やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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感想ありがとうございます。
誤字脱字報告ありがとうございます。

前回の続きで、いよいよ、あの人登場!



(85)由比ヶ浜家の居候

俺はスマホのナビマップを見ながら、由比ヶ浜の自宅に向かう。

由比ヶ浜の自宅は公共団地群の四階建てマンション最上階の角部屋だった。

 

ベルを押し、インターフォン越しに名乗ると、ちょっと待ってねという若々しい声の女性が対応してくれた。

パタパタという足音がし、直ぐに玄関扉が開く。

「ヒッキー!来てくれてありがとう!」

 

「ああ……由比ヶ浜ちょっと出てきてもらっていいか」

 

「なになに?」

俺は笑顔の由比ヶ浜を、マンションの屋上へと続く階段の踊り場まで連れだす。

 

「……大丈夫そうだな」

俺は一応、霊視で由比ヶ浜の健康状態や呪いなどで操られていないか調べる。

 

「ヒッキー、心配してくれたんだ!」

 

「そりゃそうだろ、見ず知らずの爺さんとその保護者が、女親子二人の家に転がり込んだんだ。何かあると思うのが当然だ」

 

「大丈夫だよ。お爺ちゃんはちょっとボケてるけど、マリアは良い人だから」

危機意識が薄すぎるぞ由比ヶ浜。世の中は良い人ばかりじゃないんだぞ。

 

「由比ヶ浜……今、お前の家に誰と誰がいる?」

俺は由比ヶ浜にこんな事を聞いた。

その理由はこうだ。

俺は由比ヶ浜の家をインターフォンを鳴らす前に、軽く霊視を行った。

人の気配を由比ヶ浜を含めて3人確認した。そして、1人は衰えは見せているが霊能者並みの霊気を感じる。その時点で何か不味い感じがするが、そこまでは常識の範囲内だ。それ以外に妙な気配が一つ、普通じゃあり得ない反応だ。幽霊でも妖怪でもない。霊気構造体を継ぎはぎしたような存在、…人工幽霊にも近い存在のような反応を示していた。……もしかすると、そのボケた爺さんが霊能力者で、何らかの存在を使役している可能性があるのだ。何かの目的で由比ヶ浜の家に転がり込んだ。いや、身を隠すために転がり込んだ可能性もある。

 

「へ?ママとお爺ちゃんとお爺ちゃんの保護者で孫のマリアだよ」

由比ヶ浜は真顔で質問する俺に、不思議そうに返答をする。

由比ヶ浜と由比ヶ浜の母親(ガハママ)の霊気、気配は感じた。霊能力者並みの気配は……多分。爺さんの方だろ。ならば、由比ヶ浜が言うマリアとはなんだ?

 

「由比ヶ浜。本当に大丈夫なんだな」

 

「うん。ヒッキー心配してくれるのは嬉しいけど。大丈夫だって、私もママも人を見る目だけはあるから!」

そう言うが、人じゃないのが混ざってるぞ。由比ヶ浜。

 

「……そうか、わかった。俺をその爺さんとマリアさんに会わせてくれ」

 

「うん!でも、ヒッキー、マリアに鼻の下伸ばしたらダメだからね!」

由比ヶ浜は、俺にそんな注意をしながら、自宅へと俺を促す。

 

「そんな事するわけがないだろ」

俺はそう言いながらも、上着やベルトに忍ばせてる神通棍と各種札に意識をし、何があっても対応できるような心構えをする。

念のため、由比ヶ浜の背中には黙って護符を張りつけた。

 

まだ、相手が何者なのかもわからない。

ただ、霊能者っぽい反応と、妙な反応があるだけで、実際何も起こっていないため、オカルトGメンやGS協会に伝えるわけにもいかない。

 

俺がその爺さんとマリアとかいう存在を見極め、危ない存在だとわかった時点で、相手に悟られないように由比ヶ浜と由比ヶ浜の母親を逃がし、オカルトGメンやGS協会に通報すればいい。

その場での戦闘は極力抑えたい。最悪のパターンとして戦闘が起こった際の対処の仕方を頭の中でシミュレートする。

 

