけが秘めた思いで留めたい。

 

「そうですか、ならば考えて上げてください。考えて考えて考え抜いても答えが出ないのであれば、また私に相談してください。一人で考えるよりも気分がずっと楽ですよ」

 

「ありがとうございます。小竜姫様。聞いていただいただけで、随分と楽になりました。俺の自信の無さというのは、ちょっと戸惑ってますが……彼女らに対して、一人づつ考えて行くことはできると思います」

 

「比企谷さん。一つ言っておきます。彼女らが幸せになる方法が一番ではありません」

 

「え?」

 

「もちろん彼女らの事も大事です。しかし一番大事なのはあなた自身が一番幸せになる方法を選択する事です」

 

「……その、それは…」

俺はその言葉に衝撃が走った。

俺は小竜姫様が言われた俺自身が一番幸せになる方法という選択肢をと、言われるまで考えもしていなかったからだ。

 

「彼女らは、あなたが好きなのと同時にあなたにも幸せに成ってほしいと願っているはずです。願わくば二人一緒にと……だから、あなたはその女性となら一緒に幸せに成れるという方を選択しなければなりません」

 

「……難しいですね。中々答えが出そうもないです」

 

「今はまだ、スタート地点に立っただけの話です。あなたの話を聞くに、彼女らはこれからあなたに好きになってもらうように色々とアピールすると宣言してます。ある意味あなたはそれに乗っかり、あなた自身が魅力的だと思うアピールをされた方を選択すればいい話です。彼女らはそこまであなたに道を示し、準備し、あなたに同時に告白をしたのだと思います。あなたが自分に自信が無いのと、あなたが恋愛が不得意だと言う事を加味しての事だったのでしょう」

……そこまで、考えてくれていたのか……俺の性格的な事も考え、卒業までという長いスパンまで用意してくれたということか……。

やはり俺は全然ダメな奴だな。

あいつ等は、こんなにも俺の事を考えてくれていたのに……気づきもしなかった。

 

「小竜姫様、こんな事を聞いて頂き、ご指導まで、本当にありがとうございました。何とか前に進めそうに思えてきました」

 

「それは何よりです」

小竜姫様はホッと息を吐いていた。

 

 

 

俺はこの後、修行に集中することができた。

またもや小竜姫様に救われた。まだ、2度しか会っていないのに、2度も救われた。

やはり天界の本物の女神様だ。

誰にも相談できないような悩みを2度も導いてくれた。

小竜姫様に出会えて本当に良かったと思う。

 

 

 

午後と夜間の修行を終え、温泉に入り疲れを癒す。

「横島師匠……今日の小竜姫様と俺の話を聞いていたでしょう?」

 

「ん?なんだバレてたのか」

 

「小竜姫様が最後に目配せしてくれたんで、多分そういう事なのだろうと」

 

「はーーーーーーーっ!!いいいなーーーーーーー!!美少女同級生にキスされて、二人に同時告白とか!!しかも年上の美女からもキスされて告白とかーーーーーー!!」

 

「……いえ、そうなんですが」

 

「学校では嫌われ者のボッチとかーーっ!仲がいい女の子がいないとか!!さんざん言ってたのにーーーっ!!なんじゃそりゃーーーーーーーー!!」

横島師匠はいきなり飛び掛かってきて、俺は後ろから羽交い絞めにされる。

 

「あの時は!本当にそうだと思っていたんですよ!!」

 

「この超リア充がーーーーーー!!このこのこの!!」

俺は羽交い絞めにされたまま、拳で頭をぐりぐりされる。

 

「痛たたたたっ!!仕方がないじゃないですか!!まさか告白されるとは思っても見なかったんですから!!雪ノ下には嫌われてるんじゃないかと思っていた位で!」

 

「はぁあああああ!?このニブチンがーーーー!!どう見ても、雪ノ下ちゃんは八幡に惚れてただろ!!態度見たら普通わかるぞ!!」

 

「いや、毒舌やら、罵られてるんですよ!?それのどこが?」

 

「かーーーーっ!!アホだろ八幡!?あれは完全に嫉妬だ!!八幡が他の女の子とイチャイチャしてるからだ!!」

 

「はぁ?俺が他の女の子と?まさか由比ヶ浜の事!?」

 

「アホすぎだろ!!確かに由比ヶ浜ちゃんもそうかもだけど、それ以上にお前!!他の女子生徒にも優しいだろ!?超優男風に!!」

 

