その対魔忍、平凡につき   作:セキシキ

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お待たせしました、ようやくの本編更新になります。
これ書くのに一年かかったわ……


unravel

煌びやかな電灯の群れが星々の輝きを駆逐する、夜の東京。表裏問わずあらゆる欲望が濁流となって流れ続けるこの街を、一台のワンボックスカーが駆け抜ける。

 

車体パーツを防弾仕様に換装し、エンジン周りにも違法改造を施すことでカタログスペックを大きく上回る出力を可能としたそれは、最早擬装の施された装甲車である。そんな一発でしょっぴかれるような代物に、俺達は乗り込んでいる。目的は当然、家出(脱走)した人形をドールハウス(研究所)へ戻すことである。

 

『こちらγ分隊隊。δ1、聞こえるか』

「こちらδ。聞こえてるぜ隊長」

 

別車両にて移動中のγ分隊から通信が入り、同乗していたδ1=ウィンチェスターが軽い口調で返答する。

 

『所定の位置に着いた。此方は何時でも行ける』

「りょーかいだ。目標までの距離は!?」

「凡そ800!一時間ほど現地点から動いて、いません!」

「よし、δ分隊はこれより作戦行動に移る。全員戦闘準備!」

 

ウィンチェスターの号令を聞くや否や、直前まで談笑していた隊員たちの纏う雰囲気ががらりと切り替わる。各々が自分の得物を握り、レバーを動かし、弾倉(マグ)を確認する。その一連の動作の流麗さたるや、正に彼らが歴戦の戦士であると確信するに足るものだった。

 

それらが一通り終わったタイミングで、運転席から怒号が追加された。

 

「降車ポイントまで後、3……2……1……!」

 

足早にカウントダウンが始まり、ギャリギャリとタイヤがコンクリートを擦る嫌な音が響き渡る。

 

「0!全員降車!」

 

ウィンチェスターの声と共に強烈な慣性が車内を揺さぶり、車両の駆動が完全に停止する。それから間を開けず両側の扉が開くや否や、完全武装と化した隊員達が目にも止まらぬ早さでヒラリと舞出で、陣形を組み全周囲を警戒する。流石職業軍人だけあって、見事な手並みだ。うーん、何度見ても惚れ惚れするぜ。

 

 

『北東へ700mの地点で対象を捕捉!ビルの上だ!』

『γ分隊、視認した。対象が逃走した場合に備え現地点で待機する。δ分隊はそのまま進行、攻撃せよ』

「了解……聞こえたな?行くぞ」

 

最低限のやり取りで情報共有と作戦指示を行い、素早く移動を開始する。と、その時だ。

 

 

『…………ーーー……………』

 

 

「……何だ?」

 

何か一瞬、ノイズが聞こえたような……?

 

「δ3より各員。誰か今無線を使用したか?」

 

ひとまず全体へ連絡し、事実確認を行う。これで誰かが間違えてボタンを押していれば問題ないんだが……。

 

『こちらγ1、無線機に触れた者はいない。δ、そちらは?』

「こちらδ1!そんな奴いなかったぞっ、どうした!?」

 

部隊長とウィンチェスターが答える。誰も使ってないとなると……誤作動か聞き間違いか?

 

……いや、警戒はすべきだな。

 

「一瞬無線にノイズが混ざった。盗聴されている可能性がある」

「はぁ、極秘任務用に毎度使い捨てされてる専用回線だぞ?聞き間違えじゃないんだな?」

 

前方からウィンチェスターが疑念の声を投げかけてくる。……正直、聞き間違いかと言われると確信は持てない。ほんの一瞬のみ、微かに耳に届いたもの。空耳や緊張による幻覚と言われても納得してしまう程度の音だった。

 

……それでも、決して投げ捨てていいものではないと、俺の直感が告げている。

 

「ああ。確かに聞こえた」

『……了解した。これよりチャンネルの再設定を行う。それが完了するまで、此方からのδ分隊への通信は行わずまたδ分隊からは状況報告以外の無線使用を禁ずる』

「δ了解……分隊各員!聞こえたな!?これより隊内での無線使用禁止!意思疎通は直接話すかハンドシグナルでやれ!」

 

どうやら、俺の進言は受け入れられたらしい。何故ここまでスムーズに通ったのかは疑問が残るが、まあここは喜ぶべきだろう。

 

命令の伝達が終了し、分隊が駆け足で進軍を開始する。俺とウィンチェスターを先頭にし、その後ろを部隊員が2列で追走する陣形だ。俺後衛がよかった……。

 

