やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。   作:ローファイト

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では、前回の続きです。


(92)一色いろはは覚悟する。

新学年初日、午前中で学校行事が終わり、部室で雪ノ下と由比ヶ浜と一緒に机を突き合わせ昼食をとっていた。

広い部室の真ん中で美少女同級生2人と昼食会、しかも俺が食べてる物は雪ノ下の手作り弁当だ。

傍から見ると間違いなくリア充空間に見えるよなこれ……

 

雪ノ下からもらったお手製弁当を食べ終わる頃。

この部室に、扉をノックする音が響き渡る。

誰だ?この時間帯に。

 

雪ノ下はいつもなら、いの一番に返事をするのだが、黙ったままお茶をすすってる。

同じく、由比ヶ浜も何もなかったように、振舞っていた。

 

さらに、ノックする音が響き渡るが、雪ノ下も由比ヶ浜も無視を決め込んでいた。

 

「おい、いいのか?依頼者か平塚先生じゃないのか?」

俺はじれて、雪ノ下と由比ヶ浜に小声で聞く。

 

「今は昼休憩中よ。部活はまだ始まっていないわ。営業時間外ね」

雪ノ下はしれっとそんな事を言う。

何それ、どこの大手企業だよ。

 

ノックの音がしばらくすると収まり、今度はガシャガシャ扉を開けようとする音がする。

どうやら、鍵が閉まっているようだ。

「鍵はしまってるから大丈夫だよ、ヒッキー」

由比ヶ浜も当然の如く、そんな事を言う。

いや、大丈夫じゃないだろう?緊急の要件だったり、他の先生だったりしたらどうするんだよ。

 

「おい、いいのか?」

 

その扉を開こうとする音も止まると。カチャという音が扉から響いてきた。

おい、鍵が開いたぞ!この部室の鍵は雪ノ下が持ってるはずだよな!どういう事だ?

 

そして、ゆっくりと扉が開く。

「ふっふっふーー、先輩たちが居るのは分かってるんですよ。居留守とか、この総武高校生徒会長には通用しないんですよ~」

一色が、不敵な笑顔で部室に入って来る。

何故入れる?ガチャって何?もしかして一色の奴、全教室のスペアキーか、マスターキーでも持ってるの?

 

「あら、一色さんこんにちは」

「いろはちゃん。やっはろー!」

「先輩方、こんにちはですー」

こんな状況で、何普通に挨拶してるんだこいつらは?

まるで、今のいままで何もなかったかのように。しかも、なんだか怖い。

 

「あれ?せーんぱいはっ!ボッチなのに!なーんで雪ノ下先輩と結衣先輩と仲良くお昼ご飯してるんですか?いつものー!ベストプレイスとか言ってるグランドの端っこでっ!ボッチ飯じゃないんですか?」

一色は俺の方に歩み寄り、あざとい笑顔でわざとらしい言い回しで、こんな事を聞いてくる。しかも何故か迫力がある。

やば、見られたくない奴に見られた。まあ、こいつは変な噂とか流さないだろうからまだましだが、これをネタに何を要求してくるかわからない。

春休みも、半強制的に学校に来させられたと思ったら、学校中連れまわされながら、ずっと尋問めいた質問をされる始末だ。

GSのことやら、俺の趣味とか結構どうでもいい事まで、さらにだ俺と雪ノ下と由比ヶ浜の関係を疑ってる節がある。

 

「一色さん。何の用かしら?まだ部活は始まっていないのだけど、要件は後にしてもらえないかしら」

「いろはちゃん。あたし達は昼休憩中なんだ」

雪ノ下と由比ヶ浜は口調は優し気だが、明らかに一色を追い出そうとしてる。

まあ、わからんでもない。一色の奴、三学期には結構な頻度で、この部室に紅茶飲みにサボリに来ていたからな。要件も無くだ。生徒会の仕事もあるだろうに。

そういえばサッカー部のマネージャーもやってたよな。時間あるんだったら、そっちに行けよな。葉山の攻略は捗ってるのか?

 

「別にいいじゃないですか~、先輩達と私の仲じゃないですか~」

一色はお構いなしにあざとい笑顔のまま、俺達の所まで椅子を持ってきて空いてる席に座る。

 

「……それで、要件はなにかしら」

雪ノ下はため息を吐いてから、一色に要件を聞く。

どうやら、一色を追い出すのを諦めて、折れたようだ。

 

