やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
今回はガイルサイドです。まあ、その大きな話の中ではあまり必要が無いお話ではありますが……一応。
前回の皆さんが思われてる疑問点で、ガハママの若返りについてです。
かなり表現を飛ばし過ぎてました。
カオス氏は
①理性や若返りの件や最近の記憶以外の現在必要ない記憶をネット上に潜ませる。
②術式魔法陣などを用意する。
③若返りの工程のための起動術式を起動
④カオス氏の残ってる理性や最近の記憶をすべてマリアの内部記憶装置にアップロード
⑤若返りの霊薬を口から投下
⑥マリア内部の記憶装置に保存した最近の記憶やらと、過去の記憶関連で必要な記憶だけカオス氏にダウンロード
⑦カオス氏が目覚める。
でもって、ガハママは
②~⑦を行ったのですが、②は既に準備が出来てる状態でした。③はガハママの20年程度の記憶容量はマリアの内部記憶装置に収まるレベルなので、ネット上にアップロードする必要がなかったためです。
そんで短時間で若返りが出来たという感じです。
こんなんでどうでしょう?
由比ヶ浜家でドクター・カオス氏と出会った翌日。
「おはよう。比企谷君」
雪ノ下が俺の自宅を訪ねて来た。
大人し目の白のワンピース姿の雪ノ下は、若干気恥しそうな顔をしていた。
「う、うっす」
気恥しいのは俺も同じか……
「いらっしゃい。雪乃さん!どうぞどうぞ!」
何故かテンションの高い小町。
今朝からこんな調子だ。
そんで「全力でサポートするからね。小町にお任せ!ん?今の小町ポイント高い!」とか言っていたのだ。逆に心配なんだが……今迄の小町の行動といえば、一緒に出掛ければ急に用事があるとか言って居無くなったりと、そんなのばっかりだ。
「……」
「……」
リビングのソファーに下を向いて座る俺と雪ノ下。
勿論隣ではない。
L字型に配置してる三人用と二人用のソファーで、俺は二人用のソファーに腰掛、雪ノ下は三人用のソファーに座ってる。
二人とも無言のままだ。
いったい何を話したらいいのか、さっぱりわからん!
俺はチラッと雪ノ下の方を見る。
雪ノ下も綺麗な姿勢だが、視線はずっと下を向いていた。
……やっぱりこうしてみると、雪ノ下は美少女だ。黒く長い髪に、整った顔。肌も透き通るように白い。そして……うっすらとピンク色に染まる唇。
また、告白の時のことを思い出してきた。
やばい、かなり緊張してきたぞ。
普段部室で話す分にはこんな事は無かったが……
やはり、自分に好意を向けてくれる少女、しかも絶世の美少女だ。
緊張しない方がおかしい。
葉山はいつもこんな緊張感の中で、告白されたり、告白された少女を振ったりしてるのか?
しかもあいつ、振った一色とその後も普通に会話をしたりしてたぞ。
あのイケメン、メンタル強すぎだろ!
こそっと、その秘訣とか教えてくれないか?
リビングに小町が家の飼い猫カマクラを抱っこしながら入って来る。
「雪乃さんカー君(カマクラ)でーす。飲み物持ってきますんで、カー君をよろしくです」
「小町さん。ありがとう。お構いなく」
雪ノ下は小町からカマクラを受け取り、そのまま膝に乗せる。
小町はその姿を見た後、俺を見て目をキラキラさせていた。
まるで、お兄ちゃん、チャンスだよと言っているかのように。
小町は併設してるキッチンに行き、ポットでお湯を沸かし始めた。
雪ノ下の顔は綻び、膝の上に乗せたカマクラを愛で始める。
俺と雪ノ下の間では会話も無く。
コポコポとポットのお湯が沸く音と、小町がお茶菓子を用意する音がリビングに響く。
何か話さなければとは思うが何も思い浮かばない。
これならば、妖怪や霊と会話していた方がまだましだ!
そのうち小町が、お盆を携えて、キッチンからリビングに戻って来て、雪ノ下と俺に、湯飲みに入ったあったかい緑茶と、イチゴ大福を出してくれた。
「雪乃さん。カー君は喉を触られると喜ぶんですよ!」
「ありがとう小町さん。あなたは喉が弱いのね」
雪ノ下はそう言って、カマクラに話しかけ喉を優しく触る。
するとカマクラは気持ちよさげにゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
小町が俺に目を細め、視線を送って来る。
これは何かしゃべれと言ってるのだな。
いや、しかし……何を話せば。
何かきっかけを!
