初っ端からなんかあれだけど、最後に勝てればそれでいい
魑魅魍魎が跋扈する近未来の日本。人と魔の間で守られてきた暗黙のルール「互いに不干渉」は人が堕落してから綻び、両者が結託した企業や犯罪組織の登場によって時代は混沌と化していった。
しかし正しい人間たちも無力ではなかった。魔に対抗できる者が現れ、いつしか人々は対魔忍と呼んだ。(Wikipedia引用)
とある対魔忍の話をしよう。
彼は、現代日本を生きた前世の記憶とやらがある以外は、極々平凡で標準的な男だった。
特異な異能を持つことが多い対魔忍にあって、彼はそういった先天的な才を持たなかった。優れた血筋の生まれでもなく傍流も傍流、ほぼ一般人と変わらない家に生を受けた彼が対魔忍になったのも、あまりの戦力不足に喘いだ本家が分家に号令をかけ能力のありそうな者を召集したからという傍迷惑な理由からである。
更に言えば、対魔粒子によって大幅に強化された身体能力さえも、対魔忍という括りの中では並みでしかなく、剣術や投擲術なども特筆すべき点はなかった。本来ならば、能力のない使い捨ての駒として、力あるものの肉盾として無様に命を散らしていたことだろう。
―――彼の持つ唯一にして最大の異質、前世の記憶がなければ
端的に言って、前世の彼はサブカルチャーをこよなく愛するオタクだった。そのオタク知識から、彼は自分の生まれた世界がゲームの中の世界、もしくはそれに類似した世界だと理解していた。しかもよりにもよって18禁指定の陵辱系のジャンルだ。
サイバーパンク的なマッポーめいた世界、しかも一般人どころか人々を守るはずの対魔忍ですらサクサクとっ捕まって、「そんなチ[編集済]なんかに負けない!」→「ヒギィ!」という即オチ2コマを晒すような世界観である。ちなみに男は死ぬ(残当)。
弱肉強食を地で行く世界だ、平凡な自分ではすぐに死んでしまうか、下手をすれば精液を吐き出すだけの奴隷になり果ててしまうだろう。
流石にそれは勘弁していただきたい。せっかく二回目の人生を送れているのだ、前世の分まで満喫して、十分生ききってから死にたい。
世界の厳しさと自身の平凡さを前世の知識から理解した彼は、当然それらに負けないように強くなる道を選んだ。時に対魔忍として五車学園に召集された中学2年の話である。
とは言え、彼はどこまで行っても凡人だ。チート能力も、強力な忍法も、名のある武器も、錬磨された武道も、一般人として生きてきた彼には何もなかったのだ。
幼い頃から鍛錬を積んできた同年代の子供達が彼のことを無能だ役立たずだと嘲るなかで、彼は必死に自身の道を模索していった。
技量に大きく左右される剣などに頼らず敵を殺さなければならない、幼い頃から鍛錬を積んでいなくとも十二分に鍛えなければならない、どんな状況でも安定して対応出来る技術を学ばなければならない。効率よく確実に敵を鏖殺出来なければならない。
死への恐怖と生存欲求に駆り立てられ、半ば狂気に浸かりながら、彼は進み続けた。そんな彼が行き着いたのは対魔の力を武器とする対魔忍達とは真逆の道、彼らや魔族が侮る、人類が長い年月積み重ねてきた
引き金を引くだけでヒトを殺害できる銃の知識と技術を学んだ。
膨大な経験と研究に裏打ちされた軍隊式訓練を行い肉体と精神を鍛えた。
特殊部隊が用いる戦闘技術やパターンを調べあげ自身に叩きこんだ。
歴史に名を刻んだテロリストやゲリラなどの戦法を探り戦わずに勝つ方法を知った。
膨大な時間を調査と学習、そして錬磨に当て、血反吐を吐く思いをしながら(というか実際に吐いた)戦士として自らを見事育て上げたのだ。
そこまでやっても凡人の彼では、残念ながら対魔忍の平均程度の力しかない。強大な力を持つ者からすれば、取るに足らない存在でしかないだろう。
だが、彼は他の脳筋アッパラパーな対魔忍にはない、臆病で慎重という最大の武器がある。自身の限界を把握し、有利な状況を展開し、最後の最後まで油断することなく確実に敵の喉笛を掻き切ることが出来る境地にまで、彼はついに辿り着いたのだ。
