吸血鬼の憂鬱(魔法使いの消失)   作:NeoNuc2001

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第三話 The Fifth?

───???───

 

「こんばんは」

 

それは気さくで、ウキウキするような夜の挨拶。挨拶は、私はここにいるのだと伝えてくれる簡潔で便利なおまじない。挨拶をすれば相手が嬉しくなる。挨拶を返してもらえばこちらも嬉しくなる。だから私は挨拶をする。

 

「あぁ。こんばんは、人の身でよくここまで来れたな」

 

やっぱり、返してくれた。嬉しいんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思ったけどそうじゃないみたい、年齢より、容姿よりずっと大きな経験をしてきたのでしょうね。

 

「門番の人と一悶着あったけど、貴方に会いたいと言ったら喜んで通してくれたわ」

 

「美鈴を破ったのか。まぁ、よい。とにかく、私に一体何用だ」

 

「まぁ、貴方というよりは貴方の妹、そうフランちゃんに用事があるのだけど」

 

 

 

 

 

───レミリア・スカーレット───

 

目の前の相手はとんがり帽子、サイズはやや大きめで先が折れており星がついている、に長い縮れた白髪、灰色と黒の布地を重ねて着込んでおり、そして下は暗い緑色のロングスカートを着ている。なんというか、あまり目立つような格好ではなく、オーラのようなものも感じない。

 

とはいえ、いやだからこそ、私は妹の名を聞いたときに思わず全身が強ばってしまった。私の愛しき妹のフランドール・スカーレットの話題はこの館の中ですらあまり上がらない。私にはフランの話を部下にする必要はなく、また彼らも同様である。パチュリーとは仕事上しない訳にはいかないが、彼女自身が外に出たがらない。現に今も図書館にて読書をしているのがわかる。

 

だとすれば、一体なぜ。

 

「多分本来なら、気にすることはなかったと思うんだけど、フランちゃんが見えて立ち寄ろうかなと思ったんだよね」

 

「!」

 

私の心を読んだのか?いや、そもそもパチュリーと私が作り上げた結界を無視してフランを見通したのか。そのようなことができると言うことは、

 

「千里眼か。だとすれば、」

 

そう千里眼の使い手ならば、

 

「そう、私は種族としてではなく、歴とした真の魔法使い!アリス・マルティークよ。よろしくね」

 

と彼女は仁王立ちしながら偉そうに言った。

 

 

 

 

 

───アリス・マルティーク───

 

遂に言ってしまったわ、私が魔法使いだって!魔女ならともかく、魔法使いと来れば吸血鬼とはいえ驚きで興奮を隠せないでしょう。

 

「な、成る程な。やはりか。ならばこれまでの出来事に説明がつく」

 

やっぱり動揺が隠せてないみたいね。だって、魔法使いって響きがいいものね。こういうピカピカするような、キラキラするような名前って子供を惹くのよね。どんな天才でも、どんな悪人でも!

 

これならきっとすんなり通してくれるよね?

 

「良いだろう、フランに会わせてやろう。但し、この私、レミリア・スカーレットを倒すことができるならばな!」

 

あれ?

 

 

 

 

───レミリア・スカーレット───

 

手にスピア・ザ・グングニル(必中の槍)を生成し、虚空を切り裂く。人はこの挑発が生み出す風と音だけで恐怖で震え上がるか、少なくとも身を僅かに震わせる程度の変化は表すだろう。しかし、この魔法使いはその風によって動じることは一切なく、ただその笑顔をキープし、

 

「よし!いいよ。一緒に戦おうか」

 

と、その大きめのとんがり帽子をより深く被り直しながら言い、虚無から杖を取り出したのだ。

 

そう、魔法使いだ。もはや五つのみしか存在しない魔法の使い手。てっきり抑止力の何かだ程度に思っていたが、魔法使いと判ればこちらが有利になる。

 

とは言え、このような相手ならば油断はしない。しかし、余裕はある。相手が如何なる魔法を使おうとこちらには空想具現化がある。私がただ一言消えろと唱えれば、いやただ念じるだけで如何なる魔法も消え、全てが決する。その上、仮に因果を操るものだとしても、私には運命操る能力がある。負ける道理はない。

 

しかし、相手はフランの隠蔽を見通し、美鈴をも倒した強者。ならば、空想具現化能力にも何かしらの対策を講じている可能性が高いと見て間違いがないだろう。何より、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だとすれば、こちらは手練手管を以てしてその策を封殺するのみ。