部室で雪ノ下と話す会話といえば、部活の話題や今度実施されるオカルト事務管理資格の話位だ。
だったら!
「ゆ、雪ノ下、今度のオカルト事務管理資格試験はいけそうか?」
「そうね。氷室さんにも教わってるし、それ程難しいものではないから合格するとは思うわ」
「そ……そうか」
それで会話が終わってしまった。
そりゃそうだよな。勉強ができる雪ノ下にとって、あの位の試験範囲量はどうってことないか、しかも実務を行ってるキヌさんから直接教わってるしな。
「お兄ちゃん。ちょっと来てくれるかな?」
小町が笑顔で指でチョイチョイと俺をリビングの外に誘う。
俺は小町について行き、リビングを出ると、小町は洗面所で待ち受けていた。
「お兄ちゃん!なんなのあの会話は!?」
「いや、お兄ちゃんも頑張ってるんだぞ!」
「頑張ってそれ?仕事の話とかないわーー。いーい、お兄ちゃん。雪乃さんは奥手だから、お兄ちゃんから話題を振って盛り上げないとダメだよ」
「話題ってもな」
俺は芸能にも疎いし、音楽関係もダメだしな、最近の若者が遊んだり楽しむようなことにかなり疎い自覚がある。
「うーん。お兄ちゃんだからな~。お兄ちゃんは動物好きだよね。雪乃さんもきっと好きだから、その辺から話題振ってみたら?」
確かに去年あいつ、動物の展覧会東京わんにゃんショーに一人で行くほどだからな。まあ、目当ては猫だろうが。
「なるほど、それなら行けるかもしれないな」
「じゃあ、小町は部屋に居るから、出かけるときは声かけてね。じゃあ頑張りたまえ八幡くん!」
「おお、ありがとな小町」
小町は二階の自室へと小走りでかけて行き、俺は雪ノ下の居るリビングに戻る。
雪ノ下はカマクラを堪能していた。
小声でなにやらカマクラと会話してるかの様だ。
「ええっとな。雪ノ下は猫が好きだよな」
俺は元のソファーに座り一息ついて、雪ノ下に声を掛ける。
「そうね。今更ね。猫は大好きよ」
「そうか……」
いきなり話題が途切れた。
カマクラを優しく撫で、楽し気に笑みを湛える雪ノ下。
「そのだな。あー、あれだ。猫以外になにか……」
俺は無理やり話題を捻出しようとする。
「比企谷君。無理に話題を作らなくてもいいわ。いつも通りのあなたで。私もあなたと一対一だと何を話したらいいかわからないもの」
雪ノ下はそう言って俺に微笑み掛ける。
「そ、そうか、だが、いつも通りと言われてもな」
「奉仕部では、由比ヶ浜さんが休みの日は、いつもあの部室であなたと私は二人きりだったわ。でも会話らしい会話は一切せず、お互い干渉せずに本を読んで時間を過ごす。でも、私はあの時間が嫌いじゃなかったわ」
確かにそうだ。下手をすると、俺と雪ノ下は部活中に交わした言葉は挨拶だけだったかも知れない。
「それは俺もだな」
「2学期の後半からは、由比ヶ浜さんが居ない日は少なかったけど、あなたと二人の時間は、私は心地よく感じていたの……私はあなたとあの部室で静かに時間を過ごすだけで満たされていたわ。あなたはどう感じてくれたかしら?」
いつもよりゆっくりとした口調でそう語る雪ノ下の眼差しは優し気であった。
「俺は……そのだな。まあ、お前のそれとはちょっと違うが、リラックスできる時間だった事は確かだ」
「そう。あなたがそう思ってくれていたのは光栄よ。私は人づきあいが苦手で、人混みも苦手、静かに過ごすのが好きなインドア派よ。あなたもそうじゃないかしら?」
「確かにそうだな」
「だから、あなたはいつも通りに過ごしてくれていいわ。そこに私に少し居場所をくれるだけで、私は満足よ」
「………そんなのでいいのか?」
それでいいのか?