「よし、目標のビルを視認した!分隊総員戦闘準備!いつ攻撃されても可笑しくないからな!」

 

ウィンチェスターの声で全員に緊張が走る。一応奇襲を掛ける形になるとはいえ、相手は人間よりスペックが上な戦闘用ガイノイドだ。しかもビルに布陣しているとなると、上空から逆に奇襲や迫撃を受ける可能性だって十分に考えられる。いくら警戒しても不足ということはないだろう。

 

―――と、ふとした違和感に足を止める。

 

「……おい、δ3。どうした?」

 

俺の異変に気付いた後ろの分隊員が、不審そうに声を掛けてくる。ウィンチェスターも足を止め此方を見るがそれを無視し、しゃがみこんで地面に耳をペタリとつける。

 

 

……………ふむ。

 

 

「複数の足音だ。急速に近づいている」

『っ!?』

 

俺が察知した違和感、それは複数人の足裏が大地を叩くことで発せられる振動だ。

 

俺の言を聞き、周りの隊員達は即座に方陣を敷いて警戒態勢へと移行している。流石と言った動きだな。

 

「おいδ3、数と方向は!わかるか!?」

「……正確な数はわからん。が、大きさに比べ音はばらけていない。恐らくは我々と同様訓練された兵隊だろう。方向の把握は流石に無理だが、移動速度は我々と同じ程度だ」

「チッ!ハイエナ共が来やがったか……」

 

ウィンチェスターは舌打ちを一つすると、無線で部隊内に現状を伝達し始めた。恐らく本隊にも情報を共有するためだろう。傍受される危険はあるが、大声出して居場所晒すよりはマシなはずだ。

 

……しかし、ハイエナ?ウィンチェスターの反応と対応からして、事前に想定していた或いは情報を知っていたと見ていいだろう。相手の足音にズレが殆どない事から、訓練を積んだ兵士であることは容易に察しがつく。米連の派閥争い?いや、知ってたのならせめて事前に情報をですね……。

 

……っと、振動が大分近づいてきたな。これで足音が殆どないんだから、隠密の訓練も相当積んでるな。こちらと同じ特殊部隊だろうか、また厄介な。

 

「……かなり近づいてきたな。来るぞ、備えろ」

 

そう一言付け足し、俺も素早く立ち上がる。流石にこれだけ近くに来れば敵集団の方向は問題ない。ただ移動速度、つまり接敵するタイミングは予測しきれたわけじゃない。そもそもこちらが察知されれば無警戒に飛び出してくるとは限らないのだ。

 

とりあえず銃を構えて様子見。ざっと見積もって接敵まで約5秒、誤差は±3秒程度か。正直容赦なく撃ち殺したいんだが、流石に米連内部(お仲間)の部隊だとマズイかなあ。とりあえず威嚇射撃だけにして、警告してからかね。

 

などと考えつつ神経を尖らせて待つこと4秒と少し。目線を向けた物陰から人影が音もなく姿を現した……と同時。

 

撃て()ぇッ!!」

 

ウィンチェスターの鋭い命令が響き、1拍遅れて鉛玉が飛翔する。フルオートで放たれた弾丸は先頭にいた部隊員(と思わしき人物)の体を食いやぶり穴だらけにし、続けて影を晒したそれは慌てたように後ろに下がった。物陰の向こうから英語で捲し立てるような怒号が聞こえてくる。え?というか……。

 

「……撃ってよかったのか?」

「ああ。あいつらも俺たちと同じ米連の部隊らしいが、指揮系統は別の派閥なんだと。『作戦中に遭遇した場合は即座に殲滅、目標の確保を阻止せよ』ってお達しだ。幾らぶち殺しても問題ねえよ」

「……了解した。以降はそのように対処しよう」

 

頼むからそういうの先に言ってくんないかなぁ!?