 

「では、行くぞ」

 

掛け声をかける。

と、同時に魔法使いが詠唱を開始する。とても早い。言の葉が拾えないほどに早い。恐らく、高速詠唱の類い、いや神言の領域に入りうるかもしれない。

 

しかし、それでもまだ遅い。詠唱の完成前に槍を大きくふりかぶって投げつける。私の本来の力である運命操作により簡単には避けられない代物を一体どうやって避けるか。

 

あちらの詠唱の中身は、魔力量から見て、魔法には届かずとも、魔法級の大魔術。恐らく、槍ごと消し去るつもりか。ならばよい。この速攻の槍の投擲はあくまでも魔法の発動を封じるもの。魔術だろうと体術だろうとなんだろうと、魔法が付随していなければ勝機はこちらにある。

だが、そもそも詠唱が完成していない状況であるにも関わらず槍が魔法使いの目の前まで迫った時、彼女はふと顔を上げた。

 

Eternal Ray

 

私には唐突に詠唱を破棄し、一言のみ、何か発したように見えるが、魔法使いが前にかざした手から一条の光線が現れ、こちらに向かうのを見て考えを変えた。どうやら、彼女の詠唱には思った以上に柔軟性があるらしい。

 

だが、まだ甘い。今度は魔法使いの周囲に大量のスピア・ザ・グングニル(必中の槍)を生成し、運命操作により必中効果も付ける。それらは最初のそれよりはるかに鋭く、多く、速く、運命操作の効果も遥かに強い。光線が相手を攻撃していると思ったら逆に攻撃されていた、という状況を作り出す。相手には時間を与えない、大魔術を使わせない、魔法も無論だ。

 

ここまで僅か一瞬。しかし、ここで気付く。槍を消し去った光条が一切衰えることなくこちらに向かっていくことに。即席の槍とはいえ、かなりの強度を持つはずであり、魔術発動時の魔力量、威圧感からしてある程度の相殺はしてくれるだろうと踏んでいたが、それが一切衰えないのであれば話は変わる。いくら真祖とはいえ、直撃はまずい。

 

消えろ

 

思わず空想具現化を使う。しかし、

 

「くっ!」

 

思わず避ける。光線だからといって光の速度では進まないし、そもそも吸血鬼の速度よりは遅い故に回避事態に苦労はない。だが、それ以前に光線は消えなかった。そう命じたはずなのに。私が僅かな驚きに包まれている間にもうひとつの衝撃が訪れる。

 

「う〜ん、いきなり周りに槍がいっぱい出来た時は驚いたけど、マジカルパワーでどうにかなるものね」

 

そこには一歩も動かなかった魔法使いと周囲に刺さっているスピア・ザ・グングニル(必中の槍)があった。綺麗な形を表現している槍の刺さり具合からして恐らく、壊されることも、流されることも、止められることもなく、定められた運命通りの軌道を描いた筈だ。つまり、魔法使いは回避をした。

 

だとしたら尚更変だ。空間転移を含めた如何なる回避方法も運命操作には敵わない。あり得るとすれば、私のを上回る因果操作系の、それこそ魔法そのも...!

 

「成る程な。それがお前の魔法か」

 

「気づいちゃったわね」

 

魔法使いが妖しく微笑む。片目を閉じ、舌を出している。余裕かそれとも作戦か。

 

「名を聞こう」

 

「さっき言ったのだけどね、私の名前はアリス・マルティークよ」

 

「そうか、アリスか」

 

どうやら私は魔法使いを、いやアリスを侮っていたらしい。私はまず気付くべきだった。そもそも魔法使いが魔術程度に詠唱を必要とするのだろうかと。答えは勿論Noだ。だとすれば、先程の詠唱は魔法の発動のためのそれ。そして同時に大魔術の無言詠唱を行った。その大魔術を魔法でコーティングする事により空想具現化を防いだ。運命操作の効果つきの大量のスピア・ザ・グングニル(必中の槍)を防いだのも、魔法による何かしらの時空操作系の効果だろう。この事から察するに、

 

「第五魔法か」

 

現存している魔法は第二(Second)第三(Third)第五(Fifth)の三つのみ。第一(First)第四(Fourth)は既に失われ、第六(Sixth)は未だ現れていない。そして先程の現象と合致するのは第五(Fifth)のみ。