確かに俺と雪ノ下が部室で二人になる機会は多かった。特に二学期前半までは、由比ヶ浜は、三浦たちと遊びに行くため、週に2日程度休んでいたからな。
俺は雪ノ下と二人であの部室で黙って本を読む時間が心地良かったことは確かだ。
「私はいつもの比企谷君が……その好きだから」
雪ノ下は頬を染め、俯き加減にそう言ってから、かまくらを持ち上げ、かまくらで顔を隠すように抱き上げていた。
「………」
これはやばい。雪ノ下ってこんなに良いやつだったっけ?毒舌の女王様はどこに行ってしまったんだ?やばいやばい。これは惚れてしまいそうというか……惚れちゃうと言うか。その、なんだこれ?
恥かしいんだが……この場から逃げたい……くっ、いや、雪ノ下の方がよっぽど気恥しいはずだ。
ここで、俺が逃げてしまったら、傷つけてしまうかもしれない。
俺はリビングの本棚から、読みかけの本を取り出し、顔を隠すように読み出す。
俺の顔も多分真っ赤になってるはずだからな……
しかし、いつの間にやら、本を読みふけっており……部活と同じような時間を過ごしていた。
「ん?お兄ちゃんたちもうお昼だよ?出かけないのって!雪乃さんほったらかしで何やってるのお兄ちゃん!」
「おお?もうこんな時間か……本を読み始めたらつい時間を忘れてた。悪いな雪ノ下」
「私も時間を忘れて、カマクラと遊んでいたし、あなたの顔をずっと見ていることが出来たから」
「……え?なにこれ……え?雪乃さんが惚気てるし……あれ?こんなのでいいの?何かが間違ってる気が……」
小町はそんな俺と雪ノ下を交互に見ながら、困惑気味であった。
「小町、昼にしようか。雪ノ下も食うよな。今日は俺が作るから」
「何か手伝う事はないかしら?」
「いやいい、雪ノ下は小町とリビングでくつろいでいてくれ」
「そう。比企谷君が作るごはん、楽しみだわ」
「雪ノ下のような豪華でうまいものは作れないからな。あまり期待しないでくれ」
「………なにこれ?あれ?今時の高校生のデートってこんな感じじゃないよね。あれ?これっておじいちゃんおばあちゃんの過ごし方だよね。小町の常識が間違ってるの?」
小町はまだ困惑しているようだ。
まあ、俺も元ボッチだし、雪ノ下も元ボッチだ。そのボッチどうしが、デートとか急に言われてもな。
俺も人混みの中、リア充っぽく手をつないで歩いたりとかそう言うのはな。
こんな感じで家に過ごした方がよっぽど楽だ。雪ノ下もそうなのだろう。
俺はそんな小町をほっといて、キッチンに入り、昼飯の用意をする。
俺が出来る料理なんて決まっている。
炊飯器にはご飯がたっぷり残ってるな……、冷蔵庫の中身はと……
俺は、10分程でささっと昼飯を作り、キッチン横の4人掛けのダイニングテーブルに3人分用意をする。
ネギ味噌を乗せたチャーハンに、わかめスープとツナとコーンのサラダだ。
「お兄ちゃんの定番のメニュー……折角雪乃さん来てるのにさー、もうちょっとなんとかしようとかは思わないの?」
「小町さん私はこれで十分。それに比企谷君が普段料理する定番のメニューなのでしょ。私はそれが知りたいの。それでは頂きましょうか」
俺の横には小町、対面には雪ノ下が座り、食卓を囲む。
「ああ、味に期待するなよ」
こうして、3人での昼食が始まる。
「雪乃さん雪乃さん!お兄ちゃんのどこが好きになったんですか?」
小町は早速雪ノ下に質問を始める。
そういう事は聞かないで、小町ちゃん。お兄ちゃん恥かしいし、雪ノ下も困るだろ?
「そ、そうね。いろいろあるのだけど、優しさかしら」
少々テンションの高い小町に戸惑いながら、雪ノ下は答える。
そういうのはマジ恥かしいんで、答えなくていいぞ雪ノ下。
「えー、お兄ちゃんがですか?」
「そうね。普通ならわからないわね。何時もひねくれた言動ばかりするものだから。でもそのひねくれた言動も、比企谷君の優しさからくるものだとわかるとね……」
そのマジやめて下さい。別にそんなつもりで言ってないからな。八幡の言動はひねくれ100%でできてるから!何それ、ポジティブに考えすぎじゃないですか雪ノ下さんや?