 

面倒な事態になったなぁと内心頭を抱えつつ、反撃を警戒して近くの遮蔽物に身を隠す。案の定頭上からヒュンヒュン風切り音が鳴っとる。あっぶね。

 

「それで、この後はどうする?」

 

同じように隣へ身を隠したウィンチェスターに声を掛ける。今の所此方に被害はないようだが、このまま踏みとどまってるわけにはいかない。

 

「……ちっ、あっちの数がこっちを上回ってやがる。本当ならコイツら全員ぶっ殺してさっさと目標確保しきゃならないんだが……」

「この状況では至難だろう。一時退却を進言するが」

 

とりあえず先制攻撃は出来たものの、数はあっちの方が多いらしく膠着状態。まあこっちは部隊半分に分けてるしな。ざっと見た感じ戦力差は2対1くらいだし、下手したら押し潰される危険がある。

 

そもそも今回の任務はガイノイドの撃破であって、コイツラの相手ではないんだよね。

 

「仕方ないか……撤退するぞ!全員牽制を加えつつ後退!殿は私とコイツだ!」

「む……私もか」

「当たり前だろうがッ!とっとと働け!」

「…………了解した」

 

不承不承だが肯定を返す。殿とか一番危険な役処やんけ……。やりたくねえなあ……でも逃げるにはまだ早いなあ。まだ粘らんと。

 

「よし、行くぞ……3,2,1!」

 

カウントに合わせ、ピンを引き抜いた手榴弾を敵中に向けて投擲する。敢えて起爆までの猶予を残し、敵の混乱を誘う。

 

『……ッッ!!Grenade!!』

 

流石と言うべきか、一瞬で反応し全員が飛び退いた。数瞬の間を置いて鉄の果実は炸裂したが、被害はないだろう。だが問題はない。目的は、この数瞬の隙だ。

 

俺が手榴弾を投擲し銃撃が止んだ僅かな間隙を縫い、俺とウィンチェスター以外の隊員が走り出す。彼らは後方数m先の物陰に滑り込んだ。俺たちの役目は、その背中に銃弾が飛ばないよう斉射による牽制を行うことだ。

 

……が、何を思ったか、ウィンチェスターは逆方向へ……即ち、敵陣のど真ん中へと飛び込んだ。

 

「……!?馬鹿野郎が……!」

 

思わず素の口調が漏れ出す。俺が援護しなきゃいけないんだから、突っ込まれたら下がれねえだろうが……!

 

そんな俺には一切構わず、ウィンチェスターは爆発で開いた空間に身体を滑り込ませる。丁度敵が体制を立て直そうと動き始めたタイミングであり、追撃の初動を潰した形になる。包囲の中心に入り込んだウィンチェスターはまるで翼を広げるように両腕を左右に開き、不敵に笑う。

 

「Shall we dance?」

 

マズルフラッシュが連続で閃く。閃光は一所に留まることなく、流動する両腕共にその場所を変えていく。

 

それは戦闘などという野蛮なものではなかった。神事で執り行なわれる舞踊と言われても頷けるような、ある種の優美さを讃えていた。

 

「流石、二丁拳銃(トゥーハンド)の面目躍如と言ったところか……」

 

思わず、そう呟かずにはいられなかった。それほどまでに彼女の動きは的確で、洗練されていた。異能や機械技術を一切用いない純粋な技能のみで武勇を鳴らした兵士の神髄がこれだ。

 

俺もあれくらい出来れば……いや、そんな事呑気に考えてる場合ではなかった!

 

「カバーはこちら任せとは……!」

 

ウィンチェスターを囲う輪の少し外側、彼女のガン=カタが届いていない連中が次々に倒れていく仲間たちを尻目に銃を構えている。同士討ちの可能性よりも、ウィンチェスターの殲滅力を危険視したんだろうが……。

 

「隙だらけだ」

 

その側頭部に鉛玉を叩きこむ。同様に構えている奴等に一発、二発。脳漿と血潮が混じり穴から噴き出し、末期の言葉を吐く間もなく絶命する。

 

そのままの勢いで残りも潰したかったのだが、流石プロの軍人だ。瞬時に此方への反撃が飛んでくる。堪らず遮蔽物に身を隠し、銃を掲げるようにしてゲリラ撃ちで牽制する。弾をばら撒くだけだが、少しは牽制になるだろう。

 

しかしこれではウィンチェスターの援護が出来んな……まあ、後退した味方も射撃してくれているから俺がやらなくても問題ないだろうが。

 

……っと、先に下がった味方がハンドサインを送ってる?なになに……『準備』『OK』『後退』? なるほど、退路が確保出来たのか。それならさっさと下がるかね。

 

落としていた腰を上げ、何時でも動ける体勢に切り替えつつまずは敵の動きを……って待て待て待て!ウィンチェスターの奴全力でこっちに走り込んでるぞ!?