玄関まで行くと、由比ヶ浜と雰囲気が似た年若い女性が待っていた。

「あらあら、結衣ったら彼と内緒話?……君が噂のヒッキー君ね。結衣のママでーす」

へ?めちゃ若いんだが……姉の間違いじゃ?どう見てもうちの母親と同じ年代には見えない。

それよりも、由比ヶ浜の家族内では俺のあだ名はヒッキーで確定してるのかよ。

そのあだ名、娘さんしか使ってないんで、それが俺のあだ名だと思われると心外なんですが。

 

「こんにちは、由比ヶ浜さんの部活仲間の比企谷八幡です」

俺は面喰いながらも、この若そうな母親(ガハママ)に自己紹介をする。

 

「あらやだ。聞いていたよりもずっと大人っぽいわ」

ガハママは、おっとりした口調でそんな事を言いながら、俺の両手を握って来る。

どうやら由比ヶ浜のあの無意識のスキンシップは母親譲りなようだ。

 

「ママ!恥かしいからそういう事しないでって!」

 

「もう、結衣ったら恥かしがらなくっても良いじゃない。ほの字なんでしょ?」

さらに俺の腕を取るガハママ。その、娘さんのよりも大きくて柔らかい物が腕に挟まるように当たってるんですが……母親とはいえ、お姉さんみたいな見た目なんで、俺も男なのでやめていただけないでしょうか?

 

「ママ!いい加減にして!」

由比ヶ浜は俺の反対の腕を強引に引っ張る。

 

「はいはい、ヒッキー君上がってね」

ガハママは俺の腕をパッと離し、先に玄関に入りスリッパを用意してくれた。

 

「……お邪魔します」

 

「結衣の部屋にお茶菓子を持って行こうと思うのだけど、お邪魔かしら?」

 

「もうママったら!それはいいから!ヒッキーね。お爺ちゃんとマリアに会いたいんだって」

 

「そうなの?じゃあ、リビングにどうぞ。丁度お爺ちゃんとマリアちゃんがお茶してるから」

ガハママはそう言ってリビングへ俺を促す。

 

その先のリビングから、老人の声が聞こえてくる。

「姫~~、菓子はまだかいのう」

 

「はいはい待ってねお爺ちゃん。今持って行くから」

何、ガハママってこの爺さんに姫って呼ばれてるのか?なぜ?

 

「ママさん。マリアが・準備・します」

若い女性の声がする。

しかし、俺の霊視ではその声の主は人間と認識していない。一体どういう事だ?

 

「いいのよ。マリアちゃんも座ってて、今結衣のボーイフレンドが来てね。お爺ちゃんとマリアちゃんにも挨拶がしたいみたいなの」

 

俺は油断なくリビングに入り、ソファーに座る2人を見る。

マリアと呼ばれる女性の姿をした存在がまず目に入る。

その姿を見て俺は驚く。

由比ヶ浜に似ていた。髪の色も由比ヶ浜と同じだ。いや、顔立ちは、どちらかというとガハママに似ている。

ガハママをもう少し若くして、無表情にした感じだ。3人並べば三姉妹といっても違和感が無い。……しかしなんなんだ?霊的構造は明らかに人とは異なる。ドッペルゲンガーか何かか?

敵意や悪意はなさそうだが。

 

その横で、呑気にお茶をすする爺さんを見る。

日本人じゃない。明らかに白人だ。

ん?……この老人どこかで見た事が……

 

俺は取り合えず挨拶することにする。

「こんにちは、初めまして……」

 

すると老人が俺を見るなり、目を見開き、立ちあがり、指さし……

「おお?おうおう、その目はガリレオではないか!ひさしいのう」

 

「……いえ、違うんですが」

またこの目か…今度はどんな勘違いなんだ?ガリレオって、まさか……

 

「何を言っておる。この世で、そんな捻くれた目で世の中を見据え往来するやからはお主しかおらんじゃろガリレオ・ガリレイ」

 

「………いえ、俺はガリレオじゃなくて、比企谷八幡といいます。由比ヶ浜結衣さんの部活仲間です」

おい、ガリレオ・ガリレイって、中世の天文学者のガリレオだよな!俺って、ヨーロッパ人みたいに顔の彫が深くないよな。この目かまたこの目なのか!?今度はガリレオ・ガリレイかよ!!……ちょっと待てよ。ガリレオの肖像画を見たことがあるが俺に全然似てないし、目は腐ってなかったよな。しかもこの爺さん会った事があるような言い方してるがガリレオは400年前の人物だぞ。やっぱりボケてるのか。ここは普通にスルーした方が良いな。

それにしても、この爺さんどこかで見たことがあるんだが。

 

「お爺ちゃん、ガリレオじゃなくて、ヒッキーだよ」

由比ヶ浜は優しく爺さんに訂正するが、…ヒッキー押しするのはやめてもらえないだろうか?