「そう……ですか」
急に小町が大人しくなる。
「それは、雪ノ下の勘違いだって言っただろ?」
つい、反論がを口にだしてしまった。小竜姫様に注意されたばかりなのにだ。
「あらそう。そう思ってるのは何も私だけでなく、由比ヶ浜さんも、それに近しい人は皆、そう感じてると思うわ」
雪ノ下は、何故か小町に視線を送りながら俺に言う。
「…そうかよ」
俺は不貞腐れたようにそっぽを向く。
「ところで小町さんは、高校では何処の部活に所属するのかをもう決めているのかしら?」
「あ……そ、そうですね。雪乃さん達の奉仕部も面白そうですよね。でもお兄ちゃんと一緒ってのはね~」
下向き加減だった小町は、雪ノ下が声を掛けると慌てた様子で、元の元気な感じでその話題に乗り、若干意地悪そうな顔で俺の顔を覗き見る。
小町ちゃん。お兄ちゃん泣いていい?ネックが俺って……
「私達は小町さんなら大歓迎よ。掛け持ちでも構わないわ。私達の部はそれ程忙しいわけでもないから」
おい掛け持ちOKって初めて聞いたぞ。まあ、俺は掛け持ちするような部活はないしな。いや帰宅部と掛け持ちというのはどうだろうか!
「そうなんですか!掛け持ちでも大丈夫なんですね!実は一色さんが、お兄ちゃんの先週の出張中に、家に来て直接私に生徒会に入らないかって誘われたんです。私が中学校でずっと生徒会で活動してた事知ってたらしくて、それで。…高校の生徒会にも元々興味もあったんで、中学よりもずっと大きな事ができそうで、面白そうじゃないですか!」
一色の奴!マジで何やってんだ!人んちに勝手上がり込んで、何人の妹を垂らしこんでるんだ!
「確かに、中学校とは比べものにならないぐらい生徒会の権限は大きいわね。特に総武高校はその傾向が強いわ。……でも一色さんがわざわざ……そう」
雪ノ下は一瞬目を細め、凍り付くような視線を下に向けていた。
「まあ、あれだ。焦って決める必要もないだろう。他にも面白そうな部活はあるかもしれないしな」
但しだ。あの蛆虫(川崎大志)とだけは、いかん。あいつの小町を見る目はもはや形容しがたいぐらい危険だ。いや……小町は俺と違ってコミュ力も高いし、見てのとおりの美少女だ。男どもが放っておくわけがない。困ったぞ。俺の目の届く場所(奉仕部)に置いておかねば。
「そうだよね。高校って中学よりもいろんな部活や同好会もあるし!色々見て回ろうかな!なんか楽しみになってきました!」
総武高校の話題がしばらく続く。
皆が食べ終わったのを見計らって、俺は雪ノ下に午後の予定を聞いた。
「雪ノ下…午後からはどうする?」
「このままでもいいわ……、今日私がここに来た理由は普段のあなたの事を知りたかったから」
「普段の俺といわれてもな。学校が休みの時は基本仕事に行ってる事が多いからな」
「仕事も学校も無い日は何をしてるかしら?」
「部屋で引きこもるか散歩だな」
「部屋に引きこもって何をしてるのかしら……小町さん。とある情報網から、比企谷君のクローゼットの下の段に不浄なものが巧妙に隠されているらしいの。廃棄処分が必要なものよ」
ちょ!雪ノ下さん何言っちゃってるの?とある情報網って、あれだよな、温泉訓練の双六の事だよな!やばい!あの時のまんまだ!……雪ノ下はあの時、相当怒ってたしな……巨乳物ばっかりだったし……
「……え?そんな所に?お父さんがタマモちゃんが泊りに来る時に、お兄ちゃんの部屋を家探しして、いけない物は全部処分したはずなのに……小町も確認したんですよ!?」
あの親父ーー!俺のプライベートルームに何しやがるんだ!?小町も止めろよな!
「巧妙に偽装してるそうよ」
「わかりました雪乃さん!お父さんに言いつけて処分してもらいます!」
小町は敬礼しながら、元気いっぱいにそんな事を言う。
「勘弁してくれ、俺の部屋の事はいいだろ?」
……親父が帰ってくる前に、隠し場所を変えておかなければ!