まあ、過酷な訓練を課しすぎたせいか頭のネジが幾つか飛んでしまったようだが、どうしようもない部分を背負いつつも地獄を駆け抜け生きていくことだろう。
その男、田上宗次の明日はどっちだ。
△ ▼ △ ▼
どうも皆さん。知っているでしょう?田上宗次でぇ御座います。(スターゲイジー)パイ喰わねえか。
という冗談はさておき。俺が対魔忍養成機関でもある五車学園に連れてこられてから三年が経過した。現在俺は普段は学生として生活しながら、任務があれば対魔忍として闇夜を駆けている。とは言えあくまで学生の身だ、任務もそれ相応の難度の低いものが主となる。実戦に慣れる為の実地訓練、といったところかな。
しかし幾ら簡単とは言え、ここは弱肉強食の世界。油断した者から犠牲になっていくのが常識な修羅の巷だ。少しでも驕ったらたちまち正義の味方から哀れな被害者に早変わりだ。……彼らみたいにな。
『ぐ、がぁぁぁぁああ!!?やめ、やめてくれ!俺はおとこ―――ぐうぅっ!!』
『ひぎぃぃぃ!!なんれ、きもちわるいのにぃぃ!き、きもちいいのぉぉぉ!』
……うん、これはひどいな。
モニター越しの映像があんまりだったので思わず眉を顰める。
オークに輪姦されて絶賛アへってる彼らは、俺と同じ班に所属する班員だった。オーク相手に油断して先行したらこのざまだ。
いや、ホントは簡単な任務だったんだよ?突然急成長した貿易会社が実は裏で魔族と繋がってたことが確認されたんで、その社長の暗殺と可能ならば顧客リストを入手するだけ。敵の警備もそこまで厳しくない、言ってしまえばお使いみたいなものだったはずなのだが……。
調子に乗った班員……なんつったっけ。まあいいや、班員A(男)が優勢だった勢いで敵陣深くに突っ込み過ぎたせいでトラップに引っかかり、残り二名もそれを助けようとした挙げ句に取り囲まれ、あえなくお縄につくこととなった。
俺?お前は引っ込んでろよと言われたんで、後方支援(戦力確認と見取り図のチェック)してたよ。さ、サボりじゃあねえし!?
まああいつらが捕まってくれたお陰で、奴さんは襲撃が終わったものと思って警備のオークすら回してパーリナィし始めたご様子。手薄になって侵入しやすかったわぁ。身体を張って囮してくれてる彼らには感謝だね!
今のうちにコンピューターから顧客リストと、ついでに輸入元のデータも抜き出しておく。これでサブミッションはクリアっと。ついでにカメラの画像も消しとくか。
「あとは社長の暗殺だけど……」
セキュリティールームのモニターを見回して、標的の姿を探す。顔や背格好はもう叩き込んである。その成果か、直ぐに見つかった。
「社長自らとは、性が出ますなぁ」
ちょうど社長が捕まった対魔忍を嬲り始めたところだった。完全に自分の優位を確信しての行動だろうけど……トップがわざわざ敵の目前に身を晒すのは危険すぎるだろうに。
「さて、残りもさっさと終わらせて帰ろう」
足元に転がっているオークの死体からAKMを二丁拾い上げる。中華連合からの流れ物らしく命中精度はお察しではあるが、まあいいだろ。
足を向ける先は、勿論彼等がいる地下の調教部屋。パーティーを開いてるのなら、派手に殴り込みに行くのが礼儀ってもんだ。
さあ、ショータイムだ。
△ ▼ △ ▼
その時会社の若社長は、間違いなく人生の絶頂にいただろう。
会社を興したものの経験と人員が不足していたせいで低迷を続けてきた彼だったが、とある魔族が経営している闇の企業と手を結んだことで瞬く間に成長を遂げた。
提携先から人や麻薬などを仕入れ、それを日本各地や米連へと輸出する。ただそれだけで今まででは想像出来ないほどの金と権利を手にすることができた。
まあそのせいでうるさいコバエが寄ってきたようだが、奴ら頭の中まで筋肉で出来ているらしい。少し負けた風を装ったら調子付いて突っ込んできたのだ。そいつをガスで眠らせたら話は簡単、人質にとってみせれば残った二人もあっさり捕獲することが出来たのである。
「ほら、今度はこっちから突っ込んでやる、よ!」