 

そして、明らかに人間の霊気構造が異なるマリアと呼ばれる女性が自己紹介をし、爺さんの代わりに、爺さんの紹介もする。しかし、言い回しが奇妙で単調だ。

「マリア・です。こちらは・ドクター・カオス。ミズ由比ヶ浜・ミス由比ヶ浜に・お世話に・なっています」

 

ん?ドクター・カオス……あのドクター・カオスだと!!それにマリア……マリア!?ま、まさか……いや、ドクター・カオスの顔写真は確かに業界紙や事務所に飾ってある写真で見たことがある。間違いない。

 

「…失礼ですが、ヨーロッパの魔王ドクター・カオス氏と、その相棒のマリアさんですか?」

俺は恐る恐るという感じで聞き直した。

 

「ふはははははっ!ヨーロッパの魔王とな!そうじゃドクター・カオスとはわしのことじゃ!ガリレオなんじゃ、もう耄碌したか?」

急に元気になったぞ?しかしまだガリレオだと思ってるのかよ!ボケてるのはあんただろ!

 

「イエス・ミスタ・比企谷」

 

「え?ヒッキー、知ってる人?」

「ヒッキー君、お爺ちゃんとマリアちゃんって有名人?」

何言っちゃってるんだこの親子は!ドクター・カオスといえばGS業界ならず、一般的にも認知度が高いはずだぞ!何せ1000年以上生きてるんだからな!度々、オカルト番組なんかの話題にもなってるぞ!まあ、その内容は、1000年生きてる説を否定するような感じだ。しかし、ヨーロッパ諸国や各国、国連、さらにGS協会やオカルトGメン機構も1000年存在していたことを確認し認めているからには、真実なのだろう。

まてよ。1000年生きてるカオス氏ならば、ガリレオに会った事があるか……もしかして、実際のガリレオって目が腐ってるのか?あの有名な肖像画は腐れ目を修正したものなのか!?

 

ヨーロッパの魔王ドクター・カオス。

科学や魔法問わず、数々の発明や発見を行って来た天才錬金術師だ。

その錬金術を駆使して、長寿を実現させたと。

今も尚、過去に作成されたドクター・カオス謹製の魔法道具などは高値で取引されてる。

最大の発明は、人工霊魂の生成だった。それが目の前に居るマリアさんだ。

彼女は800年前にドクター・カオスが作成した人工霊魂を搭載したアンドロイドだと言われている。

これで納得がいった。マリアさんの霊的構造が普通ではないのに……、あれが人工霊魂ということか。しかし見た目は人間そのものだ。とても人工物には見えない。多少口調に違和感はあるが……、姿からは人と判別が付かないだろう。

 

ちなみに、ボケてしまっているが、ドクター・カオスはこれでもSランクGSでもある。

 

とりあえず、二人の身元は分かったが、予想外も良いところだ。

そういえば、フランス在住のドクター・カオスが2か月前から行方不明と先月のGS業界紙に掲載されていたぞ。これってGS協会に知らせた方がいいんじゃないか?

しかし、なんでまた、ヨーロッパに居たはずのカオス氏が日本に居るんだ?

美神さんや横島師匠の話じゃ、3年前に日本に1年程住んでいたそうだが……

 

「由比ヶ浜、ドクター・カオス氏は、現代科学の基礎や数々の発明をした世界的に有名な歴史的偉人だ」

俺は由比ヶ浜達に簡単にカオス氏の事を説明する。

 

「ほえー、そうなんだ。お爺ちゃん凄い人だったんだ」

「あらやだ。ママ、お爺ちゃんからサイン貰っちゃおうかしら」

……この似た者親子は、大丈夫か?

 

「それで、マリアさん。カオス氏が日本に来られた目的は何ですか?」

俺はそもそもの疑問をズバリ、マリアさんに尋ねる。

 

「……ミスタ・比企谷。ネット上・検索。データベースに・アクセスしました。日本GS協会所属・CランクGS。昨年度世代・最有望・ゴースト・スイーパー。美神令子・除霊事務所所属。横島さん・の弟子。おキヌちゃん・の後輩。ミス美神・の部下。……今は・黙秘します」

やはりアンドロイド。直接ネットか何かにアクセスして俺の情報を得たと言う事か……しかし、俺がGSで、横島師匠たちの知り合いだと、ドクター・カオス氏の都合が悪いと言う事か?