 

「わぁ、すごい!まさかこんなすぐに当てられるとは思ってもみなかった」

 

心底驚いたような顔ぶりでアリスは言う。実際にそうなのかは分からない。こんなお気楽な相手に苦戦を強いられるのは苦痛だが、その責任は全て私にある。今度は爪を使い、接近戦を試してみよう。

 

 

 

 

 

───アリス・マルティーク───

 

魔法使いらしく詠唱みたいなものをしてから仕掛けようと思ったら、思った以上の数倍速く槍を投げてきたから思わずビームを打っちゃったけど、さらにそのビームを消したり、さらに沢山の槍が出てくるから魔法を使っちゃったけど、元から無いものだしいいかな。

 

そしたら今度は格闘戦か、

 

「格闘技は師匠に教えてもらったから得意だよ!」

 

身体強化の魔術をかけて、杖をよく握って、足に力を入れて、さぁ行くぞ!

 

 

 

 

 

 

───レミリア・スカーレット───

 

完敗だ。空想具現化をもう少し上手く使えば、運命操作をもう少し上手く利用すればあるいはあったかも知れないが、届かなかった。

 

だが、何日かかっただろうか。体力切れ等を起こすとは、一体何十年ぶりだろうか。もう指先ひとつも動かない。

 

「さぁ、私を殺してフランに会うがいい」

 

こうなってしまっては仕方ない。私では無理でもフランの力ならばアリスは倒せるだろう。私が殺されたことを知ればフランも本気になる筈だ。幸い、アリスも無傷という訳ではない。各所にかすり傷があり、息も荒い。これなら行ける筈だ。

 

「殺さないよ」

 

「うん?」

 

「だから、殺さないよ。だってもう私の勝ちでしょ?」

 

「いや、美鈴を殺ったのだろ?ならば、」

 

「いやいや、別に一悶着といっても世間話みたいなものだからね。門番は大変だねぇとか、立ちながら休んでみたらとか」

 

見えないが、アリスが手を左右に振っているのが分かる。いやしかし、

 

「では、あの光線は何だ?直撃してたら間違いなく重傷だぞ」

 

というか死んでる。あの時は直感的にヤバイとしか思わなかったが、よく考えれば魔法で減衰しないのだから見た目の魔力以上の継続ダメージをものすごい勢いで食らってしまう。恐らく吸血鬼としての回復が数十年単位でかかってしまう程に。

 

「あれは、開幕の一撃でビックリしてコントロールを間違えたんだよね、本当にごめん!」

 

今度は手を合わせ、腰を大きく折っているように見える。というか見えなくても分かるということはかなり大袈裟にやっている訳だが...まぁいい。どちらにせよ負けて、手加減されたと知ればもうどうしようもない。幸いアリスには敵意がない。ならば、

 

「わかった、敵意がないのは理解した。先程の条件通り今すぐにでもフランの所に案内したいが、体が全く言うことを聞かなくてな。後日ということにしてもらえないか。無論、部屋はこちらで用意してあげよう」

 

「いいの?でも吸血鬼用のベットはちょっと...」

 

「なに、気にするな。ここは吸血鬼以外も住む館だ。人間用のベットも用意してある」

 

「やった!久しぶりのふかふかベットだ!」

 

ふかふかとは言ってないのだが...まぁいい。

 

唯一動く口で部下を呼ぶ。私を見たときギョッとされたがまぁいい。いや良くないか、もしかしたら反乱が起こりうるかもしれないな。その時はその時だ。美鈴やパチュリーにどうにかしてもらおう。

 

「彼女を客人の部屋に連れていってやれ」

 

部下が恭しく返事をし、アリスを連れていく。さて私も休憩を...いやもうここでいいか。

 

しかし、魔法使いか。かなりいい駒を手に入れたな。

 

彼女ならば..緊急時のブレーキに...なって...くれるだろう...

 

少女睡眠中




話数が気になった人、第五魔法と聞いて、うん?、と思った人、魔法使いの言葉使いにおや?と思った人、あれ?これ原作「月姫 レミリア・スカーレット」となんか違くね?と思った人、最後のを除いて伏線です、お楽しみを。

文字数はこれまでの最高を走ってる予感です。実際に確かめていないですが。

評価、感想を入れてくれると作者は喜びます。俗に言う創作意欲というやつです。

ここまで書いてるんです。察してください。

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