「んぐっ!?んん~~!」
彼は捕らえた対魔忍の内の一人の口に突っ込みながら周りを見渡した。
「オラオラ!さっきまでの威勢はどうした対魔忍さんよぉ!?」
「しょうがねぇだろ気持ちいいんだからよぉ!太くて堅いのが大好きな変態さんだもん、なぁ!!」
「だ、まれぇぇっ、こん、こんにゃも……のぉぉぉおお!?」
もう一人の対魔忍は残ったオークに集られ、全身の穴という穴を嬲られているようだ。あの様子だと、しばらくすれば自ら腰を振るようになるだろう。
残った男の対魔忍は、「おで……二刀流だったんだ……」とカミングアウトしたオークによってヤラナイカ?されている。同じ男としては流石に同情を禁じ得なかった。せめて女に絞り取られた方がマシだったろうに……。
「……っと、ほら何を休んでるんだ!」
「んんんっ!?んぶぅぅ、んんんんん!?ぅんんんー!」
女の頭を掴んで強引に前後させ、全力で快楽を享受する。見れば女のほうも、道具のような扱いをされているのに顔を赤らめその瞳はとろんとしていた。まあ、媚薬効果のあるオークの体液をあれほど浴びれば、否が応でもそうなるだろう。
「ふぅ、やっと終わったぜぇ……お!やってるなぁ!飛び入り参加はありかい旦那ぁ!」
「ああいいとも!存分にやってくれ!」
と、そこに警備の仕事を終わらせたオークが一人、電子式のドアから入ってくる。そのオークは社長の言を聞くと、よほど待ち焦がれていたのだろう、その場で服を脱ぎだした。
とは言え、頭と下半身が直結しているのはオークの常、その場にいる誰もそれを咎めるものはなく、目の前のご馳走を貪ることしか考えていなかった。
―――もしここで誰かがそのオークに、もとい背後の電子扉に注意を向け、扉が何故か開きっぱなしだったことに気づいていれば、死神の魔の手から逃れることが出来たのだろうか?
改めて言おう、社長は人生の絶頂を味わっていた。普通では手に入らないだろう富と権力、そして対魔忍、それもかなりの上物を自らの物に出来たのである、これを幸福と言わずなんと言おうか?
「ははっ、もう死んでもいいな……!」
「あっそう。じゃあ死ねば?」
突然、聞きおぼえのない声が彼の耳に冷徹な宣告を届けた。
あまりに冷たいその声音に、熱狂の直中にあった彼らは一気に凍りつき、声がしたほうへとその目を向ける。
そこには、先ほど部屋へ入ってきたオークの姿があった。だが彼は、両膝を床に着けていただろうか?それに、その頭から、何か金属のような、そう、ナイフみたいなのが生えて……。
その後ろにたつ幽鬼のような何かに気付いた瞬間、彼らの思考を閃光と炸裂音が奪い去った。
二丁のAKMから放たれる7.62mm弾が銃口より飛翔し、捕食者であったはずのオーク達の頭蓋を瞬く間に弾き飛ばしていく。一瞬前まで対魔忍を犯していた彼らは何の抵抗も出来ず、羽虫のようにその命を散らしていった。
―――銃声が止んだとき、その場で立っていたのは社長である彼と、幽鬼のような男だけだった。ほんの十秒前までは淫靡な匂いの立ち込める陵辱の場であったそこは、今や血と死骸に満たされ鉄錆の臭いを発する屠殺場となり果てしまった。
突然訪れた現実を受け入れられないまま、彼は地獄を齎した幽鬼のほうへと再び目を向ける。
恐らく男だろうその背格好に、羽織った黒のロングコートの隙間から米連が採用しているボディアーマーを覗かせ、同じく黒のコンバットブーツを血で濡らしている。そして何よりも目を引くのは、深々と被ったフードの下、その顔を覆い隠しているガスマスクだ。
唐突に現れた乱入者は、彼から見れば死神以外の何者でもなかった。それでもほぼ無意識に、彼は乱入者へ問うた。
「お……お前は、だれだ……!?」
そしてその問いに、男は銃声で答える。
思わずヒッ、と彼は身を屈めたが、弾丸が食らいついたのは彼の足元に転がるオークの脳髄だった。
男は最後の銃弾を放ったAKMを地面へと無造作に放ると、オークが落とした別のAKMを拾い上げ、銃口を別のオークに向けて歩みだした。
ダァン!
