やはり俺がゴーストスイーパーの弟子になったのは間違っていた。 作:ローファイト
誤字脱字報告ありがとうございます。
前回の続きと、
ちょっと展開が進むお話です。
「こんにちは!雪乃さん。結衣さん!」
「いらっしゃい。小町さん」
「やっはろー、小町ちゃん!」
「来たか小町」
小町が奉仕部にやって来る。
小町が入学してから3日目放課後だ。
新入生部活勧誘期間が始まり、昇降口付近や中庭に部活勧誘のために多数のブースが設置され、各部は部員獲得のために積極的にアピールをする。
そんな中、奉仕部はブースを作らずに積極的な部員獲得活動は控えている。
部室ではいつも通り過ごしていた。
まあ、一応新入部員は募集はしている。興味がある奴だけ来たら良いと言うぐらいのスタイルだ。
「あっ!改めてっと、雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩!」
「いつも通りでいいわ。小町さん」
「そうだよ!小町ちゃんにそう言われるとなんかこそばゆいし」
「じゃあ、雪乃さん、結衣さん。部活、見学に来ちゃいました!」
小町はいつも元気いっぱいだ。
「あれ?俺には挨拶は?」
「悪名高い。比企谷先輩こんにちは……」
ジトっとした目で俺を見る小町。
「早っ、もう知られたか」
どうやら小町は校内で流れてる俺の悪い噂を早速耳に入れたようだ。
「………」
「あはははは」
その小町の言動で雪ノ下はため息を吐き。
由比ヶ浜は渇いた笑いをする。
「知られたかじゃない!お兄ちゃん!酷いこと言って、女の子泣かせたの!?」
小町は俺に詰め寄って来る。
酷い事を言って女の子を泣かしたと言うのは、昨年の文化祭の俺の行動の事を指している。
俺が学校一の嫌われ者になった要因だ。
「まあ、間違いじゃないな」
「小町さんそれは……」
「ヒッキーは悪くないよ」
雪ノ下と由比ヶ浜が、去年の文化祭の事を小町に説明してくれた。
「はぁ~、やっぱお兄ちゃんはお兄ちゃんだな~。もっと他の方法なかったの?」
二人の説明を聞き終えた小町は呆れたように俺に聞いてくる。
「あれが一番効果的で早かったからな……まあ、反省はしてる」
「まったくもう。お兄ちゃんが傷つくことで、他の人も傷つくんだからね」
「俺は全然平気だけどな」
「直ぐそういう事を言う!」
小町が俺を一睨みして、この話題を終える。
雪ノ下と由比ヶ浜が小町に奉仕部の活動内容を説明する。
一応、小町は俺達の部活の内容は知っている。去年6月頃の川崎の夜のアルバイト問題で小町も関わったからだ。
「だから、毎日依頼が有るわけじゃないんだー。1、2週間も無いこともあるし。ある時は一気にくる事もあるんだ。大きなイベントとか有った時は、それに向かって毎日忙しかったりするし」
由比ヶ浜が説明したとおり、暇なときはとことん暇だ。まあ、俺は暇の方がありがたいけどな。
「依頼が無い時は普段は何やってるんですか?」
「ホームページからメールの相談も受け付けてるから、その確認と対応ね。これも毎日来るわけではないわ。何もない時は各々自由よ」
雪ノ下が依頼が無い日の部活内容について小町に答える。
「なるほどです。お兄ちゃんは何もない時は何やってるの」
「本を読んでるな」
「雪乃さんは?」
「私も本を読んでるわね」
「結衣さんは?」
「宿題とか勉強してるかな?」
「なるほどです………それで、この席の配置は?」
小町はこんな事を聞いてきた。
俺達が今座ってる席の配置についてだ。
ここの部室は空き教室を利用したものだ。
教室の後ろ側には、使われていない勉強机が積んである。
教室の前後ろ中頃の、扉から一番遠い窓際の椅子に雪ノ下が座り。
その隣に会議用長テーブルが2台横並びに置かれてあり、その会議用長テーブルの前で、雪ノ下の直ぐと隣の位置に座ってるのが由比ヶ浜。
会議用長テーブル2台横並びした廊下側にさらにちょっと離れた場所に椅子を置いて座ってるのが俺。
要するに雪ノ下と由比ヶ浜から、会議用長テーブル2台分以上離れて俺は座ってる事になる。
傍から見ると、俺が雪ノ下と由比ヶ浜からはぶられてる様に見えないこともない。
これは、俺が雪ノ下と由比ヶ浜に告白されてからも変わらない。
「まあ、何となくだ」
この位置関係は俺にとってはしっくりくるからな。
いきなり、近づいて座るのもあれだ。気恥しいしな。
「……お兄ちゃん。本当に告白されたの?」
もっともな疑問だが、それを言う?今ここで、二人が居る前で言うか!?