「誰が超優男ですか!そんな事をした覚えが無い!!」

 

「お前!!ナチュラルに女の子のハートをつかむような言動をしたり行動をしてるんだよ!!」

 

「そ、そんなはずは!?」

 

「くそっ!なんだそりゃ?天然か?このこのこのこのこのこのーーーーー!!」

 

「痛たたたたたっ!じゃーー!!師匠はなんなんっすか!!」

 

「俺!?」

横島師匠は矛先を自分に向けられ、驚いた顔をしながら俺への羽交い絞めを解いた。

俺はそのまま師匠に向き合った。

 

「キヌさんにはベタホレされ!!小竜姫様もですよ!!そんで平塚先生をストーカーにまで仕立て上げて!!」

 

「おおおおキヌちゃんはな、そのなんだ、そのだな……そう、女子高に通ってて、年近い男は俺しかいなかったから勘違いしてるんだ」

 

「……本気でそう思ってます?」

 

「す、すまん。………小竜姫様の好意は恋愛というよりも、身内に向けてるものだ。俺は小竜姫様から見れば、初の弟弟子だからな」

 

「……本気でそう思ってます?」

 

「そうだと思うぞ!これは!!俺だって小竜姫様が好きだぞ。尊敬もしてるし!!」

 

「……平塚先生は?」

 

「どうしよう八幡~~」

急に情けない顔になる横島師匠。

 

「……本当にどうしたらいいんですかね。ちゃんと言葉で振らないとダメすよ」

 

「いや、俺もあの後ちゃんと話したんだ。俺は仕事柄、あなたのような立派に教職をまっとうする方と付き合えないって」

 

「まあ、いいでしょう。師匠にしてはまともだ」

 

「そしたら、なんて言ったとも思う?仕事なんて今すぐやめて、一緒に妖怪を倒すって!!だから俺は慌てて止めるしかなかったんだ!!どうしよう八幡~~」

平塚先生なら言いかねない。あの人まだ28歳だろ?まだもうちょっと大丈夫なのに、あの切羽詰まった感はなんだ?

 

「本当にどうしたらいいんだろうあの人、悪い人じゃないんですよ。美人だし、性格は男っぽいけど、スタイルは良いし真面目だし。でも恋愛が全然ダメなんですよね。………まあ、俺も人の事を全く言えた義理じゃない事が分かりましたが」

 

「………はぁ、なにやってるんだろ俺」

横島師匠は肩を落とす。

 

「平塚先生の事は何か考えましょう?うーん。誰か紹介するとか?」

やっぱ西条さんとか……美神さんの相手をギリギリだが何とかできるんだから、平塚先生も大丈夫だろう。

 

 

「……俺さ……昔、付き合ってた女性が居てさ、それが今でも忘れられないんだ」

横島師匠は温泉の淵に背中を預け、空を見上げながらぽつりぽつりと語りだす。

 

「……それって」

 

「もしかしたら、小竜姫様かおキヌちゃんか美神さんに聞いたかもしれないが、短い間だったけど俺の恋人だった女性がいてさ。でも3年前にさ、とある大きな霊災で俺を庇って……死んじゃって……もしかしたら、俺が選択を誤らなければ、もし俺にあの時もっと力があればってさ……今も考えちゃうんだ」

 

「師匠……」

 

「だから、俺は今、誰とも付き合えない……そりゃおキヌちゃんの気持ちは嬉しい。でも……こればっかりは」

 

「じゃあ、ナンパなんてやめりゃいいのに。そんなんだから平塚先生を捕まえちゃうんですよ」

 

「ナンパは趣味みたいなものなんだけどな。一夜限りだったらよくない?」

 

「全然良くないですよ!!性欲みたすだけだったらプロの夜の店に行けばいいじゃないっすか!!」

 

「…………えーっと」

 

「………既に行ってたんすね。まさか、出張の度に……海外とかでも」

冗談のつもりだったんだが……既に行ってたとは……

 

「海外出張は西条のおっさんが監視してるから無理なんだよ!!バレて美神さんに報告されるしな!!」

行こうとはしたんだな。そんで西条さんにバレて美神さんに告げ口されたと……そういえばなんで、年上の西条さんは呼び捨てでため口なんだろうこの人。まあ、普段から結構いがみ合いはしてるが、なんだかんだと息は合ってるよな。

本当は仲がいいのだろう。

 

「そうですか…そんなに頻繁に行ってるわけじゃないんですね」

 

「舐めるな八幡!ちゃんと行きつけの店をキープしてるわ!」

 

「という事は……夜によくふらりと消えるのは修行ではなく、夜の店に行ってたんすか?」

結構頻繁に行ってるってことか!?何やってるんだか!この人は!