「オゲッ!?」
ダァン!
「ゴフッ……」
ダァン!
「ガァッ!」
男は部屋を練り歩きながら、まだ息のあるオークの頭蓋を的確に射抜いていく。銃声が一つ鳴るごとに断末魔が一つ木霊する。社長である彼には、それがカウントダウンに思えてならなかった。
「……俺が何者か、だったな」
男が一通り部屋を歩き終えた後、再び社長の前に立ってずっと閉ざしていた口を開く。
「その質問にさ、一体何の意味があるんだい?」
その言葉と構えられた銃が、全てを物語っていた。
―――銃声が一つ、響いた。
△ ▼ △ ▼
一度は言ってみたい台詞が言えて余は満足じゃ……。
ということで無事オーク20体と標的を始末したので、今回の作戦はしゅーりょーだ!いやあ……ほとんど俺しか仕事してねぇじゃん!何のための班行動だっつうの!
若干の怒りも込めて役立たずの方に目を向ける。
まずは男の方。コイツは……ご愁傷様としか言えない。男なのにオークに犯されるとか、死にたくなるだろうなぁ……自業自得だばぁか。
んで、オークに集団レイポゥ…されてた奴は……あ、これヤバい。入れてたオークがひっくり返った所為で騎乗しちゃってるよ。おもっくそ奥までぶち込まれた形になってるから、あまりの衝撃に身体がずっとビクビクしてる。「オッ……オッ……」しか言ってないけど、これ正気に戻れるのか……?ひとまず首根っこ掴んで引っこ抜いておこう。
あとの一人は……まだ大丈夫そうだな。落ち着いたからか、瞳に生気が戻ってる。
「おーい、大丈夫かぁ?ええっと……名前なんだっけ、とりあえず無事?」
「その声……田上さん……ですか?でも、その格好は……」
「おう、班員Dの田上さんだ。悪いがマスクはこのままでな。ガスが撒かれてる可能性があるから」
たどたどしいが、キチンと受け答えもできるようだ。結構壮絶にやられてたと思うけど立ち直り早い。なかなかのやり手と見た。
「はぁ……どこに行ってたのかという文句は置いておいて……すみません、助かりました。あと、私の名前は氷室花蓮です。ちゃんと覚えておいて下さい」
「あ?あー……すまんな、名前覚えるの苦手でなぁ。氷室、氷室……よし覚えた」
唯一意識を保っていた班員……氷室花蓮と軽く会話しながら彼らの武装や装束を回収する。どこに保管されているかがネックだったが、幸いなことに部屋の中に置かれていたのですぐ見つかった。こんなすぐ近くに置いておくとか、ホントいい趣味してますね。
ほいよ、と氷室に装備一式を放り投げて話を続ける。
「名前確認してそうそうに悪いが、ここから先は俺のことデルタって呼んでくれ」
「はぁ、
「ああ。俺はまだ正体が割れてないからな、出来る限り身バレは避けたい。一応そっちのことも、そうだな……
「分かりました。他の二人はどうしますか?」
「伸びてるから放置でもいい気がするが……男を
とりあえず伸びてる二人を持って……こいつら汚いなぁ……。持ちたくねえ……何か包むもの、オークの服でいっか。二人に紐のように巻き付けて二辺で方結びっと、これで風呂敷みたいに持てるな。
「チャーリー、歩けるか?というか立てる?」
「ハァ……フゥ……ッ、ええっ、何とか……!」
嬲りものにされ子鹿のように震える身体で、それでも彼女は立ち上がった。対魔忍としての誇りがそうさせるのか、それとも彼女の意思が強いのか……素直に感嘆するばかりだ。出来れば捕まる前に発揮して欲しかったけどネ!