「ばっ!何言ってんだ!?小町っ!!」
俺は顔が赤くなるのを感じる。
「あははははっ、それは本当だよ小町ちゃん。うーん。でもなんでだろう」
「そうね。……自然というか、この風景が当たり前になり過ぎて、疑問に思わなかったわ」
どうやら、由比ヶ浜と雪ノ下も俺と同じで気にもしなかったようだ。
「……奉仕部も席替えをしましょうか。年度の区切りとしては良い時期だと思うのだけど」
「ゆきのん。いい、それ賛成~!」
雪ノ下がこんな提案をし、由比ヶ浜が手放しで賛成をする。
「……3人なのに意味あるのか?」
「今は3人だけど、今後は増えるかもしれないわ。だから今のうちにしておいた方がいいわ」
雪ノ下、今の内の意味が分からないんだが……
「ほら、小町ちゃんもきっと入ってくれるし。ちゃんと席を決めとかないとね。ヒッキー!」
何でノリノリなんだよ由比ヶ浜も!?
「なんかおもしろそう!お兄ちゃん。席替えするべきだよ!」
小町ちゃん?まだ、部員じゃないでしょ?今日は見学でしょ?
そして、席替えが始まったと言うか、俺の席が決められた。
雪ノ下と由比ヶ浜の間……
そう、今まで雪ノ下と由比ヶ浜が座ってた席の間にもう一つ椅子を置き、そこが俺の席と勝手に決めつけられ、座らされる。
由比ヶ浜!!くっつき過ぎだ!!雪ノ下も顔を赤らめながら椅子をこれ以上近付けようとするな!!
超気恥しいんですが!この席!?
依頼者が来たら、どう思うよこれ!?リア充丸出しじゃねーーーーか!?
「凄い!!お兄ちゃんが学校でリア充になった!?」
小町ちゃん!?なに写メとってるの?やめて!お兄ちゃん超恥ずかしいから!
「だぁ!元の席でいいだろ?新入部員が入ってきたら、由比ヶ浜と俺の間に座らせればいいじゃねーか!」
俺は席を立って、いそいそと元の離れた席へ座りなおす。
「……そ、そうね。まだ気恥しいわ」
「えーーっ、もっとヒッキーと近づきたい!」
雪ノ下さん?まだって何?由比ヶ浜はもうちょっと遠慮しような!俺が気恥しさで爆発しそうになるから!!
「お兄ちゃんのチキン……」
そうだよ。俺はチキンだ!恥ずかしいんだよ!こそばゆいんだよ!二人から何かいい匂いはするし!なんかあれなんだよ!!色々と爆発しそうなんだよ!!
この後、ノートパソコンを開いて、小町にメール相談について説明をする。
一応、相談が一通来ていたが……
【PN:剣豪将軍のお悩み相談】
相談者ペンネーム剣豪将軍って、もろ材木座なんだが、こいつの相談はいつもろくでもない。
内容はと……
【クラス替えで隣になった子が気になって仕方がありません。その子は男の娘なんですがこれは恋でしょうか?】
………材木座、戸塚に何懸想してるんだ?戸塚は一応男だぞ!?席が隣だからって舞い上がりやがって!!そんな目で戸塚を見るとか怪しからん!!
「雪乃さん結衣さん!これコイバナですよ!!恋ですよこれ!!どうするんですか!?」
この相談内容を聞いて、テンション上がりまくる小町。
まあ、そう見えなくも無いが……違うからね小町ちゃん。
「……比企谷君の案件ね」
「……そうだね。ヒッキーお願いね」
まあ、妥当な判断だろうな。面倒だが俺が返答するしかないか。
「え?お兄ちゃんに!?どうして!?実はお兄ちゃん恋愛マスターだったの?だから、雪乃さんと結衣さんを!?」
何言っちゃってるの小町ちゃん!そう言うの恥かしいからやめて!?