 

「……アレ?ばれた?」

 

「はぁ、キヌさんが可愛そう過ぎる!とにかくナンパ禁止!!夜の店は平塚先生を振るまで自粛!!いいっすね!!しばらくはエロブルーレイで我慢してください!!」

 

「えーーーっ!!そんなーーー!!俺の存在意義がーーー!!」

 

「………あんたの存在意義はエロ方面だけかよ」

 

「はぁ、ほんと俺何やってるんだろ?」

横島師匠はガクッと肩を落としていた。

どうやら、昔の恋人の事を引きずってるのは確か見たいなんだが、やってる事が支離滅裂なんだよな。しかも本人がそれを自覚してるし……。言い換えれば、それだけ亡くなった恋人さんの事が好きで今も忘れられないって事なのだろう。前後不覚になる位に。

普段の師匠からはまったく想像できないが、そういう事なのだろう。

まあ、元々の性格によるところも大きいようだが……

 

「……横島師匠。人を好きになるというのは大変な事なんですね」

 

「そうだな。俺もよくわからない。理屈じゃない気がする。最初はホント何時ものノリで、脈ありな彼女にエッチな事だけが目的な感じで、その接していたというかなんていうか。でも相手が本気で思ってくれてる事が分かって、俺も頑張らないと思ってたら、いつの間にか好きになってた」

 

「らしいと言えば、らしい感じですね」

 

「でも、一つだけ言えることがある。俺は彼女を何が何でも守るべきだったと……何かを犠牲にとかじゃない。やはり守るには俺自身に覚悟と力が必要だと痛感した。手遅れになってから気づいたよ。確かに当時も努力はしたつもりだったけど、後になればなるほど、まだまだ足りなかった、もっとやれたはずだと後悔するんだ。だから、俺は二度と後悔しないようにここで鍛えて貰ってる」

 

「……一つ聞いていいですか。今の横島師匠の強さでも足りないと感じてるんですか?」

 

「足りない………いや、自信が無い。……そうか、そうかもな俺はおキヌちゃんと真正面に向き合うのが怖いんだ。また俺なんかと付き合ってしまったために誰かが傷つ付いてしまうかもしれないじゃないかって。……いや、それは言い訳だな。俺自身がまた大切な者を無くしちゃうんじゃないかって、怖がっているんだ。俺は自分に自信が無いんだと思う。特におキヌちゃんは家族同然だと思ってるし………無くしたくない二度と」

今、横島師匠は本音で話してくれてる。俺に心情を吐露してくれている。

俺はそんな師匠の信頼を心地よく感じている。

それと、横島忠夫という青年の心の奥底はやはり真面目で誠実で純粋だと……それが故に辛い過去の経緯から、極度に憶病になっている……

 

「……そうですか」

 

「だからさ、京都で八幡が二人を必死になって守る姿はさ。俺には眩しかった。俺にできなかったから……それと同時に嬉しかった」

 

「……俺一人では到底無理でした。あの時は俺は力の無さを痛感しました。師匠が助けに来てくれたから……」

あの時、3人無事だったのは、横島師匠が助けに来てくれたから……俺にはこの人が居たからだ。

もしかすると、横島師匠を当時、助けてくれる人は居なかったのか……いや、もしかすると助ける事が出来るとかそう言うレベルの次元ではない何かと戦っていたのかもしれない。今の横島師匠は規格外に強い。はっきり言って人類最強だ。3年前の横島師匠もきっと、今の俺よりもずっと強かったはずだ。なのにそんな事に……

 

「俺はこんなだから、八幡にアドバイスなんてものは出来ないし………小竜姫様が言ってくれたから」

 

「いや、師匠からアドバイス貰おうなんて、サラサラ思ってませんよ」

 

「おいーーーーー!!何じゃそれ!!さっきまでのいい流れは何だったんだ!?」

 

「師匠に恋愛相談なんて、女性関係にルーズで、女癖悪いし、変態で痴漢だし」

 

「いや、否定出来る要素が全く無い。……そこまで言わなくてもいいだろ?一応師匠なんだけど」

 