「必死に立ってるとこ悪いんだけど、このまま脱出する。ブラボー担いでくれないか?」
「い、いえ。二人とも私が……」
「少しは自分の体調考えろよ。その状態でほぼ成人の男女担ぐのは無理だろ。よしんば行けたとしても、速度が格段に落ちる。敵に囲まれながらお前ら守るなんて芸当、俺は無理だぞ」
現在、この中でまともに戦闘出来るのは俺だけだ。氷室は立ってはいるが、媚薬の効果と消費した体力のせいで集中出来ず、能力は使用出来ない。刀が振れるかどうかも怪しいほどだ。だからこそ今すべきは、敵の殲滅ではなく迅速な撤退だ。可能ならば誰にも遭遇しないことが望ましい。
一分一秒が惜しい以上、多少自由が利かなくても離脱速度を落とすわけにはいかないのだ。もし気絶した二人を担いだ氷室に速度を合わせて敵に囲まれた、何て事になったら流石に救出は断念せざるを得ない。俺が一番大事なのは自らの命に他ならない。かといって速度を重視して俺が二人を担いでも、敵と遭遇したときに対処しきれなくなる。一人につき一人、これが精一杯の妥協点だった。
氷室も納得してくれたのか、渋々ながらも頷いてくれた。
「ところで、どうやって撤退するのですか?いくら手薄とは言え、警備は相当数います。それを突破するには、流石に戦力が足りません」
「何で突破する前提で考えてるんだよ……脳筋にもほどがあんぜ」
呆れて思わず溜め息をつく。冷静な奴だと思ってたけど、やっぱり根本的に対魔忍なんだな……。
「な、何ですかその反応は……とにかく、策は有るんですよね?」
態度が露骨だったのか、少し拗ねたように此方を睨んでくる。
「勿論。帰るまでが任務だからね……これなーんだ!」
「それは……車のキーですか?」
「イグザクトリィ」
手品のように閉じた手を開くとそこには電子ロック式の車のキーがあった。装備の回収ついでに
「車も確認してきたが、車体と窓は防弾使用だし、足まわりにも手が加えられてる。装甲トラック代わりとしても十分使えるよ」
「いつの間にそんな確認を……でもそこまで辿り着けるのでしょうか?ここは敵陣です、警備だって厳重なのでは?」
「そこも問題ない、逃走経路は事前に確保してある。あと10分以内なら、ストレートに車まで辿り着けるぞ」
「……はあ、もう突っ込みません。その調子だと、退路も問題ないんですよね?」
「勿論、事前準備に抜かりなしだ。そろそろ行くけど、問題は?」
「大丈夫です、行きましょう。……お願いします」
「応、任せとけ」
氷室が一人を担いだのを確認して、俺も(不本意ながら)アルファを担ぎ、レッグホルスターから一丁の拳銃―――ベレッタM93R を構える。
よくテレビなどで見る
これは元々対テロリスト用に『
コイツは俺が自前で持ち込んだ武装の一つであり、普段からサイドアームとして重宝している装備だ。
俺達対魔忍が相手取る魔族は、基本的に人間よりも身体機能と肉体強度が高い。9mm弾では決定打にならないことも多く、亜音速の弾丸すら見切ってしまう相手だっている程だ。
それを理解した上で、なぜ威力に秀でる大口径
武装の制限が無い以上、火力を求めるならば短機関銃や突撃銃を使えばいい。というか俺はそうしてる。わざわざ火力や装弾数で劣る拳銃を使うのは、その方が取り回しがよく接近戦にも対処しやすいからだ。そしてその中で高水準のものを使うのは火力不足を補うためである。今回M93Rを選んだのは、男一人を担ぎながら更には疲弊した友軍を護衛するという状況で、身軽さを維持しながらも火線を張れるようにするためだ。
後は、普及率の高い9mm弾ならば他の実包よりも戦場での回収が容易だという経済面でのメリットも存在する。これがマグナム弾やFive-seveNのような特殊な弾丸だと魔族との戦いじゃ滅多に見ないからな……いやそっちも使うんだけどさ。基本的に調達に難があるんですよねえ。
閑話休題
さて、いい加減仕事するか。扉の脇に張り付いて、チラリと氷室の様子を窺う。よし、いつでも行けそうだな。
心の中で3つ数え、一気に飛び出す。クリアリングを済ませ、付いてくるように手振りで氷室に知らせる。今いた所謂調教部屋はビルの地下三階の一番奥にある。ここから道が一本まっすぐ進み、数十m行った先に駐車場が設置されている。目的地はそこだ。
「一気に走るぞ。敵は俺が何とかしとくから、付いてくることだけ考えて」
「了解しました」
フォローするから安心しろ、という意味合いで声をかけてから駆け出す。
一本道とは言ったが、通路の途中途中にはエレベーターや倉庫などと繋がる横道がいくつかあり、いつ接敵してもおかしくはない。意識を研ぎ澄ませ、通路にけたたましく木霊する俺達の足音を掻き分けて敵の気配を探る。