俺は黙々とノートパソコンのキーボードを打つ。
【Re:それは恋ではありません。貴方の100%勘違いです。相手に嫌われないためにも、その思いをきれいさっぱり捨て去りましょう。さもないと警察に厄介になることになります】
エンターキーを押してメールを返信する。
これでよし。
「えーーーー!?お兄ちゃん、なにこれ?酷くない!?」
「……小町。これは、男が男に恋をしようとしてるんだ。間違いが起きる前に優しく諭すのも奉仕部の仕事だ」
材木座が男とだれかが男同士で恋しようが別に俺には関係ないからいいのだが、戸塚が被害を受けるのだけは勘弁ならない。
「え?そうなの!?お兄ちゃん。あの短い文章でそれが分かるの!?」
「まあな、俺ぐらいのベテラン奉仕部員になれば、一瞬で分かる。雪ノ下も由比ヶ浜もそうだ。だから俺に任せたんだ」
「ほえ~!雪乃さんも結衣さんもわかってたんですか!?」
「…………」
雪ノ下はうんざりした表情で、頭痛がするが如く額に手をやっていた。
「あはあはははは、まあ、そうかも」
由比ヶ浜も渇いた笑いをしていた。
「んん?」
小町は二人の態度に疑問顔をする。
小町……世の中には知らない方が幸せなこともあるんだ。
そして、部活が終了するまで小町と由比ヶ浜、雪ノ下の3人でトークに花を咲かせる。
その間、由比ヶ浜と雪ノ下はさっき3人並んで座ってる所を撮った写メを小町から送信してもらったりと。……小町ちゃん。恥ずかしいから、ほんとやめてほしいんだけど。
部活を終え、4人で校門前まで歩いて帰り、俺と小町は自転車で家まで帰る。
小町に奉仕部に入るのかを聞いてみた。
「うーん。あまり忙しく無さそうだから、掛け持ちで入ろうかな。依頼が有ったら行く感じで!」
まあ、小町の性格上そうなるだろうな。暇を持て余すのは性に合わないのだ。
一色の奴。小町に生徒会をかなり押してるらしいし。生徒会との掛け持ちになる可能性が高いだろう。
俺は小町と一旦家に帰った後、美神令子除霊事務所に向かう。
今日は仕事の日だ。俺に回ってきた依頼は1件ある。
美神令子除霊事務所では……
「すみません。ちょっと遅くなりました。今から準備して行ってきます」
「あっ、そうね。頼むわね」
美神さんの反応が何故か鈍い。美神さんの性格上、ちょっとでも遅くなったら文句の一つは言うのだけどな。
心ここにあらずという感じで、事務所内をうろうろしてる。
「横島師匠。行きましょう」
横島師匠も様子がおかしい。美神さんと同じく落ち着きが無い。
まあ、普段から落ち着きが無いんだがな。
しかし、おかしい。ワザとらしくソファーに座って普段読まない新聞を読んでるが、新聞がさかさまだ。
「ちょっとパス。八幡、シロとタマモと一緒に行ってくれ」
「まあ、良いですけど、何かありました?……そういえばキヌさんが居ないようですけど」
Cランクの依頼なんだよな。結構な難易度だ。まあ、俺一人でも大丈夫だろうが、シロとタマモが居れば心強い。
何時もだったら、キヌさんが美神さんと師匠を落ち着かせるために、温かい飲み物を入れるタイミングなんだが。
「おキヌちゃんまだ、帰ってきてないのよ」
「なんか、大学の先輩にサークルに誘われて、遅くなるって電話はあったんだけどな。まさか連れまわされてるとか……」
なるほど、それで二人ともソワソワしてたのか。……って、まだ午後6時だぞ?過保護過ぎない?
そう、キヌさんは小町の入学式と同じ日に、大学に入学したのだ。
そしてこの週末の金曜日。美神さんと横島師匠の言動からすると、キヌさんは大学で先輩からサークルに誘われて遅くなると連絡があったそうだ。大学のサークルとか、入部しなくても歓迎会とか言って、飲み屋とかに連れていかれるイメージがあるが、そんな感じなのか?
まあ、キヌさん美人で可愛らしい人だし、誘われやすいのだろう。でも、キヌさんだったら、サークル活動の説明だけを受けて、歓迎会の飲み会とか普通に断りそうだけどな。
「まあ、大丈夫じゃないですか?キヌさんしっかりしてるし」
「八幡!甘ーい!!男は野獣なんだ!あの純粋無垢なおキヌちゃんを毒牙にかけようと、虎視眈々と狙っているのだ!!」
何言ってるんだこの師匠は、もしそんな事があってもキヌさんだったら普通に対応できるだろう。キヌさんには何せあの強力無比な言霊があるんだから。さらに、あの聖母のようなオーラだ。手を出したくても出せないだろう。邪な考えなど起こしても、自ら懺悔しだすんじゃなかろうか?