 

幾ら一当てして敵の動きが鈍ってるとはいえ、それに背を向けるとか馬鹿じゃないか!? 体勢を立て直してる奴だっていないわけじゃ……くっそ、俺の援護任せかよ!

 

流石に見過ごすわけにはいかず、M4を構えて斉射を開始する。フルオートの反動はハンドガードを上から抑え込むことで無理やり制御し、ウィンチェスターへ反撃しようとしている連中へ弾幕を叩き込んだ。

 

何とか敵の動きを抑えている間に、全力疾走してきたウィンチェスターが俺の真横へ滑り込む。

 

That was close(ギリギリセーフ)!」

「あまり無茶をするな。此方の負担が増える」

 

頬を引きつらせながらもどこか満足げな表情に、思わず小言が漏れる。しかし当の本人は意に介していないのか、ニヤリと笑って拳を俺の方へと向ける。

 

「いい援護だったぜ、やるじゃねえか」

Fa sho(当然だ)

 

ガツッ、と拳を突き合わせる。

 

ウィンチェスターはもう一度楽しそうに笑った後、スッと顔を引き締める。

 

「さて、とっとと撤退しちまおう。走れるな?」

「少し待て、一つ仕掛けをしたい」

 

俺は懐から先程も投げた手榴弾ともう一つ、円筒状の物体を取り出す。まああまり意味はないかもしれんが、可能性を上げるための仕込みだ。

 

ウィンチェスターが頷いたのを確認し、まずは手榴弾を放る。今度は角度をつけ、敢えて見つけやすいように高く投擲。勿論訓練と経験を積んだ特殊部隊、そんな程度では容易く対処される……某MS小隊長みたいに空中の手榴弾を狙い撃つとか流石に予想外だったけど。

 

なので、もう一手。手榴弾へ敵の視線が集中した一瞬の間を突き手に持った円筒状のモノ―――発煙手榴弾(スモークグレネード)を彼等の手前に投擲する。

 

コンクリへ転がった円筒から白い煙が噴出し、此方と彼等の間に充満した。これで鴨撃ちは避けられるだろう。

 

「走れ!」

「運試しってか!まぐれ当たりしないよう祈るしかねえなぁ!」

 

同時、俺とウィンチェスターが走り出す。地面を這う様な前傾姿勢で可能な限り被弾面積を減らしつつ、全速力で駆け抜ける。

 

前後から発砲音ががなり散らし、頭上で弾丸が飛び交うのを肌で感じながらもひたすら走る。最短距離を真っ直ぐに、それが生存への最適解だと信じて。

 

援護射撃をしている友軍の横を抜け、先程通った路地を駆け―――一発も被弾する事なく、無事に降車地点まで逃げ果せる事が出来たのだった。

 

「ふぅ……お互い、運だけは良いようだな」

「『だけは』ってなんだ、だけって!というか気ぃ抜くなよ!?他の奴がまだなんだからな!」

「解っている。支援は私がしよう。周辺警戒は任せる」

 

一息つく間もなく、俺は来た道を振り返り銃を構える。そこには先程の俺達と同じ様に撤退する友軍の姿。

 

「全く、手間がかかる……っ」

 

味方の部隊員と被らないように射線を確保して、トリガーを引く。目的は敵の殺害ではなく撤退支援なので、細かな狙いをつけず身動きが取れないように圧をかける。

 

俺の献身的な(当社比)援護の甲斐あって一人、また一人と後退に成功するのだが……流石に全員退くには時間が掛かるか。敵方も何とか追撃しようと少しずつだが動き出している。

 

マズイな、流石にこのまま留まっていてもジリ貧だ。残弾も心許ないし、最悪残りの連中見捨ててトンズラした方がいいかもしれん。ウィンチェスターとか承知しないだろうけど……どう説得したもんかね。

 

「潮時か。おい、δ1―――」

 

ウィンチェスターを言いくるめるための文言を纏めながら、あたかも苦渋の決断を下すかのような忸怩たる思いでの発言を装おうとした瞬間だった。

 

 

『……〜〜〜♪、―――』

 

 

通信機から、今度は明確なノイズが響いたのは。

 

 

『〜〜〜♪』

 

続くノイズはより鮮明に、ハッキリと耳朶を打った。いや、これはノイズではなく……歌、か?