それと並行して、氷室の足音と気配から位置を割り出し、つかず離れずの距離を維持する。一応走れているだけでコイツも要救助者には変わりないからな、いざというときに何時でもフォロー出来るようにしないと。
と、強化した聴覚に俺達とは違う靴音と話し声が届く。足音は……二つか。方向は前方左側。
「―――んでよお、結局その女もぶっ壊れちまってよぉ。おぅおぅって言うだけになっちまったんだよ」
「人間は脆いからなぁ。まあ対魔忍は頑丈らしいし、その分まで思いっきりやっちまえばいいだろ」
丁度、前方の横道からAKMをぶら下げたオークが二体通路に出てきた。突然の接敵に、後ろで氷室が僅かに怯んだ気配があったが、それを無視してオークのうち一体の頭部に照準を合わせ引き金を引く。
セレクターは三点に切り替わっているため、一瞬の内に銃口から弾丸が三発発射され、左側のオークの頭蓋に同じ数だけ風穴を開ける。そして僅かに手首を動かしてもう一体にも同様に射撃、全弾命中。
突然の接敵に彼らは自らの得物を構える暇すら与えられることなく、地面に倒れ伏すこととなったのだ。
その横を通り過ぎる直前に僅かに減速し、セレクターを単射に切り替えてから倒れたオークの後頭部にそれぞれ一発ずつ撃ち込む。もし生きてたら困るからな、殺れる時に確実に殺っとかないと。
「……なかなか、容赦、ないんですねっ」
「容赦して帰してくれるならするけどな」
俺の行動に思うところがあったのか、追走しながら氷室は言う。そんな事言われても直す気はないけどな。
「そもそも、誰かの人生を喰い物にしてる時点で殺されても文句言う権利はないだろ。他者を踏みにじって生きてる奴は、自分の命も踏みにじられて然るべきだろ。魔族も米連も、対魔忍もな」
「……」
勿論、奪われることに対して抵抗するなと言っているわけではない。俺だって、死にたくないから戦って必死に足掻いているんだ。でもだからって、殺されたから傷つけられたからそれを恨むというのは間違っていると思う。悪いことして生きているんだ、幸せになれないのは当たり前だろう?
そのまま二人、死体には目もくれず走る。幸いなことにこのフロアにはもう他に警備は残っていなかったらしく、二度目の接敵なく駐車場に辿り着く事ができた。
周囲に気を配りながらも目当ての車の元へと走る。遠隔操作でロックを解除すると、後部座席に担いでいたアルファをぶち込む。次いで氷室からブラボーを受け取って放る。
「チャーリー、これに着替えて」
俺は車の下に隠して置いたアタッシュケースを二個取り出し、片方を氷室に投げる。
「わっ、と……あの、これは?」
ケースの中身を確認して困惑する氷室に対して、俺はニヤリと口角を引き上げる。
「秘密兵器さ」
△ ▼ △ ▼ △
ふぁ、と守衛の男は欠伸を漏らす。彼とその相方が警備を担当しているのは件の社長が保有する本社ビルの裏側、闇に紛れるように存在する通用門だ。
表に存在する社員や外部の来客が使用するものとは異なり、売人や魔族などを始めとした日陰を生きる者たちのみが知る謂わば伏魔殿の入り口とでも言える代物だ。時には魔族側との繋がりが深い政治家や官僚、表ではまっとうな商売をしながらも裏では魔界技術にどっぷり浸かった企業の社長も訪れるため秘匿性が非常に高く、存在を知るものは社内でもごく僅か、警備も専属で雇う徹底ぶりだ。
本日警備を担当する二人組も、犯罪を犯して裏の社会に身を窶した連中の一部だ。一応の礼儀は叩き込まれているし、魔界医学によって肉体改造を施され常人の数倍もの力を手に入れているため裏社会の警備員としては問題ない部類だろう。とは言えあくまで仕事は守衛であり、警備(という名の戦闘)を担当するオーク共よりは劣る程度でしかないのだが。
さて、表での騒ぎも収まり襲撃犯を捕えたという報せに胸を撫で下ろしつつ業務を淡々とこなしていた時の事だ。地下駐車場から一台の高級車が出庫してきた。誰が出てきたのか確認しようとして、すぐにそれが社長の愛車だと気づいた。何度もここで出入りしているのだから、見間違えようがない。慌てて二人は道路への誘導を始める。
よく見ると、運転手と助手席の女は見た事がない人物だった。いつもは専属の運転手のみで隣は空席だったはずだが。車の窓は黒いスモークガラスなので社長の姿は見えないので確認は取れなかったが、運転手に不審な様子はなく堂々としていた事から問題ないのだろうと二人は判断した。
走り去る際運転手が手を軽く振って来たので、新しいドライバーはずいぶん気楽なやつなんだなと思いながら警備に戻る。
頭を撃ち抜かれた社長が死体で発見され、二人が致命的なミスに気が付くのは明朝、シフトが終わる直前のことだった。
「本当に行けるとは思いませんでした……」
「見た目を取繕えば何とかなるもんだ。駄目なら強行突破しかなかったけどねえ」
(成功してよかった……!)