「そうね。比企谷君の部屋はまた今度お伺いするわ。あなたの散歩コースに案内してくれるかしら?」
「なんかやっとデートらしくなってきた!」
小町のテンションがまた高くなってきた。
「で、デートじゃないぞ!散歩だ唯の散歩!」
「え?……その」
雪ノ下は下向き加減になり、落ち込んでいるように見える。
「お兄ちゃん!」
俺は小町に睨まれる。
「まあ、そ、そうだな。デートのような物です」
こうして俺と雪ノ下は小町に見送られ、家を出る。
「小町さんに先ほど聞いたのだけど、毎日夕食後に散歩に行ってるらしいわね。散歩が趣味だなんて想像もしなかったわ」
「いや……散歩じゃない。トレーニングや訓練だ。小町には散歩って言ってるだけでな。小町も薄々気が付いているだろうが」
「どういう事かしら?」
「小町は……俺がGSでアルバイトをしてる事を心よく思っていない。しかもだ。俺がGSのアルバイトへ行く事により、小町に家の家事とかに随分負担を掛けてるし、一緒に居てやれてない」
俺が霊障の克服をするために美神さんところでアルバイトをすることになった時だ。小町はかなり渋っていた。ただ、俺の霊障が進むと、死に至る可能性もあるため、選択肢はなかったのだが……親共は気軽な感じに了承したのも、多分小町の感情を少しでも軽減させるためのことだろう。
「そうだったの」
「だから、小町の前ではなるべく仕事の話はしない事が俺の中で暗黙のルールになってる。親共もそれに習って、家では俺にバイトの事は聞かないし、話題にも上げない。何だかんだといっても、親共も俺も小町に負担を掛けてる事は分かってるからな……」
「……そう、私は……」
雪ノ下の表情は影を落とす。
「おい、雪ノ下。勘違いするなよ。何度も言うがあの事故はお前のせいじゃないからな。……それに今は、最初の頃に比べれば随分ましだ」
それは、タマモとシロのお陰であるところが大きい。あいつらが小町の友達になってくれたお陰で、俺の仕事に対しての嫌悪感は随分と軽減したに違いない。
最初の頃は俺が美神さんところにバイトに行く度に機嫌が悪かったからな。
去年の初めぐらいからは、小町からGSや妖怪などの話題を振ってくれるようにはなって来た。
今では、タマモとシロにバイト先での俺の様子を聞いてるぐらいは改善されてる。
ただ、美神さんや横島師匠の事は、相変わらず嫌ってるようで……、小町の行動力からすると、バイト先やタマモとシロの部屋に遊びに行こうとするだろうが……それは未だにない。
俺は家ではGSに関連することは、大々的に行わないようにしてる。
俺の部屋以外にGS関連の道具や書籍等は置くことはないし、トレーニングや訓練等は、散歩と偽って、近所の神社裏に行ってやってる。
まあ、危険な書籍などは絶対置けないがな、親父や小町が俺の部屋を勝手に弄って、事故が起こるかもしれんしな。
「そう」
雪ノ下がそう返事をした後、しばらく二人の間で会話もなく歩む。
そして、目的の場所に到着した。
「神社?」
「ああ、自治会が管理してる神社だ。昔は神主が母屋に住んでいたらしいが、神主が急死の後は後継者がいないためこのままになってる」
俺は家からちょっと離れた神社に雪ノ下を連れて来た。
この神社は自治会が管理しており、月に1、2度清掃に地元のお年寄りが集まって、清掃して、その後お茶や酒を楽しむのが恒例になってるようだ。
「なぜ、ここに私を?」
「ここの神社の裏の林で、何時も訓練をさせてもらってるからな。それにな……」
俺はそう言って、神社の社の神棚に向かって、礼をし、柏手を打つ。
雪ノ下も俺にならい、礼をし柏手を打った。
そして、俺は賽銭に5円を2枚入れる。
「ここは、小さな神が宿ってる本当の神社だ。何百年もこの地域を見守ってきた本当の神がな。力は随分落ちてるようだが……それでもこの地域の霊脈を守ってる」
「そうなの?」
「ああ、今も神棚に祭られてる石の上で眠ってる」
俺の目には妖精のような姿の小さな神がすやすやと眠る姿が見える。
この小さな神とは、ちょっとした関りがある。
神主が亡くなってから、この石がご神体である事を知らずに、地域の人たちは、社を清掃した際に、この石を外の庭に放置してしまっていたのだ。
もしかすると、亡くなった神主自体がこの石がご神体だとは知らなかった可能性がある。
