「君が・・・そのスーツを、『タイムス』を着ている意味は分かるな?」
「・・・どこに行くかわからないから、ですよね?」
男の言葉に頷く博士。少し不安を孕んだ表情で
「アメリカのサンメリー本部に飛ばされる予定だが・・・失敗はつきものだ。深海、宇宙、果てはマグマ。君も志願したからには・・・」
「分かっています」
再び博士は頷くと、装甲、タイムスを着た男の腕や足を機械に固定する。
「どこに行ったとしても絶え間ない通信が行われる予定だが・・・この場所で言っておきたいことはあるかね?」
「・・・作夜の、あいつのクローンは。あと、産霊ちゃんは」
「クローンは・・・順調に育っているさ。神崎くんは・・・まだ立ち直ることはできなさそうだ」
「それは良かったです。産霊ちゃん、俺が帰ってくるときには元気になってるといいんですけどね」
「私もそれを願うさ」
「では・・・行ってきます」
男の合図を確認し、博士はレバーを下げた。
「また近いうちに会おう。九龍くん」
粒子の波に隠れて行く彼に向かって、言葉を掛けた。
「かんぱーい!」
焼き肉店にて上森の合図に合わせて乾杯。5時半にしてすでに飲み会がスタートしていた。
「今日は玲と一ちゃんと翔太と真斗のスーツ完成祝い兼姫華の歓迎会だ!久々に俺のおごりだ。食って呑め!あ、未成年はジュースでな」
主役はもちろんのこと、他にも数人が席に並んでいた。
「しっかしご苦労だったな玲は・・・」
「元カレに命を狙われて追い回されるなんてそうそうないですからね。あ、そういえば奥様は・・・」
「かみさんとショウコは次の店で来るとさ」
まず上森が話しかけたのは玲。カザツチ完成はめでたいといえばめでたいのだが、状況が状況だった。なんとも言えない。
「そういえばバディ組むって決まってから会うのは初めてだな。姫華ちゃんよ。あー・・・ワダツミだっけ」
「はい。よろしくお願いします!」
「よろしくな。えっと・・・」
隣では翔太と姫華。助けて以来全く会ってないがゆえに、ほぼ初対面。気まずそうにしていた。翔太としてはこれほどまで瀧がいればと思うことはなかった。
そして、主役の一人であるはずの真斗は二人の子供に挟まれていた。一人は、ゼロワン。もう一人はたまたま暇だったから呼ばれた少女、時川小夜。いや、実際は少年なのだが、ポニーにまとめた青髪と中性的な顔がどうも女の子にしか見えない。いわゆる男の娘だ。
「小夜さん」
「なんだい一ちゃん」
「ジュース頼みません?」
「そうだね!」
「・・・俺、移動しようか?」
「いえ、大丈夫です。それで・・・」
真斗を挟んで話を続ける二人。わざとやってんのかと思うほどだ。
「真斗が狭そうじゃないか。一、こっちへ」
玲が一を招くと、膝上に乗せる。今度はテーブルを挟む形で小夜と一が話し始める。
「仲良い子が出来てお母さんは嬉しいぞ」
「ここのところいきなりお母さん面するようになりましたよね」
「話すようになって急にお前が可愛くなったんだよ・・・!」
潰れんばかりの勢いで抱きしめる玲。一は恥ずかしそうだが、うっすら笑ってもいた。
「仲良くて微笑ましいことだね」
真斗が親子を眺めるその横で、小夜は寂しげな顔をしていた。
「僕にもお父さんが居たんですよね・・・」
「・・・時川さんは君が育ってる途中に亡くなったんだっけ。その・・・」
「全く記憶にないので懐かしさも何もあったものじゃないですけどね」
強がった発言をしてみるが、その奥に寂しさが簡単に見て取れた。それを励ます術を真斗は持たないので、ただただ頷いた。
「そんな辛気臭いこと話してんじゃねえよ。飲み会ぐらい明るくやろうぜ」
そこに割り込む翔太。届いたりんごジュースを小夜の元に置いた。
「翔太さんは飲み物いいんですか?」
「パフェ食ってるから甘いもんはもう十分だ」
上の生クリームをスプーンで口に運びながらそんなことを言った。
「玲さんってお酒飲むんですか?」
「見ての通り。酒は強いんだ」
6時にてすでに飲み干したジョッキを自慢げに持ち、そう言った。
「だから・・・あまり・・・・・・zzz」
だが、乱暴にジョッキを置いて眠ってしまう。
なんだ、弱いじゃないかとゼロワンが振り返ろうとするも、玲の膝上で眠ってしまう。