はぁ、美神さんまで、横島師匠の言動に頷いているし。
……しかも、野獣はあんただろ!みんな師匠のような男じゃないんで、そこまで露骨じゃないですよ!
「そんなに心配だったら、様子を見に行けばいいじゃないですか」
「行ったわよ!おキヌちゃんにバレちゃって。近づけないのよ!」
なるほど、美神さん気になって、入学からずっとつけてたんじゃ?それがバレて、キヌさんに注意されたんだ。
「女子更衣室とか!!女子チアリーダー部とか有るのが悪いんじゃ!!」
こっちもか、横島師匠はキヌさんを付けていたところに、女子チアリーダー部の女子更衣室を見つけて覗いて追いかけまわされて、それがキヌさんにバレて注意されたんだ。
この二人なにやってるんだか……
過保護にも程がある。モンスターなんたらになるんじゃないのか?変に暴走しなきゃいいが。
そういえば、うちの親父も最初あんな感じだったな。小町にウザがられて、絶望してたな。
……もしだ、もしキヌさんに手出しするような輩や悲しませるような輩が現れたら、絶対許さないけどな。美神令子直伝千年殺しの刑確定だ。
「じゃあ、俺は仕事に行きますんで」
過保護の二人を放っておいて事務所を後にし、俺は3階のシロとタマモの部屋にノックし、来てほしい事を伝える。
今日の現場は、某私立大学か……
依頼内容は、夜な夜な幽霊が出て、ポルターガイスト現象を起こすか……
結構な被害が出てるな。人的被害はまだないが、施設の損害はかなり出てる。
『大学に入ったらモテると思ったのに!何がウキウキキャンパスライフだ!!何が出会いが貴方を待ってるだ!!こんな学校なくなればいい!!』
どす黒いオーラを纏った悪霊が、確かに校内で暴れまくってるな。確かに単独でCランク相当はありそうだ。
俺達は隠れながら、その悪霊の様子を見ていた。
「……なるほど。昨年亡くなったここの大学の生徒が地縛霊となり悪霊化とあるが……死亡理由が………大学構内での25回ナンパに失敗の腹いせに、ゴミ箱等を放火する事件を起こし、自分も炎に巻き込まれて死亡」
なにこれ?自業自得じゃないか?
25回程度のナンパ失敗でこんな事をする?横島師匠なんて多分1万回ぐらいはナンパ失敗してるぞ!?そのうち1回は成功してるけど三十路女教師のストーカーだ。
「八幡殿。もうやっつけていいでござるか?」
「八幡と一緒に来るといっつもこんな感じの奴よね」
シロとタマモはゲンナリしてるな。まあ、そうだろうな。
「ちょっと待ってくれ。一応霊視するか……んん?」
なにかおかしい。何時もの悪霊とは様子が。その悪霊の核というか幽霊の霊格の割には、霊力が強いし……パワーもある。うーん。他の要因でもあるんじゃないか?
一年程度の地縛霊でしかもこんな理由でここまでの悪霊に育つのもおかしいしな。
悪霊になったとしても、前のデジャブーランドのバレンタイン嫉妬悪霊トリオぐらいの大した悪霊に育たないだろうに。
「なんか変じゃないか?あの悪霊」
俺は二人に意見を求める。
「そうでござるか?」
「……確かに、雑霊がそれ程居ないのにあの悪霊、今も育ってる感じがするわ」
シロはあまり違和感を感じていないが、タマモは俺と同じような違和感を感じたようだ。
悪霊は周りの雑霊などを吸収して、力を付けて行くことがあるが、そんな感じでもないのだ。
俺は霊視範囲を広め、校内を見渡す。
……あれは何だ……悪霊に霊気を送ってる?……異界の門?いやそんな大それたものじゃない。
空間の歪みたいな感じだ。あの中から漏れ出る霊気を吸収してあそこまでの力を付けたのか。
あの霊気も普通じゃない。まるで悪霊のためにあしらったような霊気の質だ。
「シロ悪霊の方は頼んだ。そのまま滅ぼしても構わない」
「承知!拙者に任せるでござる!」
「タマモは俺に付いてきてくれ、どうやら他に原因があるようだ」
「わかったわ」
俺はシロとタマモに指示を出し、シロには悪霊自身、俺とタマモは悪霊に霊気を送ってる空間の歪みの方を見に行く。
次回はGS回