事前に用意しておいたスーツに着替える事でドライバーと秘書に扮した俺達は、怪しまれることなく無事に脱出を果たしたのであった。
そのまま、一般道を走らせ湾岸沿いに位置していたビルから離れていくこと暫し、郊外にほど近い場所にある高級ホテルに到着した。ここは今回の任務のために俺が個人的に(ここ重要)セーフハウスとして確保しておいた場所だ。何故か誰もこういう下準備とかしてないんだけど、俺はいざというときの為に拠点を毎回確保するようにしている。
今回のホテルには事前にチェックインを済ませているし、作戦が失敗して追撃されたときに備えて予備武装を満載したトランクも運び込んでいる。何時でも逃げ込めるよう準備には万全を期している、抜かりはない。
「ここ……ですか?」
「ああ。部屋はもう取ってあるから、
今回俺が使うホテルはサービスが良く清潔かつ上品な高級ホテルとして評判の場所だが、その実闇の住人と繋がっている裏の顔を持っている。とは言え、裏家業に手を出している訳ではなく政治家や企業の上役が
「一旦ホテルの前に付けるから、荷物運ばせて先に部屋行っててくれ」
「田……デルタは?」
「これ捨ててくる」
ゴンゴン、と握った手の甲でハンドルを叩き乗ってきた車を示す。目的は勿論証拠隠滅だ。監視カメラに映ってるのは仕方ないとしても、実物を調べられるのは流石にまずい。持ち帰ってもしょうがないし、早々に処分するのが得策だ。
とは言えただ捨てただけでは不法投棄になってしまうので足が着いてしまう。そこで、裏社会で商売している言わば闇ディーラーに持ち込んで買い取って貰う。こうすればナンバープレートやら何やら面倒なことはあちらが勝手に処理してくれるし、俺は懐が潤う。完璧な作戦だせグヘヘヘ。勿論氷室には言いません。
「それじゃあ、行くぞ。自然体でいれば変に怪しまれないから、そこだけ気を付けて」
「はい……!」
大きなスーツケースに詰め込んだ班員二名と氷室をホテルマンに任せ、高級車を売りに行く。場所は都心からほど近い裏通り、街灯が少なく闇に飲まれたかのように思わせる場所にひっそりと佇んでいるその店が懇意にしている業者の城だ。盗品だろうがなんだろうが実物を持ち込めばなんでも買い取って闇市に流してくれるので、よく米連から奪った装備を横流しさせて貰っている。
持ち込んだ車は、どうやらかなり改造を施していたらしく、思っていた以上に高値で売れた。この店アフターサービスは完璧だけどその分売値安いからあんま期待してなかったんだけど……まああの社長に感謝しておこう、草葉の陰で喜ぶぞう!金はほぼ装備代に消えるけどな!