「それです。来週の部活紹介や勧誘期間でのブース設置は今年はどうするんですか?去年は奉仕部は辞退という形をとってましたけど」

どうやら今回は本当に生徒会の仕事でここに来たようだ。

去年の今頃は、この奉仕部の部員は部長の雪ノ下一人だけだった。まだ俺も由比ヶ浜も入る前だ。

なるほど、雪ノ下は積極的な勧誘はしてこなかったと言う事か、俺もこんな部がこの学校に存在していたこと自体全く知らなかったぐらいだ。由比ヶ浜も同じだろう。

もともと、平塚先生が雪ノ下のために作ったような部だしな。ボランティア風の一応社会福祉活動的な内容を含んだ部だし、当時の生徒会の会長城廻先輩も理解ある人で、さらに雪ノ下の姉の陽乃さんとは大分昵懇のようだし、そんな事もあって、一人ではあるが部として設立する事が出来たのだろう。本来部活として認められるのは5人以上の生徒が集まり、そこそこの活動実績が見込まれる物だ。それ以下は同好会だ。それでも3名集まらないと同好会として設立できない。何か裏技的な方法を使ったに違いない。いや、平塚先生の事だ。強引にこぎつけた可能性もある。

 

 

「わざわざ勧誘するような部でもないわ。本気でやりたい人とやる気がある人ではないと務まらないし、部活案内は提出して掲載されているのだから、それでいいわ」

雪ノ下の言ってる事は間違ってはないし、俺もそう思うが……俺はやる気もやりたい人でもなかったんだが、平塚先生に強制的に入部させられたんだが。

 

提出した部活案内は、全部活と同好会の活動内容が記載されてる冊子に反映される。

今年からは、一色が午前中に生徒集会で発表した部活案内のホームぺージにもその内容は掲載されるだろう。まあ、独自のホームぺージを持つ俺達の場合はその限りではないがな。

 

「えー?そうなんですか。結構面白い部活だと思うんですけど。私も助かっちゃいましたし、来年には先輩方卒業じゃないですか、新入部員が入ってこなかったら、部は存続できなくなっちゃいますよ。なんか寂しいと言うか……」

一色が言うのもわからんでもない。俺も曲がりなりにも一年間在籍して思入れも出来てきてる。

 

「うーん。奉仕部がなくなっちゃうのはあたしも寂しいかも。ゆきのん、やってみない?」

どうやら由比ヶ浜も俺と同じ気持ちの様だ。

 

「……そうね。但し条件があるわ。部員の選定は必要よ。面接試験を行います」

雪ノ下は考えをまとめ、口にする。何それ?どこの一流企業よ?しかも試験官雪ノ下だったら超厳しそう。全員不合格なんてこともあり得る。

しかしながら、それは必要な処置なのかもしれない。

もし、部活勧誘期間で勧誘のためのブースを作成するとする。雪ノ下と由比ヶ浜がそのブースに座るなり立つなりして勧誘してみろ。部の内容なんて興味が無い連中が、雪ノ下と由比ヶ浜目当てで加入してくる可能性が高い。

何せ、雪ノ下は校内一の美少女だし、由比ヶ浜は美少女の上に校内屈指の人気者だ。

 

部活紹介でも同じだろう。一年生相手に壇上で、雪ノ下や由比ヶ浜が部の紹介をしてみろ。部の内容など耳に入らず、二人の容姿だけで、加入を決める奴がわんさか出てくるかもしれん。

 

そう言う意味でも、最初に雪ノ下が言ったように、部活案内の掲載するだけの方が良いのかもしれん。

あれならば、雪ノ下や由比ヶ浜の顔が出るわけじゃないからな。純粋に部活に入りたい奴だけが入部希望するだろう。

うーん。

 

「俺は、部活案内だけで良いと思うぞ。それにだ奉仕部には学校のホームページから直接リンクできる独自のホームページがある。それで最低限のアピールは出来てるはずだし、前期はメール相談の受付もそこそこあった。それで十分だと思うが……」

 

「えーー?ヒッキーも?新しい子とか沢山入ってきたら楽しくない?………あっ!……でも、あたしもそれでいいかも……」

由比ヶ浜は俺の意見に勢いよく反対していたのだが、何かに気が付いたように、急に手の平を返し、大人しくなる。

由比ヶ浜もどうやら気が付いたか……。純粋に奉仕部に入りたい奴だけが入ればいい。アピールしたとして、俺達の部の場合どうしても、二人の顔が全面に出てしまう。そうなると部の理念とかけ離れたような連中が、入部希望者として殺到するかもしれないからな。

 

「結衣先輩も本当にそれでいいんですか?……まさか、部員を増やしたくないって事じゃないですよね。今の3人のままが良いとか思ってるんじゃないですかね?」

一色はジトっとした目で俺達を見据える。

 

「ギクッ、あははははっ、そんな事はないよ、いろはちゃん!新入部員が入ってライバルが増えるのが困るとか、そんな事は全然思ってないから!」

ギクッって何?由比ヶ浜なに慌ててるんだ?一色が言った通りなの?ライバルが増えるって何だよ?