 

「あ?何だ!?δ3!お前が言ってたノイズってのはこれのことか!?」

「どうやらそのようだ。尤も、ここまでハッキリとは聞き取れなかったが……」

 

どうやらこの歌、俺以外にも聞こえているらしい。というか、動揺した味方の挙動や、一切動きを見せなくなった敵の様子から察するに、ここら一帯の無線機に割り込みをかけているのだろう。この隙に、味方にハンドサインで後退の指示を出す。

 

そうこうしている間にも、インカムから聴こえている歌は続く。

 

 

化物へと変わった自分への困惑、変わってしまった自分を見ないで、でも忘れないで……そんな歌を、どこか電子音じみた声が口ずさむ。

 

 

あんまり詳しくはないが、声の感じがボーカロイドに似てるなこれ。音声ソフトで調声したような不自然さというか、人工感というか……。曲はアニメのOPだけど。

 

「とはいえチャンスだ……おいっ」

 

敵部隊に聞こえないように注意しつつ、前線に残っている連中に呼び掛ける。一人が俺の声に気付いたようで、他の奴らに合図して此方へと静かに走り寄ってきた。

 

「助かるぜ、Bedfellows」

「早く乗れ、気付かれたぞ」

 

すれ違いざまの軽口を流しつつ、混乱から回復した様子の敵部隊へ牽制攻撃。更にポーチから最後の発煙手榴弾を投げ込む。地面に落ちたそれから白い煙が溢れ、再び道を塞ぐ。

 

「いいぞ!」

「よし、出せ!」

 

俺が飛び乗ると同時に、けたたましいエンジン音を響かせてバンが発進する。ガラス越しにくぐもった発砲音が聞こえたが、違法改造で獲得した防弾装甲を抜く事は叶わず全て甲高い金属音を奏でるだけで終わったようだ。

 

急発進から数秒後、バンが道を右折した事でそれらの音も聞こえなくなる。残るのは、車体を通じて響くエンジン音とタイヤが地面を擦る音のみだ。

 

「……追撃無し、撤退は成功だ」

 

後方を窺っていた俺の報告を受けて、車内の緊張が僅かに緩まる。

 

俺は一つ息を吐くだけで堪え、他の連中と同じように小休止しているウィンチェスターに声を掛ける。まだ確認しなければいけない事が残っているからだ。

 

「おい、δ1。先程の連中は何だ?敵対勢力の存在が確認出来ているなら、事前に共有して貰わなければ作戦行動に支障が出る」

 

ウィンチェスター達が事前に把握していたと思われる第三者。接触こそ突発的なものだが、知っていれば対策は幾らでも出来た。少なくとも、走行時の振動を身体で感じるなんて方法は取らなくて済んだだろう。

 

今回はただでさえ事前調査の時間がなく、米連内の勢力分布が不透明なのだ。不本意ではあるが、こいつらからの情報は俺の生命線となる。

 

そんな俺の内心を知ってか知らずか、ウィンチェスターは数秒思考を回した後口を開いた。

 

「確かに、そりゃ悪かったな。とはいえ、俺も知ってる事は多くねえ。ただ、厄介な連中が首突っ込んでるらしい」

「その、厄介な連中とは?」

 

俺からの問い掛けに、ウィンチェスターはひと呼吸置いてから、その名を口にした。

 

 

「―――特務機関G。それが、奴らの雇い主の名さ」

 

 

事態に暗雲を齎した存在。それを耳にした俺の心中を表すように、街灯に照らされた俺の影が、少し揺らいで見えた。

 

 

 

 

 

 




銃撃戦を文章で表すのって大変なんですね…そりゃみんな異能チートバトルばっかり書くわけだわ。

というわけで、本当にお待たせしました!ようやく本編が進むんじゃぁ…(白目)
改めて見るとアイナと宗次のコンビ感がすげえ。多少アイナが無茶しても宗次が大体帳尻合わせてくれるの、パートナーみたいでいいっすね。ただガン=カタの表現が抽象的になるのは許して欲しい。描写ムズいわアレ、映像とかじゃないと表現し切れないですわ。

ちなみに、最後に無線ジャックで流れた歌はタイトル通りです。これがやりたくてサブタイを英語タイトルの歌に統一してたのだ…

花蓮実装のおかげが最近だいぶ執筆意欲に余裕が出てきたので、次回はそんなにお待たせせずに行けると思います。あと、前回のアイナの一人称を修正しました。そういや俺っ娘だったね君。

最後に、皆さんいつも感想や誤字報告など本当にありがとうございます。感想のおかげでモチベーションめちゃくちゃ上がりますし、作者の目はガバガバなので誤字を指摘していただけるととても助かってます!
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