キヌさんから、カオス氏とマリアさんは友達だと聞いた事があるが……確かに、マリアさんの単調な口調からも、キヌさんと師匠とは、親しげな感じはうける。

 

「え、マリア。ヒッキーって有名人なの?」

「ヒッキー君……ゴースト・スイーパーだったの?」

由比ヶ浜はマリアにそんな事を聞いていたが……

不味い、ガハママに俺がGSだと知られてしまった。娘の近くに危険人物(GS)がウロチョロしてるんだからな。これは……

 

「あらあらやだー。どうしましょう。結衣とヒッキー君の挙式は何時?」

「ママ!何いってるの!」

「まだなの?ママは結衣の年には、もうお腹の中に結衣がいたのよ」

「ママ!」

「それでね。パパが責任とるってママが18歳で出来ちゃった婚したんだから、挙式後直ぐに結衣を産んだのよ」

「ママの事はいいから!」

「その時のパパって大学3年生だったから、お金が無くて苦労したわ。でもヒッキー君はその年で立派なお仕事についてるんだから。結衣は安泰ね」

「もうママ!!いい加減にして!!」

へ?拒絶するどころか、何この会話。何かガハママ惚気だしたぞ。しかも、大学生が4つ下の高校生に手を出したのかよ。17歳で妊娠させるって、どうなのよそのガハマパパは!……という事は今、ガハママは34、5歳ぐらいってことか。それにしても平塚先生よりも若く見えるぞ。気持ちが若いって事か……いやいやいや、そんなことよりもなんだこの話の流れは?……俺が由比ヶ浜と結婚する流れになってるんだが!

ガハママがそういう事を言うから、今の今迄、緊急事態で忘れていたのにだ。10日前の由比ヶ浜の告白とキスを思い出してしまった。

ちょ、勘弁してくれ……急に恥しくなってきた。

 

「あら、ヒッキー君も顔を赤くして、まんざらでもないみたいよ結衣」

「ママのバカ!!」

俺も顔を赤くしているだろうが、それ以上に由比ヶ浜は顔を真っ赤にしてガハママに抗議する。

 

「ママさん・ミスタ・比企谷は・結衣さんの・伴侶と・なるのですか?」

マリアさん!それは勝手にガハママが言ってるだけだから!

 

「もう!マリアも!まだ違うから!」

 

なんだこのアットホームな感じは、まじで傍から見ると、仲がいい三姉妹に見えるんだが。

 

ボケたカオス氏だけはこの会話に入らず、のんびりお茶をすすっていた。

 

 

そして由比ヶ浜とガハママが落ち着いたところで、マリアさんは語りだした。

 

「ママさん・結衣さん・黙っていて・申し訳ございません・ドクター・カオスと・マリアは・ある目的で・日本に来ました・でも・ミス美神や・GS協会に・知られるわけにも・いきませんでした。横島さんを・頼ろうと思って・ましたが・この10日間・発見できず・ママさん・結衣さんに・頼って・しまいました」

マリアさんはお茶をすするカオス氏を余所に、由比ヶ浜親子に深く頭を下げる。

……どういう事だ美神さんとGS協会に知られたくなくて、横島師匠を頼るって……この10日間横島師匠は俺と妙神山に居たんだ。そりゃ探せるわけがない。

 

「マリアちゃん。気にしないで」

「マリア、大丈夫だよ」

ガハママと由比ヶ浜は優しく微笑み返す。

 

「ミスタ比企谷は・結衣さんが・好意をよせて・横島さんが・弟子にした人です。信用して・お話・します。出来ましたら・協力願います」

 

そして、マリアさんが語りだした話は……




スタイル準でいくと
ガハママ>マリア>結衣となってます。
ガハマパパは……アレですね。年下の可愛い女房の言うことなら、何でも聞いちゃうようなお人好しさんですね。きっとそうだと信じたいw



前回の小町ちゃんですが、いろいろとお騒がせな感じですが。
そう、いよいよ小町ちゃんは総武高校に入学するんでw
その時にまたw

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