 

「ふぅ、一色。俺の正直な意見を言うぞ。うちの部は本当に真面目に取り組まないと、依頼に来た生徒達に失礼な上に逆に迷惑がかかる。……由比ヶ浜や雪ノ下が奉仕部の顔として、勧誘活動を行ってみろ。うちの部の理念に外れたような連中が来る可能性が高い。……そのだ。そのあれだ。

雪ノ下と由比ヶ浜は学校でも人気が高いし、容姿もいい。それを目当てに来てもらっても困ると言う事だ」

 

「ヒッキー!それって私達の事気にかけてくれてるってこと!?」

由比ヶ浜は嬉しそうに俺の顔を見つめる。

「……そう」

雪ノ下はほんのり顔を赤らめていた。

 

「先輩もそういう事ですか!そういう事なんですか!」

一色は何故かプリプリと怒り出す。

 

「何か勘違いしてないか?現実問題としてあり得る話をしてるだけだ。どちらにしろだ。奉仕部は非常にわかりにくい部ではある。他のスポーツや趣味などがそのまま部として成立しているものではない。『ノブレス・オブリージュ』(貴族の責務)なんて大層な考え方を元々持っているような奴なんて居ないだろうしな。まあそうだな、ボランティア活動に興味がある奴が入ってくれれば儲けものだ」

 

「そうですね。それは分からない事もないです。確かに依頼を適当にされても困りますし……」

どうやら、一色も理解してくれたようだ。頭の回転は速い奴だ。超あざといだけで。

 

「まったく勧誘しない事はないわ。一応新入生の中に目星をつけている人はいるわ」

 

「え?雪ノ下先輩が?まだ、入って来ても居ない新入生を?」

 

「どういう意味かしら一色さん?」

雪ノ下は冷たい視線を一色に送る。

 

「だって、雪ノ下先輩って、後輩とかと仲良くするタイプじゃないじゃないですか。だから疑問に思ったんです」

一色の奴、堂々と本人の前で言いやがる。……その通りだから否定できないが。

さらに雪ノ下の一色に向ける視線が厳しくなる。

 

「いろはちゃん。ヒッキーの妹の小町ちゃんの事だよ。今度新入生で入って来るんだよ」

まあ、そういう事だ。俺も小町が入部することには賛成だ。

俺の目が届く場所に居てほしい。狼のような男どもから小町を守らなければならないからな。

 

「ダメですよ!先輩の妹さんは、生徒会に勧誘したんですから!先輩と違って、あの高いコミュニケーション能力!見た目も先輩と違って、明るくて元気で可愛いですし!中学でも生徒会をずっとやってたって言うじゃないですか!もう、高校でも生徒会に入るしかないと思いません!?」

一色さんや、いちいち俺と比較しなくてもいいんじゃないでしょうか?ダメな兄と出来る妹みたいな感じじゃないですか?……実際そうなんだが、俺が小町に勝てるのって勉強だけ?総武高に受かった時点でそれも大差無い。

 

「……一色さん。あなた小町さんとは接点も何も無いはずではないかしら?それを何故?」

一色の目を真正面から見据える雪ノ下。

 

「え?……そ、それはですね。たまたま先輩の家に寄ったら妹さんが居て、意気投合したと言うか……」

おい、何で俺の家にたまたま寄るんだ?俺の家って休憩場か何かか?サイゼとかと一緒にされると困るんだが。

 

「いろはちゃん。やっぱり」

由比ヶ浜はジッと一色を見つめていた。

 

「ななななな、なんですか!雪ノ下先輩も結衣先輩も!それ以上でもそれ以下でもないですよ!たまたま、先輩の妹さん、比企谷小町さんが非常に優秀だったから勧誘しただけですぅ!」

なに慌ててるんだ一色の奴。

 

「………」

「………」

由比ヶ浜と雪ノ下はジトっとした目で一色を見据える。

 

「はぁ、もういいです。そういう事です。雪ノ下先輩。結衣先輩。だから覚悟してください」

「………」

「いろはちゃん負けないよ」

一色、雪ノ下、由比ヶ浜の三人の視線が交差する。

 

「一色?どういう事だ?」

何だ?覚悟するってどういう事だ?

 

「せーんぱいも~、他人事じゃないんですよ~。覚悟してくださいね♡」

一色は今日一番のあざとい笑顔を俺に向けて、奉仕部を後にした。

……なにこれ、またとんでもない仕事を俺にふってくる前触れではないのか?

はぁ、今から気が重いんだが。

 

 

 

この後奉仕部では、新入生勧誘について打ち合わせをする。

勧誘期間のブースと、新入生への紹介スピーチについては、去年同様辞退することを決定。

勧誘案内については手直しをし、ホームページはリニューアルすることにした。

勧誘案内の手直しは由比ヶ浜が担当し、ホームページは俺と雪ノ下で作成作業を行った。

 




次もガイルパートの予定。
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