「じゃあ、キヌさんの事、如何にかしてくださいよ」

 

「う……、じゃあお前はどうなんだよ!!このリア充!!雪ノ下ちゃんや由比ヶ浜ちゃんのラブラブ視線に全く気が付かなかった鈍感野郎な癖に!!」

 

「俺は小竜姫様にアドバイス貰いましたんで、なんとかなるんで」

 

「ぷっ、それで何とかなると思ってるのか八幡!?絶対お前、他にも女の子引っ掛けてるに違いない!!何せ天然リア充モテ野郎だからな!!」

 

「はぁ!?何がリア充だ!!あんたもそうだろ!!キヌさんに小竜姫様って羨ましすぎるんだよ!!」

 

「あーーーっ、言ってやるぞ!!雪ノ下ちゃんに由比ヶ浜ちゃんに!!」

 

「それは言葉の綾で……じゃあ俺は!!平塚先生をたきつけてやる!!」

 

「げっ!ぐぬぬぬぬぬ!!このボッチの仮面を被った超リア充野郎!!勝負だ!!」

 

「受けて立つ!!聖母と女神に好かれてるくせに!!このチキン野郎!!」

 

俺の頭の中でゴングがなり横島師匠に殴りかかる。

横島師匠も同時に腕を振るって来て、お互いの拳が顔面にめり込む。

 

裸で温泉の中で殴り合いが始まり、遂には、術式まで出てしまう始末。

岩石で出来た温泉は徐々に破壊されていく。

 

 

「何やっとるんじゃ!!」

 

突如として俺の頭に衝撃が走る。俺はその痛みに耐えきれずそのまま温泉に沈むが、無理矢理引き上げられた。

どうやら横島師匠も同じようだ。

 

見上げると、山のような巨大な猿……俺達をひょいっと掴み上げ睨んでいた。

「お主ら、元気が有り余っているようじゃな」

 

「いや~~お師匠。お日柄も良く。これはちょっとした弟子との訓練で!あはっあははっ!」

横島師匠は摘み上げられた状態で若干顔を引きつらせて愛想笑いをする。

 

「……いえその」

ええ?横島師匠のお師匠って……もしかしてあの斉天大聖老師の本性?ええ?小柄な老人みたいな感じだったのに……マジ怖いんですけど。霊圧も半端ないんですが………その凄まじい霊気に俺は言葉が出なかった。

 

「ほう、じゃあわしも混ぜてくれんかのう、その訓練とやらに」

 

「いや~、お師匠の立派な毛並みがお湯に濡れちゃうんで、また今度という事で……」

横島師匠はそう言って、逃れようとじたばたするが……

 

「温泉風呂はめちゃくちゃになっておるからな。修練所でも行こうかのう」

斉天大聖老師の目が怪しく赤く光る。

 

「……いやいや、その……すみませんでしたーーーー!!はちまーーーん!お前も謝れーーー!!」

 

「その……すみません」

 

「うむ。横島、風呂は後で直しておけ」

 

「ほっ」

斉天大聖老師のその言葉に横島師匠はホッとした顔をしていた。

が……

 

「しかし、訓練は別じゃーーー!!わしとの組手じゃ!!気を失うまでやるぞい!!」

斉天大聖老師の目は怪しく赤く光ったままだ。何故かそう言った老師は嬉しそうに見えた。

 

「いいいいやーーーーーーーーーっ!!降ろして、お家帰るーーーーーーー!!」

横島師匠は涙をちょちょ切らしながら、じたばたする。

横島師匠が取り乱す程の修行ってどんなのだよ。

もしかしてこれ、俺も受けるのか?……まあ、一度は受けてみたいと思ってたが……

 

 

 

しかし俺の考えは甘かった。

一撃だ。斉天大聖老師の軽くふった如意棒一撃で俺は豪快に吹き飛ぶ。意識は辛うじて保つことができたが立ち上がる事ができなかった。

サイキックソーサーで防御したはずなのに、あの威力。

 

「いいいやーーーーっ、勘弁ーーー!!どしぇーーーーー!!死んじゃう、それ死んじゃうからーーーー!?」

横島師匠はその後、組手というなの拷問劇を行い、一晩中横島師匠の叫び声が響いてた。

……そりゃ、強くもなるよな。あの防御力はこうして出来上がったのか。

 

 

こうして、今回の妙神山での本格的な修行が始まったのだった。




再開はもう少し待っててください。
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