まあそんな感じで臨時収入にホクホクしながらビルの上を跳んでホテルへと戻ってきた。タクシー代なんて一々払ってられるか。
勿論そんな所を見られるのは不味いので、人目のない路地で地面に飛び降り、大通りに出てから堂々と正面入口から入る。ホテルマンに私用から戻った事を告げ、チェックインした部屋へと向かう。
エレベーターの浮遊感に身体を侵されながら待つこと十数秒ほど、目的の部屋がある階層に到着する。一度来ているので迷うことなく部屋の前まで歩を進め、持っていた鍵でドアを開けた。そこには俺が来るまで待っていたのだろう、開けることなく放置されたキャリーケースが二つと―――
「ひゃぁっ。た、たた田上さん!?」
―――ベッドの上でスーツをはだけさせ乳房と股座にそれぞれの手をあてがっている氷室の姿があった。
……。
…………いや、どうしたんだよ。
「あの、氷室さん。別にそういうの否定するつもりはないけどさ、任務中にするのはどうかと思うなぼかぁ」
「ち、ちちちち違いますっ!いや違わないですけど!ずっと身体が疼いて、鎮めようとしていただけでーーー!」
「身体が……?」
そこでハッと気づいた。氷室はあの調教部屋で強力な媚薬であるオークの精液を多量に摂取させられ、その上で社長に犯される前に救出されていたのだ。毅然とした彼女の態度で気付かなかったが、彼女はずっと催淫状態にあったのだ。
何て事だ、俺はそんな彼女の様子に気付いてやれず、あまつさえ自分の都合で単独させていたのか!!これは全身全霊を持って、彼女に償わなければならない!
「だから私が、任務中にじ、じぃ……するような変態ではーーー何で服を脱いでるんですか!?」
「決まってるだろ?その疼きを鎮めるのを手伝うのさ。……気付いてやれないで、すまなかったな(精一杯のイケボ)」
「べ、別にいいですから……ひゃあ!ず、ズボンおろさないで!!」
理論武装を完了させた俺は、スルスルとスーツを脱いでいく。対する氷室はベッドの上で必死に身体を隠そうとしているものの、汗で艶めかしく濡れた肌が媚毒に蝕まれビクッビクッと跳ねている様が覗いていた。
「そ、それよりも!学園に連絡を入れないと……」
「あ、それもうやっといたから。回収部隊派遣してくれるらしい。侵入を気付かれた様子もないし、俺達の仕事はこれで終わりだ」
「無駄に仕事が早い!」
「だから遠慮すんなって。部隊が到着するまで四時間程、それまでたっぷり相手してやるさ」
「いえ本当に大丈夫なので!私のことは気にしな、いで…………」
「ほら、もう視線は釘付けじゃないか。身体は正直なんだよ」
「……ハッ!ち、違います!今のは決して、田上さんの……その……あ、アソコをみていたのではなくですね……!」
「誤魔化したってしょうがないだろ。どう考えても正常な状態じゃない。下手に長引かせて今後に支障が出たら元の木阿弥だ」
今の氷室は、強制的に発情させられてそれを発散していない状態だ。水風船で例えればわかりやすいだろう、氷室という風船に毒水のような性欲が逃げ場のないまま溜まり続けている感じである。このままいけば、風船が破裂するように氷室の精神が崩壊する可能性がある。それを防ぐ方法はただ一つ、氷室を蝕む快楽欲求を満たせばいいのだ。
じゃけん、二人でおせっくしましょうねぇ(暗黒微笑)
「そう言うわけだ。わざわざそんなのに耐えるより、スッキリするほうがいいだろ?」
「だ、大丈夫ですからお構いなく……!ゆっくり迫らないでください服着てください!」
「おいおい遠慮すんなよ。俺だって愉しみたい……おっといけね、お前が心配なんだって(イケボ)」
「本音漏れちゃってますけど!?……んひゅぅ!?」
「ほら、軽く撫でただけでこんなになってる。ここもこんなに固くなっちゃって」
「ひぅっ!?む、胸触らないでっ、いい加減怒りますよ……きゃ!?」
「怒られるのはいやだし、サクッと始めちゃおうか。前戯いらないくらい濡れてるしダイジョブっしょ」
「えっ……ま、待って下さいそんな大きいの入ら……ふぁあぁぁんっ!?」
「んぐ……っ。じゃああれだ、何回かヤれば収まるだろうから、それまでの辛抱だ!」
「結局私犯されてるじゃないで……ぁんっ」
その後、回収部隊到着までの四時間、まるで時間を忘れて獣のように交わり合ったのは言うまでもなかった……俺の明日はどっちだ!
対魔忍シリーズはやったことないけど、マッポーめいた世界観とか好きなので書きました。というかこのために決戦アリーナ始めた。
具体的な描写無いならR-18じゃないよネ!というガバ理論でぎりぎりのエロ描写に挑戦しています。そのため主人公が割とゲスみたいになっちゃってるけど、頭のネジ飛んじゃっただけで常識と良識はちゃんと持ってるから安心だね!
しかしなんでマイナータイトルばっか書いてるんだ俺は……?