他の未成年たちも次々眠り始め、動かなくなった。
「愚かなものだな。しかし岩礫用の睡眠粉塵はすごいな。飲み物に混ぜただけでここまでとは」
「これで逃がしてくれるんですよね・・・」
厨房の奥からテロリストの男、秋川茂呂が現れる。怯える店長へ銃を突きつけている。脅してやらせたのだ。
「逃すと言ったか。悪いがありゃ嘘だ」
銃声。頭に風穴の空いた店長だったものを適当にどけ、AG職員の殺害を始めんと銃を向ける・・・が。
「悪いが・・・俺は何も飲んでないのでね」
起き上がった翔太が茂呂の腕を掴む。彼ただ一人は飲み物を飲んでいなかったからだ。
『his name is…QUETZALCOATL!』
茂呂を外に叩きだすと、豊穣の鎧ククルカンを装着。大斧ケツァラトルを構えた。
『USIONI…wake up!』
そして対抗するべくゴーストガンナーのレバーを引く。飛び出した煙が禍々しい鎧『死喰』を形成した。
「ったくよ・・・邪魔してくれやがって!」
まずはククルカンの突撃。振り下ろす大斧を死喰は『魂滅刀』で受け止めた。
「んなぼろぼろの刀で・・・!」
刃こぼれがひどいはずだが一切折れる気配はない。無理やりケツァラトルを持ち上げ、爪のついた脚でキックを叩き込んだ。
「いってぇな・・・!」
「俺以外に・・・神は存在させねぇ!!」
さらにゴーストガンナーでの追撃。こいつはケツァラトルで防ぎ、盾がわりに急接近。横殴りでぶっ飛ばした。
「くっ・・・!」
ここぞと土をぶつけて追撃。怯んだ一瞬を見て斧を振り下ろした。
「何度やっても無駄だ!」
再び魂滅刀に防がれるが、それは想定内である。
[Crash!ground element!]
必殺。刀ごと斧を地に叩きつけ、死喰の足元から土の蛇が飛び出る。
さらに落ちてきた茂呂に木刀を叩き込んだ。
「くっ・・・・・・」
頭を抑えながら逃げていった。
「ったく・・・マジで危なかったぜ。店にも気をつけねえとな・・・」
埃を適当に払い、店へと戻っていった。
「悪りぃ!これはオレの注意不足だ。本当にすまない。翔太も眠っていたら・・・」
「上森さん。この場に瀧さんが居たらと考えましょう」
頭を下げる上森に言葉をかける一。上森は年下の友人のことを思い出し、この辛気臭い雰囲気に何というか考えた。
「・・・それもそうだな。よし、じゃあ次の店だ!」
「あー・・・飲んだ飲んだ」
フラフラとした足取りの玲。ゼロワンと手を繋いでいるように見えるが、実際は支えられているようなものだ。
「しかし・・・玲さん警戒はいいんですけど普通厨房まで突っ込みますかね?」
「最大限の警戒をしておきたいって事でしょう。では」
姫華、翔太、真斗、的井親子、上森一家はまっすぐ自身の家へと帰っていった。
小夜は自身の寮に戻らんとただ一人基地へ向かう。やっぱり家族が欲しかった。正直彼はそう思った。
「ベンジェスマーク10?完成早すぎないですかね」
翌日、夕方に真斗は沙羅に研究室に呼ばれていた。彼が居なければベンジェスは起動できないためだ。
しかし、そこにはなぜか小夜も呼ばれていた。
「あの・・・なんで僕が・・・」
「実は・・・ベンジェスマーク10は小夜くん用に作られているんです。マーク10ではありますが・・・実際は根幹のシステム以外ベンジェス要素は少ないです」
「なるほど・・・」
「これ、小夜さんが任務の時に使う鎌です。前、神術士の人がこれにはクロノスが憑いてるって言ってましたよね?それを鎌のまま活かそうと」
「ベンジェスの依存物強化のシステムが都合いいんですね!」
一人ウンウンと頷き、資料を受け取った。
「きゃっ」
「あっ、ごめんなさい!」
話を終え、マーク10の調整も完了した小夜は研究室から出たその瞬間女性とぶつかった。
「いや、こっちこそ前を見てなかったわ・・・えっと、始めましてね。私は最近エージェントになった神崎
「時川小夜です。よろしくお願いします」
「可愛い子ね。どことなく・・・似てるし」
「・・・あの、僕は男ですよ?」
「!・・・何から何まで似てるわねぇ・・・」
少し寂しげな笑顔を見せ、小夜の頭を撫でた。
「えっ・・・」
「ん?あ、ごめんなさい」
無意識の事らしく、お互い赤らめた顔で離れた。