しばらく、神社に植えてある桜などが咲かない年が続いたそうだが……霊脈の力が落ちた影響だろう。
美神さんところに通い始めて、2か月くらい経った頃。またまここに立ち寄った俺は、そんな状況に気が付いた。
横島師匠に相談すると、解決方法を教えてもらえた。
再びここを訪れ、自治会の年寄り達に話をし、ご神体のこの石を社の神棚に戻し、解決するに至ったのだ。
そんで、練習場所を探してた俺は、事情を話すと、この裏の林を使う許可をもらう事が出来たいう話だ。爺さん婆さん連中は喜んでたけどな。
あの頃は妖怪や霊が怖くて、GSのアルバイトが続けられるのか不安だったのだが……、この事で、ちょっとは自信が付いたと言うか……そう言う場所だ。
そんなエピソードを神社の敷地にある古ぼけた木のベンチで雪ノ下に軽く語る。
「俺のGSのルーツの一つがここだってだけなんだが………まあ、つまらない話だったな」
「いいえ、興味深い話ね。……ここにあなたは誰か連れて来た事はあるのかしら」
「そう言えば、雪ノ下が初めてかもしれないな」
「そう、私だけ…ここに来れてよかったわ」
雪ノ下は何故か嬉しそうに微笑んでいた。
しばらく、そんな時間が流れる。
そろそろ、家に戻ろうと立ち上がったその時だ。
「八幡と雪乃ちゃん見ーつけた」
「姉さん!?」
「どうして俺達がここに居るのが分かったんですか?ここは小町にも教えてない場所なんですが、まさか、ずっと後をつけていたとか?」
俺は身構えていたが、ホッと息を吐き、戦闘態勢を解く。
急に強い霊力を持った人間が近づいてきたと思ったら、この人か……
目の前に現れたのは雪ノ下の姉の陽乃さんだった。
雪ノ下の話じゃ、京都に居るハズなんだが……
この人、妹の雪ノ下をストーカーしてた実績があるからな。ずっと後をつけていた可能性も無きしにもあらずだ。まあ、半径50m以内には居なかったがな、霊視で怪しい奴が近づいてきたらわかる。
しかし、この人の事だ。俺の霊視能力を加味して200m離れて尾行していたって事もあるだろう。
因みに雪ノ下は、俺が妙神山で修行しに行ってる頃、土御門家に挨拶を兼ねて、土御門家の内情を見に行っていたらしい。
「何となく?霊感かな?雪乃ちゃんがいる場所って何故かわかっちゃうのよね~」
そんな事をあっけらかんという陽乃さん。
なにそのシスコン霊感センサー。精度高くないか?ピンポイントで場所が分かるって凄くない?しかも妹だけに反応する霊感ってどうなのよ?
「姉さん…何の用かしら?今取り込み中よ!」
雪ノ下はそう言って陽乃さんを一睨みながら、俺の腕を取り抱き寄せる。
「ふーん。雪乃ちゃんがデートね。やるじゃない雪乃ちゃん……だったら次はお姉さんとデートしましょ八幡。雪乃ちゃん。次はお姉ちゃんのターン……ん?八幡の霊気の質が変わってる?……どんな修行をしたらそんな事に……これはじっくり聞く必要があるようね」
つかつかと俺達に笑顔で歩み寄りってくる陽乃さんだが、目の前まで来ると俺の霊気の変質に気が付き、拗ねたような口ぶりでこんな事を俺に行ってくる。
流石にこの人レベルだとバレてしまうか、霊力はかなり抑えているが、妙神山の修行で霊気の質を変えたのは気づかれたか……。そう、霊視空間結界の更なる向上のために、霊気の質を変える修行を行ったのだ。
「……まあ、修行の成果はそこそこあったんで」
「姉さん。邪魔はしないって約束でしょ!」
「邪魔はしてないわ。だって、雪乃ちゃんこの後の予定は考えてないんでしょ?」
「だからって、わざわざ来なくてもいいでしょ!」
「陽乃さん……雪ノ下と散歩をする約束で……」
「その後の夕飯はお姉さんとどうかな?勿論お姉さんのおごりよ」
「姉さん!」
「もちろん雪乃ちゃんも一緒によ?それでも嫌?」
「う……」
「はぁ、俺の意思は?」
まあ、雪ノ下が一緒だと助かるが……
「だって、八幡って何だかんだ言って、OKしてくれるじゃない」
結局この後、陽乃さんに強引に連れられ、雪ノ下と一緒に、高級レストランで食事をすることに……
俺は雪ノ下と陽乃さんに挟まれ、食事を………終始笑顔の陽乃さんに対し、雪ノ下の冷たい視線が、俺を挟んで陽乃さんに常に向けられていた。
しかも、なんか周りの視線が痛い。
はぁ……ほんとこの人何がしたいんだろう。
次はGS寄りかな。