「そろそろ僕・・・帰ります」
「・・・私も帰りたいわ」
小夜は勤務時間は終えていたが、産霊は夜にも任務がある。お互い目的地へ足を進めた。
「?・・・出口はあっちよ?」
「僕は寮なので。中庭通るんです」
「玲さんの研究室もその辺よね。一緒行くわ」
小夜の後ろについて行く産霊。セキュリティドアを開け、二人は中庭に出た。
「うーん・・・外に出るとやっぱり空気がいいわねぇ」
「ですね・・・」
「たしかに・・・人の悲鳴もよく通りそう!」
話に混ざるように少女が現れる。鎌切をまとった常闇死亜だ。
「まずい・・・僕、接続器持ってないですよ!」
「私はスーツができてないわ・・・!私の接続器を貸すわ。これで・・・」
「ありがとうございます!」
投げ渡された接続器をキャッチし、腕に装着した。
「なんで常駐エージェントが俺だけなんだよおおおお!」
めんどくささを煮詰めたような叫び声。ククルカンが斧を構えて走って来た。
「たっ!」
勢いそのままの斧を叩きつける。
「痛いね・・・食らえ!」
ゆっくり立ち上がり、射撃にスタイルを切り替えた。
「僕も援護します・・・!」
『1!2!3!4!Ready go!armor the god!』
中庭の噴水から水が巻き上がり、アーマーを作り始める。
『his name is…CHRONUS!』
西洋の鎧と、ロングコート。
時の守護の鎧、ベンジェスマーク10改めティエンポがその姿を現した。
手元に現れた鎌はクロス・アックス。持ち手に時計のついた鎌だ。
「はっ!」
至近距離でククルカンにぶつかる鎌切へ斬撃。しかしその小さな体格ゆえにパワーは弱く、反撃を正面からくらう。
「・・・まずは君を切り裂く・・・!」
そして風を切り裂きながらティエンポへと急接近。大鎌を振り下ろす。
取った。そう思ったそこに、ティエンポはいなかった。
「時間は僕に味方してるんだ♩」
ティエンポが居たのは後ろ。がら空きの背中に斬撃を叩き込んだ。
「瞬間移動!?」
「惜しい!正しくは・・・」
「時間停止!」
今度は目の前に出現。鎌再び切りつける。
そして駆け寄ったククルカンの切り上げ。怯んだそこにさらに必殺を叩き込む。
『Crash!ground element!』
「グランド・・・
土の蛇によるかち上げ。鎌で防ぐが、空中へ叩き上げられ、反撃ができない。
『Crash!aqua element!』
「アクア・・・時限終末!!」
さらにティエンポの必殺。燃える鎌で切りつけた。
「くっ!」
大鎌で防ぐ。・・・が、意味をなさない。燃えるように鎌が消えたためだ。
物体の時間を消し去り、消滅させる。それがティエンポの必殺だ。メインウェポンをなくした鎌切は撤退を決めた。
「・・・ふう、結構使いやすいですね!」
「よかったな。スーツが出来て」
『いっそ永住しようと思うぐらい住み心地は良かったのだろう?なんでまた・・・』
「彼女が地球に行ったんです。俺もそろそろ帰ろうかと」
『分かった。準備はすでに完了している。明日で構わないね?』
「ええ」
『では・・・久し振りに地球で会うとしよう・・・九龍くん』
「追いつけんなら・・・ついて来てみな!」
走れピーター、弾よりも速く。次回、「亜高速と俺」
と言うわけで最近チョコミントがブームなサードニクスです。こんにちは。どうでもいいですがチョコミントって入れると予測に「は歯磨き粉」って出るの草。美味しいだルルォ!?
はい、次回とつながる感じの2話構成です。設定を絡めるのは基本。誰が誰とくっつくのかうっすら考えてもいたり。ヒロインキャラ送ってくれるのは話がわかりやすくてありがたいのだけど、クロスの魅力がなくなるのがねぇ・・・どちらを取るかはキミタチシダァイ…
最近一週間以内の(いつもよりは)早めの更新となっていますが、これは「このペースだと話全然おわんねーよ。受験にかかったらどないすんねん」という焦りです。
ちなみに。武器が依存物なアーマーの数に合わせてベンジェスタイプがどんどん増えます。武器が変化する設定はひとまとめにしちゃいます。
で、どうも天地さんのキャラは私の設定改変ビームをめっちゃくらっている気がする。気のせいでしょうけどね。